「FLESH&BLOOD」の二次小説です。
作者様・出版社様は一切関係ありません。
海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。
二次創作・BLが嫌いな方はご注意ください。
その日は、土砂降りの雨が降っていた。
―可哀想に、奥様あんなにお若いのに・・
―これから、どうなさるのかしら?
参列者達がそう囁き合う声を、東郷海斗は聞きながら俯いていた。
「カイト。」
「ジェフリー、来てくれたんだ・・」
「お前の事が心配で、来たんだ。」
「ありがとう・・」
海斗がジェフリーと話していると、遠くから彼女を呼ぶ声が聞こえて来た。
「ごめん、そろそろ行かないと・・」
「あぁ、後でな。」
海斗は夫の葬儀を終え、弔問客達への挨拶に追われていた。
「海斗さん、ちょっといいかしら?」
「はい・・」
姑に連れられ、海斗が向かった部屋には、赤子を抱いた男性の姿があった。
「初めまして、奥様・・」
彼が“何者”なのか、海斗は第六感でわかった。
「こちらの方は、鈴木光さん。正孝さんの愛人だった方よ。まぁ、光さんが念願の跡継ぎを産んでくれたから・・」
「わたしは、お役御免という訳ですか。」
「話が早くて助かるわぁ。」
姑はそう言って笑うと、背後に控えていた自分の秘書に目配せした。
すると彼は、海斗の私物が入った旅行鞄を彼女に手渡した。
「今まで、お世話になりました。」
海斗は左手薬指に嵌めていた指輪を外し、それをテーブルの上に置くと、そのまま部屋から出て行った。
(まぁ、こうなるっていう事は、わかっていたんだよね。)
婚家を後にした海斗は、土砂降りの雨の中、傘もささずに歩きながら、夫と過ごした短い結婚生活を思い出していた。
海斗の実家である東郷家と、婚家であった榎木家は、利害関係の一致と、それぞれの子供達の“第二性”による強い繋がりにより、結ばれた関係だった。
“第二性”は、本来の性別に加えて、甲種(アルファ)、乙種(ベータ)、丙種(オメガ)というものだった。
王侯貴族や資産家、富裕層の大半を占める甲種、商人や弁護士、医師、聖職者などの専門職に就いている者や、一般市民など、人口の大半を占める乙種、そして、性産業―娼婦や男娼などに就いている丙種が、“第二性”と呼ばれるものだった。
甲種と丙種の間には、番という、強力な関係が存在した。
それは、家族や夫婦といった関係上に深いものだった。
一度結ばれた甲種と丙種の番関係は、死ぬまで続くものだった。
海斗は、丙種として産まれ、榎木家嫡子である甲種の正孝と、双方の親達の承諾の下、“番”となった。
名門侯爵家の令嬢であった海斗は、伯爵家次期当主となる正孝と、薔薇色の結婚生活を送れると、幼い頃は信じていた。
だが今は、愛人と姑から婚家を追い出され、行く当てもなく雨の中を彷徨っていた。
寒さに震えながら、海斗は一軒のカフェに入った。
「いらっしゃいませ。」
全身ずぶ濡れの海斗を見た店員は、さりげなくタオルを彼女に手渡した。
「どうぞ。」
「頼んでいないけれど?」
「今日は、今年一番の寒さですから、これで身体を温めて下さい。お店からのサービスです。」
「ありがとう。」
海斗は熱いコーヒーを飲みながら、これからどうしようかと考えていた。
正孝が事故死し、実家とは彼が結婚した一年半前から絶縁している。
今更戻って来ても、実家に海斗の居場所はない。
仕事は結婚前に辞めてしまったが、将来への蓄えは充分ある。
コーヒーを飲み終えた海斗が店から出ると、雨は止んでいた。
濡れた石畳の道を歩きながら、海斗が泊まる所を探していると、彼女の前に一台の車が停まり、中からジェフリーが降りて来た。
「ジェフリー、どうして・・」
「ここのカフェのオーナーとは、学生時代の知り合いなんだ。」
「そう・・」
「一緒に来てくれ。後の事は俺が何とかする。」
「ありがとう・・」
ジェフリーと共に車に乗った海斗は、彼と共にホテルへと向かった。
「暫くここに滞在すればいい。費用の事は心配するな。」
「わかった・・」
ジェフリーが経営するホテルにチェックインした海斗は、部屋に入ると熱いシャワーを浴室で浴びた。
「ジェフリー、ちょっといいか?」
「どうした、ナイジェル?」
「カイトの事なんだが、あいつは今家に居るのか?」
「いや、どうやらあいつは婚家から追い出されたらしい。風の噂によると、愛人が夫の子供を連れて葬儀の席に来たらしいんだが・・」
「血も涙もない連中だな!」
「あいつには落ち着く時間が必要だ。」
二人が話している頃、海斗は部屋でベッドに横になって眠っていた。
作者様・出版社様は一切関係ありません。
海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。
二次創作・BLが嫌いな方はご注意ください。
その日は、土砂降りの雨が降っていた。
―可哀想に、奥様あんなにお若いのに・・
―これから、どうなさるのかしら?
