今回の吹雪。
2008年2月、1歳4ヶ月の孫を連れ、初めて北海道を訪れた長女一家を思い出す。
明日は札幌泊まりで千歳に戻るという日、
「たまには夫婦水入らずもいいんじゃない?」
娘夫婦をそそのかし、まんまと孫を手掌に収め、札幌に送り出したのだった。
家の中は心地よい空気が充満し、孫の寝顔を見つつ幸せな深い眠りに落ちていた。
外は風と雪が暴れ狂っていたのを知る由もなかった。
翌朝、外の様子を見に行った夫。
「すごい雪だ。車は入って来られない、歩くのもやっとだ。どうやって朔を連れ出そう」
大変な事になっていた。
何としても孫を娘夫婦に託さないと・・
脱出作戦が決行された。
キョトンとした孫を防寒着で包み、ソリに乗せ引っ張るがスムーズに進まない。夫は孫を抱え込み、後ろには左手に乳母車、右手にはビニールに包んだ孫の荷物を引きずるババが続く。いざ出陣!
通常ルートは背丈ほどの雪の吹き溜まりが出来、通行不能。遠回りだが、畑に続く道しかない。その距離一キロ。雪は容赦なく吹きつけ、足は埋まり、何度となく止まる。孫を吹雪から守るように両手で抱きかかえ、前を進む夫の姿を追いながら後を歩く。
だんだん夫の姿が遠くなる。孫の泣き声が聞こえてくる。
(あと一歩、もう少しで車道に出る。)
しかしそこも雪の吹きだまりだった。帽子が飛ばされた。夫の姿が見えない。兄さんの家にたどり着いたのだろう。
「姉さんに朔を預けたから」
夫は見事に脱出させたのだった。
部屋に入るとストーブの前で抱かれている孫の姿があった。
(よかった、よかった~)
朔をぎゅっと抱きしめる。ちっちゃな手と足が冷たかった。
(ごめんね。さ~これからお父さんとお母さんに会いに行こうね。)
空港で娘の姿を見つけた孫の顔には大きな笑顔が広がり、ニコニコと近くの人に愛嬌をふりまいている。
娘夫婦もまた、札幌から車での道中、大変な思いで空港にたどり着き、飛行機が離陸したのは予定の3時間後だった。
この日の猛吹雪は北海道観測史上、47年ぶりだったと聞く。
吹雪をみると思い出す、忘れることの出来ないこの日の脱出劇である。
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