日本と世界

世界の中の日本

なぜ地銀の貸出金利は極度の低下が続くのか~気が付けば 「市場経済からの離反」

2023-02-15 18:13:08 | 日記
なぜ地銀の貸出金利は極度の低下が続くのか~気が付けば 「市場経済からの離反」

2022.06.02

地方銀行の貸出金利が、特異な低下を示している。
 
新規の短期貸し出しと長期貸し出しの加重平均金利である貸出約定平均金利(総合)は、都市銀行と同水準まで低下した。

日本銀行のデータ検索サイトで遡及可能な1994年以降、初めてのことだ。

このうち長期貸し出しの金利は、昨年秋以来、ほとんどの月で都銀を下回っている。
 
都地銀の経費率や貸出先の信用リスクの差を踏まえれば、両業態の新規の貸出約定平均金利(以下、「貸出金利」)が肩を並べるのは、尋常でない。

なぜ、こうした事態が起きているのか。その意味するところは、何か。
 
都銀の貸出金利はすでに低下に歯止め
 
参考1は、都地銀の貸出金利(総合)と経費率の推移をプロットしたものだ。

貸出金利(総合)には、新規とストックの2種類がある。

新規は当月実行分の平均金利をいい、ストックは過去実行分を含む貸出残高全体の平均金利をいう。
 
このうち、当期の利益を左右するのは、ストックの貸出金利(総合)と経費率の差だ。

ただし、ストックの貸出金利は一定のタイムラグをもって新規の金利に近づく。したがって、新規の貸出金利(総合)も、将来の利益を決める重要な要素となる。
 
(参考1)都地銀の貸出約定平均金利(総合)と経費率の推移
 


(出典)日本銀行「貸出約定平均金利」、全国銀行協会「全国銀行財務諸表分析」を基に筆者作成。
 
都銀の貸し出しには、市場金利連動型が多い。このため2016年のマイナス金利政策の導入時には、新規の貸出金利(総合)は大幅に低下した。経費率、預金金利を差し引いた限界的な利ざやも、かなりのマイナスに陥ったとみられる。
 
こうした事態を眺め、都銀は経費の圧縮を急ぐとともに、貸出金利全般の見直しを進めた。この結果、新規の貸出金利は徐々に上昇に転じ、ストックの貸出金利も20年度以降ほぼ横ばいに転じている。利ざやも、薄利ながらプラスの領域で安定してきたとみられる。
 
低下が止まらない地銀の貸出金利
 
一方、地銀の貸出金利(総合)は、新規、ストックともに低下が止まらない。新規の貸出金利は経費率と同水準にまで低下し、限界的な利ざやはほぼゼロまで縮小した。
 
他業態では、都銀だけでなく信用金庫も、新規の貸出金利(総合)は横ばいに転じている。対照的に、第二地方銀行は、地銀と貸出競合先が多く、貸出金利の低下が続く(参考2参照)。貸出金利の低下に歯止めがかからないのは、地銀、第二地銀に固有の現象である。
 
(参考2)業態別の新規の貸出金利(総合)推移

(出典)日本銀行「貸出約定平均金利」を基に筆者作成。
 
地銀、第二地銀は、異次元緩和の長期化に伴う運用難から、少しでも配当原資を捻出しようと国内貸出への傾斜を一段と強めてきた。地方創生に対する社会や政治の「期待」もある。それらの動機が貸出金利を押し下げている。
 
それでも、貸出金利は低すぎる
 
それでも、地銀の貸出金利は低すぎるだろう。筆者がそう考える根拠は次のようなものだ。
 
日本銀行の金融システムレポート(2022年4月号)は、ストレステスト用のベースライン・シナリオとして、0.2%程度の信用コスト率を想定する。信用コスト率とは、貸出先が債務不履行に陥り、貸し出しが焦げ付く確率をいう。年平均0.2%程度という想定は、中長期的にみて妥当な水準だろう。
 
銀行が利益を確保するには、ストックの貸出金利が①経費率②預金利回り③信用コスト率の3者の合計を上回る必要がある。
 
21年度中間期の地銀の経費率と預金利回りの合計は、0.71%だった。一方、足元の地銀の新規貸出金利(総合)は0.67%にとどまる(2022年1~3月平均)。この貸出金利では、信用コストはもちろん、プラスの利ざやを得ることも難しい。
 
