第九合唱団のクラシック好きのおじさんたちに「ブルックナーは好きですか?」って質問してみたら
「若い頃はよく聴いた」って答えがなぜか多かったですね。
ボクなんかはジジィになっても聞き続けると思うんですが。。ガキなんでしょうか?
悩みがゼロになる瞬間をくれる、数少ない音楽だと思うんです。
ブルックナーってどんな人だったのか知りたくて何冊か本を読みましたが
田代櫂 著『アントン・ブルックナー 魂の山嶺』(春秋社)が特に作曲者に対する愛情に溢れていて好きです。いくつかの疑問も解けました。
疑問1 死体マニアでロリコン(?)の変なおじさんがなんでこんな神懸った曲を書けたのか?
→性格は『底深い謙虚さと、誇り高い自尊心の共存』(33ページ)。いろんなベクトルのキャラが同居してんすかね。田舎っぽい方言ときれいな標準語を使い分けていたらしいし。
それと、ブルックナーはオルガンのアドリブの天才でもあったんですね。。イメージとちゃう。
疑問2 ブラームスと仲が悪かったのは何故か?ワーグナー派か否かは別として2人の曲どちらも誠実さでは共通しとるやん!
→ブルックナーは南ドイツ人でカトリック、ブラームスは北ドイツ人でプロテスタントで性格が真逆(248ページ)。
『ブルックナーはブラームスの冷血さを嫌い、ブラームスはブルックナーの抹香臭さを嫌った。
周囲の者たちが二人を仲良くさせようとレストラン「赤いはりねずみ」のテーブルに同席させたが
気まずい雰囲気が流れる中、ブラームスがメニューを手に取って眺め始めた。
「薫製ポークの団子とキャベツ添え、これが私の好物だ」
ブルックナーがすかさず彼を振り返った。
「ほーらね先生、キャベツを添えた薫製ポーク、これがわしらの合意点ですて」
一座は和やかな大笑いとなったが、その後も二人の関係が好転することはなかった。』(255ページ)
→ 2人の天才の顔合わせ、臨場感があっていいですね!
そんなブラームスがブルックナーの葬儀では教会に足を踏み入れず、関係者が中に入るようにうながしたが「もうじき私の柩を担ぐがいい」とつぶやいて立ち去った。それにもかかわらず柱の影で涙を流しているブラームスが目撃されている(318ページ)。
。。。なんつーツンデレ!ブラームスの音楽そのまんまやね。
ブラームスの書庫には膨大なコレクションがあり、楽譜もたくさんあったらしいのですが、その中にブルックナーの7番、8番、テ・デウムもあったそうですね。ちゃんと研究してたんだ!
ところで最近はネットでブルックナーの自筆譜も簡単に見れるようになったんですね。
中でも第7交響曲第1楽章エンディングのスケッチにはいたく感激しますた。
(ちなみに第1楽章冒頭主題の由来はブルックナーが見た、故人が口笛を吹く夢だったらしいです。(同著206ページ)。すげー)
....スケッチだけに、期待通りの素朴な見た目で、この楽譜からあんな音が鳴り響くとは....(いや、一致してんのかもしれんです。)
とにかく音を聞きながら見ると、「変なおじさん」からチョー偉大な音楽が生まれる歴史的瞬間を追体験できます!
(追記:2018年7月2日)
高原英理 『不機嫌な姫とブルックナー団』(講談社) 面白くて一気に読破。後半ウルウル。。ブルックナー、音楽も人間像も大好き!