(2015年4月23日の記事に情報を追加しました)
エリック・サティのピアノ曲「ヴェクサシオン」は下の楽譜を840回繰り返し演奏するというもの。
↑ まず、一番下の段のバス・テーマを弾き、次にこのテーマ上に2声部重ねて計3声にしたものを弾く。次に、もう一度テーマだけを弾く。そしてさらに、先の3声の形の最上声を1オクターブ下げたものを弾く。以上をワンセットとして840セット繰り返す。
それを1967年12月31日午前11時15分から1968年1月1日午前2時38分まで、実に15時間23分かけて日本で初演した人たちがいました。(アメリカ文化センター)
それは下記の11人の方々です。
黛敏郎(1929-1997)
笠間春子
ロジャー・レイノルズ(Roger Reynolds, 1934年生まれ)
カレン・レイノルズ(Karen Reynolds)
湯浅譲二(1929年生まれ)
松平頼暁(1931年生まれ)
水野修孝(1934年生まれ)
一柳慧(1933-2022)
和田則彦(1932年生まれ)
高橋冽子(入野義朗夫人)
入野義朗(1921-1980)
(追記:Wikipediaによると16人。石井眞木氏もいらしたようです。ちなみに世界初演は1963年で、J.ケージら数人が交替で弾き続けたということです。)
↑ 840回の演奏をやりとげた後の拍手か?アホなことをマジメにやってしまう人たちってかっこええ!(『音楽の友』1968年3月号より)
もしかしたら何回も繰り返し聴いてこそ初めて良さがわかるのかも?という淡い期待をもって、ステファン・ギンズバーグ(Stephane Ginsburgh)というピアニストの演奏をNMLで通して聴いてみました。
結果、嫌がらせ以外の何物でもありませんでした~
「42の嫌がらせ」 840回の20分の1の42回でも1時間09分
(追記)遂に出た、全曲録音
YouTubeには既に他の奏者による完全演奏の動画があったかと思いますが、これはちゃんとBrilliant Classicsからリリースされています。
オランダのイェルーン・ファン・フェーン(Jeroen van Veen, 1969年生まれ)が2015年11月10~11日に録音。ちなみにピアノはヤマハC7。
ライナーノーツによると、レコーディングに際してピアニストは24時間近くずっと立てないし、眠れないし、トイレにも行けないので事前にバナナ・ナッツ・スープ・塩味の食物による特別なダイエット食を摂って臨んだそうです。(それでも52分間は録音を中断せねばならかった)
それと、ヴェクサシオンの形式は上述のようにA-B-A-Cとなっており、演奏中どっちのAなのか迷わないように、また、今が何度目の繰り返しなのか判らなくなることを防ぐためiPadに楽譜のコピーを840枚入れたということです。
かなり根性入っていますね。心して聴かねば!(聴かないけど)
(ヒマな表)
最も一回当たりの演奏時間が長いのがトラック7で111.0秒、逆に最も短いのがトラック15で95.5秒。トラック15あたりの終盤差し掛かりでは早く終わらせたい感が強まったのかも。
NMLで24時間ノンストップで聴けます。各トラック80分前後で切ってあるってことは18枚組CDで発売されているんでしょうか?