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「党首公選制」訴えた現役共産党員・松竹伸幸氏が「除名」の波紋

2023-02-07 17:34:37 | 日記

「党首公選制」訴えた現役共産党員・松竹伸幸氏が「除名」の波紋 「言論、表現の自由は死ぬ。党は支持失い滅びかねない」 リベラル文化人らも〝違和感〟


オピニオン 1 時間前

共産党の特殊性があらわになった。「党首公選制」導入などを訴えた現役共産党員で、ジャーナリストの松竹伸幸氏(68)について、共産党は6日、最も重い処分にあたる「除名」を正式発表したのだ。

党内に派閥や分派はつくらないとする党規約などを破った「重大な規律違反」が理由という。

松竹氏は同日、日本記者クラブ(東京・内幸町)で講演し、処分を不服として再審査を求める意向を示した。

異論を排除するような対応は、今春の統一地方選や、野党共闘にも影響を与えそうだ。

内田樹氏© zakzak 提供
松井一郎市長© zakzak 提供

「私の行動で除名されるなら、憲法で保障された言論、表現の自由は死ぬ。共産党は国民の支持を失い、滅びかねない」

松竹氏は講演で、ときおり声を詰まらせ、「党の対応は本当に残念だ」と失望をあらわにした。

1月に『シン・日本共産党宣言 ヒラ党員が党首公選を求め立候補する理由』(文春新書)を出版した。

記者会見で、22年以上もトップに君臨する志位和夫委員長を「国民の常識からかけ離れている」と批判した。

松竹氏が所属する共産党京都南地区委員会は5日、「除名」を決め、上部機関の京都府委員会が6日、承認した。

処分理由として、「事実をゆがめた党攻撃」「分派活動」などを挙げた。

一方、松竹氏は「こじつけに過ぎない」「異論の排除が国民の共感や理解を得られるのか。これで野党共闘を主導できるだろうか」と反論した。

実際、松竹氏の主張に賛同し、共産党の対応を疑問視する声が、支持層を超えた幅広い人々から続出している。

共産党機関紙『しんぶん赤旗』に登場し、松竹氏の著作に推薦文を寄せた思想家、内田樹(たつる)氏は自身のツイッターに、「松竹さんは『党内での透明性の高い対話』を求めたのであって、党を割ることなんか求めていません」と、処分の再考を求めた。

野党共闘を訴えてきた法政大学の山口二郎教授も「大変残念な話。共産党が市民と野党の共闘を言うなら、自らも市民社会の常識を共有する党になる必要がある」とツイートした。

自民党の茂木敏充幹事長は6日の記者会見で、「他党の対応にコメントすることは控えたい」としながら、「わが党でいきなり除名処分ということはあまりない。レアなのではないか」と指摘した。

日本維新の会の松井一郎前代表(顧問・大阪市長)は同日、記者団の取材に応じ、「党のために問題提起したのに、除名されるというのは民主主義じゃない。党の体質がみえた」「言論の自由を奪うおそろしい政党」などと指弾した。

共産党は党綱領に「日米安保廃棄」「自衛隊解消」などと堂々と掲げているが、党運営の特殊性も公然となった。

共産党の小池晃書記局長は「異論を述べたから処分したわけではない」「突然、外から攻撃する形でやってきた」「攻撃されたら、やっぱり党をしっかり守らないといけない」と説明している。



韓国、上昇する利子にその上を行く物価…史上初めて2年連続実質金利マイナス

2023-02-07 17:18:33 | 日記
韓国、上昇する利子にその上を行く物価…史上初めて2年連続実質金利マイナス

2/7(火) 11:35配信


60代の主婦Aさんは、昨年下半期にある都市銀行の年5%の定期預金に1億ウォンを預けた。
税引き前利子500万ウォンなら1カ月に約42万ウォンずつ生活費の負担が減るものと期待した。

