BELOVED

好きな漫画やBL小説の二次小説を書いています。
作者様・出版社様とは一切関係ありません。

泡沫の恋 第1話

2024年03月10日 | FLESH&BLOOD ハーレクイン昼ドラパラレル二次創作小説「泡沫の恋」
「FLESH&BLOOD」二次小説です。

作者様・出版社様とは一切関係ありません。

海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。

性描写が含まれます、苦手な方はご注意ください。 

「カイト、何処なの!?」
「はい、奥様。」
東郷海斗は、乱れた髪を慌てて手櫛で整えながら、使用人部屋から出て行った。
「呼んだらすぐに来なさいと言っているでしょう!」
「申し訳ありません・・」
「今日は、特別なお客様がいらっしゃるから、掃除をちゃんとしてね。」
「はい・・」
海斗の雇用主である彼女の義母・エセルは不快そうに鼻を鳴らすと、客間から出て行った。
 海斗は溜息を吐くと、客間の掃除を始めた。
これが終わったら、二階の客用寝室と主寝室の掃除がある。
「カイト、ジェフリー様が呼んでいるわよ。」
「わかりました。」
客室の掃除を終えた海斗が二階の部屋へと向かうと、彼女はある部屋のドアをノックした。
「入れ。」
「失礼致します。」
部屋に海斗が入ると、そこには美しいブロンドの髪をなびかせている部屋の主―ジェフリー=ロックフォードが居た。
「ジェフリー様、何か俺にご用でしょうか?」
「二人きりの時は、名前だけで呼べと言っただろう?」
「ジェフリー・・」
「カイト。」
ジェフリーの美しい蒼い瞳に見つめられ、海斗は思わず俯いてしまった。
「どうした?今更恥ずかしがる事じゃないだろう?」
「でも・・」
「カイト。」
ジェフリーにそう呼ばれ、海斗は全身に電気が走るかのような快感が走った。
そんな様子を見たジェフリーは、軽く海斗の耳を噛んだ。
「あっ・・」
「夜までまだ時間がある。」
「いけません、こんな・・」
「半分血が繋がっている兄妹同士だからか?」
そう言いながら、ジェフリーは海斗の膣を着物の上から弄った。
「もう、これ以上は・・」
「こんなに濡れているのに?」
ジェフリーはわざと見せつけるかのように、海斗の愛液に塗れた指を舐めた。
「お兄様・・」
「カイト、何処に居るの!?」
廊下からエセルの声が聞こえ、海斗はジェフリーから離れた。
「続きは、夜でな。」
「はい・・」
その日の夜、パーティーが終わり後片付けに追われている海斗の元に、ジェフリーがやって来た。
「まだ、終わらないのか?」
「はい・・」
「先に部屋に行っている。」
漸く仕事を終えた海斗が二階のジェフリーの部屋へと向かうと、彼はウィスキーを飲みながら何かを考えこんでいた。
「ジェフリー・・」
「カイト、来てくれたのか。」
ジェフリーはそう言うと、海斗を抱き締めた。
「あっ、あっ・・」
海斗はジェフリーの上に跨りながら、腰を上下に振っていた。
「ほら、頑張れ、頑張れ。」
そう言いながら、ジェフリーは下から海斗を激しく突き上げた。
「ひぃっ・・」
堪え切れず、海斗は絶頂に達した。
それと同時に、彼女の小ぶりな男の象徴から白濁液が溢れた。
その後、ジェフリーが欲望を海斗の中に迸らせた。
「辛くないか?」
「はい・・」
「浴室へ行こう、カイト。俺もお前も、色々と汚れちまったからな。」
ジェフリーは有無を言わさず、海斗の身体をシーツごと包むと、彼女を浴室へと連れて行った。
「大丈夫か?」
「うん・・」
ジェフリーに身体を清められながら、海斗はついうとうとして眠ってしまった。
(良い夢を、カイト。)
海斗にガウンを着せ、自分の寝台に彼女を寝かせた後、ジェフリーは海斗と初めて会った時の事を思いだしていた。
ジェフリーと海斗が初めて会ったのは、父の葬儀の後だった。
「こちらが、ロックフォードさんのお宅ですか?」
墓地を後にしたジェフリー達を待っていたのは、八歳位の女児を連れた老人だった。
「ええ、そうですが・・」
「カイト、元気でな。」
老人はそう言うと、ジェフリー達に一礼して去っていった。
その女児―海斗は、父が生前芸者との間に儲けた私生児だった。
突然現れた腹違いの妹にジェフリーは戸惑ったが、彼以上に戸惑い取り乱していたのはエセルだった。
夫の裏切りを知ったエセルは、海斗を貴族の娘としてではなく使用人として家に迎え入れた。
毎日長時間も働かされている海斗を哀れに思ったジェフリーは、母の目を盗んでは読み書きを教えてやったり、菓子をやったりした。
はじめは、「妹」としてジェフリーは海斗に接していた。

