法人営業に最適な『理詰めの営業』で日刊工業新聞社賞受賞の中小企業診断士 齋藤信幸の営業力強化手法 <情報デザイン>

営業自身のシンになる営業手法を確立し、自信に。営業案件の可視化と営業の行動管理を実現。特にコンプレックスセールスに最適。

『ZERO TO ONE』(4)- 「あの会社の営業は一味違う」と顧客に言わせる営業

2025-02-15 22:22:29 | ・・ピーター・ティールの営業
2015年ビジネス賞大賞を受賞した「ZERO to ONE(ゼロ・トゥ・ワン)」(ピーター・ティール著)。
スタートアップを目指す人々を勇気づける本ですが、営業の重要性を第11章「それを作れば、みんなやってくる?」で説いています。

「どう売るか。・・・・・

差別化されていないプロダクトでも、営業と販売が優れていれば独占を築くことはできる。

製品がどれほど優れていても、たとえそれが従来の習慣に合うもので、一度、利用すれば気に入るような製品だとしても、強力な販売戦略の支えが必要になる。」


どんなに優れた製品でも営業戦略を間違えるとNo.1にはなれなません。

映画『陽はまた昇る』や『プロジェクトX〜挑戦者たち〜』(NHK)でも取り上げられた家庭用ビデオレコーダーの規格争い、『VHSとベータマックスのデファクトスタンダード戦争』は、その事例の代表です。玄人筋には好評で技術的にも優れていたとされるソーニーのベータマックス。それと対抗した日本ビクターや松下電器産業(現、パナソニック)。結果はVHSの勝利。勝因の一つが営業戦略にあるとされています。

稲盛和夫の著書「アメーバ経営」の中に、以下のような件があります。

技術的な優位性というのは、永遠不変ではない。だから、企業経営を安定させようと思うなら、たとえ技術的にさほど優れていなくとも、どこでもやれるような事業を優れた事業にすることが大切である。つまり、誰もがやれるような仕事をしていても、「あの会社はひと味違う」というような経営をすることが、その会社の真の実力なのである。

家庭用ビデオレコーダー開発の時代は、まだ、ハード的な差別化が可能でした。
しかし、最近はハード面での技術革新が少なくなり、差別化のポイントの少ない製品や目に見えない差別化の製品・サービス(例えば、ITシステム構築、販路の差別化など)の営業が求められています。

技術革新のような圧倒的な強みにはなりませんが、「あの会社の営業は一味違う」と顧客に言わせるような、営業自体が差別化要因になるような競合他社にはない営業の戦略的な育成・強化が重要です。


営業に疲れたら武蔵野散歩(『武蔵野』リイド社、斎藤潤一郎著)>


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『ZERO TO ONE』(3)- 一流の営業はいつのまにか顧客に語らせる

2025-02-08 20:41:23 | ・・ピーター・ティールの営業
2015年ビジネス賞大賞を受賞した「ZERO to ONE(ゼロ・トゥ・ワン)」(ピーター・ティール著)の続きです。

一流の営業はそれとわからない。・・・・・

営業マンはみな役者だ。彼らの仕事は売込みであって、誠実であることではない。セールスマンという呼び名が中傷にもなるのはそのせいである。でも僕たちがネガティブな反応を示すのは、ぎこちないあからさまな売込み、つまり優秀じゃないセールスに対してだ。

一口に営業と言っても能力はピンからキリまでだ。・・・・・セールスの超達人もいる。超のつく達人を知らないとすれば、それはまだ出会っていないからではなく、目の前にいながら気付いていないからだ。・・・演技と同じで、売込みだとわからないのが一流のセールスだ。・・・・・

どんな仕事でも、営業能力がスーパースターと落ちこぼれをはっきり分ける。ウォール街では新卒は数字をはじくアナリストからスタートするけれど、最終目標はディールメーカー(M&Aにおける仕掛人や主要プレーヤーで営業能力は必須)になることだ。・・・・・法律事務所のリーダーは大手クライアントを獲得できるレインメーカーだ。・・・・・・