参列者達がそう囁き合う声を、東郷海斗は聞きながら俯いていた。
「カイト。」
「ジェフリー、来てくれたんだ・・」
「お前の事が心配で、来たんだ。」
「ありがとう・・」
海斗がジェフリーと話していると、遠くから彼女を呼ぶ声が聞こえて来た。
「ごめん、そろそろ行かないと・・」
「あぁ、後でな。」
海斗は夫の葬儀を終え、弔問客達への挨拶に追われていた。
「海斗さん、ちょっといいかしら?」
「はい・・」
姑に連れられ、海斗が向かった部屋には、赤子を抱いた男性の姿があった。
「初めまして、奥様・・」
彼が“何者”なのか、海斗は第六感でわかった。
「こちらの方は、鈴木光さん。正孝さんの愛人だった方よ。まぁ、光さんが念願の跡継ぎを産んでくれたから・・」
「わたしは、お役御免という訳ですか。」
「話が早くて助かるわぁ。」
姑はそう言って笑うと、背後に控えていた自分の秘書に目配せした。
すると彼は、海斗の私物が入った旅行鞄を彼女に手渡した。
「今まで、お世話になりました。」
海斗は左手薬指に嵌めていた指輪を外し、それをテーブルの上に置くと、そのまま部屋から出て行った。
(まぁ、こうなるっていう事は、わかっていたんだよね。)
婚家を後にした海斗は、土砂降りの雨の中、傘もささずに歩きながら、夫と過ごした短い結婚生活を思い出していた。
海斗の実家である東郷家と、婚家であった榎木家は、利害関係の一致と、それぞれの子供達の“第二性”による強い繋がりにより、結ばれた関係だった。
“第二性”は、本来の性別に加えて、甲種(アルファ)、乙種(ベータ)、丙種(オメガ)というものだった。
王侯貴族や資産家、富裕層の大半を占める甲種、商人や弁護士、医師、聖職者などの専門職に就いている者や、一般市民など、人口の大半を占める乙種、そして、性産業―娼婦や男娼などに就いている丙種が、“第二性”と呼ばれるものだった。
甲種と丙種の間には、番という、強力な関係が存在した。
それは、家族や夫婦といった関係上に深いものだった。
一度結ばれた甲種と丙種の番関係は、死ぬまで続くものだった。
海斗は、丙種として産まれ、榎木家嫡子である甲種の正孝と、双方の親達の承諾の下、“番”となった。
名門侯爵家の令嬢であった海斗は、伯爵家次期当主となる正孝と、薔薇色の結婚生活を送れると、幼い頃は信じていた。
だが今は、愛人と姑から婚家を追い出され、行く当てもなく雨の中を彷徨っていた。
寒さに震えながら、海斗は一軒のカフェに入った。
「いらっしゃいませ。」
全身ずぶ濡れの海斗を見た店員は、さりげなくタオルを彼女に手渡した。
「どうぞ。」
「頼んでいないけれど?」
「今日は、今年一番の寒さですから、これで身体を温めて下さい。お店からのサービスです。」
「ありがとう。」
海斗は熱いコーヒーを飲みながら、これからどうしようかと考えていた。
正孝が事故死し、実家とは彼が結婚した一年半前から絶縁している。
今更戻って来ても、実家に海斗の居場所はない。
仕事は結婚前に辞めてしまったが、将来への蓄えは充分ある。
コーヒーを飲み終えた海斗が店から出ると、雨は止んでいた。
濡れた石畳の道を歩きながら、海斗が泊まる所を探していると、彼女の前に一台の車が停まり、中からジェフリーが降りて来た。
「ジェフリー、どうして・・」
「ここのカフェのオーナーとは、学生時代の知り合いなんだ。」
「そう・・」
「一緒に来てくれ。後の事は俺が何とかする。」
「ありがとう・・」
ジェフリーと共に車に乗った海斗は、彼と共にホテルへと向かった。
「暫くここに滞在すればいい。費用の事は心配するな。」
「わかった・・」
ジェフリーが経営するホテルにチェックインした海斗は、部屋に入ると熱いシャワーを浴室で浴びた。
「ジェフリー、ちょっといいか?」
「どうした、ナイジェル?」
「カイトの事なんだが、あいつは今家に居るのか?」
「いや、どうやらあいつは婚家から追い出されたらしい。風の噂によると、愛人が夫の子供を連れて葬儀の席に来たらしいんだが・・」
「血も涙もない連中だな!」
「あいつには落ち着く時間が必要だ。」
二人が話している頃、海斗は部屋でベッドに横になって眠っていた。