「FLESH&BLOOD」二次小説です。
作者様・出版社様とは一切関係ありません。
海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。
(うわぁ、最悪!)
東郷海斗は、自宅近くの最寄駅から出た後、急な雨に降られて溜息を吐いた。
雨が止むまで駅前のショッピングモールで彼女は暇を潰す事にした。
モール内の書店で前から読みたかった小説の文庫本が出ているのを知り、海斗はその文庫本を持ってレジへと向かった。
会計を済ませ、海斗が書店から出てフードコートへと向かっていると、リュックのサイドポケットに入れてあったスマートフォンが激しく振動した。
「洋明、どうしたの?」
『・・けて』
「え?」
『た・・』
プツッ、という無機質な音と共に、海斗は恐怖と混乱の只中に取り残された。
ショッピングモールから飛び出した海斗は、雨の中自宅まで走った。
自宅の前には、「立ち入り禁止」のテープと、パトカー、そして野次馬の姿があった。
「父さん、母さん、洋明!」
海斗が家の中へと入ろうとしたが、警官達に止められた。
そして、海斗は見てしまった。
ブルーシートに包まれた玄関の中から、黒い遺体袋が三つ、出て来た所を。
海斗はそのまま、意識を失って倒れた。
高級住宅街で起きた資産家一家殺人事件は、ベテランの刑事達が目を背ける程、現場は凄惨なものだったという。
犯人は、まだ見つかっていない。
「あの子、まだ寝ているの?」
「ええ、そうみたい。」
「和哉、起こして来て。」
「わかった。」
森崎和哉は、食堂から出て二階の従業員部屋へと向かった。
「海斗、起きて。」
「わかった・・」
海斗が着物に着替えて食堂へと向かうと、旅館の女将・静子が彼女を睨んだ。
「全く、いつまでもお客様気分でいちゃ困るわねぇ。」
「すいません。」
「わかったのなら、仕事して!」
「はい・・」
旅館の従業員用の食堂で軽く朝食を済ませた海斗は、和哉と共に客室の掃除を始めた。
「今日は団体さんが来るから、忙しくなるわね。」
「ええ、本当に。」
客室の掃除をした海斗は、大浴場の露天風呂の掃除を始めた。
デッキブラシで浴槽を擦っている内に、海斗は時折寒さに耐えながら、この旅館に引き取られた日の事を思い出していた。
家族を殺され、海斗が母方の伯母の元へと引き取られたのは、両親と弟の葬儀から一月が経った頃だった。
「言っておくけれど、うちのモットーは、“働かざる者食うべからず”だからね。」
今まで、何不自由ない生活を送っていた海斗は、慣れない仲居の仕事に日々奮闘していた。
朝から晩まで忙しく働き、海斗はいつもクタクタになっていた。
海斗に優しくしてくれるのは、従兄の和哉だけだった。
「海斗、露天風呂の掃除は終わったの?」
「はい。」
「そう。じゃぁ今日も、ちゃんと働きなさいね。」
静子はそう言うと、旅館のロビーへと向かった。
「いらっしゃいませ~」
団体客をロビーで出迎えると、海斗は深夜まで休む暇なく働いた。
(あ~、疲れた。)
海斗が疲れた身体を癒す為に露天風呂に浸かっていると、近くから強い視線を感じて辺りを見渡したが、誰も居なかった。
(気の所為か・・)
その日の夜、海斗が住んでいる熱海から離れた東京都内にあるホテルの一室では、一人の男がノートパソコンで何かを調べていた。
彼はやがて、ある旅館のホームページに辿り着いた。
「見つけた・・」
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海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。
(うわぁ、最悪!)
東郷海斗は、自宅近くの最寄駅から出た後、急な雨に降られて溜息を吐いた。
雨が止むまで駅前のショッピングモールで彼女は暇を潰す事にした。
モール内の書店で前から読みたかった小説の文庫本が出ているのを知り、海斗はその文庫本を持ってレジへと向かった。
会計を済ませ、海斗が書店から出てフードコートへと向かっていると、リュックのサイドポケットに入れてあったスマートフォンが激しく振動した。
「洋明、どうしたの?」
『・・けて』
「え?」
『た・・』
プツッ、という無機質な音と共に、海斗は恐怖と混乱の只中に取り残された。
ショッピングモールから飛び出した海斗は、雨の中自宅まで走った。
自宅の前には、「立ち入り禁止」のテープと、パトカー、そして野次馬の姿があった。
「父さん、母さん、洋明!」
海斗が家の中へと入ろうとしたが、警官達に止められた。
そして、海斗は見てしまった。
ブルーシートに包まれた玄関の中から、黒い遺体袋が三つ、出て来た所を。
海斗はそのまま、意識を失って倒れた。
高級住宅街で起きた資産家一家殺人事件は、ベテランの刑事達が目を背ける程、現場は凄惨なものだったという。
犯人は、まだ見つかっていない。
「あの子、まだ寝ているの?」
「ええ、そうみたい。」
「和哉、起こして来て。」
「わかった。」
森崎和哉は、食堂から出て二階の従業員部屋へと向かった。
「海斗、起きて。」
「わかった・・」
海斗が着物に着替えて食堂へと向かうと、旅館の女将・静子が彼女を睨んだ。
「全く、いつまでもお客様気分でいちゃ困るわねぇ。」
「すいません。」
「わかったのなら、仕事して!」
「はい・・」
旅館の従業員用の食堂で軽く朝食を済ませた海斗は、和哉と共に客室の掃除を始めた。
「今日は団体さんが来るから、忙しくなるわね。」
「ええ、本当に。」
客室の掃除をした海斗は、大浴場の露天風呂の掃除を始めた。
デッキブラシで浴槽を擦っている内に、海斗は時折寒さに耐えながら、この旅館に引き取られた日の事を思い出していた。
家族を殺され、海斗が母方の伯母の元へと引き取られたのは、両親と弟の葬儀から一月が経った頃だった。
「言っておくけれど、うちのモットーは、“働かざる者食うべからず”だからね。」
今まで、何不自由ない生活を送っていた海斗は、慣れない仲居の仕事に日々奮闘していた。
朝から晩まで忙しく働き、海斗はいつもクタクタになっていた。
海斗に優しくしてくれるのは、従兄の和哉だけだった。
「海斗、露天風呂の掃除は終わったの?」
「はい。」
「そう。じゃぁ今日も、ちゃんと働きなさいね。」
静子はそう言うと、旅館のロビーへと向かった。
「いらっしゃいませ~」
団体客をロビーで出迎えると、海斗は深夜まで休む暇なく働いた。
(あ~、疲れた。)
海斗が疲れた身体を癒す為に露天風呂に浸かっていると、近くから強い視線を感じて辺りを見渡したが、誰も居なかった。
(気の所為か・・)
その日の夜、海斗が住んでいる熱海から離れた東京都内にあるホテルの一室では、一人の男がノートパソコンで何かを調べていた。
彼はやがて、ある旅館のホームページに辿り着いた。
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