エンジニアの究極の目標は、何もしなくても売れるようなすごいプロダクトを作ることだ。でも現実のプロダクトについてそうだという人がいたら、うそになる。・・・・・何か新しいものを発明しても、それを効果的に販売する方法を創り出せなければ、いいビジネスにはならない。それがどんなにいいプロダクトとだとしても。」

『理詰めの営業』で説いているように、顧客があたかも自分で考えたように、顧客の口で「必要なソリューション」を語らせている営業。それが一流の営業でしょう。



営業に疲れたら武蔵野散歩(『武蔵野』リイド社、斎藤潤一郎著)>


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『ZERO TO ONE』(2)- 営業なんていらねえよ。

2025-02-01 17:46:34 | ・・ピーター・ティールの営業
2015年ビジネス賞大賞を受賞した「ZERO to ONE(ゼロ・トゥ・ワン)」(ピーター・ティール著)。

スタートアップを目指す人々を勇気づける本だが、先週、述べたように営業の重要性を第11章「それを作れば、みんなやってくる?」で説いている。

以下は、その件(くだり)です。
「シリコンバレーのおたくたちは、広告やマーケティングやセールスに懐疑的だ。
というのも、それが薄っぺらで不合理に見えるからだ。・・・・・・
エンジニアの領域では、ソリューションは成功するか、失敗するかのどちらかしかない。
仕事の評価も同じように簡単で、見栄えは対して重要じゃない。

セールスはその反対で、本質を変えずに見栄えを変えるための組織的なキャンペーンだ。
(広告については、「すぐにモノを買わせるためにあるわけではなく、後に売り上げに繋がるように巧妙な印象を刷り込むもの」としています)

エンジニアにとってそれはくだらないことだし、基本的に不正直だとさえ思っている。・・・・・
科学やエンジニアリングは見るからに難しそうなので、人はそれを実際以上に過大評価している。

だけど、セールスを簡単に見せるのがどれほど大変かを、おたくたちは理解していない。」


生産財の営業には、技術的な知識やエンジニアとの協業が必須です。もしあなたの会社のエンジニアが上記のような考えだったら、営業活動は旨くいきませんね。

もとIBMのハードディスクの開発エンジニアであった私にはエンジニアの考え方・気持ちは分かります。

しかし、営業もエンジニアの仕事に劣らず創造的な仕事です。

『理詰めの営業』で説いているように、顧客があたかも自分で考えたように、顧客の口から「そのソリューションが必要だ」と語らせるには、創造力と戦術が必要です。

いくら良いと思うものを作っても、顧客が必要と思わない限り売れないのです。


営業に疲れたら武蔵野散歩(『武蔵野』リイド社、斎藤潤一郎著)>


<その続編>

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『ZERO TO ONE』(1)‐ ピーター・ティールって?

2025-01-24 21:43:27 | ・・ピーター・ティールの営業
Coffee Break。最近、コーヒーミルも買って旨いコーヒーを飲んでリラックスする時間が楽しみになってきた。豆はフィリピンの「Barako Coffee」。そんな時間を使って『イーロン・マスク』(ウォルター・アイザックソン著、井口耕二訳、文藝春秋)を読んでいたらピーター・ティールの名前が出てきた。ピーターはイーロンと一緒に仕事をし、喧嘩することもあったよが、資金面では支えたりもしたようだ。

と去年の2月に書いた。

そして、今、少し古い本だが『ファイスブック・若き天才の野望』(デビッド・カークパトリック著、滑川海彦・高橋信夫訳、日経BP社)を読んでいると、またしてもピーター・ティール(この本ではピーター・シール)が登場。冒頭の登場人物紹介では、「ペイパル創業者で投資家。黒髪の金融の天才。ザ・フェイスブックの取締役」と紹介されている。

彼の名前の英語表記は、Peter Thiel。翻訳者によりカタカナ表記が異なるようだ。

この偉大な投資家が書いた『ZERO TO ONE』の営業に関わる部分を再々掲。

ちなみに冒頭のフィリピンの「Barako Coffee」は今も楽しんでいる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



ネット上に膨大な情報があるにも関わらず情報の選別に疲れたのか、最近、古い本を取り出して読み返しています。その一つが、2015年ビジネス賞大賞を受賞した『ZERO to ONE(ゼロ・トゥ・ワン)』(ピーター・ティール、ブレイク・マスターズ著、滝本哲史日本語版序文、関美和訳、NHK出版)。

