スティーブン・シェラー氏の講演ビデオ40分ごろから
ケーススタディとして、イーライリリー社のジプレキサの訴訟について解説しています。
抄訳
イーライリリー社は、糖尿病薬や抗生物質などを製造する堅実な会社であった。
1990年頃、抗精神病薬プロザック(日本未承認)を発売、この薬が年間1000億円を超えるブロックバスターとなったため、多くの社員を抱えるようになった。
2000年頃、プロザックの特許期限が迫り、大きくなったビジネスを支え続けるためプロザックに代わる薬が必要となった。
当時、シェラー氏は、義母が住むフロリダでブッシュ対ゴア選挙の投票の数え直し事件があったため、フロリダを訪問していた。そこで、義母の友人の孫が、緩効性プロザックを郵便で受け取ったという話を聞き、これが違法ではないかと考え、プロザックについて調査を始めた。
イーライリリー社では、会社の拡大で雇われた新たな販売員がチアリーダーのようにクリニックの医師を訪問し、従来の薬剤師の免許を持つ販売員は隅に追いやられるようになっていた。
特許が切れるプロザックに代わる薬を販売するために、統合失調症の急性期に使用されていた強力な抗精神病薬ジプレキサを、プロザックのように頻繁に処方できないかを、フロント企業に依頼した。
フロント企業は、ハーバード大学のビーダマンBiederman教授に依頼し、小児の双極性障害という新しい病態を作り出し、その論文をフロント企業が関係するジャーナルに発表し、治験を行った。
ジプレキサは重い副作用があり、その一つが体重増加であったが、会社は体重増加で糖尿病が増えれば、糖尿病薬の販売も伸びると期待していた。
この社風の中で、薬剤師の販売員たちは内部告発することになった。
社員の1人は、イーライリリー社を退社した後、アストラゼネカ社に就職したが、アストラゼネカでもセロクエルを巡って同様のことが起こっていた。
資料
Biederman教授の2001年の論文
Biederman教授の2005年の論文
ジョンソン・エンド・ジョンソンのリスパダールとの比較
就学前の児童の双極性障害の治療
ジョンソン・エンド・ジョンソンのリスパダールの副作用 男児における女性化乳房
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ガーダシルが承認されたのは、製薬業界で上記のようなことが起こっていた頃でした。