BELOVED

好きな漫画やBL小説の二次小説を書いています。
作者様・出版社様とは一切関係ありません。

炎の騎士 1

2024年04月21日 | FLESH&BLOOD 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説「炎の騎士」
「FLESH&BLOOD」の二次小説です。

作者様・出版社様は一切関係ありません。

一部残酷・暴力描写有りです、苦手な方はご注意ください。

海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。

何処かで、爆ぜる音がした。

「皆、そろそろ時間ですよ。」
「はい、マザー。」
蝋燭の灯りに照らされたのは、黒衣を纏った女達だった。
「決して失敗を恐れてはいけませんよ。」
女達の中で“マザー”と呼ばれている女は、大釜の中にある液体を注いだ。
すると、大釜の中が真紅に染まった。
「この日に、わたくし達の願いが成就される!」
女達が人里離れた修道院で“儀式”を行っている中、修道院から遠く離れた王宮では、ひとつの命を産み出そうとしていた。
「あと少しです、息んで下さい!」
王妃は、最後の力を振り絞り、命を産み出した。
「おめでとうございます、元気な王女様ですよ!」
「顔を、見せて・・」
女官に抱かれた赤子の顔を見た王妃は、悲鳴を上げた。
「リリー、今すぐその子を捨てて来て!」
産まれた王女の左頬には、醜い痣があった。
王妃の出産に立ち会った女官は、王女を自分の手で育てる事にした。
その女官―リリーは、王女を海斗と名付けた。
「カイト、水を汲んで来て頂戴。」
「わかった!」
「わかった、じゃなくて、“わかりました”でしょう!」
「わかりました!」
海斗は刺繍をする手を止め、頭巾を被らずに家から出て、井戸へと向かった。
すると、通りで立ち話をしていた二人の女性達が、無遠慮な視線を海斗に送った。
「ねぇ、あれ・・」
「あれが・・」
海斗は、彼女達が囁く悪意の声を無視した。
あんなの、物心ついた頃から慣れている。
人々は海斗の痣を見つけ、“呪い”を受けたのだと囁いた。
魔女の“呪い”―それは、海斗が産まれた時、反王政派の魔女達に呪われたというものだった。
“呪い”をする魔女達は、かつては国王に次ぐ権力を持っていたが、権力闘争に巻き込まれ、王宮から遠く離れた修道院へと追いやられた。
その恨みを晴らす為、彼女達は王女に“呪い”を掛けたという。

その王女が、海斗だった。

海斗は、魔女の“呪い”を受け、左頬に醜い痣が出来た所為で、国王夫妻から捨てられた。
しかし、その事を知らずに、海斗は養い親のリリーと共に、山間にある小さな町で暮らしていた。
「カイト、お誕生日おめでとう。」
「ありがとう、リリー。」
海斗はリリーから贈られたトパーズのペンダントを首に提げた。
「どう、気に入った?」
「うん!大切にするね!」
リリーと海斗がそんな事を話している頃、王宮では王妃が病に臥していた。
「王妃様のご容態は?」
「芳しくないようだ。」
「そうか・・」
王妃の容態は悪化の一途を辿り、医師達は国王に王妃の余命があと数日である事を告げた。
「王妃よ、何か望むものはないか?」
「あの子に・・会いたい。」
「あの子?」
「カイト・・」
王妃はそう言った後、息を引き取った。
―王妃様がお亡くなりになられるなんて・・
―この国は、一体どうなっちまうんだろう?
王妃の葬儀が行われた日は、土砂降りの雨が降っていた。
王妃の棺の周りには、揃いの軍服を着た兵士達が王妃の棺を警護していた。
「地獄へ堕ちろ!」
多くの国民達が王妃の死を悼みその冥福を祈っている頃、一人の老女が王妃の棺に向かって石を投げた。
「あの者を捕えよ!」
「離せ、何をする!」
黒衣を纏った太った女は、意味不明な言葉を喚き散らしながら、警察に連れて行かれた。
「カイト、今日は早く寝なさい。」
「うん。」
海斗が二階の自室へ向かおうとした時、突然何かが家の扉を乱暴に叩く音がした。
「誰かしら、こんな時間に?」
「俺が出るよ。」

海斗が恐る恐る扉を開けると、そこには血塗れの男が立っていた。
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