かわたれどきの頁繰り

読書の時間はたいてい明け方の3時から6時頃。読んだ本の印象メモ、展覧会の記憶、など。

原発事故はどう詠まれたか:朝日歌壇・俳壇から(事故後10ヶ月の頃)

2013年10月26日 | 鑑賞

 これは、朝日新聞の投稿欄「朝日歌壇・俳壇」に掲載された短歌と俳句の中から、東京電力福島第一原子力発電所の原子炉溶融事故に関連して詠まれたものを縮刷版から抜き書きしたものである。
 原発事故の発生時から2012年7月までの期間について順次抜き書きを進めていて、今回は2012年1月に掲載されたものである。
 2012年8月以降については、新聞発行をリアルタイムでフォローしながら適宜まとめてこのブログで紹介している。 

 

2012年1月9日

いつもよりやさしくゆっくり年賀状の宛先を書く「福、島、県」と
     (浜松市)石田佳子 (高野公彦選)

核弾頭、原発潜ます星の影は月覆いゆく朱(あけ)にそめつつ
     (吹田市)小林昇 (高野公彦選)

ほだげんちょ、ふくしまの米、桃、りんご、梨、柿、野菜、人も生ぎてる
     (福島市)美山凍子 (馬場あき子選)

福島のコメが泣いてる寒さかな
     (香取市)関沼男 (長谷川櫂、金子兜太選)

原発や七十億人捨案山子
     (横浜市)大井みるく (金子兜太選)


(写真は記事と関係ありません)

2012年1月16日

庭の柿今年の実放置されたまま理由も知らず重みに耐える
     (郡山市)畠山理恵子 (高野公彦選)

ここでまだ生きてゐますと柿吊るす家のありけり福島の里
     (青梅市)津田洋行 (永田和宏選)

小名浜の大き工場の中みえて構内をだれもあるいてゐない
     (川越市)小野長辰 (馬場あき子選)

峠越え君待つ職場へ急ぎ行く犬猫人が見えぬ村過ぎ
     (福島市)澤正宏 (佐佐木幸綱選)

この気持ち誰に話せば落ち着くの被災者の中で温度差がある
     (福島県)泉田ミチ子 (佐佐木幸綱選)

放射線貫き通す去年今年
     (京都市)清水光雄 (金子兜太選)

鮟鱇の腸煮え返る放射能
     (川崎市)多田敬 (金子兜太選)

原発や今年も去年の山河あり
     (いわき市)馬目空 (長谷川櫂選)

 

2012年1月23日

草の実のびっしり刺さりし防護服に玄関開くる一時帰宅は
     (郡山市)渡辺良子 (佐佐木幸綱選)

あの日から初めて入る家の中曲がりし時計の二時四十六分
     (郡山市)渡辺良子 (高野公彦選)

モロビトノコゾリテクルシミテイマスフクシマニフルユキハハイイロ
     (福島市)美山凍子 (高野公彦選)

 

2012年1月30日

九円の福島産のもやしあり買う日買わぬ日買わぬ日買う
     (袋井市)山内弓子 (佐佐木幸綱選)

風評のいまだ絶えぬに甘藍は霜巻きながら滋味増すらしも
     (ひたちなか市)篠原克彦 (高野公彦選)

反戦と反原発の海鼠かな
     (久慈市)和城弘志 (金子兜太選)

フクシマや焚くに焚けないどんど焼
     (川越市)横山由紀子 (金子兜太選)

福の島取り戻さむと初仕事
     (川口市)知念哲夫 (金子兜太選)