だがその気持ちが徐々に変化していったのは、海斗の女学校入学を巡って、エセルと口論になった時だった。

「どうして、カイトを女学校に通わせてくれないんだ?」
「女学校に行くのは、貴族の娘よ。使用人を女学校に通わせる程、うちは豊かじゃないの。」
エセルは海斗の女学校入学を認めず、彼女を安い労働力としてこき使った。
エセルは、“使用人に金を使うのは惜しい”と、自分やジェフリーの服は新調したが、海斗には粗末な着物しか与えなかった。
海斗はいつも粗末な着物を着て、一日中家事に追われる日々を送っていた。
そんな中、ジェフリーは忘れ物を取りに戻った時、海斗の“秘密”を知ってしまった。
人気のない井戸の方から物音がしたのでジェフリーがそちらの方へと向かうと、そこには木桶の中で水浴びをしている海斗の姿があった。
「きゃぁっ!」
「済まない!」
海斗の下半身には、男と女、両方のものがついていた。
夏の陽光の下、ジェフリーはいつの間にか海斗を抱き締め、その唇を塞いでいた。
「んっ・・」
海斗は熱で潤んだ瞳で、ジェフリーを見た。
「忘れてくれ。」
「待って、待って下さい・・」
海斗はそう言うと、ジェフリーに抱きついた。
ジェフリーは、暑さの所為なのか欲望の所為なのかはわからないが、気づけば海斗の身体を貪っていた。
我に返ってジェフリーが海斗を見ると、彼女は破瓜の血に濡れながら苦しそうに喘いでいた。
「カイト・・」
「お兄様・・」