前回は著者の経歴を十分に知らずに読んだが、改めて著者の略歴を調べて読むと一段と興味が膨らみます。

(以下、ウイキの要約)
ティールはスタンフォード・ロー・スクールを1992年に卒業後、合衆国控訴裁判所で法務事務官として働く。1年後、合衆国最高裁判所の法務事務官となるために面接を受けたが、不採用となる。その後、ニューヨークに移り、法律事務所サリヴァン&クロムウェルの証券弁護士として働くが、7ヶ月で離職する。そしてクレディ・スイスの通貨オプショントレーダーとして働いた。その傍ら、元教育長官ウィリアム・ベネットのスピーチ・ライターを務めた。

1996年にベイエリアに戻り、インターネットとパソコンが急速に発展し、経済を変化させていることに気付く。そして友人や家族から100万ドルの資金を調達し、ティール・キャピタル・マネジメントを設立。ベンチャーキャピタリストとしてのキャリアをスタート。発足当初に友人ルーク・ノゼックのプロジェクトに10万ドルの投資をしたが失敗。しかし、1998年、そのノゼックの友人であるマックス・レヴチンと共にコンフィニティ(Confinity)を創業。

1999年、コンフィニティが電子決済サービスPayPalを立ち上げる。2002年2月に新規株式公開(IPO)したPayPalを、その年の10月に15億ドルでeBayに売却。ティールが保有していた3.7%の株式は買収時に5500万ドルの価値となった。

その後、ベンチャーに投資する会社を設立。Facebook初の外部投資家となったほか、航空宇宙、人工知能、エネルギーといったさまざまな分野に革新的な提案をする新しい企業に投資を続けています。

ちなみに、ティールをはじめとするPayPalの創業メンバーは、現在も投資家として活躍し、YouTube、テスラモーターズ、LinkedIn、スペースXといった価値あるベンチャー企業をいくつも起ち上げています。IT業界に大きな影響力を持つ彼らは「PayPalマフィア」と呼ばれており、ティールは、その「PayPalマフィア」の中心的な存在です。

この本はスタートアップを目指す人々を勇気づける本ですが、スタートアップ企業における営業の重要性を第11章「それを作れば、みんなやってくる?」で説いています。

「営業は誰もが行っていることなのに、ほとんどの人はその大切さが充分にわかっていない。・・・・

商品のセールスに必要なことを十把一絡げに販売と呼んでいるけれど、その重要性を僕たちは軽んじている。・・・・

営業マンやそのほかの「仲介者」は邪魔な存在で、いい製品を作れば魔法のように販路が開かれると勘違いしている。

特にシリコンバレーでは『フィールド・オブ・ドリームス』的な発想(「それを作れば、みんなやってくる」)が一般的で、エンジニアは売ることよりもクールなものを作ることしか考えていない。

でも、ただ作るだけでは買い手はやってこない。

売ろうとしなければ売れないし、それは見かけよりも難しい。」

スタートアップこそ営業が大事。



営業に疲れたら武蔵野散歩。こちらは第二弾が出たようで(『武蔵野』リイド社、斎藤潤一郎著)>



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『理詰めの営業』- 理系だから考えた営業方法論(Sales Methodology)

2025-01-19 02:07:04 | 『理詰めの営業』そのコンセプト
遠い昔、IBMの新入社員だった私は、この時期、工場で現場実習をしていました。その後、ハードディスクの開発部門に配属され、海外赴任も経験、いい時代を過ごせたと思います。なんといっても、情報産業は毎年、二桁成長し、ハードディスクも小型化、低価格になりPCに標準搭載され、産業として飛躍しました。

そんな、エンジニアだったからこそ、製品開発・設計のように、営業をもっと論理的に進めたいと考え、研究・開発したのが『理詰めの営業』です。

しかし、どう勉強したらよいのか一番悩んだのが営業でした。

エンジニアとしての私は、学生時代に学んだ数学や物理、化学、専門科目を基礎にして、実務を行いながら関連する書籍や論文を読み、自分の知識・経験を蓄積していきました。
転職してプロダクト・マーケティングとなったときは、技術的なバックグラウンドを活かしつつ、フィリップ・コトラーの『マーケティング・マネジメント』などを精読し、また、ボストンカレッジのエグゼクティブコースでインターナショナル・マーケティングを学ぶ機会もいただきました。