なぜ地銀はここまで貸出金利を引き下げるのか。
 
一つの理由は、長引く金融緩和のもとで企業倒産が激減し、企業のデフォルト確率が足元、ゼロ近傍にあることだ。地銀は、今後も同様の状況が続くことを前提に、貸出金利を引き下げている可能性がある。しかし、超金融緩和下での実績をそのまま将来に当てはめることには、大きなリスクがある。
 
もう一つの理由は、新たに導入された各種の公的な制度が、結果として地域金融機関への補助金として機能していることだ。
 
典型は、新型コロナ対応としての「信用保証協会の保証付きの実質無利子融資」、いわゆる「ゼロゼロ融資」である。この融資制度では、民間金融機関は信用リスクを負うことなく、貸し出しを実行できる(民間金融機関による同制度の申請受付けは21年3月に終了)。
 
また、日銀が提供する上乗せ金利の制度も、実質的に銀行の収益悪化を緩和する措置として機能している。
 
例えば、企業の新型コロナウイルス感染症対応や気候変動対応を支援するための貸し出しの見合いに、日銀当座預金に上乗せ金利を付利する制度がある(「貸出促進付利制度」)。また、地域金融機関向けの制度として、経費率の改善や経営統合を条件に、日銀当座預金に上乗せ金利を付利する制度がある(「地域金融強化のための特別当座預金制度」)。
 
達観すれば、ゼロ近傍の信用コストの継続と上乗せ金利の制度の存在を前提に、地銀の貸出金利低下が続いている。
 
逆にいえば、環境が変われば、貸出金利の大幅な見直しが必要となる。しかし、新規の貸出金利の低下に歯止めをかけることができたとしても、ストックの金利が反転するまでには時間がかかる。21年度の地銀決算では増益を記録した先が多かったが、楽観はできない。
 
過度の低金利が市場機能を阻害する
 
こうした情勢を、マクロ経済の観点からはどう評価すればよいか。
 
銀行収益全般の悪化に伴い、金融システムの弱体化は避けられない。しかし、改正金融機能強化法(注)の成立もあり、金融システム全体が揺らぐ懸念は当面小さいだろう。また、企業は、超低利で銀行から借り入れを行うことができる。一見、望ましい状況にもみえる。
(注)新型コロナ対策の一環として、金融機関による公的資金の申請条件を大幅に緩和したもの。経営責任の明確化などの条件が緩和されるとともに、返済期限も撤廃された(2026年3月までの時限措置)。
 
しかし、金融機関や金融システムが本来果たすべき機能は、成長性のある企業を選び出し、新陳代謝を通じて日本経済の成長を促すことだ。「金融機能の発揮」イコール「貸し出しの増加」ではない。実体経済に基づかない低利の貸し出しは、企業の新陳代謝を損ない、経済の活力を奪う。
 
日銀の長期金利の誘導目標「ゼロ±0.25%」が市場メカニズムからかけ離れた水準であるのは、明らかだ。誘導目標が低下を促した貸出金利も、同様である。日銀自身が掲げる実質経済成長率の見通しは、もっと高い(日銀の実質GDP見通し:22年度2.9%→23年度1.9%→24年度1.1%)。
 
気が付けば「市場経済からの離反」である。
 
日銀は、物価目標2%が安定的に達成されるまで「粘り強く」異次元緩和を続けるという。しかし、そう言い続けて、10年目に入った。いま必要なのは、これまでの結果を大局的な見地から俯瞰して評価することである。
 
