問題は10年後、20年後…2035年には「85歳1000万人以上」時代が到来する現実
2/17(金) 9:06配信
2035年には住民のおよそ10人に1人が85歳以上に…
(C)日刊ゲンダイ
「異次元の少子化対策」が注目されているが、実は急増する後期高齢者の対策も日本の将来の在り方を問う重要な課題だ。
国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、
2035年には85歳以上の人口が全国で1000万人を超えるという。
住民のおよそ10人に1人が85歳以上という時代が訪れることになる。
「2年後の2025年は団塊世代がすべて後期高齢者(75歳以上)入りし、高齢化率は30%に到達します。日本は高齢化先進国として世界に知られていますが、さらに急激な『高齢者の高齢化』が進んでいるんです」 と言うのがニッセイ基礎研究所の坊美生子准主任研究員だ。
2020年に600万人を超えた85歳以上は、2035年までに400万人超で急増し、1002万人に達する。
日本人の平均寿命は男性81.47歳、女性87.57歳(2022年厚労省発表)だが、とっくに平均寿命でも後期高齢者入りしているのである。
前期高齢者(65~74歳)ならまだ元気な人は多いが、80代後半にもなれば多くの人に心身機能の衰えが一段進み、認知症や、要介護の人が増える。
高齢期への備えは必要不可欠になってくるのだ。
前出の坊氏が昨年11月に発表した「高齢化と移動課題(上)~現状分析編~」では、85歳以上の高齢者の心身状態の特徴を調査リポートしている。
それによると、自立度は85歳ごろになると男性の約7割、女性では9割がADL(食事、排せつ、着脱衣、移動、入浴など日常生活を送る上で最も必要な基本的な生活機能)にも援助が必要な状態となる。
さらに、要介護率は85~89歳の男性は約3割、女性は約4割が要介護状態。
約4割が認知症。
受療率(入院)は、人口10万人に対し4000人超。
受療率(外来)は同1万人超と、心身の変化は急速な変化を表す。
坊氏が言う。
「高齢者への医療・介護の対応は比較的に進んできてはいますが、高齢者のニーズは医療介護だけではありません。社会保障以外にもサービス付き高齢者住宅、交通事故から守る歩道の整備。駅、公共施設などのバリアフリー化などハード、ソフトの面から支援が必要です。政府も国民も85歳以上が1000万人になる認識が薄いのではないでしょうか」
■今の85歳はそれなりに生活できても… “未来の年表”の著者でジャーナリストの河合雅司氏が述べる。
「政府は昨年12月の全世代型社会保障構築会議で社会保障全般の方向性を決めました。その中で高齢化への対応も進めていますが、社会保障サービスの中で生活に直結する年金問題や、基本的な日常生活のための公的、民間企業のサポートについて全く議論されていません」
そしてこう指摘する。
「今の85歳は、それなりに年金をもらい生活できても、問題は10年後、20年後の85歳です。社会保障費は削減され年金は減り、所得のばらつきで個人差が拡大して、生活に困窮する貧しい高齢者が増えてくる。社会が高齢者を迎える仕組みを構築する前に、超高齢化の時代を迎えてしまうのです」
85歳以上1000万人時代の備えを、官民ともに今から検討が必要だ。
(ジャーナリスト・木野活明)