私が若い頃、もう30年近く前になりますが、大学から派遣されて聖路加国際病院に勤務していたことがあります。このとき一緒に働いた先輩が、常に新しい海外の文献を読む人で、当時日本ではほとんど知られていなかった睡眠時無呼吸症候群の文献を読んで、その検査と治療(UPPPという咽頭を広げる手術)を始めることになりました。
その先生の指示で、患者さんに終夜ポリグラフという検査を行うのが、後輩の私の仕事となりました。当時はこれがけっこう大変でした。患者さんに入院していただき、体中に電極やらコードを何十個もつけて、一晩中脳波、呼吸、胸と腹部の動きなどを、記録するのですが、検査中何か問題が起きないか、徹夜で見ていなければなりません。データは紙に波形として記録されていき、一晩中ですから、記録紙はダンボール一箱分になります。それを後日、解析していかなければなりません。毎日一生懸命見ても、全部見終わるのに何日もかかります。
現在では、ご自宅で小さな器械をつけて、呼吸と血液の中の酸素の濃度を一晩記録する、簡易的な検査があり、当院でも行っています。無呼吸あるいは低呼吸であるか、酸素濃度が低下しているか、無呼吸低呼吸が何回あったか、などを自動的に判断し、解析してくれるソフトもあります。昔に比べれば、簡単にいろいろなことが分かるようになりました。しかし、コンピュータのアルゴリズムには限界があるので、その結果を鵜呑みにせず、一晩の波形を全部見て、手作業で補正することも必要です。昔とった杵柄?で、この作業は私には苦ではありません。
簡易法でほとんど診断がつくことも多いのですが、脳波の記録は行えないので、簡易法で無呼吸が疑われても、正確な診断のためには、一泊入院して検査を行うことが必要になります。私は睡眠科学センターのある、川崎の太田総合病院をご紹介しています。睡眠を専門にする各科の先生がいらっしゃり、耳鼻科の無呼吸専門の先生は大学の後輩です。