早く市場機能を回復させ、市場経済を基軸とする日本経済に引き戻す必要がある。


韓国貸出金利が急上昇、年5.6%に 高速利上げで消費に影

2023-02-15 18:08:23 | 日記
韓国貸出金利が急上昇、年5.6%に 高速利上げで消費に影

朝鮮半島

2023年1月13日 22:50 




ソウル市では大規模なマンション開発が続く
【ソウル=細川幸太郎】韓国の銀行貸出金利が上昇している。韓国銀行(中央銀行)によると、2022年11月の平均貸出金利は年5.64%と前月比で0.38ポイント、前年同月比で2.41ポイントも上昇した。住宅ローン金利が最大で8%を超えるケースもあり、韓銀の高速利上げの影響が国民生活や消費に広がり始めた。
韓銀は13日の金融通貨委員会で、政策金利を0.25%引き上げて年3.50%とした。利上げは7会合連続。韓銀の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は同日の記者会見で「国内経済の成長率は事前予想を下回るものの物価上昇傾向は根強く、物価安定に重点をおいて緊縮基調を続ける必要がある」とし、利上げ継続の必要性を訴えた。
韓銀は米連邦準備理事会(FRB)の急速な利上げに追従する形で、21年8月から利上げに転じ政策金利を年0.50%から3.50%まで引き上げてきた。そのため同期間で平均貸出金利は年2.87から5.64%に上昇した。
利上げで直接的な影響を受けるのが不動産市場だ。韓国メディアによると、KB国民銀行と新韓銀行、ハナ銀行、ウリ銀行の四大銀行の住宅ローン金利は年5.27%~8.25%に高まっている。
KB国民銀行によると、マンション売買価格(全国平均)は22年7月にピークを打って6カ月連続で下落が続く。文在寅(ムン・ジェイン)政権下の5年間で75%上昇した不動産価格は金利上昇によって下落に転換した。
苦しいのは高値づかみでマンションを購入した世帯だ。値上がりを見越して所得に見合わない住宅ローンを組んだ家族も多い。家計負債は22年9月時点で1870兆ウォン(約195兆円)と5年前と比べて4割増加。住宅ローンの8割超が変動金利で組まれており、「利子負担がわずか1年で倍増した」(30代男性会社員)という世帯も少なくない。
韓銀担当者は「多額の家計負債が国内消費の回復に重荷になる」とし、「民間消費」の23年見通しを前年比2.7%増(22年は同4.7%増)と失速するとみる。
貸出金利の上昇に対して、預金金利の伸びには陰りが見える。11月に金融監督院が銀行に資金が集中するのを避けるために預金金利の引き上げ競争を自制するように勧告したためだ。一時は定期預金で年5%台の金利を提示していた大手銀行も足元で4.5%程度に引き下げており、貸出金利の上昇は銀行の収益拡大につながっている。

韓国政府、銀行の事業慣行改善目指す タスクフォース立ち上げへ

2023-02-15 18:04:33 | 日記

韓国政府、銀行の事業慣行改善目指す タスクフォース立ち上げへ


By Reuters Staff
EAD

 2月15日、韓国政府は銀行のビジネス慣行を改善するためのタスクフォースを今月中に立ち上げると発表した。写真は韓国の尹錫悦大統領。昨年11月、ソウルで撮影(2023年 ロイター/Daewoung Kim)
[ソウル 15日 ロイター] - 韓国政府は15日、銀行のビジネス慣行を改善するためのタスクフォースを今月中に立ち上げると発表した。銀行は不当な利益を上げ多額の退職金を支払っていると国内メディアから批判を受けている。
声明によると、タスクフォースは金融規制当局、銀行、学識者、法曹関係者、消費者団体の代表らで構成される。
競争の促進、報酬制度の改善、損失吸収能力の強化、金利収入への依存低減などについて6月までに方策をまとめる。銀行の社会貢献度の向上や固定金利による融資の拡大についても検討する。
韓国には20の国内銀行と35の外国銀行の支店があるが、一握りの銀行が支配的な地位を占めている。金利を引き上げることで不当な利益を得ているとの批判が出ていた。
また報道によると、一部の銀行は早期退職の退職金として数億ウォン(数十万ドル)を支払っていた。



年金だけで生活している高齢者世帯が24%に急減!何が起きているか?

2023-02-15 16:59:01 | 日記
年金だけで生活している高齢者世帯が24%に急減!何が起きているか?

