2016年の私的映画10選など。例により未見の方には分かりづらい駄文&一部ネタバレありなのは御勘弁。
『シン・ゴジラ』
禍々しくも神々しい究極生物に見慣れた界隈が蹂躙される楽しさ。鑑賞後に思わずロケ地巡りなんぞしてしまった。そういや最近ビオランテ見直してておもったんだけど、抗核バクテリアとか宇宙大戦争のテーマとか本作に影響あるっぽい……?(界隈専門外につき誰かおせーて)
ともかく、最後のヤシオリ作戦は予算殆どここに集約したんじゃねえかというハイテンションで万年8歳児のワクワクがとまらない仕立てが最高。全編矢継ぎ早に長台詞の応酬を繰り広げたり、官民共同作戦で扇町の昭和電工の配管を舐めるように撮影したり、細部にわたって庵野様々といったところ。本作の「現実対虚構」というコピーは秀逸であり、ありふれた見方ではあるがやはり3.11以降のこの手の作品に一つの方向性を示したかとおもう。登場人物は一癖も二癖もあり、とりわけ個人的にお気に入りなのは巨災対の塚本晋也と臨時総理の平泉成の二人のオジサマ。
まあ、正直なところ“蒲田くん”をはじめとするCGの安っぽさは如何なものかとおもうし、ルー・石原・パタースンの劇的マズさはあるものの、それを補って余りある物語があった。未だにふと口ずさんでしまう宇宙大戦争のテーマと共に苦難は乗り越えられる。
『シング・ストリート』
1985年の不況にあえぐダブリンで鬱屈した日常を過ごしていた10代の若人が「バンドやってモテようぜ!」から始まる青春ムービー。80s好きとしてはたまらない設定&音楽たち。若さゆえの前向きな勢いにこちらの心情も突き動かされ凄く暖かい気持ちになる。すっかりバンド“シング・ストリート”のファンになってしまった私は鑑賞後、即効サントラを購入した。バンド初のオリジナル曲The Riddle Of The Modelは楽曲は勿論、PVも80sのツボを押さえていて最高。そうそう、サントラといえば、歌だけじゃなくて劇中に流れる細かいピアノアレンジ曲を入れてくれなかったのはちと残念だった。
この作品、ストーリー、音楽共に大変素晴らしいのだが、個人的に一番グッときたのは主人公の兄貴でして。弟にレコードコレクションを聴かせて的確なアドバイスをしつつ、最後には自分が果たせなかった夢に向かう弟の背中を押す姿が素敵すぎて涙がタチアナドバドバ状態。本作2回目の鑑賞時は伏線からお目目しとしとになってしまった。私もあんな出来た兄貴が欲しかった。はあ~バンドやりてえなあ(白目)。
『エンド・オブ・キングダム』
USAにおイタはダメだと何度言えば。新たな無双ヒーロー、マイク・バニングによる対テロ戦の容赦無さは前作以上で、もはや笑えて来る。殺るときは殺る精神、素晴らしいですね。個人的に大好物の長回し(実際は4カットくらい繋いでるとか)によるバニングとSASによる連携戦の完成度がめちゃくちゃ高い。この監督、アクションは初とのことだが良くぞここまでこなした。
なお、本作はロンドンで我が国含む各国の首脳が次々とテロの犠牲になるのだが、イタリアは女好きドイツはメルケル風など、現実を思わせてちょっぴり可笑しい。フィクションとはいえ、これは賛否出そうだから良くぞ思い切ったものである。そんな中で、肝心のUSA大統領は足手まといになること無く、今回はバニングと共に善戦。愛すべきバディームービーの出来上がりだ。次回作はお空が舞台との噂があるが、それって昔ハリソン・フォードがめっちゃ強い大統領の映画があったような……。
『この世界の片隅に』
方々で散々語られていることではあるが、日常描写の繊細さが物凄くて一気に作品に引き込まれる。重苦しく悲壮感に満ちた戦争映画とは一線を画し、ただひたすらに懸命にその時代を生きる人々がいた。さまざまな調査や取材に裏付けられた背景や、コマ数を一般的なアニメより大幅UPして描かれる人物のたおやかな所作、砲弾の破片の降り注ぐ音響の迫力などなど、隅々に制作者の執念を感じる。劇中時間の経過と共にどんどん貧しくなる食料事情の一端を見るにつけ、水木しげる先生の“戦争は腹が減るから良くない”との御言葉を思い出す。世の中の正気が失われていく中で、水原さんが“すずさんだけは普通で、まともでいてくれ”と投げかける言葉の重さは今の時代へも通づるメッセージにも思えてきて胸に深く突き刺さる。
あとは能年ちゃんのすずさんのハマりっぷりはお見事。そんで真面目な話しておいて恐縮だが、丁寧な作画も手伝ってか、すずさんに何処と無くエロスを感じてしまういけないぽっくんなのであった…新なの傘を一本…ウッ……。
『ドント・ブリーズ』
所は不況のデトロイト。窃盗で稼いだ金で新天地を夢見る若人3人が最後のターゲットに選んだのは何と無敵の盲目殺人マシーン爺が住む家だったという、相手をナメて悪事を働くと痛い目に遭う系の寓話作品。約90分弱の間、タイトル同様に観客側も思わず息を殺してしまう。横でボリボリ菓子食ってた兄ちゃんの手が完全に止まっていたからね。盲目爺は勿論、爺の飼い犬がこれまた絶妙なタイミングで脅かしてくれるし、両者ともしつこいのなんの。個人的にツボだったのはピペットに入れた精液片手に迫る爺が返り討ちに遭って、自分に“口内射精”されるところで、緊張の糸が切れ思わず噴出してしまった。ちなみに盲目爺を演じたスティーヴン・ラングは御歳64にしてムッキムキ。後で気づいたけどアバターでマグカップ片手に突撃する最高にかっちょいい大佐やってた人だったのね。
