瀝瀝(れきれき)散歩道

人の働き方をサポートする株式会社キャリア・ストラテジー代表、𠮷本惠子のブログです。

日本の面影〜教える人の品性

2017-10-16 22:24:47 | 株式会社キャリア・ストラテジー


今、ある大学の授業で留学生と一緒に小泉八雲を読んでいます。

小泉八雲をご存知ですか?

「耳なし芳一」や「雪女」などの怪談を書いた明治の小説家です。
子どもの時、ちょっと部屋を暗くして、「耳なし芳一」の話を聞いたら、怖くて夜トイレに行けませんでした。
(ビビりなので、今でも行けなくなると思います)
まさに日本を代表する怪談の一つです。

でも、この怪談を書いた人が日本人ではなく外国人(ギリシア人)だったと聞いた時には、本当に驚きました。
「耳なし芳一」を書いたのは、明治の小説家であり、東大教授でもあったラフカディアオ・ハーン(=小泉八雲)です。

八雲は怪談だけではなく、日本人が心惹かれる随筆も幾つか書いています。

ラフカディオ・ハーンの名作選集「明治日本の面影」
小泉八雲の名前で出版されたものですが、私の大好きな随筆です。
この本を読むと、八雲の鋭い人やものへの観察力、日本人の心情、日本社会の多面的な分析、多彩な言葉の使い方に圧倒されてしまします。
ところどころに見える皮肉っぽさ、、でもその裏側には心豊かで人間味があふれ出ているように感じます。
また、随筆の中で八雲は、人が人を差別することの愚かさを幾度も説いています。

特に最初の短編、「英語教師の日記から」には
明治23年(1890年)から出雲(島根県)の松江の尋常中学と師範学校にお雇い外国人として1年間雇われた日々が綴られていて、現代と比べると興味深いです。

自分は日本語が何もわからないのに学校で教えることがとても愉快で楽しい、と書かれています。

>>「近代日本の教育制度の下では、教師は字義通り教師teacherであって、英語の支配関係のmasterではない。西洋では規律が必要と考えられているが、日本の生徒はそれとは反する自立を要求しそれを享受している。
公立の学校はどれもこれも熱気に満ちた小共和国で、実際問題として、教師がその地位を確保できるのは教師の能力と、品性が生徒に支持された時だけである。

八雲は日本の学校にはお金持ちの子どもも貧乏な子どももいるが、皆が助け合って勉強に励み、勉強をすることに喜びを感じている、感想も述べています。

生徒たちはかわるがわる八雲の家に遊びに行き、八雲と会話を楽しみました。また八雲はその土地に伝わる物語や絵、伝統工芸の品などを見せ、生徒を喜ばせました。

八雲はアイルランド人の父とギリシア人の母のもと、ギリシアで生まれました。しかし、八雲が幼い時に父と母は離婚しました。
16歳の時に学校で遊んでいて右目を失明。隻眼となりました。不遇な少年時代だったように思えます。

彼は20代前半からジャーナリストとしてアメリカで活躍します。
1884年、ニューオーリンズ万博の時、日本の農商務省の服部一三と出会います。八雲は日本という国に非常な興味を覚えたようです。
1890年の4月にはアメリカの雑誌社の特派員として日本の横浜につきます。八雲、40歳の時です。
そして7月には服部一三の紹介で松江の学校に英語教師として赴任することになったのです。
八雲にとって生まれて初めての教師生活です。





ある時、一人の生徒が八雲のところにきて、言いました。

「先生は、前の先生と違います。」
「どういう風に違いますか。」
「前の先生は私たちのことを野蛮人だ、と言いました。」
「それはなぜですか?」
「ゴッド、といっても、その先生のゴッドですが、、
そのキリスト教の神様以外に貴ぶべきものはなく卑俗で無知な者だけが、それ以外のものを尊敬するのだと言いました。」

「その先生はどの国からきた人ですか?」
「牧師で英国臣民であるといっていました。(略)ハーン(八雲)先生はこのことについてどう思われますか?」

「それは、君、その先生こそが野蛮人なのです。卑俗で無知で野蛮人なのです。
君のためにも祖国のためにも、君が先ほど述べたような悪意のある低俗な言葉を聞いたなら、
その人がどの国の誰であろうと、それに対して義憤を発することが君の義務です」

八雲は150年も前に生まれた人ですが、グローバルな視野を持ったジャーナリストでしたから、
日本の慣習、人々の文化を貴ぶべきことと心得ていたのですね。


http://www.hearn-museum-matsue.jp/index.html

さて、この「明治日本の面影」は文庫版で500ページのものですが、怖いお化けのお話だけではなく、
ハーンの日記や随筆が収められており、題名通り明治日本のある一面を知るにはとても素晴らしい教本だと思います。





コメント (2)
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