2022/12/1(木) 11:01配信


「年金のみで生活する高齢者世帯が急減している」――。

数年前の「年金2000万円問題」を持ち出すまでもなく、年金のみでは生活費が足りない衝撃的な事実が明らかになりました。

しかも「年金だけで生活する高齢者世帯」がここ数年で急減しているといいます。いったい何が起きているのでしょうか。
 

年金だけで生活している高齢者世帯が激減

年金のみで生活している世帯(2021年調査) 厚生労働省「2021年国民生活基礎調査の概況」

老後生活の基礎となるは年金です。
原則として65歳になると老齢年金を受給できるようになります。
 ▶国民年金 月額6万4816円(1人)
 ▶厚生年金 月額21万9593円(夫婦2人)

 国民年金でもらえる金額は満額で月額6万4816円(2022年度)。

※保険料を納めた期間が20歳から60歳までの全期間(40年)。

 厚生年金に加入している場合のモデル年金は夫婦2人で月額21万9593円。

※平均的な収入(平均標準報酬月額換算43.9万円)で40年間就業した場合に受け取れる年金夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額。 

厚生労働省「2021年 国民生活基礎調査の概況」から、年金を受給する高齢者世帯の総所得のうち年金が占める割合の世帯数をグラフで見てみましょう。 

 ・100%の世帯:24.9% 
・80~100%未満の世帯:33.3% 
・60~80%未満の世帯:15.9% 
・40~60%未満の世帯:14.0% 
・20~40%未満の世帯:8.4% 
・20%未満の世帯:3.6% 

全体の25%、約4分の1の世帯しか老後生活を年金のみで生活することができていない現実が明らかになりました。

 コロナ前の2019年調査も振り返りましょう。

   ・100%の世帯:48.4% 
・80~100%未満の世帯:12.5% 
・60~80%未満の世帯:14.5% 
・40~60%未満の世帯:12.7% 
・20~40%未満の世帯:8.1% 
・20%未満の世帯:3.9% 

全体の48%、約半数が年金だけで生活することができています。

わずか2年で、年金だけで生活する高齢者世帯は一気に半減したことになります。
 大きく変化しているのは「100%の世帯」と「80~100%未満の世帯」です。

「100%の世帯」が23.5%減り、「80~100%未満の世帯」が20.8%増加しています。

 厚生労働省「2021年 国民生活基礎調査の概況」では、生活にゆとりがあるか、苦しいかの生活意識の状況も調査しています。

この質問に「大変苦しい」「やや苦しい」と回答した高齢者世帯は過半数を超えています。  

 【2019年調査】
 ・大変苦しい…19.7% ・やや苦しい…31.9% (合計51.7%) 
【2021年調査】 ・大変苦しい…21.3% ・やや苦しい…29.1% (合計50.4%) 

この2年間で年金だけで生活できる世帯は半減したとはいえ、生活が苦しいと感じている高齢者世帯は以前から半数以上が感じていたことがわかります。

物価高が家計を直撃している今年は、これとはまた違った結果が出てくることが予想されます。

もはや年金だけで生活するのは難しい1/3


65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支(2021年) 総務省「家計調査報告」

総務省「家計調査報告」から高齢夫婦の家計を見てみましょう。

2021年のデータによると、実収入から非消費支出(税・社会保険料等)を差し引いた可処分所得20万5911円に対して、消費支出(生活費)は22万4436円で、毎月1万8525円のマイナスです。 

  また、65歳以上の単身無職世帯の家計をみると、可処分所得約12万3074円に対して、消費支出は13万2476円で、9402円のマイナスです。

   夫婦高齢者無職世帯の生活費の内訳を見てみましょう。

 食費が29.3%ともっとも多く、支出全体の4分の1以上を占めています。

ちなみに、食料費は外食を含みます。

保険医療費や教養娯楽費、交際費を含むその他の商品支出は勤労世帯よりも割合が高くなっています。

「食料費」と「その他の消費支出」で支出全体のほぼ半分を占めています。

 以前、「老後2000万円問題」が話題になりました。

老後資金が2000万円足りないというのは、総務省統計局の「家計調査報告」から導き出された数字です。

高齢夫婦無職世帯の家計収支の2017年でのデータによると、

収入は20万9198円、可処分所得は18万958円、消費支出は23万5477円です。

毎月の不足分は5万4519円。この不足部分を30年間埋めるために必要なお金が約2000万円なのです(毎月の不足分5万4519円×12カ月×30年=1962万6840円)。

