この時間は、
▽ こうした“日韓逆転”ともいえる現象が、どのような分野で起きているのかを見たうえで、
▽ その原因と背景を探り、
▽ 最後にこうした現実を私たちはどう受け止め、どうやって日本の再生につなげていけば良いのか考えていきたいと思います。
1965年、日本と韓国が国交を正常化した時、両国の経済力には30倍ほどの開きがありました。(日本:910億、韓国31億USドル、世界銀行)
豊かで強い日本、貧しく弱い韓国。そんな時代でした。
世界的な企業となったサムスン電子やヒョンデ自動車の初任給は、ソニーやトヨタ自動車のそれを上回っていると言われています。
「2004年に留学で初めて日本を訪れた時、日本は紛れもなく憧れの先進国だった。しかしその後、社会、経済など様々な分野で日本のガラパゴス化が進んだ。“日韓逆転”現象は、韓国経済の成長と言うよりは日本経済の停滞によるものだ」
イ・チャンミン教授にとって“憧れの先進国”だった日本の経済はなぜここまで停滞し、分野によっては韓国に逆転されるまでになってしまったのでしょうか?
ここからは、いくつかのデータをもとに、その原因と背景を探ってみたいと思います。
行政手続きのデジタル化などICT=情報通信技術による公共サービスの進展度を示しています。韓国はデンマークに次いで第2位、日本は上位10位にも入らず14位でした。一年前にデジタル庁を立ち上げたばかりの日本と、20年以上前から国を挙げてデジタル化に取り組んできた韓国とでは、これだけの差が開いてしまっているのです。
2019年度に博士号を取得した人は、日本は1万5,128人、韓国は1万5,308人でした。韓国の人口は日本の半分以下ですから、実際には日本の2倍以上の人が博士号を取得したことになります。韓国ではこの20年ほどで2倍以上に増えていますが、日本は2006年をピークに減少傾向にあります。
自然科学の分野で引用回数が多く注目度や評価の高かった論文の数を見てみますと、日本はおととしまでの3年間の平均で3,780本、韓国は3,798本で、わずかながら韓国が上回っています。日本の引用論文数は減ってきているのに対し韓国はこの20年間で6倍近くも増えています。
国会議員に占める女性議員の割合は、日本が9.9%、韓国は18.6%、国家公務員の局長など上級管理職では、韓国の方が2倍以上も女性の割合が高くなっています。(日本:4.18%、韓国:8.55%、OECD)
もちろん日本の方がはるかに優れていることもたくさんありますし、韓国には貧富の格差、行き過ぎた学歴競争や若者の就職難といった深刻な課題があります。
ただ日本と韓国との関係が新たな局面に入ったことは間違いないでしょう。
「これまでのように垂直的な、追いつかれる追いつくっていう構造のフレームワークは払拭しないといけないと思います。ひとつは共通の課題に立ち向かっていく。少子高齢化以外にも資源小国ですし、第3国に向けて成功の共有という意味では途上国の支援とか難民の支援。これでもポジティブに競ったり、協力して日韓が考える良いフレームワークというのを提供していくという協力の余地というのはたくさんあります。そういう共通課題、共通部分を探していくというのがありうる考え方なのかなと思います」
最後に、日本が再び活力を取り戻していくためにはどうすれば良いのか考えます。
韓国に遅れをとっているかも知れないという現実は、私達にとってけっして喜ばしい話ではありません。しかしこの国の将来を考えれば、身近なところに韓国という手強いライバルが出現したことは、むしろチャンスととらえるべきではないでしょうか。
韓国の失敗は戒めとして繰り返さず、韓国の成功からは率直に学ぶ。そんな謙虚な姿勢こそが、日本が今の閉塞状況から脱し、将来の発展につながる道ではないかと考えます。