では、営業はどうでしょうか。

何事も新しいことを始めるときは勉強から入ります。営業を学問的に研究しようと思いましたが、営業学という学問はありません。営業はマーケティングの一部にすぎません。コトラーの本を紐解いても、営業に関する記述は多くはありません。

一方、書店に行くと営業に関する本はたくさんあります。

外資系コンサルティング会社の社員が書いた本には、論理的に営業を分析したものもあり、ある程度は役立ちましたが、肝心なところがぼやけていたり、事例の内容が簡単化されすぎていたりで、今一つ満足できない内容でした。

また、営業の神様といわれる人たちが書いた営業の本は、精神論、根性論が多く、元気づけられることはありましたが、営業の方法論を考える上ではあまり役立ちませんでした。

私自身が営業をしていたときは、世の中がその製品を必要としていたので、同業他社との競争はありましたが、自分のエンジニアとしての経験を活かして、顧客の懐に入り、信頼を築くことにより、比較的容易に成果を上げることができました。

しかし、経営の一端を担うようになった1990年代後半には、私のやっていた素人営業では通じない時代になっていました。私が営業を行っていたときは、顧客がどのような製品を必要としているかが明らかで、製品の競争力もあったので、誰でも売れたのです。

しかし、モノ余りの時代、顧客自身が何を必要か判らない時代、グローバルに競争する環境では、なかなか営業が成果を出すことができません。

経営者として生産財、具体的には計測装置の営業を見ていたときは、毎週、営業会議を開いて、案件一つ一つの進捗状況をチェックするのですが、案件の詳細を十分に把握することができず、結果的に数字だけを追いかけることが多くなりました。案件の中身が見えないので、適切なアドバイスもできない等の問題もありました。

そこで、「こうすれば営業ができる」という営業に向けた精神論ではなく論理的で明確な指針ができないか、個人の資質にのみ依存しない営業の方法論(Sales Methodology)を確立できないかと考えました。

目指したのは、営業プロセスの標準化やマニュアル化ではなく、顧客の動きや環境変化に対して動的に、柔軟に対応するためのツールの作成と営業を論理的に行う方法の開発でした。

2000年から営業案件の可視化のツールを開発し始め、論理的に営業のステップを受注に向かって一歩一歩進める営業の方法論を『理詰めの営業』としてまとめました。
もともとは価格競争の土俵に上がるのを避け、付加価値を売るという意味で『バリューセリング』という名前を使っていましたが、顧問先の社長から「将棋や囲碁のように論理的に、一手先、二手先を考えて営業をする手法だね」と言われ『理詰めの営業』という名前に変えました。

この手法の開発では、コンプレックスセールスと呼ばれる法人営業への適用を目指していました。コンプレックスセールスとは、

・高額の商談や技術的に複雑な商談で、
・顧客の課題の把握、解決策の紹介から受注に至るまで長期間複数の商談を行う必要があり、
・複数の担当者、複数の関連部門による意思決定が必要とされ、
・意思決定は商談の場以外のところで行われる営業です。
・また、受注から納品・引き渡しまでに時間がかかり、
・その後もフォローが必要な案件でもあります。

例えば、プラント建設やIT関連の大型投資、生産設備、ビル管理などは好事例でしょう。

初期の適用事例は、大手の生産財メーカーやSI企業でした。デモや提案の必要な業種です。
一方で、中小企業診断士として製造業やIT企業を中心に中小企業の営業強化支援も行いました。

その事例の一つを『匠な工場から巧みな営業へ~営業力強化による工場の町の経営革新』を2011年の中小企業経営診断シンポジウム(社団法人中小企業診断協会主催)で発表し、日刊工業新聞社賞を受賞しました。開発開始から10年余りの成果でした。

その後も、このブログを見ていただいてのとおり、研究と実践を積み重ねています。

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コンプレックスセールスを成功に導く『理詰めの営業』をビル管理業に適用。13%売り上げを伸ばす!!(その1)

