「薄桜鬼」「鬼滅の刃」二次小説です。
作者様・出版社様とは一切関係ありません。
二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。
「みんな~、来てくれてありがとう!」
夢の舞台・武道館のライブで、あるアイドル・グループがそう叫ぶと、ファン達は一斉にサイリウムを振った。
「それでは聴いて下さい、“心に誠を!”」
(うぉぉ~、トシさ~ん!)
ステージの最前列、花道の近くに、あの少年は居た。
茶色の髪をポニーテールにし、一心不乱にサイリウムを振りながら彼が翡翠の瞳で見つめているのは、アイドル・グループSSGのセンター・土方歳三だった。
彼は、とても美しく賢い歌手で、アイドル活動のかたわら、俳優や作家としても活躍している。
土方歳三は、ライブで最後の曲を歌い終わった後、ファン達に向かって深々と頭を下げると、このライブを最後にSSGから“卒業”する事を告げた。
「嫌だぁ~!」
「トシちゃん!」
「皆さんの事も、SSGの事も愛しています。でもわたしは、“普通の人”として生きていたいのです!どうか皆さん、SSGの事を嫌いにならないで下さい!」
「うぉぉ~!」
こうして、SSGの伝説のライブは幕を閉じた。
(なぁにが、“普通の人として生きていきたい”だよ。若気の至りってスゲェな。)
あのライブから15年―かつてトップアイドルとして輝いていた歳三は、今はファミレスでアルバイトをしている。
「あ、土方さん、今日から新人さんの指導、お願いね。」
「は、はい・・」
「初めまして、今日からこちらで働く事になった・・」
(KBTのMUZANが、何でこんな所にぃ!)
「よろしくお願いします。」
「ど、どうも・・」
何故、和製キング・オブ・ポップがファミレスに―歳三がそんな事を思いながら本を読んでいると、いつの間にかKBTこと鬼舞辻無惨が歳三を見つめていた。
「何故、わたしがここに居るのか知りたいようだな?」
「別に・・」
「老後の資金が足りぬのだ。」
「あんた、俺よりも稼いでたんじゃ・・」
「事務所を足抜けした際、金は全て社長から取り上げられた。」
「は、足抜け?」
「詳しいことは後で話そう。」
「え・・」
拍子抜けした歳三を残し、無惨は更衣室から出て行った。
バイトが終わり、無惨は歳三をカラオケボックスの個室へと連れて行った。
「わたしが、半年前に事務所から足抜けしたのは・・」
KBTのMUZANこと鬼舞辻無惨が所属事務所から“足抜け”したのは、半年前の“トラブル”が原因だった。
その“トラブル”は、色々と一時期週刊誌ネタとして様々な噂が飛び交っていた事を、歳三は思い出していた。
「事務所の社長は、あろうことかわたしの財産を横領していた。わたしがその事を告発しようとした矢先、突然解雇された。訴えたが、負けた。」
無惨は、そう言った後溜息を吐いた。
「それで、あんた今何処に住んでいるんだ?」
「港区のマンションだ。」
無惨はそう言うと、歳三に自分が住んでいるマンションの写真を見せた。
そこは、有名人が多く住むタワーマンションだった。
「あんた財産取り上げたんだろう?家賃払えるのか?」
「色々と不労所得があるから、大丈夫だ。」
無惨は、駐車場を経営しているという。
「あと、夜のバイトもしている。」
「へぇ・・」
「さてと、時間だ。」
無惨は自分が注文した料理の代金をレジで払うと、カラオケボックスから出て行った。
(夜のバイト、ねぇ・・まぁ、どんなバイトか、想像出来るけどな。)
その日の夜、歳三は夜のバイト先である、歌舞伎町のクラブに居た。
そのクラブは、“ある”性癖を持つ客の為のクラブだった。
それは、ドM―人に虐められる事が大好きな客が集まる店なのだった。
アイドルを辞め、芸能界から引退した歳三は、昼はファミレス、夜はクラブで働き、生活費を稼いでいた。
一匹の猫と人間だけで暮らしているので、心配な事と言えば自分の老後資金と、猫の治療費だけだ。
(さてと、今日も稼ぎますか。)
歳三がそんな事を思いながら更衣室からフロアへと向かうと、何やら奥のテーブルの方が騒がしかった。
(何だ、何かあったのか?)
「あらトシちゃん、いらっしゃい。」
「ママ、何かあったのか?」
「実はねぇ、今夜から期待の新人が入って来たのよ。」
「期待の新人?」
チラリと歳三が奥のテーブルの方を見ると、そこには妖艶な美女の姿があった。
(何だ、何処かで見たような・・)
「頭を垂れて蹲え、平伏せよ。」
(え、まさかこいつ・・無惨かよ!?)
