いつも軽い話、柔らかい話しか書いていないので、いささか硬い内容になること
をお許しいただきたい。
ある喫茶店で、書棚にあった、70年代半ばから00年代半ばにわたる30年間
の中国の現代法制史を解説する書物を手に取ってみた。一応、これでも法学部卒な
ので、興味があったわけだが、なんと、かなりの部分がわかるのである。
物権変動とか、なんだかそのまんまだし、法制史の本を買ったらおもしろいだろ
うと思ったので、早速書店へ行ってみた。
30年から3000年になって、だいぶん内容は薄まってしまうが、通史を1冊
で書いた本があったので、東洋法制史の復習、随分と間の空いた復習だが、難しく
なさそうなので買うことにした。
喫茶店で見た本の書きぶりが気になってなっていた行政法の分野について、入門
書があったのでこれも買うことにした。30年を振り返る、冒頭の本の中で行政法
は、ドイツ、日本のものを取り入れてきたとあったので、つまりはVerwaltungを行
政と訳した日本の行政法概念を相当取り入れているだろうことは容易に想像がつい
たが、実際に入門編を手に取ると、国家作用の中での行政の議論の次に、行政主体、
行政行為論があって、許可についての1節があって、行政罰。なんとその次には、
驚いたことに行政訴訟についてもページが割かれている。
この国の政治体制、国民の権利義務を考えたときに、そもそも行政訴訟という言葉
すらその存在が想像できない代物だけに、要するに、この国でそんなことをしたら
国家反逆になりかねないのではないかと思ってしまうだけに、これは絶対に読まな
ければと興味が湧いて買うことにしたのである。
さて、これでおしまいと思って、通路へ出ると、お勧めの本が並ぶ棚の中から、
「日本簡史」なる1冊が目に飛び込んできた。
いったい、日本のことはどう書かれているのか、特に気になるあの時代のことは
どう書かれているのか、手に取ってみることにした。
この本は、実に新鮮な驚きを与えてくれた。なんと、読める、ほとんどすべてが
判るのである。
序の部分の日本解説が秀逸で、数値等を用いて正確に紹介する一方で、
「したがって海抜の最高は3700m台の富士山である。」とか確かに8000M
級の国からしたらそうなんだろうなぁという記述や、「漢字文化を有し、外形上は
似ているようにみえるが、日本の文化は中国とは全く異なり、奥深いものがある。」
とまぁ高校生ではわざわざ日本史はやらないだろうから、大学生の教養科目レベル
なんだろうが、冷静に分析しているところが気に入って、これも買うことにした。
本の体裁、厚さは、ちょうど山川の日本史、今の高校生が使う、内容の薄っぺらい
程度なのだが、何せ漢字ばかりなので、内容的には拙者の時代の山川の日本史より
もかなり濃い。実際いま大和朝廷(大和政権と書かれている)まで来たが、渡来人
の記述などは、統一国家である秦の圧政と短期間での崩壊が、周辺民族の移動を促
し、玉突きのように日本への移民も発生したといった趣旨の記述があり、なるほど、
そうだったのか、そうとも受け取れるなぁ、と認識を新たにしたが、このように中国
との関係を意識した記述になっており、そういう意味においてもなかなか興味深い。
しかし、こんだけ、つまり3冊買っても日本円では千数百円なのである。
安い、本は実に安い。
レジに向かうと、今度は山積みに陳列された本の中に、「菊と刀」の中国語版を
発見、一瞥すると、さすがに難しいわとあきらめかけると、中国語版と英語版の
セットが隣にある。気になるお値段は、約400円、2冊ですよ。日本なら洋書部
門で英語の「菊と刀」、ペーパーバックでも千数百円はしませんか?
何度も書きますが、中国では、本が安い。
結局、冊数にして5冊の本を買って、なんだか自分がチョッピリ賢くなったような
錯覚に陥りながら、繁華街、王府井(ワン・フー・チン)を後にしたのであった。