だが週に1回買い物をする時にかかる費用は10万ウォンから20万ウォンに膨らみ、暖房費など公共料金が大きく上がり体感上の利子所得は0ウォンに近かった。
 
上昇する利子の上を行く物価だった。昨年銀行に資金を預けた場合に利子より物価が大きく上がり実質金利はマイナスを記録した。

史上初めて2年連続のマイナス実質金利だ。

 韓国銀行が6日に明らかにしたところによると、昨年預金銀行の貯蓄性受信金利(定期預金・積立金金利)は年2.77%で2012年の3.43%から10年ぶりの高水準となった。

韓国銀行が2021年8月から1月まで10回にかけて基準金利を3%引き上げた余波だ。

0.5%だった基準金利は3.5%になった。

 物価はさらに急激に上がった。

統計庁によると、昨年の消費者物価は前年比5.1%上昇した。

通貨危機直後の1998年に記録した7.5%から24年ぶりの上昇幅だ。

特に頻繁に購入する品目と生活必需品を中心に構成され体感物価に近い生活物価指数は6%上がり、やはり1998年以降で最高となった。

電気・ガス・水道料金も12.6%上がり2010年に別途の統計を作成し始めてから最大だった。

 これに伴い、昨年の貯蓄性受信金利2.77%から物価上昇率5.1%を差し引いた実質金利はマイナス2.33%となった。

実質金利は2021年のマイナス1.42%に続き2年連続マイナスを記録し、マイナス幅も過去最大だ。加重平均金利資料が作成された1996年以降で実質金利がマイナスとなった年は2011年のマイナス0.31%、2017年のマイナス0.34%を含め4回だけだ。

今年も実質金利がマイナスになる可能性があるとの観測が出ている。

物価がなかなか落ち着かないだけでなく受信金利は銀行債発行再開と金融当局の圧迫などで下落傾向であるためだ。

預金銀行の貯蓄性受信金利は昨年11月に4.29%まで上昇したが12月には4.22%に下がり11カ月ぶりに下落に転じた。

 一方、1月の消費者物価上昇率は5.2%で昨年11月の5.0%、12月の5.0%と比べて高まった。

韓国銀行は2日の物価状況点検会議で「2月の消費者物価上昇率も5%前後と予想される。

今後物価経路上、内外景気の流れなどと関連した不確実性が高い状況」と診断した。昨年11月に韓国銀行が予想した今年の消費者物価上昇率3.6%も上方修正する可能性がある。




多くの専門家が10年以内にロシアは崩壊すると予測…中国の台湾侵攻も確実視

2023-02-07 17:04:03 | 日記
多くの専門家が10年以内にロシアは崩壊すると予測…中国の台湾侵攻も確実視

  • ロシアは2033年までに破綻国家になるか、崩壊する可能性があると多くの外交政策の専門家が考えていることがアトランティック・ カウンシルの調査で明らかになった。
  • ロシア経済は、欧米のウクライナ戦争による石油輸出規制などの制裁で大きな打撃を受けている。
  • 今回の調査では、ほとんどの専門家が中国は10年以内に台湾に侵攻すると予測している。
アメリカのシンクタンク、アトランティック・カウンシル(Atlantic Council)が行った最新の調査によると、ロシアは欧米の制裁措置の長期的な影響により経済が低迷し、2033年までに破綻国家となるか、あるいは崩壊する危険性があるという。

この調査は、167人の専門家に10年後の世界はどうなっているかについて意見を求めたものだ。

回答者の46%が2033年までにロシアが分裂すると予想し、21%はロシアが破滅的な国家になる可能性が最も高いと見ている。

最も驚くべき結果のひとつは、今後10年間にロシアが崩壊する可能性があると指摘した回答者が多かったことだ。

これはロシア政府のウクライナ侵攻が、地球上で最大の核兵器保有国に極めて大きな混乱をもたらす可能性があることを示唆している」とアトランティック・カウンシルは述べている。

さらに回答者の40%は、「革命、内戦、政治的崩壊」によって、ロシアは2033年までに内部分裂すると予想している。

ウクライナ侵攻後、欧米の制裁を受けてロシア経済は崩壊しつつある。

侵攻開始から8カ月後の2022年11月には景気後退に陥った。

ロシアの中央銀行は、EUが発表したロシアの石油禁止とその原油の価格上限を、今後数カ月の間に経済活動を停止させかねない「新たな経済的ショック」だとして警告した。

2022年末に課されたこの制裁はロシア経済への圧迫を目的している。
専門家はInsiderに、モスクワが西側諸国から孤立することで、ロシア経済が災難に見舞われる可能性があると述べている。