これが、海斗とジェフリーが禁断の果実を口にした瞬間だった。

「ん・・」
海斗が目を開けて隣を見ると、そこにはジェフリーが裸で寝ていた。
彼に気づかれぬようそっと彼の寝室から出た海斗が使用人部屋に戻ると、そこには女中頭のタキが彼女の帰りを待っていた。
「その様子だと、また若様の所へ行っていたのね?」
「俺は・・」
「お前は、只の使用人。身の程を弁えないといけませんよ。」
「はい・・」
「よろしい、では朝の支度をなさい。」
「はい・・」
ダイニングに朝食を海斗が運ぶと、エセルが執事と何かを見ながら話し込んでいた。
「奥様、朝食をお持ち致しました。」
「そこへ置いておいて。」
「はい・・」
「やはり、若様の伴侶に相応しいのは、こちらの方かと・・」
「そうね、家柄も申し分ないし・・」
彼らが何を話しているのか、社交界に疎い海斗でもわかった。
(ジェフリーが結婚、かぁ・・)
ジェフリーのような身分がある男に、山程縁談がある事は知っている。
(俺、これからどうしよう・・)
ジェフリーが結婚すれば、自分の存在がこの家にとって邪魔な存在になるのは明らかだ。
(ジェフリーと、一度話そう。)
そんな事を思いながら、海斗が厨房へと戻ると、キッチンメイドのアリシアが不機嫌な表情を浮かべていた。
「カイト、今から卵を六個買って来な!」
「はい・・」
「寄り道せずに帰って来るんだよ!」
海斗が行きつけの食料品店で卵を買ってロックフォード邸に戻ると、厨房からエセルとアリシアが口論する声が聞こえた。
「何ですって、それは本当なんですか!?」
「ええ。アリシア、申し訳ないけれど・・」
「辞めますよ!長い間お世話になりました!」
アリシアはそう叫ぶと、エプロンをキッチンカウンターに叩きつけ、裏口から外へと出て行った。
「カイト、何をしているの?早くディナーを作りなさい!」
「はい・・」
厨房の主戦力であったアリシアが居なくなった所為で連日殺人的な忙しさに見舞われ、キッチンメイド達は次々と熱中症と過労で倒れていった。
「カイト、大丈夫か?」
「大丈夫です・・」
そう言った海斗は、荒い息を吐きながら仕事に戻ろうとしたが、酷い眩暈に襲われその場に蹲ってしまった。
「もう休め。」
「はい・・」
地獄の釜のように暑い厨房から出て二階の使用人部屋に入った海斗は、ベッドに入ると泥のように眠った。
ただの夏バテだと思っていた海斗だったが、体調は良くなるどころか日に日に悪化していった。
「医者に一度、診て貰ったらどうだ?何かの流行り病かもしれないぞ。」
「わかりました。」
海斗は料理長・ヤンに言われ、近くの総合病院で診て貰う事にした。
「東郷さん。」
「はい。」
「今日はどうされましたか?」
「最近、微熱が出て、身体が怠くて・・」
「そうですか。最後に生理が来たのはいつですか?」
「わかりません・・」
月経不順だった海斗は、月経が遅れている事に対して気にも留めなかった。
「二階の産婦人科に行ってください。」
「はい・・」
産婦人科を受診した海斗は、そこで妊娠を告げられた。
「おめでとうございます。」
(そんな・・)
妊娠した事を知った海斗は、戸惑った。
この事をエセルが知ったら、解雇されてしまう。
だが、産むにしても、働きながら子供を育てるのは容易ではない。
「只今戻りました。」
「どうだった?」
「それが・・」
海斗はヤンに妊娠の事を告げた。
「お前は、どうしたい?」
「子供は・・」
「カイト、奥様がお呼びよ。」
「はい・・」
海斗がエセルの書斎のドアを叩くと、タキがその中から顔を出した。
「カイト、あなたには暇を出します。」
「え?」
「早く荷物をまとめて、ここから出て行きなさい。」
「はい・・」
炎天下の中、海斗は突然長年暮らしていた“家”から放り出され、途方に暮れた。
全財産が入った風呂敷包みを握り締めながら、海斗は静かにロックフォード邸から離れた。
「カイト、カイト!」
「あの子なら暇を出しましたよ。」
「母さん、どういう事だ!」
「あの子は、この家に災厄を齎す・・あの子は生きてはいけないのよ!」
「母さん?」
「あの子は悪魔・・この家を滅ぼそうとしている・・」
(あぁ、またか・・)
ジェフリーは、エセルがいつもの“発作”を起こしている事に気づいた。
父が死んでから、エセルは精神的に不安定な状態が続いた。
医者から気休め程度の薬だけを与えられ、エセルの症状は良くなるどころか、日に日に悪化していった。
エセルは海斗の事を、“自分を破滅させようとする悪魔”だと思い込み、彼女に辛く当たった。
彼女が海斗を解雇したのは、この家を破滅させる悪魔だという妄想に囚われている所為だった。
「何処へ行くの、ジェフリー!」
「カイトを捜しに行く。」
「あの子を捜して、一緒になるつもりなの!?そんなの、わたくしが許さないわ!」
「離してくれ!」
ジェフリーはエセルの手を振り払うと、海斗を捜しに行ったが、見つからなかった。
(カイト、何処に居るんだ!?)
海斗が姿を消し、ジェフリーは血眼になって彼女を捜したが、見つからなかった。
「若様、少しやつれていらっしゃるわね。」
「カイトが居なくなって、半年が経つからなぁ・・」
「あの子、今何処で何をしているのかねぇ?」
そんな事を話している使用人達の脇を通り過ぎながら、ヤンはある場所へと向かった。
そこは、古びた長屋だった。
「カイト、居るのか?」
「ヤン・・」
長屋の奥にある一室から出て来たのは、臨月の腹を抱えた海斗だった。
「調子はどうだ?」
「まぁまぁかな。」
「もういつ産まれてもおかしくないぞ。ジェフリーに・・」
「それは駄目。」
「カイト、これはお前一人だけの問題じゃない。ジェフリーとちゃんと話し合って・・」
「こんな所に居たのか、カイト。」
ヤンとジェフリーが背後を振り向くと、入口には海斗の大きな腹を見て驚愕の表情を浮かべているジェフリーの姿があった。
「ジェフリー・・」
海斗は突然下腹に激痛が走り、顔を顰めた。
「どうした!?」
「産まれそう・・」
「ジェフリー、湯を沸かせ!それが終わったらそこの押入れに清潔なシーツが入っているからそれを取ってくれ!」
「わ、わかった・・」
ヤンが慌てふためくジェフリーに対して的確な指示を出しながら海斗の赤ん坊を取り上げたのは、その日の夜の事だった。
「元気な男の子だ。」
「ヤン、ありがとう。」
「カイト、どうして妊娠した事を黙っていた?あの人の所為か?」
「お願い、一人にして・・」
海斗はそう言うと、ジェフリーにそっぽを向いた。
「ジェフリー、外へ出よう。」
「わかった。」
ヤンはジェフリーを長屋の外へと連れ出した。
「いつから気づいていたんだ、ヤン?」
「半年前からだ。カイトから、あんたには言うなと口止めされた。」
「何故だ?」
「奥様が自分に何かをするとカイトが思っていたからだ。」
「母さんが・・」
「はっきり言うが、奥様は異常だ。カイトを守りたいのなら、奥様をどうにかしろ。」
ヤンはジェフリーにそう言った後、長屋の中へと入っていった。
「ジェフリーは?」
「帰った。後で産婆を呼んでやる。」
「ヤン、この子を取り上げてくれてありがとう。」
「昔の経験が役に立ったな。」
「え?」
「独り言だ。」

