追記・・今回のツアー最終日、京都の様子が、「原田依幸 KAIBUYSU LIVEs!@京都文化博物館別館」というブログ記事で読めました。
10月2日夜、甲府桜座の KAIBUTSU LIVEs! 甲府公演にでかけました。19時半開演ということでしたが19時過ぎに入ったら行列していまして、良い席を目指してガンバルなんて事もなく諦めが良い私はロビーでコーヒー。
場内に入ったらびっしり埋まっていましたが係の方が最前列の後ろにもう一列座席を増やすということで、このあたりは桜座の良いところですね。私はその一つを確保できました。なんとピアノの鍵盤が見えるというポジションを占めたのです。
登場したクインテットメンバーがそれぞれに音を出し始め、音合わせをしているのだと思っていたら、そのまま演奏になっていきました。これまで聞いたことが無いサウンドで、もしこれをジャズと呼ぶなら昔はじめてオーネット・コールマンを聞いた時のショックと同じです。私は長い間ジャズシーンから遠ざかっていますから、現代音楽としてのジャズの変貌を全く知りません。私が聞いてきたのは絵画で言えば具象画であり、ダウンビートのリズムと馴染みあるメロディーとジャムセッションのハーモニーの楽しさに親しんでいたのです。
桜座のカイブツは抽象画でした。楽譜が無い、曲名の案内も無い、プレイヤーが勝手に音を出していてそれがサウンドの大きなうねりとなって空間を形成しているという感じ、これをライブじゃなくてレコード(CD)で聞いたらこの感覚は分からないかも知れません。
チェロでジャズ(ということにして)演奏を聞いたのも初めて、チェロといえばあの「昼下がりの情事」でオードリー・ヘップバーンが抱えていた楽器という印象しか無い。パンフレットではこのトリスタン・ホンジンガーについて「その演奏は視覚的にも印象的」と書かれていた意味が分かりました。チェロのカイブツなんですね。
トビアス・ディーリアスのサックスは時には口笛を吹いているのかと思ったほどの高音まで出ていて、「ハーレムノクターン」のサム・テイラーなどでサックスの音色を認識していた私にはこれも別世界のカイブツでした。
目を閉じて聞いているとそれぞれの楽器は一台ずつしか無いのに、複数のチェロやピアノが演奏しているかのようにも聞こえました。ピアノからすごい音が響くので鍵盤を見たら、原田依幸は両掌で鍵盤を押さえつけるように弾いている、ピアノって指先で弾くものではなかったかと驚きました。
係の人がドラムスの周りを這って散らばったスティックを拾い集めていました。ルイス・モホロの手から離れて飛んだものなのでしょう、凄まじいパワフルなドラムです。通常みられるスティックだけでなく、木魚のバチのように尖端に柔らかいヘッドのついたバチも使っているのはジャズでは初めて見た気がします。
「コントラバス」は弓で演奏する、「ベース」は指で弾くと私は勝手に思っています(^o^) へンリー・グライムスのベースは二刀流でした。ジャズベースで弓が使われたのを見たのも私は初めてです。私が浦島太郎になってしまったのでしょう。
40分ほどの曲が休憩を挟んで2曲、アンコールで短いもの一つでしたが、曲と言ってよいのか、ジャムセッションが2+1あったと思えばよいのか、私には分かりません。それほどのカイブツ・サウンドでした。
向かって左からピアノ、チェロ、ベース、ドラムス、サックスと位置して演奏されました。終わった後のプレイヤーの皆さんを撮らせていただきました。演奏中の写真は座った膝の上にカメラを置いて見当でシャッターを押したら全く偶然に画面に入ったものです。
写真でピアノのカイブツ原田さんの後ろに、サックスのカイブツさんの後ろ姿です。
座席を増やしていただいたお蔭で良い場所から演奏を楽しむ事ができました。
このライブツアーのパンフレット、ポスターに使われた絵のことは既に書きましたが、おそらく貴重なポスターになると思っています。
挿繪画家 竹中英太郎の絵は現在も書籍などには使われていますが、今回のような形で使われたのは近年なかった事だと思います。来年、平成20(2008)年は竹中英太郎没後20年になります、昭和63(1988)年4月8日没。大正、昭和の激動期を生きた、まさにカイブツ。
そのご子息カイブツ竹中労がご存命なら、今の日本をどのようにご覧になりどのように動かれるか、最近の私はそんなことばかり考えています。