ロシアは「友好国」と連携することで制裁の影響を軽減しようとしているが、専門家によるとそれは「長期停滞の元凶」だという。

一方、北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ(Jens Stoltenberg)事務総長は、ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領がウクライナへの戦争を開始する決定を下したことで、ロシアは「数十年前よりも貧しく、孤立している」とフィナンシャル・タイムズ(Financial Times)の論説で述べている。

アトランティック・カウンシルによると、その他の悲観的な地政学的展開も時間の経過とともに起こると予想されている。

その中には今後10年以内に中国が台湾に軍事侵攻する可能性も含まれている。



2022年韓国大統領選挙と「分極化」の行方

2023-02-07 16:42:51 | 日記
2022年韓国大統領選挙と「分極化」の行方


浅羽 祐樹

Yuki Asaba


2022年3月





民主化以降4回目の政権交代


2022年3月9日に実施された韓国大統領選挙において、保守系野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソンニョル)が進歩系与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)に対してわずか24万票余りの差(得票率だと0.74ポイント差)で辛勝した。文在寅(ムン・ジェイン)政権の任期後半、「政権交代」を求める声が一貫して強かったが、尹は中道層や無党派層を十分取り込むことができなかった。有権者のイデオロギー分布は「保守(31.4%)」「中道(39.5%)」「進歩(21.6%)」(数値は後述の「出口調査」に依拠している)と保守系野党に有利な構図だったにもかかわらず、尹はウイングを広げることができず、選挙戦を通じて保守/進歩の分断がむしろ進んだ可能性がある。
5月10日に就任すると、尹錫悦大統領は「与小野大」国会(定数300)に直面する。172議席を有する野党「共に民主党」から協力を得られないと、与党「国民の力」(議席数110)だけでは国務総理を任命できず、その推薦が必要な閣僚も指名できない。政権公約に掲げた「女性家族部の廃止」など政府組織の再編にも法改正が必要である。6月1日に統一地方選挙を控えているため、「新巨大野党」は対決姿勢を堅持するものと予想されるが、それ以降も、「与小野大」国会との「協治」、反対派/他陣営の説得・包摂は、尹大統領のリーダーシップを死活的に左右することになる。
そもそも、選挙戦の終盤で候補者一本化に合意し、のちに政権引継委員会委員長に据えた安哲秀(アン・チョルス)の「国民の党」(議席数3)との合併など、「新与党」との関係も、政治経験が皆無の尹大統領にとって容易ではない。特に、大統領府を青瓦台(チョンワデ)から龍山(ヨンサン)の国防部庁舎に移転するとともに、その機能や人員を縮小し、内閣や閣僚に権限を委譲すると同時に、民間の専門家との協働を図るというが、「青瓦台政府」「帝王的大統領制」に代わる統治のモデルを示すことができるかが問われている(康元澤 2021;2022)。
李在明は開票作業がまだ完了していない時点で敗北演説をおこなった。今回で「選挙を通じた政権交代」は1987年の民主化以降4回目であり、少なくとも手続きレベルでは、韓国民主主義体制は完全に定着している。しかし、李の支持者の間には、敗北を受け入れがたく、日常生活に支障をきたす「選挙後ストレス障害(Post Election Stress Disorder: PESD)」がみられるという(中央日報ウェブサイト、2022年3月13日)。議会における各政党の投票行動だけでなく、有権者の日常生活でも「分極化」が進むと民主主義体制は深刻な挑戦を抱えることになるが、韓国も例外ではない。