 この数字が、老後2000万円不足するという根拠になっています。

ただし、この2000万円は「家計調査報告」の平均数字です。

また持ち家の夫婦のデータなので、賃貸の夫婦には当てはまりません。 

  さらにコロナ禍の2020年の「家計調査報告」のデータによると、収入は25万5660円で、可処分所得は22万5501円、消費支出は22万4390円です。

毎月の不足分は…、いえ1111円の黒字です。

年間1万3332円貯蓄できるまで、家計が改善されました。

 「老後2000万円問題」が話題になると、年を追うごとに家計の収支改善が進んできたのは事実です。 

ただ、この2020年の数字には明らかに特殊事情があると考えるべきです。

2020年は新型コロナウイルス感染症による影響で、消費支出が減る一方で、特別定額給付金による収入が増えたことが黒字転換の要因と考えるべきでしょう。

 実際に2021年は再び高齢者世帯の家計は赤字に転落して、1万8525円の不足が生じています。

これを30年分を計算すると、666万9000円の老後資金が必要になります。

2000万円の赤字より改善はしていますが、老後資金なしには生活できない実態が明らかになっています。 GGO編集部
GGO編集部


最終更新:2022/12/1(木) 14:31



韓国の若者はなぜ就職難なのか?

2023-02-15 16:14:03 | 日記
韓国の若者はなぜ就職難なのか?

コラムでも度々お話ししてきた韓国の若者就職事情。

今回は長年韓国に住んで日韓の友好を見守ってこられた、元電通KOREAの田中さんに韓国の就職難から民族性に至るまで、いろいろなお話を伺いました!

インタビュアー(以下I):本日はよろしくお願いいたします!
田中さん(以下T):お願いいたします。

目次
  1. 大手志向の就職
  2. スペック重視の採用基準
  3. やはり少ない採用枠
  4. 実際の失業率はもっと高い
  5. 「ケンチャナヨ」の民族性
大手志向の就職

I:早速ですが、ズバリ「韓国の若者はなぜ就職難なのか」について、今も韓国に住んで様々な活動をされている田中さんの視点から教えていただけますか?

T:とても簡単なんですよ。コロナの影響でここ最近の詳しいデータがないのですが、2019年の数字でいくと、大卒者が約30万人いる中で皆が憧れる安定した就職先、つまり大手中堅企業、公務員、公企業の受け皿が9.7万席しかないんです。

残り約20万人は溢れてしまうわけです。

大企業の就職率は14%、たった14%です。これ、日本で言えば32%くらいです。

そういう実態が就職難の一つの要因でもあります。

I:中小零細企業など就職先がないわけではないと思うのですが、やはり大卒者は大手や安定した企業を目指すのですね。

T:それは圧倒的な差があるからね。韓国は売上高の90%以上を大中企業が担っており、給料もそれに比例していて、中小だと大手企業の給料の半分になってしまうデータも出ています。

小さい頃から競争社会で生き抜いてきて大学に入ってるので、就職先に妥協できないのが現実ですね。

スペック重視の採用基準

I:卒業してから1年ほどかけて就職先を探す、という話も聞きました。

T:韓国の大学生は日本のように4年で卒業するってのはまずありません。

韓国の雇用労働部の統計だと、大学在学年数は男性が平均7年、女性も平均5年です。

男性は兵役もあるしね。卒業後の1年間は就職準備期間と見ていて、アメリカに留学したりTOEICなどの点数を上げる勉強をしたり、そのあたりは卒業後すぐ就職しなければ、という雰囲気の日本と違ってフランクだと思います。

私も韓国で合弁会社をやっていて採用面接とかするんだけど、男性は新入社員でも30歳前後で女性も27歳くらいだね。

I:KORECでも登録している韓国人材は皆スペックが高いです!

T:韓国の採用はスペック重視なので、高スペックでないと書類審査の段階で落ちて土俵にすら上がれないからね。

私は電通のクリエイティブ部門だっただけど、そこでも最初は総務が書類で学校優等生を選別するので全然いい子が上がってこなくて。

クリエイティブの能力は学校とは関係ないからむしろ思春期にグレてるくらいでないとダメなんだよって(笑)。

銀行などはそれでもいいかもしれないですけどね。

あと女性を面接していると、履歴書の写真と全く違う顔の人と面接したことがあって。

韓国では美醜もかなり採用に影響するので、就職のために整形するってことがよくあるみたいだね。

I:いい就職のために整形まで・・!就職の過酷さが伝わります。
やはり少ない採用枠

T:韓国には海外の企業も多く進出しており、もちろんそこの採用もあるにはあるんです。日本だとソウルジャパンクラブというのがあって、380社くらいの日本企業が加盟しています。

