ノーベル物理学賞受賞者でスタンフォード大学教授のワイマン博士は,科学教育の分野でも画期的な成果を上げた。それは,有能で授業評価の高い有名な教授の講義よりも,TAによるDicipline Based Education Reserach: DBER(訓練を基本とした研究教授法)のほうが教育的効果が高いという結果だ。講演の中で,何度も強調していたことだが,名講義をいくら聞いても,実際に自分で取り組まなければ教育的効果は上がらないということである。これが,最近日本でも取り上げられているアクティブ・ラーニングだ。
ちなみにここでアクティブ・ラーニングとは,研究活動を主体とした学習法を指す。つまり,DBERは,アクティブ・ラーニングである。とワイマン博士は明言した。
また,同じくDBERを実践する王立ロンドン大学教授のキングスベリー博士も,2億円を投じてDBERの実践に取り組んでいるが,学生たちがアクティブに実践することは,教員にとっては大変な労力が必要である。また,学生はDBERを実施すると計画通り進まない,試験の成績を気にしすぎる。そのために,通常の講義を望む。依然として講義中心になれた教授や学生が多く,学生団体や教員セミナーを通してその重要性の認識を高めている。という。
それに対して,ワイマン博士は学生にとってベストなDBERはどのようなものかしっかりとアセスメントをして教材を開発する必要がある。
両博士が強調したことはDBERの効果は明らかである。仕事量が増えて大変なことであるが,有能な研究者を育成するためには,必ず実施すべきである。実はこれが一番大変重要なことである。
一番驚くことは,ノーベル賞受賞者が自ら科学教育の最前線に立って,伝統的講義を愛する教授や学生にめげず,科学教育者としてDBERによる教授法改革に取り組んでいることだ。