写真1 当選後、国立ソウル顕忠院を参拝する尹錫悦



世代・男女・地域による分断


韓国大統領選挙では毎回、KBS・MBC・SBSというテレビ局3社が共同して大規模な出口調査(以下、「出口調査」)をおこなっている(KBSウェブサイト;MBCウェブサイト;SBSウェブサイト)。事前の世論調査では5〜10ポイントほどの尹優勢が示されていたなかで、この「出口調査」は「超接戦」だった尹錫悦と李在明の得票率をほぼ的中させた。しかも、期日前投票の投票率が制度導入後最も高い36.9%に達し(全体投票率77.1%のおよそ半分)、かつ、そこでは投票日当日の投票より李の得票率が有意に高いことが事前に予想されたため、電話による世論調査を1万人規模で実施し、適正な補正をおこなったという(「ハンギョレ」ウェブサイト、2022年3月10日)。有権者の動向を正確に把握するためには、メディアや世論調査会社、データジャーナリズム、それに学界の協力が欠かせないことは言うまでもない。
この「出口調査」によると、年齢層・世代によって、投票先が異なることがわかる。20代(18歳・19歳も含む。以下すべて同じ。)(尹45.5%対李47.8%)と30代(48.1%対46.3%)では、尹と李の得票率はほぼ互角である。40代(35.4%対60.5%)と50代(43.9%対52.4%)は李を支持した一方で、60代以上(67.1%対30.8%)は尹を圧倒的に支持した。
また、投票率(「出口調査」による推定値)は高齢層ほど高く、60代以上は84.4%と、平均より7.3ポイント高い。一方、20代(65.3%)と30代(69.3%)の投票率は、平均をそれぞれ11.8ポイント、7.8ポイント下回っている。そもそも、少子高齢化が急速に進む韓国では、若年層ほど有権者の絶対数が少ないため、「2030世代」や「90年代生まれがやって来る(イム・フンテク 2018)」と注目されても、政治的にカウント(数える/重視)されるかは別問題である。
その意味で、今回、「イデニョ(20代女子)」(68.4%)は「イデナム(20代男子)」(62.6%)よりも投票に行き、投票先も正反対だったことは画期的である。「イデニョ」の58.0%が李を支持した一方で、「イデナム」の58.7%は尹を支持した。30代でも似たような傾向がみられる。2000年以降、韓国の選挙では若年層ほど進歩的な傾向を示したが(康元澤 2010; 2020)、男女で政治性向に顕著な差が出たのが今回の特徴である。「女性家族部の廃止」という尹の公約は「イデナム」をターゲットに据えたものだが、「イデニョ」は「自らの声=異論(voice)」を上げた。この層の「政治化」が、事前の世論調査では十分に捕捉しきれず、「予想外の」超接戦になったのである。
このほか、中央選挙管理委員会の集計データをみると、依然として地域ごとに顕著な差があることが明らかである(中央選挙管理委員会ウェブサイト「開票進行状況」)。尹は嶺南(朝鮮半島南東部)では過半数の得票率、特にTK(大邱・慶尚北道)では75.1%・72.8%という高い得票率を示すが、湖南(朝鮮半島南西部)では11.4~14.4%の支持しか得られていない。有権者の半分が集中し、党派色の薄い首都圏は、全国選挙(大統領選挙や総選挙)の勝敗を左右するが、今回、ソウル(50.6%対45.7%)での得票差(尹対李)が、李が直前まで知事を務め、いまやソウルより有権者数が多い京畿道(45.9%対50.9%)や、仁川(47.1%対48.9%)での劣勢を挽回するうえで決定的だった。その背景には、文在寅政権の5年間でマンション価格が2倍になったという不動産問題があり、その価格上昇率が高く、その分、税負担(さらには保険料にも連動)が増えた区や洞(市郡区の下位の行政単位)ほど尹の得票率が高いという(中央日報ウェブサイト、2022年3月14日)。特に、漢江沿いにタワーマンションが立ち並ぶ江南区狎鴎亭洞第3投票所では、尹の得票率はなんと91.2%を記録した(「オーマイニュース」ウェブサイト、2022年3月10日;中央選挙管理委員会ウェブサイト「開票単位別開票結果」)。


