遺伝屋ブログ

酒とカメラとアウトドアの好きな大学研究者です。遺伝学で飯食ってます(最近ちょっと生化学教えてます)。

tRNAのQちゃん

2008-03-18 23:19:11 | 大学生活
教授の退官講演ではいろいろな研究者や研究のエピソードが聞けるので、一般の学会発表やシンポジウムよりもかなり好きです。今日講演をした教授は派手な方ではないので自分の取り組んできた研究について淡々と発表されました。1時間という講演時間を守って、思い入れを抑えながらとつとつと。
今の理系なら大学院の博士課程で博士号をとってないとまず教授にはなれないのですが(というか、助手にもなれないよ)、彼は大学院に進学せずに上級国家公務員試験に受かって国の研究機関に進んだとのことでした。上の世代にはいろんな経歴を持った教授がいるのです。僕の友人のひとりにある国立大学教授の息子がいるのですが、彼の父は博士号を持っていませんでした。その人にしかない技術があれば教授になれたんですな。こういう柔軟な登用システムって昔の日本の良いとこだと思います。今は文科省がむやみに大学院を拡大して、『??』なレベルの博士を大量生産してどーしょーもなくなってます。どうすんの?まじで!

トランスファーRNA(tRNA)はその構造の中にところどころ特殊な核酸が含まれています。核酸の配列はそれぞれを一文字のアルファベットを記号にしてそれを並べて表現します。例えばアデノシンならA、シトシンならCというふうに。その中でQという記号で表現される核酸があります。この核酸はアミノ酸のヒスチジン、アスパラギン、アスパラギン酸を運ぶ3種類のtRNAでのみ発見される非常に特殊なものでした。塩基の部分を切り出して構造を解析したいのですが、酸でどうグツグツ熱しても切れない・・・・困り果てて「こいつはお化けだ!」ということに。てなわけで、この核酸に当時のテレビのキャラクター『おばけのQ太郎』から"Q"という記号を与えられました。(笑) これがそのまま国際的に認知されて正式名称として"queuosine(ケゥオシン)"という名前が付いたそうな。

こういう小さなエピソードって、退官講演でないと聞けないんですよ。

本日のお酒:エビスビール + 池月 純米 + 芋焼酎お湯割り + ハウスワイン(赤)
コメント
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