2021年11月29日
- 韓国経済ニュース時評日本経済ニュース時評
韓国は、11月1日から「ウィズコロナ」で、規制緩和に踏み切った。だが、直後から堰を切ったように感染者が激増している。重症患者は激増し病床は、レッドラインである「稼働率75%」をはるかに上まわっている。本来ならば、「ウィズコロナ」の手直しをすべきところ、未だに傍観している。政治的思惑の結果であろう。
「ウィズコロナ」に入って、一ヶ月も経たない時点で、規制強化したのでは政府への批判を浴び、ひいては大統領選挙で与党候補が不利になるという思惑が働いているにちがいない。文政権は、これまでも世論動向を見ながら「政策決定」してきたのである。
『中央日報』(11月29日付)は、「オミクロン株まで出現したが、韓国政府は右往左往」と題する社説を掲載した。
(1)「韓国における新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)関連のほぼすべての主要指標に連日赤信号が灯っている。28日は一日の死亡者(56人)と重篤患者(647人)が過去最多を記録した。首都圏重症患者専門担当病床稼動率が85%を超えて、3日連続で1000人以上の患者が病床の割り当てを今か今かと待つ状態が続いている。28日の一日新規感染者は3928人だったが、これは検査件数の少ない日曜日発表基準でも最多だった」
政府は、重症患者のベッド稼働率75%が危険ラインと決めた。現実にはすでに85%を超えている。こういう事態を迎えながら、「ウィズコロナ」の手直しができないとは異常である。何をためらっているのか。政府のメンツしか考えられない。自営業を圧迫することを懸念しているというが、それは表向きの話であろう。政府批判の高まりが怖いのだ。「反日不買」を即時に決めた、あの機動性はどこへ消えたのか。
(2)「弱り目にたたり目で、デルタ株より感染力が少なくとも倍以上あると言われているオミクロン株も報告され、地球村が再びコロナ再拡大の恐怖に包まれている。11月11日、アフリカ南部ボツワナで初めて見つかったオミクロン株は25日にアジアでは香港で感染者が報告された。韓国ももはや安全地帯ではないようだ。昨年12月、インドでデルタ株が出てきてから感染が急速に拡大した痛恨の経験を考慮すると、防疫当局が速やかに動かなければならないときだ」
感染力は、デルタ株の2倍とされるオミクロン株が出現した。今の状況に加えて、新たな危険因子の登場である。韓国政府が、早急に対策を打たなければならない事態だ。
(3)「だが、急激に変化している国内外のコロナ状況とは違い、韓国政府の対応速度はイライラが爆発しそうなほど遅い。南アフリカなどアフリカ8カ国を出発した外国人は昨日0時から入国禁止となったが、旅行者が感染した香港はここから除外された。必要なら入国禁止を先制的に拡大しなければならない。25日に韓国の防疫政策諮問機構である日常回復委員会が開催され、その翌日には中央災難(災害)安全対策本部が対策を発表する予定だったが突然29日に延期した。状況判断を正確にできていないのか、決定を下すことができずに右往左往している様子だった」
25日に開催されるはずの防疫対策会議が29日へ延期された。この4日間の差が、大きな被害を生んでいることに気付かずにいるのだ。状況判断が正確にできない結果とすれば、余りにも無責任である。防疫対策は、ルール通りに行なうのが鉄則のはず。政治的な思惑が介入してはならない。PCRの全数調査も、大統領府が介入した結果である。
(4)「オミクロン株の登場で、コロナ克服のためには全国民主労働組合総連盟(民主労総)をはじめとする各団体の大規模集会が集中した先週末が絶好の転換点だったかもしれないが、そのまま放置した。状況の緊迫感を国民に効果的に伝達できたのにタイミングを逃したという指摘もある」
韓国政府の最大支援者は労組である。その労組の大規模集会を規制すれば反発を受ける。だから、規制しなかった。文政権はこのように、支持率向上目的で世論の動きに敏感である。風見鶏である。
(5)「専門家は、日常回復委員会が12~18歳の青少年にも防疫パス(接種完了・陰性確認制)を導入し、カフェや食堂にも防疫パスを適用し、私的な集まりの人員制限を強化しようという意見を提示したと伝えた。だが、日常回復をしばらく保留する首都圏非常計画発動についてはその日議論さえしなかったという。今月1日から段階的日常回復(ウィズコロナ)第1段階に入ったが、1カ月もせずに防疫を強化する場合、自営業者からの反発が懸念されるため、政府が顔色伺いをしながらためらっているという指摘もある」