争点態度をめぐる分断


争点態度をめぐっても韓国有権者の間には分断がみられる。韓国の主要紙である中央日報は韓国政党学会と共同で選挙前サーベイ調査(2021年12月26~29日実施)をおこなった(中央日報ウェブサイト、2022年1月24日)。外交安保、経済、社会それぞれの領域で14の個別具体的な争点について有権者の政策選好を訊ね、その結果に基づいて11点尺度(0が最も進歩、10が最も保守)でイデオロギー位置を推定した。それによると、有権者全体の平均は5.09でほぼ中道であるが、その分布は保守/進歩それぞれの両端に行くにしたがって裾野がなだらかになっていく「単峰性」ではなく、ふたつのピークがある「二峰性」がみられる。そのひとつは尹錫悦の支持者で、そのイデオロギー位置の平均は6.39と保守に寄っている。もうひとつは李在明の支持者で、そのイデオロギー位置の平均は3.89と進歩に寄っている。有権者全体との差分はそれぞれ1.30、1.20であり、両者の間の距離は2.50も離れている。
イデオロギー位置の差は年齢層・世代ごとにもみられる。40代(4.49)、50代(4.64)は進歩的だが、20代(5.26)、30代(5.23)はやや保守的、60代以上(5.60)は保守的である。さらに、それぞれを男女別に分けると、20代では顕著な差がみられる。「イデナム(20代男子)」のイデオロギー位置は5.87と全年齢層で最も保守的であるが、「イデニョ(20代女子)」(4.60)は40代男子(4.40)、50代男子(4.54)、40代女子(4.58)に次いで進歩的である。「イデナム」と「イデニョ」の間は1.27も開いていて、ここでも「二峰性」の分布がみられる(中央日報ウェブサイト、2022年1月25日)。
こうした「イデナム」と「イデニョ」の相違は、女性の社会進出を促進するクォータ制の廃止/拡大といった争点だけでなく、原子力発電所の積極推進/全面廃止、非正規雇用問題の自由放任/政府介入、対北朝鮮経済協力の制裁強化/積極推進などの政策選好(保守/進歩)でも幅広くみられる。
年齢層・世代ごとに家庭や職場、社会や各時代で直面する課題が異なるため、政治に期待するものがそれぞれその都度異なるのは当然のことであるが、男女の差も重要になったということである。韓国人女性は#MeTOOに積極的に賛同し、ミソジニー(女性嫌悪)殺人事件には街頭やオンライン空間の双方で追悼と抗議の声を上げてきたが(鄭喜鎭 2021)、「イデニョ」は有権者としても独自のエージェンシー(行為主体)であることを示したわけである。2021年の韓国の合計特殊出生率は0.81で世界最低の水準だが、構造的なジェンダー差別が是正されない社会のままでは、晩婚化・非婚化・無子化で「少子化」がさらに加速し、年金制度がいずれ破綻することは確実である(春木 2020)。
幸い(?)、尹錫悦候補のイデオロギー位置は5.12で、自らの支持者(6.39)よりも有権者全体の平均(5.09)に近い。李在明の支持者(3.89)とも、少なくとも絶対値ではそれほど離れていない。個別具体的な争点についても、尹は李より中道寄りに「巧く」ポジショニングしている(中央日報ウェブサイト、2022年1月24日)。問題は、今後、大統領として政策アジェンダを法律・予算・人事の形で「与小野大」国会に諮る際に、進歩系野党の議員やその支持者も「吞める」ゾーン内に提案できるか、である。



