22時、とうさんはソファーでよく寝ている。
う~~この分だと今日の夜勤は大丈夫かな?・・・・・・
0時、もぞもぞとうさんが目を覚ます。
“トイレ?” “うん”
トイレに入ったとうさん、立って用足しをすると言う。
それはいいんだけど・・・・
両手を便器に付けて、どうやって肝心要なものを命中させるのかな?
“とうさん、ちゃんと持つ物もって!”
ヤバイ!
つかませて頂いたものの、距離が遠い。
“とうさん年とったね、これしか飛ばないの?”
“そうだな。昔は飛んだものだけどな~”と笑い顔。
なかなか機嫌がいい。このままいけば・・・
ひと出ししたとうさん、またソファーでゴロン。
よしよし。
3時、横になっていた私を起こしにかかる。
“何寝てるんだ!起きろ!”
きた~~~~~~
物入れから本や遊び道具を次から次から取り出し、床にバンバン投げつけ始めた。
あっ、花びんが。
台所に急いで隠すが・・・・見つかっちゃった・・・・
ガッチャン!!
大きな音を立て床に破片が飛び散る。
トランプ、花札、百人一首などなどが散乱。
“とうさん、これどうするの?”
“もう要らないから燃やすんだ。”
“今?” “そうだ”
“じゃまとめておくからね。”
今度は空になった物入れを倒そうとしている。
これは危ない。
止めに入った私に、とうさんからパンチが。
応戦するか。
“とうさん、いいよ、かかっておいで!”
とうさんは片手にひざ掛けをブンブン振り回しながら向かってくる。
“とうさん、それはずるいよ。正々堂々勝負しようよ。”
“わかった。”
とうさんは持っていたひざ掛けを床に投げ落とし、再度両手を振り回してくる。
応戦中、“上手いな、どこで覚えた?”
しばし戦いの後、“疲れた。”とソァーにどさっと座り込む。
“とうさん、私も疲れたから横になるね。”
側に寄ってきたとうさん。
“かあさん、どうした?大丈夫か?”
“大丈夫じゃないよ、とうさんが暴れたんでしょ!”
“そんな事したのか? 悪かっな、横になってろ。”とひざ掛けの毛布を掛けてくれる。
泥棒から妻に格上げとなり、待遇が変わっている。
それから朝食まで寝なかったとうさん。
食べたあとはソァーで熟睡。
あ~~~
この間は泥棒にも妻にもならず、穏やかな夜勤だったのに・・・
帰途、助手席で飲む美味なるビール。
行き付けの蕎麦屋に立ち寄り、大将の作る美味しい肴で蕎麦焼酎を頂く。
冬は旦那様の送迎があるので夜勤明けでも運転の心配はないが、送迎が出来なくなったら、いつか一睡もせず自損事故を起こしたことがあるので、明けの自宅まで一時間の運転はとっても不安なんだ。
そんな事で退職を決めた。
2年間、楽しかった。
寂しいけどね。
とうさんの笑顔忘れないよ。
横浜に居た頃は一時間の通勤距離なんて当たり前だったけど、北海道での車で一時間は、ちと違うんだなあ~
楽しく仕事をやらせてもらった。
仲間や入居者のじじ、ばばに感謝。
「夜勤よもやばなし」をもう伝えられなくなっちゃったね。
「年をとる」
誰もが通る道だものね。明日は我が身。仕事をしているといつも感じる。
だからこそ
もし自分だったら、
こんな風に接して欲しいなあ~
と思える対応を考える。
でも、
時に、
嫌だな~って思う自分に出会うことがある。
人間だもん。
心も身体も無理は禁物。
あなたが笑わなければじじ、ばばも笑わない。
共に笑って、楽しく愉快に。
互いにありがとうって言えるといいね。
身体を大事に。
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