遺伝屋ブログ

酒とカメラとアウトドアの好きな大学研究者です。遺伝学で飯食ってます(最近ちょっと生化学教えてます)。

能力とゲノムデータ

2012-08-21 22:14:24 | 
高級で造りのすばらしい焼酎を飲んだことありますが、そういうのは田崎真也さんのおかげで手に入らなくなったので、安い普通の焼酎を飲むことが増えてます。というか、ほとんどがそう。どうせ安いなら処分の簡単な紙パックってなことで、今夜は先日買った黒霧島の20度。普通は25度なんですが、20度を見つけたので飲んでみました。20度といえば、だいたい日本酒の原酒がそれくらいです。つまり、蒸留しなくてもそれくらいはいけます。販売されてる日本酒が14から15度なのは出荷前にアルコール度を調節してるからなんすよ。普通の人にとって飲みやすいアルコール度がその程度だからです。酒税法で22度までOKなのは、蒸留無しの醸造だけでもそこまでもってけるから。
世界の醸造酒の中で日本酒醸造が最高のアルコール度を誇ってます。酵母のアルコール耐性ギリギリっすよ。普通に醸したら20度なんて無理。醸造酒として最も低温で醸されるのが日本酒です。ゆっくりジワジワ、それでいて能力の限界まで引き出してしまう醸造法が清酒醸造なのです。そこで醸される芳香は黄麹Aspergillus oryzaeが元になっているのですが、こいつは温帯地域でしか生息しません。南限は九州北部。それより南はApergillus awamoriと呼ばれる黒麹かその変異株の白麹。これらの麹で糖化されたものは、醸してもそのまま飲める酒にはなりません。だから蒸留しなければなりません。そもそも九州じゃ低温が得られないし。
僕が大学4年生で研究室に入ったとき、Zymomonasに属する細菌が醸造業界で脚光を浴びてました。こいつにはアルコール発酵を出来るやつがいるのです。ちょうど研究室のOBが来てて、うちの先生とこれからのアルコール発酵はZymomonasだと力説してたのを聞きました。うちは酵母を研究していたんで少し不安になりましたが、Zymomonasによるアルコール発酵は主流になることはありませんでした。細菌類だったので、細胞がアルコールにやたら弱かったのです。細胞膜にちょっとペプチドグリカンがある程度じゃ守りきれないのですな。細胞壁、ばんざーい!!

塩麹ブーム 1日1回撹拌して約10日で完成するキットもあり(NEWSポストセブン) - goo ニュース
流行ってるんで、塩麹を使った食品が気になっていたのですが、特別に美味しいと思えるものがありません。塩麹だからこそ美味しいってものがあるのなら教えてください。ところで麹が何なのか分かってますか??

微生物遺伝子情報 産業創出へDB化 経産省、来年度から(産経新聞) - goo ニュース
経済産業省は来年度から医薬品や食品、化学製品の開発に有効な細菌や酵母など微生物の遺伝子情報の整備に乗り出し、微生物が持つ機能や安全性などを遺伝子レベルで解析してデータベース(DB)化します。データベース化はやってやってやりまくるべきです。特定の生物種でやるだけでなく、有用な生物相に対してゲノムデータをとっておくべきです。以前、『生態系ゲノミクス』でお話ししましたが、DNA配列を生物個体に限定することはないのです。その環境ごとごっそりDNAデータを取ってしまうことが、いずれ役に立つ時がきます。例えば、人間に対してもヒト細胞のゲノムだけでなく、腸内細菌や肌表面にいる微生物をはじめとするヒトのからだにいる全ての生物を含めたゲノムデータベースを構築すべきだという話しが最近あります。だって、無菌状態の人間なんていませんから。むしろ身体の菌相が健康な人が理想的なのです。雑多で混沌として、それでも秩序だって機能的なアクティビティがある生命の営みは人工的な奇麗さでは表現できないはずなのですよ。

本日の酒:KIRIN CLASSIC LAGER + 宮崎芋焼酎 黒霧島(20度)
コメント
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