2025-01-12 21:55:32 | 『理詰めの営業』そのコンセプト
コンプレックスセールスを成功に導く『理詰めの営業』をサービス業に適用し、成果がでました。

適用分野は、「ビル管理業務」です。

大きなビルには、照明や分電盤、非常用発電機などの電気設備、エアコンに代表される空調設備、飲料水、雑排水に関連するタンクや配管、駐車場、エレベーター、自動ドア、消防設備などの多くの設備があります。これらの保守・管理がビル管理会社の主な仕事です。

清掃業務や保安・警備、受付業務なども含まれます。

事故や故障を防ぎ、そのビルを利用する人々が快適で安全に過ごせるようにすることが使命の業界です。

更に言えば、ビルの価値を維持・改善し、オーナーに利益をもたらすこと、といえます。

この業界も「コンプレックスセールス」に該当します。

・受注金額が高額(億単位の商談もあり)で、顧客の課題を把握、解決策の提案、受注にいたるまで複数回の商談が必要

・(総務部が中心ですが)複数の担当者、複数の関連部門による意思決定

・意思決定は商談の場以外のところで実行(競争入札が一般的)

製造業と異なるのは、年単位の管理費用を見積もり、提示し、一旦、受注できれば、3から5年は仕事が続くことです。

魅力的なビジネスです。

コンサルタントとしても売り上げに連動した契約にしておけば安定した収入が得られます。

『理詰めの営業』を導入することにより、業界に不慣れな人でも、営業に対する確固たる考え方を身に着けることができ、成果を上げることができます。

また、『理詰めの営業』を一つの共通言語として、情報の共有化が図れるようになり、組織として営業情報の蓄積、営業力の向上が図れます。

顧問先のビル管理会社は、2018年度13%売り上げを伸ばしました。また、2019年度も15%の伸びが期待されています。

データセンターのC社、証券会社のU社、ITの大手A社、M社等を取れたからです。

とは言え、2018年は、失注も2件ありました。

原因は、「顧客の課題の把握が不十分であったこと」、「ライバル会社と顧客の強固な関係を切り崩せなかったこと」にあります。

原因を更に深堀して、対策を練り、2019年、反転攻勢をしかけました。それが上記の結果です。

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『理詰めの営業』- 購買行動と営業 - (8-5) 「顧客リレーションシップ」マネージメント成功のキー

2025-01-05 19:32:20 | ・・購買行動と営業プロセス
「売ってさよなら」の「ない」、「できない」コンプレックスセールス。もう一度、その定義を確認してみましょう。

このコンプレックスセールスとは、以下の特徴を持つ営業です。

・高額の商談や技術的に複雑な商談
・顧客の課題の把握、解決策の紹介から受注、受注から納品に至るまで長期間、複数の商談が必要
・納品後のフォローも重要
・複数の担当者、複数の関連部門による意思決定
・意思決定は商談の場以外のところ

受注までは『理詰めの営業』を活用し、戦略的に行動しても、一旦、注文書を受け取ると営業の気持ちは別のところに行ってしまうことがあります。
営業と顧客の間の同床異夢の始まりです。

では、受注後も緊張感を維持するにはどうしたらよいでしょうか。

コンプレックスセールスの特徴を理解し、「契約は始まりにすぎない」ことを認識し、『理詰めの営業』を活用して案件を定期的に振り返ります。
そのとき顧客の微妙な変化を敏感に感じ取り、自社が解決すべき自社自身の課題と自社の利益になるチャンスを察知します。


また、顧客との依存関係が望ましい状況か、顧客はどう思っているか、買い手の心理に配慮できているか、等をベースに自社の顧客リレーションシップの現状を振り返ります。

グループ営業の場合、あるいは、長期に亘る案件の場合、売上だけではなく顧客とのリレーションシップ構築の「強度」で、グループあるいは個人を評価することも必要です。

気づき、振り返り、顧客リレーションシップの強度から経営資源の割り当てを行い、顧客リレーションシップを良好にするためのコミュニケーションの確立と顧客とのコミュニケーションの習慣化が大事になります。