写真2 ミソジニー(女性嫌悪)殺人事件の追悼付箋紙



国会におけるイデオロギー的分極化


大統領と議会多数派の党派構成が異なる「分割政府(divided government)」である場合、議会における政党間の「イデオロギー的分極化(ideological polarization)」が進んでいるかが大統領のリーダーシップを左右する。韓国大統領は、米国大統領とは異なり、法案提出権(憲法第52条)を有しているが、尹錫悦大統領が直面する「与小野大」国会(定数300)では、党派のラインをこえた「交差投票(cross-voting)」がみられるかが、立法パフォーマンスや「協治」の鍵である。
2020年4月の総選挙を経て成立した第21代国会は、180議席を獲得した巨大与党「共に民主党」が、これまで議席数に比例して各会派に配分されてきた常任委員会委員長ポストを独占したことから始まり、「選出された権力/多数派」の名の下、「立法独走」が目立った。その最たる例が、検察から捜査・起訴の権限を一部分掌させる高位公職者犯罪捜査処(高捜処)の設置法だが、野党が猛烈に反対するなかで、政府・与党は「検察改革」「改革立法」を貫徹した。
前述の「出口調査」を実施したSBSという民放のテレビ局は、第21代国会になってからイデオロギー的分極化がどう変化したのかについて、各法案に対する各議員の投票行動(賛成・反対・棄権)をもとにDW-NOMINATEという方法を用いて、相対的な保守/進歩(+1~-1)の位置を測定した(SBSウェブサイト、2021年6月3日)。それによると、「共に民主党」議員の平均(偏差)は-0.754(0.02)で、かなり進歩的である。「国民の力」議員の平均(偏差)は+0.423(0.07)で、保守的である。両者の間の距離は1.177で、第20代国会(2016~2020年)の0.792、第19代国会(2012~2016年)の0.829と比べると、さらに開いた。しかも、それぞれの凝集性(偏差で測定)は極めて高く、位置が重なる議員はいない。政党間の距離が遠くなり、かつ、それぞれ凝集性が高くなったということは、イデオロギー的分極化が進んだということを意味する。
しかも、法案の性格、争点領域によっては、さらに距離が開いている。たとえば、前述の「高捜処」設置法案は法制司法委員会の主管だが、この常任委員会で審議される法案に対して、「共に民主党」議員の位置は-0.995、「国民の力」議員の位置は+0.354である。両者の間の距離は1.349で、法案全体の場合より0.172大きい。また、産業災害時に現場の監督者だけなく経営陣の責任も問う「重大災害処罰法」など環境労働委員会で審議される法案も、両者の間の距離が1.399と最も開いている。
このように、韓国国会では党派のラインに沿った投票傾向が強まっているなかで、大統領と議会多数派の党派構成が等しい「統合政府(unified government)」「与大野小」国会だと、与党だけによる「改革立法/立法独走」がみられた。逆に、尹錫悦大統領が直面する「与小野大」国会では、巨大野党「共に民主党」がこぞって反対すると、大統領の政策アジェンダは何一つ立法化されないことになる。選挙戦では対立争点や非難合戦ばかりが目立ったが、たとえば年金改革の必要性には、少数党の正義党(議席数6)まで含めて、原則的に合意している。そうした合意争点において超党派的な協力を実現していく責任は本来、「二重の民主的正統性(dual democratic legitimacy)」がビルトインされている大統領制では、尹大統領と「与小野大」国会というそれぞれ異なる「選出された権力/多数派」が分有していると言えよう。