ヤンは昔、軍医だった。

医者になるつもりはなかったが、病身の父の医療費を稼ぐ為に、猛勉強の末医者となり、小さな診療所を開いた。
戦争が始まり、ヤンは戦地で負傷者の救助に当たっていた。
そんな中、ヤンは戦場で瀕死の妊婦を見つけたが、治療の甲斐なく亡くなった。
目の前の命を救えなかった罪悪感に襲われ、ヤンは医者を辞め、メスを包丁に持ち替え、料理人となった。
「カイト、俺はもう屋敷に帰る。」
「うん、わかった。」
「余り無理をするなよ。産婆の言う事は聞くんだぞ。」
ヤンが部屋から出て行った後、産婆が入れ違いに部屋に入って来た。
「今出て行ったのは、あんたの旦那かい?」
「いいえ。昔、お世話になったんです。」
「そうかい。女一人で子供を育てるのは大変だろう?頼れる家族は居るのかい?」
「いいえ。」
「まぁ、人にはそれぞれ事情があるからね。今はゆっくり身体を休めるんだよ。産後に身体を壊したら、後に響くからね。」
「はい・・」
海斗が居る長屋から出て、ロックフォード邸へと戻ったヤンは、一台の馬車が邸の前に停まっている事に気づいた。
「いやぁ、離して!」
「母さん、落ち着いてくれ!」
暫くすると、邸の中から数人の男達がエセルを両脇に抱えながら出て来た。
「この親不孝者ぉ!」

 エセルは、泣き喚きながら馬車の中へと押し込まれた。

―あれは、ロックフォード家の奥様・・
―気狂いだからねぇ、もっと早くにこうしていればねぇ・・
―可哀想に・・

「ジェフリー・・」
「これで、カイトを迎えに行ける。」
「そんな単純に解決できる問題ではないだろう。」
「そうだな・・」
「カイトの産後の世話は、俺と産婆がする。ジェフリー、お前は暫く会わない方がいい。」
「・・わかった。」

海斗は、ヤンと産婆に産後の世話をして貰いながら、慣れない育児に悪戦苦闘する日々を送っていた。
そんな中、ジェフリーの婚約者を名乗る女性がやって来た。
「あなたが、カイトさん?わたくしはシャーロット。子供をわたくしに頂戴。」
「いやっ、やめて!」
「子供はわたくしが責任を持って育てるわ。」
シャーロットに息子を奪われた海斗は、失意に沈む日々を送っていた。
「カイト、迎えに来た。」
「息子を返して。」
「カイト・・」

海斗はジェフリーを拒絶し、姿を消した。

(さようなら、ジェフリー・・)

海斗は深呼吸すると、アメリカ行きの豪華客船の一等船室のチケットを握り締め、港へと向かった。

その船は、タイタニック号といった。

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