歳三がそう思いながら再度奥のテーブルの方を見ると、無残の前には四人の男達が土下座していた。
「も、申し訳ございません、お姿も気配も異なっていらしたので・・」
「誰が喋っていいと言った?」
無惨はそう言って男達を睨みつけると、男達の間にひぃっ、という悲鳴が上がった。
「わたしが聞きたいのはひとつのみ。何故、下弦のアイドルは売れなくなったのか?」
「そ、そのような事を俺達に聞かれても・・」
「黙れ。あいつらが売れなくなったのは、ひとえにお前達のPRの仕方が悪いからだ。」
「ひぃ・・」
四人の男達の一人、左端に居た男はぶるぶると震え、呻いた後気絶した。
「連れて行け。」
「はい。」
何処からともなく現れた黒服の男が、気絶した男を連れて行った。
「お前は、いつもTプロデューサーと会う時、逃げようとしているな?」
「いいえ、思っていません!」
「お前はわたしを否定するのか?」
(こいつらと無惨、どんな関係だ?)
やがて男達は一人、また一人と居なくなり、残ったのは二十代後半の青年だった。
「最後に何か言いたい事は?」
「わたしは夢見心地でございます。あなた様直々に手を下されるなんて・・わたしを残して下さってありがとう。」
恍惚とした表情を浮かべている青年に、歳三はドン引きしていた。
「耳に花札のようなピアスをつけた少年を連れて来い。そうすれば、もっと情報を与えてやる。」
青年は無惨に一礼すると、店から出て行った。
「何だ、誰かと思ったらお前か。」
「何だじゃねぇ!それはこっちの台詞だ!さっきのは何だ!?」
「仕事が出来ないマネージャーをここへ呼んで説教していただけだ。」
「へぇ、そうか・・って、さっきママが言っていた“期待の新人”ってあんたか!?」
「あぁ。今日からこの店で働く事になった、よろしく。」
「お、おぅ・・」
(大丈夫か・・?)
無惨がクラブで働き出してから、彼に虐められたいという客が店に殺到し、店は繁盛した。
「あ~、疲れた。」
疲れた身体を引き摺りながら、歳三が住んでいるマンションへと向かっていると、エントランスの前に何故か無惨が大きいスーツケースに腰掛けていた。
「待ちくたびれたぞ。」
「てめぇ、何でここに居る?」
「腹が減った、何か食わせろ。」
「人の話を聞け!」
歳三は無惨を部屋に入れると、無惨はソファに座って溜息を吐いた。
「あ~、疲れた。」
「何でここの住所がわかったんだ?」
「履歴書を見た。」
(ママ・・)
「それで?あんたタワーマンションには帰らないのか?」
作者様・出版社様とは一切関係ありません。
二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。
「みんな~、来てくれてありがとう!」
夢の舞台・武道館のライブで、あるアイドル・グループがそう叫ぶと、ファン達は一斉にサイリウムを振った。
「それでは聴いて下さい、“心に誠を!”」
(うぉぉ~、トシさ~ん!)
ステージの最前列、花道の近くに、あの少年は居た。
茶色の髪をポニーテールにし、一心不乱にサイリウムを振りながら彼が翡翠の瞳で見つめているのは、アイドル・グループSSGのセンター・土方歳三だった。
彼は、とても美しく賢い歌手で、アイドル活動のかたわら、俳優や作家としても活躍している。
土方歳三は、ライブで最後の曲を歌い終わった後、ファン達に向かって深々と頭を下げると、このライブを最後にSSGから“卒業”する事を告げた。
「嫌だぁ~!」
「トシちゃん!」
「皆さんの事も、SSGの事も愛しています。でもわたしは、“普通の人”として生きていたいのです!どうか皆さん、SSGの事を嫌いにならないで下さい!」
「うぉぉ~!」
こうして、SSGの伝説のライブは幕を閉じた。
(なぁにが、“普通の人として生きていきたい”だよ。若気の至りってスゲェな。)
あのライブから15年―かつてトップアイドルとして輝いていた歳三は、今はファミレスでアルバイトをしている。
「あ、土方さん、今日から新人さんの指導、お願いね。」
「は、はい・・」
「初めまして、今日からこちらで働く事になった・・」
(KBTのMUZANが、何でこんな所にぃ!)
