横浜市都筑区耳鼻咽喉科

南山田(センター北と北山田の間)の耳鼻咽喉科院長のブログ。

鼻副鼻腔炎の病態と治療7 好酸球性副鼻腔炎

2011-07-12 22:17:42 | 院長ブログ

慢性副鼻腔炎は、1990年代から、薬物療法としてはマクロライド療法が、手術としては内視鏡下鼻内手術が普及して、従来に比べて”治る”病気になりました。

ところが、そうなってみると、マクロライド療法が無効で、内視鏡手術を行っても早期に再発してしまうグループがあることが分かってきました。つい最近まで、”いわゆる難治性副鼻腔炎”などと呼ばれていましたが、現在ではその大部分が共通した病態を持っていることが分かっています。このグループは”好酸球性副鼻腔炎”と名付けられています。

好酸球とは白血球の一種で、アレルギー性の病気や寄生虫の感染に関係します。好酸球副鼻腔炎には、次のような特徴があります。

1. 気道や副鼻腔粘膜組織に著明な好酸球の浸潤が見られ、血中の好酸球値も高い。

2. 成人で発症する。

3. 鼻アレルギー(1型アレルギー)の関与は少ないとされる。

4. 非アトピー性喘息、アスピリン喘息を合併することが多い。

5. 多発性の鼻茸(鼻ポリープ)を合併することが多い。

6. マクロライド療法が効果を示さず、内視鏡下鼻内手術の術後経過も悪い場合が多い。

 

好酸球性副鼻腔炎の粘膜組織です。上は、EG2と言って好酸球に特異的なECPというものを、免疫染色したものです。茶色に染まっているのが、好酸球です。下はAB-PASという、粘液を染める方法ですが、粘液を産生すつ杯細胞が著明に増え、副鼻腔の内腔も、粘液で埋まっているのが分かります。

この病気には、ステロイドの全身投与以外に、明らかに有効な薬はありません。ステロイドと内視鏡手術をうまく組み合わせていくことになりますが、まだ確立された治療指針はできていません。

慈恵医大の鼻副鼻腔研究班は、最も早くからこの病気に注目してきました。鼻副鼻腔研究班は、森山教授のご指導のもと、私と、現聖路加国際病院耳鼻科部長の柳先生と、現慈恵医大耳鼻科准教授の鴻先生の3人でスタートし、その後、ミネソタへから帰国した現獨協医大耳鼻科教授の春名先生や、他の優秀な若い先生たちも加わりました。現在も慈恵医大では後輩の先生たちが、この病気に取り組んでくれています。

 

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