BELOVED

好きな漫画やBL小説の二次小説を書いています。
作者様・出版社様とは一切関係ありません。

エメラルドの恋人 第1話

2024年02月25日 | FLESH&BLOOD ハーレクインパラレル二次創作小説「エメラルドの恋人」
「FLESH&BLOOD」の二次小説です。

作者様・出版社様とは一切関係ありません。

一部残酷・暴力描写有りです、苦手な方はご注意ください。

海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。

―あの二人が結婚されるなんて、信じられないわ。
―カイト様、お可哀想に。
美しく澄んだ空の下で、これから一組の男女が結婚式を挙げようとしていた。

新郎の名は、イライジャ。
“女の敵”と社交界で噂が絶えない程の女たらしだった。
そしてそんな男の妻となる哀れな花嫁の名は、東郷海斗。
彼女は、金で売られた花嫁だった。
彼女の両親は、競馬で借金を重ね、多額の負債を抱えた末にイライジャの元へと娘を嫁がせる事にした。
海斗は、純白のウェディングドレスを着た己の姿を鏡で見ながら溜息を吐いた。
「とてもお似合いですわ、お嬢様。」
「ありがとう・・」
「どうぞ。」
物心ついた頃から自分に仕えてくれた乳母から海斗が渡されたのは、実母が自分に唯一遺してくれた形見の、真珠の首飾りだった。
「カイト、いつまでぐずぐずしているの、花婿様がお待ちよ、早くなさい!」
「はい・・」
教会へと入って来た海斗の顔は、花嫁のそれには相応しくない暗い顔をしていた。
「では、夫婦の誓いを・・」
「ごめんなさい、あなたとは結婚したくありません!」
海斗はそう叫ぶと、イライジャ達に背を向けた。
―何て事・・
―やっぱりね。
―こうなると思ったわ。
呆然とするイライジャ達を見た貴族達は、そんな事を扇子の陰で囁き合っていた。
「お嬢様・・」
海斗の乳母・ヘレナは、彼女の幸せを祈り、胸の前で十字を切った。
「ジェフリー、起きろ!」
「ナイジェル、まだ寝かせてくれ。」
「起・き・ろ!」
けたたましく真鍮の鍋を鳴らしながら入って来たのは、ジェフリー=ロックフォードの親友・ナイジェルだった。
彼はジェフリーを起こすと、彼の寝室から出て厨房へと向かった。
そこには様々な種類の香辛料が棚に置かれてあり、その横には美しく磨き上げられた真鍮の鍋が吊るされていた。
ジェフリーが起きるまで、ナイジェルは市場で今朝買ったばかりのトマトを使い、簡単なスープを作った。
「おはよう、ナイジェル。」
「ジェフリー、今何時だと思っている?」
「もう9時か。」
「ジョーゼフ伯夫人から注文されたネックレスはどうなっているんだ?もしかして、これから作るつもりじゃないだろうな!?」
「安心しろ、ネックレスはもう作ってある。」
「そうか。ネックレスは何処に?」
「下の工房だ。朝飯を食い終わったら、ジョーゼフ夫人の元へネックレスを届けに行くさ。」
ジェフリーは朝食を済ませると、手早く着替えてジョーゼフ伯夫人の元へと向かった。
「どうぞ、ご注文されたダイヤモンドのネックレスです。」
「まぁ、素晴らしいわ。あなたのデザインはいつも独創性があっていいわ。」
「ありがとうございます。」
「失礼致します、奥様。」

ジェフリーとジョーゼフ伯夫人がそんな話をしていると、居間に一人のメイドが入って来た。
彼女は、三ヶ月前に社交界のゴシップ欄を賑わせた、ローレンス伯爵の非嫡出子だった。
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