鍼灸有効性の評価に薬物などを評価する二重盲検法を利用することは可能なのでしょうか。
そもそも二重盲検法とは心の働きを極力排除しようとする試験方法です。その思想は唯物論哲学に基づいています。これは心を持たないようにみえる薬のような物質を評価するには適しています。しかし鍼灸の有効性を評価する場合は、金属で出来た鍼と、蓬からできた艾という物質を評価するわけではありません。
何を評価するかというと、心をもった人が心をもった人に鍼と灸を介して関係をもつ、その行為を評価するわけです。
プラセボ効果は心理的に発生することがありますし、そうでない場合も考えられます。プラセボ効果を起こしたものが何であるか見つけようとするときには、そこに意識の指向性が働きます。各人の注目するものによってプラセボはプラセボではなくなります。
伝統医学というものは「五臓と心」の関係ように物質と心というものを切っても切り離せないものとして捉えています。身体を鍼灸で治療しようとすることは同時に心にも働きかけているのです。
そしてここに矛盾が生じます。心が関係するものから心を排除する評価法は適当ではありません。
それはカウンセラーとクライアントが関係する心理カウンセリングを二重盲検法で評価することが不可能なようなものです。また外科手術の評価が治療成績というもので表されるように、鍼灸有効性の評価は二重盲検法とは別の手段が必要なようです。
(ムガク)