日本だけで8.2万人程度、ヨーロッパ系は5万人程度、アメリカ系は12万人程度の韓国人がそれらの海外企業で働いています。

なんだ海外企業の雇用枠もあるじゃないか、となるんですが、これが実に新陳代謝が悪い(苦笑)。

誰も辞めないから年に数名しか採用枠が生まれないんです。

韓国企業と比べて福利厚生なども整っているので居心地がいいんでしょうね。

同じく、公務員も離職率が低いです。

韓国の公務員は最初9級(キャリア組は5級)からスタートして上を目指しますが、高位公務員と呼ばれる3級になるまで20年以上かかるのでなかなか辞めない。

I:なるほど。上に行くまでにかなり年月を要するんですね。

T:それに比べて、民間企業の離職率は上がります。韓国の統計機関が出している、財閥企業の平均勤続年数は13、4年。あのサムソンでさえ9.5年です。どうしてそんなに短いと思います?

I:激務で実力主義だからですかね・・??

T:うん。競争が激しんだよね。友達を蹴落としてまでの競争社会で生きていて、出世に敗れるとプライドも許さない。だから辞めてしまう、というのもあると思います。大手での経験があれば良い転職もできるしね。

実際の失業率はもっと高い

T:2019年の中央日報の記事のデータで、働く能力があるのに就職する意思がない、就職放棄者が初めて200万人を超え、過去最高とありました。

つまり卒業後に就職せず、準備期間として過ごす人たちは就職放棄者に分類され、失業者にカウントされないんです。2021年現在、韓国の失業率は4%未満ですが、実際このような卒業生をカウントすればもっと高い数値になるはずです。

I:数字だけ見てると分からないですね。

T:韓国は結構数値いい加減です。大統領支持率も5%は下駄履かせていると知り合いの大学教授が言ってました(笑)。

ちなみに、韓国の自営業は全体の25%を占めています。アメリカで6%なので、いかに多いかが分かりますね。

街にあるチキン屋さんなんかは約8.7万店あると聞いてます。日本のコンビニが5.7万店程度なので、日本とは違う構造がありますよね。
「ケンチャナヨ」の民族性


T:私は日韓文化交流祭りに携わっているんですが、韓国は競争社会に慣れてしまっているせいか、文化に関しても優劣で判断してしまう傾向があります。

そこは良くないなと感じますね。韓国人の中には、自国のこうした傾向に嫌気がさして、海外に出てしまう人も多いです。

中国やアメリカに各250万人くらい、日本にも81万人ほど人材が流れていると聞きます。

良くも悪くも、「ケンチャナヨ」(=大丈夫)の精神でおおらかなんですよね。

韓国は詐欺事件が日本の165倍起きている国なんですが、処罰が軽いですし、銀行なんかも賄賂がすごいです(苦笑)。

I:政府がそもそも裏金とかのイメージです・・。
T:偉くなると腐ってくるんだよね(苦笑)。ですが、韓国人はI Qの高い民族だと思います。

電通韓国の駐在員として赴任した1997年から20年以上韓国で過ごしていて、韓国人と日本人は同じモンゴロイドの民族として、似た情緒を持っていると感じます。

I:最後に、日韓交流に関して一言いただければ!

T:韓国の要人とお話しする機会もあるのですが、日本に企業の皆様に韓国の若者をお願いします、というのが韓国の本音だと思います。

実際、韓国のI Tは日本よりずっと進んでおり、I T人材も優秀です。

また、ソウルにある名門大学だけでなく、地方大学や専門学校も学生も優秀で、そのような人材と日本の企業のマッチングにも取り組んでいきたいと考えています。

こういった交流を積み重ねて、日韓の友好に繋げていければいいですね。

I:本日はありがとうございました!



<田中将志さんプロフィール>

神奈川県小田原市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、株式会社電通に入社。1997年から日韓合弁会社フェニックスコミュニケーションズの制作本部長としてソウルに赴任し、韓国電通代表理事社長などを務める。電通退社後は、株式会社ドリームボーイ社を設立し、「日韓交流おまつり」のイベント運営を中心に、様々な日韓イベント開催に携わっている。

日本語検定試験(JLCT)韓国代表、日中韓女性経済会議アドバイザー。