Dr. WAKASAGI at HEI-RIVER(閉伊川ワカサギ博士)

森川海をつなぐ学び合いの活動を紹介します

自ら考えて行動することを促す防災教育の取り組み

2011-12-06 | 水圏環境教育
朝日新聞(11月8日)の記事から防災教育の取り組みについて紹介したい。
自ら考えて行動することを促す取り組み。
防災だけでなく,水圏と人との関わりに着目して総合的にとらえる取り組みとすることで,コミュニティ活性化にもつながっていくと思われる。
水圏環境教育の提唱する「みんなで気づき,考え,理解し,行動し,伝える」人間力の育成と相通じるものとなる。

変わる防災教育 校外でも注意、「自ら考えて行動」促す
 東日本大震災を機に、学校の防災教育が変わりつつある。自宅や通学路など校外で被災した場合の注意点を日頃から意識したり、緊急地震速報が流れた場合を想定した訓練をしたりするなど、非常時に柔軟に対処できるようにするための取り組みが埼玉県で進む。

■家の間取り書き家族と改善

 「タンスの上に、落下しそうな物はないか」

 「避難を妨げる危険物はないか」

 自宅の間取りを方眼紙に書き込み、家具や家電の設置状況を記して、一つずつチェックする。埼玉県川口市立幸並中学校の、ある日の授業風景だ。

 同校では今年度から、1年生が総合学習の時間を使って、災害時に家族も含めて身を守る方法を学んでいる。机上の学習だけではなく実践することが特徴だ。

 生徒が家族と話し合って作ったリポートには「テレビを固定した」「避難路に物を置くのをやめた」「近くに防災ずきんを置いて過ごしている」など、様々な改善点が並ぶ。

 自宅から最寄りの避難所までの道筋を、丹念に観察して歩いたこともある。

 「地震で窓ガラスが落下する可能性がある」

 「木造住宅が密集し、大きな火災が発生する可能性がある」

 気付いたことを記録シートに書き込み、災害時の行動に生かすという。

 担当の藤倉徳子教諭が意識するのは、東日本大震災で、校舎が津波に襲われながら機敏に避難し、児童や教職員が全員助かった学校があることだ。「生徒が学校で過ごす時間は1日の約3割。校外でも、自ら頭を働かせて危険性を把握し、災害時の行動に生かしてほしい」と願う。

 生徒たちは1年をかけ、応急手当ての仕方や、負傷者を運ぶ担架の作り方、炊き出しの方法など、他者を助けるための要点も学ぶ。

 授業の講師も務める高橋秀・市災害対策室主幹は「20~30代の人は地域の防災訓練への参加率が低い。学生のころから防災を意識することが、地域の防災力を高めることにもつながる」と期待する。

■緊急地震速報流れた際の訓練

 緊急地震速報が流れた場合を想定した訓練をする学校が今年度、埼玉県内で急速に広がっている。県教育局によると、予定分も含め、政令指定都市のさいたま市を除くと698校で、小・中・高校など公立校の6割近くに達する。同市でも複数校が実施しているという。

 速報は、地震発生直後の観測データから推定された震源や地震規模を元に、震源から離れた受信機のある場所へ強い揺れが到達する予想時間などを知らせる。揺れに見舞われる寸前で避難できる可能性があり、被害軽減が期待されている。

 同局の担当者は訓練について、「自ら考えて行動しなければならない状態にいかに近づけるかという課題があり、大震災で速報の活用に注目が集まったのではないか」とみる。

 県内での先駆けは、熊谷市立妻沼小学校での訓練だった。速報を生かす訓練の普及を図る熊谷地方気象台と同局が連携。実施されたのは、大震災の約1カ月前の2月17日だった。

 同校は訓練前、速報が流れた場合の約束事を児童に教えた。「出入り口近くの児童は、扉を開けて避難路を確保してから机の下に潜る」「体育館では頭上に照明がない場所に座る」といった具合だ。実際の訓練では、一部の教室で通常の避難経路が使えないというシナリオも織り込んだ。

 小淵美喜夫教頭は「初めてだったので教員の意識も高く、熱心に打ち合わせた。訓練は私語もなく緊張感があった」と振り返る。

 3月11日の大震災では、校内に4年生以上の児童がいたが、パニックにならずに避難できたという。「落ち着いて行動できた」と話す児童が何人もいたとして、小淵教頭は「訓練の経験が生きた」と語る。

 ただ、同局によると、受信機やケーブルテレビを通じて速報を受信できる学校は県内に十数校しかない。ほとんどの訓練は「仮想」にとどまっている。文部科学省は、今後3年間で全国の学校に受信システムを整備するための費用を、新年度予算の概算要求に盛り込む方針を示している。(四登敬、小室浩幸)