『コップ・カー』
家出した悪ガキ2人が盗んだパトカーはケビン・ベーコン演じる悪徳警官が所有するものだったという、こちらも寓話的な一本。
個人的にお気に入りなのは悪ガキに車盗られてテンパってるベーコンが、車盗もうと靴紐たらしてドアロックに引っ掛けようとするも上手くいかなくてイラついてるシーン。あとはパトカーのトランクから出てきたオッサンのどことなく漂うマヌケっぷりも好きだ。登場人物は少なめで話も極めてシンプルなんだけど、こんな映画が昔の日曜洋画で掛かってたら最高だなとおもえてくる。90分弱で手堅くまとまりサクッと観られるのもポイント。
『ロスト・バケーション』
こちらを鑑賞したのは8月。夏だ、水着だ、サメ映画だということで季節にぴったりの作品だった。サメのいる海に取り残された医大生おねえさんのサバイバルストーリー。医学知識も無く、カナヅチのあたいにゃあとてもかようなシチュエーションはこなせないので気安く海に行くべきでないと肝に銘じる。
孤立無援のおねえさんを支えるのは、一羽のケガをしたカモメの“セガール”(おねえさん命名、カモメsea gullと我らが無敵のSeagalをかけてるっぽい)というクスリと笑える小ネタ入り。シチュエーションものなので、観客がダレないようスッキリしたテンポでまとめられており、こちらも90分未満で観られる佳作。
『永い言い訳』
こちらは縁あってエキストラに参加させていただいた作品。このようなことが無ければ決して観ていなかっただろうなという、有難い出会いの一本。
自己愛にまみれたクズ人格の作家先生が不倫の真っ最中に正妻が事故死するも涙一つ流せないところから端を発する物語。遺族とその子供らとの触れ合いで、それまで蔑ろにしていた人との結びつきに気付きを得る。“人生とは他者だ”との一言にそれは集約されているとおもう。子役の2人が上手いに尽きる。あとは自己愛まみれのモックンが他人事とはおもえず個人的に苦しくなってしまった。私もあの手合いに似た精神性を持っているとおもわれるので、やはり婚姻など成すべきでないないのだろう……。
どうでもいいけど、現場で西川監督を間近で見て大変好みのタイプであることを確認いたしました。
『ズートピア』
副題は「ケモナーへの目覚め」でいかがでしょう?
最近のこの手の作品ではもうお馴染みとなっている多様性の共存をテーマ置きつつ、難しいことは考えずとも楽しめるウサギのジュディ&キツネのニックによるバディーアクションムービーである。メリケンの電子アニメは完全にヒットの法則というか物語の作り方をキチンと体系化していて偉いなと。ジュディが警察学校で訓練するところや暴走電車のシーケンスなど、“こういう時はこうだよね”ということを教科書的にちゃんとやってくれる安心感。
そんなこと言いながら、冒頭の一言がすべて台無しにしているわけだが、それでもこれを観たら目覚めざるを得ないだろうよ。ウサギが子作り盛んなところをしれっと描いている辺りなんかいよいよ意味深でもう……。
『ジャック・リーチャーNEVER GO BACK』
前作の孤高の“アウトロー”感は薄れ、今回は強いおねえさんと悪ガキの3人で巨悪の陰謀に立ち向かうという内容。前作の雰囲気を期待していると若干肩透かしだけど、先日読んだキリング・フロアーのリーチャー像に近いような気はする。
リーチャーと行動を共にするおねえさんと悪ガキはあまり足手まといになることもなく、爽快感あるアクションサスペンスになっている。前作はどこか懐かしい70年代映画の雰囲気であったが、本作は80~90年代の雰囲気にアップデートされていた。
M:Iシリーズに加え、こちらもおトムの代表シリーズとして今後も続けていってほしい。
さて、オマケとして、例によって主演女優&男優賞およびその他諸々発表いたします。
10選から漏れてしまった作品からもいきまっせ!
まずは、主演女優賞はズートピアより、手塚先生のジャングル大帝以来、新たな性の目覚めを覚えさせてくれたジュディ。主演男優賞はディカプリオてめぇに賞をくれてやるわけにはいかん!との気概に溢れ最高の闘いを見せてくれたレヴェナントの森の熊さん。いや、待てよ、あれメス熊だったか!?まあいいや!!
そして今回番外編として、DVDスルー大賞はメリッサ・マッカーシーがキレッキレでコメディ路線のステイサムが印象的だった『スパイ』に決定。ベストオブ殺しのテクニック賞はメカニック:ワールドミッション(頭の悪い邦題!)の透明プール底抜き地獄。羽交い絞めで殺されたい大賞はデッドプールのジーナ・カラーノ姉貴。最後に、ババア結婚してくれ大賞は西川美和監督に決まりです。
皆さん、おめでとうございます!
酷い!
てなわけで、今年の私的10選は以上。来年は早々にSPL2やスコセッシの沈黙など控えていてこれまた楽しみ。
それでは、今年も残るところあと僅か。普通に、良いお年を。
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