日常生活における感情的分極化


世界各国の世論の動向を比較分析しているピュー研究所が2021年におこなった調査によると、韓国人の90%が「支持政党が異なる人々の間の対立が深刻である」と回答している。これは米国とまったく同じ極めて高い値で、日本(39%)を含む調査対象17カ国の平均値(50%)を大きく上回る(Pew Research Centerウェブサイト、2021年10月13日)。米国では、2020年の大統領選挙においてトランプ大統領が最後まで敗北を受け入れようとせず、挙句の果てに、焚きつけられた支持者が連邦議会を襲撃するという事態まで生じた(レビツキー・ジブラット 2018)。さらにその後、新型コロナウイルスのワクチン接種という本来、非政治的な領域においても、党派的アイデンティティが有意な差をもたらしており、共和党支持者は民主党支持者に比べて接種しようとしない(Pew Research Centerウェブサイト、2021年9月20日)。
アメリカ政治研究者の西川賢によると、こうした「感情的分極化(affective polarization)」はイデオロギー対立ではなく、「ある集団(民主党/共和党)に道徳的な愛着を抱く集団が、自集団以外の集団に対して抱く反感・憎悪によって特徴づけられる対立」(西川 2022, 2)だという。その要諦は、「ある特定の政党に愛着を持っている人々は自党と自党の支持者を『内集団』とみて、他党の支持者を異質な『外集団』であると認識するようになり(他者化――Othering)、それら『外集団』に嫌悪・不信感を抱くようになり(嫌悪感――aversion)、外集団を不正、邪悪、偽善的、自己中心的で排他的な存在であると認識するようになる(道徳化――moralization)」(同上)ことである。韓国でも、こうした感情的分極化がすでに確認されている(Lee 2015;康俊晩 2021;キム・イ 2021;チャン・チャン 2020)。
保守系・進歩系どちらの政党の支持者であれ、党派的アイデンティティを有すると、内集団に対しては好意的である一方で、外集団に対しては敵対的である。内集団と外集団とでは、自らの結婚相手として考えられるかが有意に異なる。キム・イ(2021)によると、党派的アイデンティティを有する韓国有権者の50%以上が外集団との結婚は「絶対考えられない」という。また、内集団は「愛国的で」「賢く」「正直である」一方、外集団は「偏狭で」「偽善的で」「利己的である」と道徳的な善悪で彼我を裁断する。その原因や帰結、さらには解決(緩和)策についても、先進事例の米国などのデータをもとに、さまざまな検証がおこなわれているが(Iyengar, et. al. 2019;Coleman 2021)、韓国では、政治的知識や学歴水準が高いほど、感情的分極化の程度はむしろ大きくなるという(チャン・チャン 2020)。
個人的な逸話でも、2022年韓国大統領選挙の前後で、「実家の両親は(保守系新聞の)朝鮮日報しか読んでいないので、尹錫悦なんかを支持しようとしている。なんとか(進歩系新聞の)ハンギョレに替えるように説得して、ようやく成功した」と半ば自慢げに語ってくれた40代の韓国人研究者がいる(メディアの分極化についてはHan 2021を参照)。別の50代の韓国人研究者は、「尹錫悦の5年間はとても耐えられない。新聞もテレビもSNSもみたくない。移民に行きたいくらいだ」と嘆いている。
韓国社会の分断、分極化は選挙時や国会だけでなく、家庭や職場など日常生活のそこここに広がり、かつ深刻化している。次期大統領である尹錫悦は、「与小野大」国会との「協治」だけでなく、こうした憎悪や傷をケアし、社会的にも政治的にも「包摂(inclusion)」を図っていけるかが問われている。




日本が“国力”でもドイツと韓国に抜かれる日…2023年中にも「GDP4位」転落予想の衝撃

2023-02-07 14:45:44 | 日記
日本が“国力”でもドイツと韓国に抜かれる日…2023年中にも「GDP4位」転落予想の衝撃

1/29(日) 9:06配信

日本の生産性は低下(C)日刊ゲンダイ

 2023年のびっくり予想がまた一つ飛び出した。毎年、年初には金融機関が大胆予想を発表し、市場関係者を仰天させる。

1月も半ばを過ぎたいま、日本沈没を予感させる恐ろしいリポートが出てきた。

まさか? と首をかしげたくなる内容だ。

 「世界で国力を測る代表的な指標といえばGDP(国内総生産)です。

日本は20年以上にわたり世界3位をキープしてきました。

ところが、場合によっては今年にもドイツに逆転されるかもしれないのです。

すでに株式市場では日本は世界のリード役ではありません。

世界株式の時価総額で見た場合、日本はピーク時に40%近くを占めていました。

それが今や6%を切り、見る影もありません。

“国力”の衰えを実感します」(市場関係者) 

 市場で話題を集めたリポートは「ドイツに抜かれそうな日本ーー『まずい』の危機感がないと本当にまずい」。

第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏がまとめたものだ。 

リポートはこう始まる。

 <2023年のびっくり予想である。ドイツの経済規模が世界3位の日本を抜く可能性がある。日本は4位に転落する> 

1968年、日本はドイツを抜き世界2位に躍り出た。

2010年に中国に抜かれるまで米国に次ぐ地位を維持していた。

その後、世界3位をずっと守っている。

熊野氏が指摘する。

 「マラソンランナーが余裕を持って3位を走っていると思ったら、いつの間にか後ろからヒタヒタと足音が聞こえてきた感じです。気づいたら、もうすぐ後ろにピタッとくっつき、追い抜くタイミングを狙っている。そんな印象です」