「ウィズコロナ」で規制を緩め過ぎた結果が、今日の事態を招いたのである。これも、政治的な思惑先行がもたらした。自営業者の顔色を伺っているとすれば、これも大統領選への影響を懸念しているにちがいない。文政権は、すべて大統領選への影響で対策を決めている。
(6)「韓国とワクチン接種率がほぼ同じだが一日感染者が3万人から100人前後に急減した日本の最近の流れに注目しなければならない。「水ワクチン」と呼ばれたアストラゼネカ・ヤンセンワクチンを初期に集中的に接種していた韓国とは違い、抗体価が高いファイザー・モデルナのワクチンだけを接種した日本のワクチン戦略のほうが正しかったという評価が出ている。今からでもワクチン効果をしっかりと分析して追加接種(ブースターショット)戦略を急いでこそ、ブレイクスルー感染(突破感染)を減らせる」
日本は、ファイザーとモデルナのワクチンだけを接種した。国内で委託生産していたアストラゼネカを接種せず、全量を海外へ寄贈したのは賢明であった。副作用問題が絡んでいたからだ。ただ、それだけでない。日本は、韓国よりも「人流」面ではるかに慎重であった。無闇に外出しなかったことが、日韓で大きな差を生んだ理由であろう。
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失血死する中国経済~中国経済「死に至る病」(中)|石平
インフラ投資の場合、たとえば中国版新幹線の高速鉄道建設はその典型例の一つである。中国で高速鉄道の建設が始まったのは2005年のことであるが、2020年末で営業距離は世界一の3万8000キロに達し、わずか15年で日本の新幹線の10倍以上の鉄道網を作り上げた。
短期間においてそれほどの鉄道を作れば、当然のことながら鉄鋼やセメントなどに対する巨大な需要が生まれ、建設現場では大量の雇用を創出した。それらは国内総生産(GDP)に計上されて、中国の経済成長に大きく貢献したはずである。
問題は、これほどの大規模投資がどのようにして実現できたのかだが、そのやり方は簡単だ。高速鉄道の建設は政府主導のプロジェクトだから、建設資金は国有銀行からいくらでも借金できる。お金をいくらでも借りられるのであれば、高速鉄道はいくらでも作れるわけである。
しかしその結果、高速鉄道を建設し経営する主体の中国国家鉄路集団は、いまや借金まみれに陥っている。2020年になると、その負債総額は5兆5700億元(約93兆円)にも達している。さらに高速鉄道は運営が開始当初から全体的にずっと赤字なので、巨額な負債を永遠に返済できない見通しである。
インフラ投資頼りの中国経済の成長と繁栄は結局、巨額な借金のうえに成り立っていることがこれでよく分かる。しかし、巨額負債のツケは必ずや回ってくる。負債に押しつぶされデフォルト(債務不履行)し、倒産する企業もたくさん出てくる。
実際、2020年の一年間に全国で発生した有名上場企業の倒産再建案件は15件にも達している。さらに、企業が社債を発行して債務不履行となった案件は150件、その金額は1697億元(約2兆7171億円)に上り、19年の1495億元を上回り過去最高額となった。
中国企業は今後、長期間にわたる「デフォルト倒産大量発生」の時代を迎えるであろう。
中国政府の発表する数字を疑う声は昔から国内外にある。
あるいは2018年、政府公表の成長率が6・6%であったのに対し、中国人民大学の向松祚教授は「実態はせいぜい1%程度の成長」と公言したこともある。
そうなると、中国政府公表の「2020年成長率2・3%」も差し引いて見たほうがよいと思うが、
では、経済のどこが伸びているのか。その実態を示すもう一つの数字がある。
中国における消費の低迷は、何も2020年だけのことではなく、数十年間、中国経済を悩ませてきた大問題の一つである。
経済学に「個人消費」というのがあり、一国の経済のなかで占める国民一人ひとりの消費する割合を示す数字である。
さらに消費の足を引っ張る一番大きな原因は、深刻な貧富の格差である。
中国国内でもたびたび引用される数字の一つに、総人口のわずか5%の富裕層で民間の富の70%が占められているということがある。
つまり、中国経済はまさに他力本願の対外依存型経済だと言える。
輸出と並んで中国経済を支えるもう一つの大きな分野は、投資部門すなわちインフラ投資と前述の不動産投資である。