遺伝屋ブログ

酒とカメラとアウトドアの好きな大学研究者です。遺伝学で飯食ってます(最近ちょっと生化学教えてます)。

オーロラという名の酵素

2011-05-19 21:38:19 | BIONEWS
そもそも『いでんや』っていうサイトを始めた時は生物学の話中心で院生クラスの人が対象だったのですが・・・毎日更新しているうちにしんどくなって適当にニュースを拾って感想を書いたりするようになったのですよ。パラグライダー関係は別サイトでやってました。今は、このgoo blogで混然一体・・・というか、与太話ばっかりというか・・・俗称『酒日記』。(笑)

てなわけで、今日は生物学のお話。
東北大ら、細胞分裂装置が形成される新たなしくみを解明(マイコミジャーナル) - goo ニュース
この記事に出てくるタンパク質リン酸化酵素Aurora Aってのは、有糸分裂で機能するリン酸化酵素です。こいつをたたくと赤道面(Metaphase plate)に凝縮した染色体が集合できなくなるんですな。酵母ではIPL1っていう遺伝子にコードされていて、倍数性(Ploidy)のおかしくなる突然変異として分離されました。遺伝子名IPLは"Increase in PLoidy"の略。これが最初に穫られた時の論文を学生時代に研究室の雑誌会で発表したんよ。それで今でもこの酵素に興味をもってます。
この記事で紹介されている論文の新しいところはAurora Aが細胞分裂期に凝縮した染色体の周辺で形成される微小管の安定化に必要ってとこで、それがリン酸化酵素としての酵素活性を必要としていないこと。中心体形成にはリン酸化酵素としての機能が必要なのにもかかわらずです。記事中の「凝縮した染色体の周辺で形成される微小管の安定化」が何のことを指しているのか、元になった論文を読んでないんで分からんのですが、動原体への微小管の接着のあたりですかね? そこでの構造安定で役割を果たすなら直接相互作用する相手を捜すのが次の手として考えられますが、候補が絞れますから。俺としてはRanGAPやCrm1あたりがきたら面白いなと思ってます。RCC1をリン酸化するのがAuroraだっていう話も昔はあったんす。
癌細胞は染色体の脱落や組み替え等の有糸分裂期のトラブルと推察される現象がいっぱい起こってるんですが、それがAurora Aの機能欠損に由来していると思われています。まあ、こいつを正常化すれば癌が抑えられるかは疑問ですが、細胞が癌化して行くプロセスについて有効な研究対象のひとつとなると思われます。でも、純粋に科学的興味だけで研究しても十分面白い素材なんすよ。なんせ、このリン酸化酵素の研究に使われている主な実験生物って、ショウジョウバエ、アフリカツメガエル、線虫だったりするわけですから。

すんません、今日のエントリーは大学院生でも、ちとついて来れないかもしれない話になっちった。アクセス数減るんだろうなぁ・・・。(汗)
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