危険ラインは1ドル=137円台

23年には韓国に抜かれる(表は2021年のデータ)/(C)日刊ゲンダイ

昨年からの円安が日本の名目GDP低下を招いた面はある。

円安進行でドルベースのGDPはどんどん下がっていく。

 「それは仕方ないのかもしれません。ただ、国力が落ちたために通貨安となっているともいえます。50年以上もドイツより上にいたのに、再逆転を許すとは情けない」(前出の市場関係者) 

 もっともIMF(国際通貨基金)の将来予測(27年まで)によると、日本は3位に踏みとどまっている。

 「為替相場によっては順位変動が起こると思います。IMFは23年のドル円レートを129.34円(年間平均)とはじいていますが、仮に137.06円になれば日本はドイツに逆転されてしまいます」(熊野氏) 

 昨年、ドル円は1ドル=151円台を付けた。

137.06円は油断のならない数値だ。

そもそも日本とドイツは面積こそほぼ同じだが、人口は随分と違う。

熊野氏のリポートにも、<日本の総人口は1億2510万人。ドイツは8400万人>とある。

そもそもGDPは人口の影響を受けやすい。

ものすごく単純には、その国の一人一人の経済活動が積み上がって、GDPは算出される。

 だから日本のGDPはドイツの約1.5倍あって当然なのだ。
それが逆転されるとは、日本の生産性は極端に低いということになる。

1人あたりGDPは韓国が上位に

20年、21年の世界の平均給与(C)日刊ゲンダイ

 昨年12月にも衝撃的なリポートが出されている。「1人当たりGDP」に関するもので、「23年に日本は韓国に抜かれる」という内容だった。

 1人当たりGDPは、GDPを人口で割ったもの。

国の豊さを測る指標にもなる。 「IMFの統計(21年)で日本は27位です。トップのルクセンブルクとは3.5倍ほどの開きがあります。

2位以下はアイルランド、スイス、ノルウェーと続きます。米国は7位、ドイツは18位。実は、約20年前の2000年に日本は2位だったのです。

それが毎年のように下落し、もはや27位。

しかも、29位の韓国に追い抜かれるとの予測が出たのです。日本の凋落は凄まじい」(金融関係者) 「韓国に抜かれる」リポートは日本経済研究センターがまとめたもの。

そこには、こうある。

 <円安による目減りもあるが、労働生産性の伸び悩みが響く。労働力人口1人当たりの資本ストックを表す資本装備率も、日本は低迷する一方で韓台(韓国と台湾)は着実に積み上げてきた> 

 このリポートは、22年に1人当たりGDPで日本と台湾が逆転するとも書いている。

IMFの21年統計で台湾は32位。27位の日本は一気に抜き去られ、23年は韓国の後塵を拝することになる。 

 生産性の低さを食い止めないと、日本はズルズルと後退するばかりだ。

 「言葉は悪いですが、大企業に勤める定年後のシニア層が生産性を下げているとの指摘があります。もちろん、人によって差はあるでしょうが、ロクな仕事をしていないのに給料だけはそれなりにもらっている。

若い人のヤル気にも影響を与えているかもしれません。

シニア層の生産性を高める必要があります」(前出の金融関係者)

 ■平均給与は世界24位に低迷  賃上げがテーマになってきたが、日本の給与は世界的水準から見れば相当に劣っている。

 OECD(経済協力開発機構)統計では、日本の平均給与(21年ドルベース)は世界24位で、3万9711ドルだ。日本円(1ドル=130円)で約516万円。

トップは米国の7万4738ドル(約972万円)と日本の倍近い。  2位以下は、ルクセンブルク(約958万円)、アイスランド(約937万円)、スイス(約896万円)、デンマーク(約797万円)。

ドイツ(11位、約729万円)や韓国(20位、約556万円)は日本より上位に位置する。

20年ほど前、日本(18位)は韓国(24位)より上だった。

 人生100年時代。シニア層の働きこそ、国力アップのカギだ。