第44作『寅次郎の告白』のエンディングの場面は、岐阜県恵那郡蛭川(ひるかわ)村(現在は中津川市)で撮影されました。
蛭川に安弘見(あびろみ)神社があって、毎年春に杵振り花馬祭りが催されます。その祭りを秋にやってもらい、寅さんがそこで健康サンダルを売るという設定で撮影が行われました。
●酒蔵と前の通り (2021/4/7)
映画の中で、凧があがっていたのは、この酒蔵のところです。蛭川にある小さな造り酒屋の大橋酒造です。
ここのお酒のブランド名は一つ、笠置鶴です。呑み助のへの次郎としては、ここを素通りするわけにはいきません。で、笠置鶴を買うために店内にはいったら、今では珍しい、たたきの土間でした。
映画では、きれいに着飾った娘さんや、はっぴを羽織ったおじさんたちが、酒蔵の前の通りを向こうに歩いて行きました。
●安弘見(あびろみ)神社 (2021/4/7)
娘さんたちが向かっていたのは、この安弘見神社です。石造りの鳥居をはいった奥に、朱に塗られた鳥居と石灯籠があります。寅さんとポンシュウは、その石灯籠のあたりで商売をしました。
●朱塗りの鳥居 (2021/4/7)
映画では、やがて花馬が朱塗りの鳥居の手前に現れます。人々が争って馬の背中から花飾りを奪うなか、馬が勢いよく石段を駆け上り、無事、花馬奉納は終わりました。
●寅さんが店を出した石灯籠付近 (2021/4/7)
花馬奉納が終わったあと、花飾りを手にした人々が寅さんの店の前を帰っていきました。そこに、人ごみの中から、知り合いの青年サブが現れます。聞くと、サブは就職し、結婚をするといいます。うれしくなった寅さんは、サブを相手に自慢の啖呵売(たんかばい)を披露します。
「さぁ!四谷赤阪麹町、ちゃらちゃら流れるお茶の水、いきなねえちゃん ~」。
威勢のいい声とともに、音楽のボリュームがあがります。レンズがぐっと引かれ、神社の遠景が映し出されて映画は終わりました。
中津川市の寅さんロケ地を回ってきました。
第44作『寅次郎の告白』が公開されたのは、1991年の暮れのことです。もう、30年になります。貸ボート屋がなくなっていたり、奥恵那峡下りの船乗り場付近が一変していたり、時間の経過を感じさせるところもありました。でも、多くのロケ現場は、当時の面影を残しており、懐かしさがじわっとこみ上げてきました。
今年の安弘見神社の花馬奉納は、4月18日でした。寅さんが見た花馬を、この目で確かめられると楽しみにしていたら、今年も中止になり、落胆しました。早くコロナがおさまって、花馬祭りを見たいものです。