「よろしくお願いします。」
「ど、どうも・・」
何故、和製キング・オブ・ポップがファミレスに―歳三がそんな事を思いながら本を読んでいると、いつの間にかKBTこと鬼舞辻無惨が歳三を見つめていた。
「何故、わたしがここに居るのか知りたいようだな?」
「別に・・」
「老後の資金が足りぬのだ。」
「あんた、俺よりも稼いでたんじゃ・・」
「事務所を足抜けした際、金は全て社長から取り上げられた。」
「は、足抜け?」
「詳しいことは後で話そう。」
「え・・」
拍子抜けした歳三を残し、無惨は更衣室から出て行った。
バイトが終わり、無惨は歳三をカラオケボックスの個室へと連れて行った。
「わたしが、半年前に事務所から足抜けしたのは・・」
KBTのMUZANこと鬼舞辻無惨が所属事務所から“足抜け”したのは、半年前の“トラブル”が原因だった。
その“トラブル”は、色々と一時期週刊誌ネタとして様々な噂が飛び交っていた事を、歳三は思い出していた。
「事務所の社長は、あろうことかわたしの財産を横領していた。わたしがその事を告発しようとした矢先、突然解雇された。訴えたが、負けた。」
無惨は、そう言った後溜息を吐いた。
「それで、あんた今何処に住んでいるんだ?」
「港区のマンションだ。」
無惨はそう言うと、歳三に自分が住んでいるマンションの写真を見せた。
そこは、有名人が多く住むタワーマンションだった。
「あんた財産取り上げたんだろう?家賃払えるのか?」
「色々と不労所得があるから、大丈夫だ。」
無惨は、駐車場を経営しているという。
「あと、夜のバイトもしている。」
「へぇ・・」
「さてと、時間だ。」
無惨は自分が注文した料理の代金をレジで払うと、カラオケボックスから出て行った。
(夜のバイト、ねぇ・・まぁ、どんなバイトか、想像出来るけどな。)
その日の夜、歳三は夜のバイト先である、歌舞伎町のクラブに居た。
そのクラブは、“ある”性癖を持つ客の為のクラブだった。
それは、ドM―人に虐められる事が大好きな客が集まる店なのだった。
アイドルを辞め、芸能界から引退した歳三は、昼はファミレス、夜はクラブで働き、生活費を稼いでいた。
一匹の猫と人間だけで暮らしているので、心配な事と言えば自分の老後資金と、猫の治療費だけだ。
(さてと、今日も稼ぎますか。)
歳三がそんな事を思いながら更衣室からフロアへと向かうと、何やら奥のテーブルの方が騒がしかった。
(何だ、何かあったのか?)
「あらトシちゃん、いらっしゃい。」
「ママ、何かあったのか?」
「実はねぇ、今夜から期待の新人が入って来たのよ。」
「期待の新人?」
チラリと歳三が奥のテーブルの方を見ると、そこには妖艶な美女の姿があった。
(何だ、何処かで見たような・・)
「頭を垂れて蹲え、平伏せよ。」
(え、まさかこいつ・・無惨かよ!?)
歳三がそう思いながら再度奥のテーブルの方を見ると、無残の前には四人の男達が土下座していた。
「も、申し訳ございません、お姿も気配も異なっていらしたので・・」
「誰が喋っていいと言った?」
無惨はそう言って男達を睨みつけると、男達の間にひぃっ、という悲鳴が上がった。
「わたしが聞きたいのはひとつのみ。何故、下弦のアイドルは売れなくなったのか?」
「そ、そのような事を俺達に聞かれても・・」
「黙れ。あいつらが売れなくなったのは、ひとえにお前達のPRの仕方が悪いからだ。」
「ひぃ・・」
四人の男達の一人、左端に居た男はぶるぶると震え、呻いた後気絶した。
「連れて行け。」
「はい。」
何処からともなく現れた黒服の男が、気絶した男を連れて行った。
「お前は、いつもTプロデューサーと会う時、逃げようとしているな?」
「いいえ、思っていません!」
「お前はわたしを否定するのか?」
(こいつらと無惨、どんな関係だ?)
やがて男達は一人、また一人と居なくなり、残ったのは二十代後半の青年だった。
「最後に何か言いたい事は?」
「わたしは夢見心地でございます。あなた様直々に手を下されるなんて・・わたしを残して下さってありがとう。」
恍惚とした表情を浮かべている青年に、歳三はドン引きしていた。
「耳に花札のようなピアスをつけた少年を連れて来い。そうすれば、もっと情報を与えてやる。」
青年は無惨に一礼すると、店から出て行った。
「何だ、誰かと思ったらお前か。」
「何だじゃねぇ!それはこっちの台詞だ!さっきのは何だ!?」
「仕事が出来ないマネージャーをここへ呼んで説教していただけだ。」
「へぇ、そうか・・って、さっきママが言っていた“期待の新人”ってあんたか!?」
「あぁ。今日からこの店で働く事になった、よろしく。」
「お、おぅ・・」
(大丈夫か・・?)
無惨がクラブで働き出してから、彼に虐められたいという客が店に殺到し、店は繁盛した。
「あ~、疲れた。」
疲れた身体を引き摺りながら、歳三が住んでいるマンションへと向かっていると、エントランスの前に何故か無惨が大きいスーツケースに腰掛けていた。
「待ちくたびれたぞ。」
「てめぇ、何でここに居る?」
「腹が減った、何か食わせろ。」
「人の話を聞け!」
歳三は無惨を部屋に入れると、無惨はソファに座って溜息を吐いた。
「あ~、疲れた。」
「何でここの住所がわかったんだ?」
「履歴書を見た。」
(ママ・・)
「それで?あんたタワーマンションには帰らないのか?」