これにより有意義な顧客とのコンタクトが行われ、顧客リレーションシップという無形資産の増加を図ることができます。

さて、このような「顧客リレーションシップ」マネージメントをCRMシステムやSFAで後押しすることはできるでしょうか。
今のところ、私は有効なシステムを見つけ出せていません。読者の中で、適切なシステムをご存知な方がおられましたら、是非、コメントをお寄せいただければと思います。

さて、以下の表は一般的な営業のタイプの分類です。

あなたはどのようなタイプの営業ですか。理想的な営業はどのタイプでしょうか。

いままでの記事から「リレーションシップ・ビルダー」とお考えでは。

顧客リレーションシップは、いわば、「営業のインフラ」のようなもので、あって当たり前、なければ仕事にならないものです。

「リレーションシップ・ビルダー」の営業成績はよくないとのデータがあります。何故?いままでの説明は何だったのか?

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『理詰めの営業』- 購買行動と営業 - (8-4) 相互依存関係を深化させるポイント-2

2024-12-28 16:44:29 | ・・購買行動と営業プロセス
相互依存関係を深めていくことの重要性を、ハードディスクや測定器、ビル管理のセールス、いわゆる、コンプレックスセールスを行ってきた私はたびたび痛感させられました。

相互依存関係深化のためには、下記の3点を日々、顧みることが肝要です。

・どの顧客と接点があるかではなく、個々の顧客からどう思われているか。


「担当エンジニアも課長も部長も事業部長もその上の役員も社長も知っている」ことはすばらしいことですが、その人たちにどう思われているか考えて見ましょう。「頼りになる営業」と思われているでしょうか。

・売り手と買い手は、どれくらい依存しあっているか、あるいは、依存しあっていると感じているか。

あなたが依存していなければ顧客も依存していないかもしれません。いやいや「彼女は俺にべたぼれ」とうぬぼれて振られたことはありませんか。自分の製品がないと顧客がどれだけ困るか具体的に考えてみよう。顧客の選択肢は?

・売り手が買い手個人をどれだけ知っているか、買い手の心理に配慮できているか。

手始めに『理詰めの営業』の「関係顧客分析」を埋めてみましょう。

例えば受注できた直近の案件の関係者を洗い出し、記入してみてください。

そこまでの時間がない方は、最も仲の良い顧客の上司について検討してみてください。

この段階でつまずいているようでは、顧客リレーションシップの構築がまだできていないというしかないです。



深いリレーションシップを築けるかどうかは売り手次第です。

営業だけでなく、開発、製造、サービスのエンジニアにも参加してもらい、人的な依存関係の構築、マルチチャネルの情報収集を行いましょう。

また、単に顧客の要望に応える、顧客を傷つけないように大事にする、というのではなく、技術的な議論などを通じて、お互いに刺激し合える関係にまでなれば、より強固なリレーションシップが築けたといえるのではないでしょうか。

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『理詰めの営業』- 購買行動と営業 - (8-3) 相互依存関係を深化させるポイント - 1

2024-12-20 23:29:13 | ・・購買行動と営業プロセス
先週お知らせしたように、顧客リレーションシップという無形資産を増減させる行動で、一番懸念しているのは顧客とのコミュニケーションです。

「こちらから電話をかける」vs「顧客からの電話に折り返すのみ」とありますが、現状は
「こちらからメールする」「顧客からのメールに返信するのみ」ではないでしょうか。



実際、顧問先の協力会社の営業を観察していると、メール以外のコミュニケーションが非常に少ないことが分かりました。
メールでの問い合わせには、きちんと回答してきます。しかし、言葉を交わすのは、月次定例会時の30分程度です。
しかも、質問はほとんどなし。来年度の投資に対する提案など、下調べしなければならないことはたくさんあるはずですが、なにも聞いてきません。
こちらが詳細を伝えるのを待っているようです。他のベンダーとすでに商談を進めていたらどうするつもりなのでしょうか。
「営業のやるべきことが分かる」-第四段階「競合分析・選定基準の明確化」で書いたようにRFPが発行された時点で、
すでに顧客の意中の企業は決まっているのです。

たしかに、メールの活用によりコミュニケーションの頻度や情報量は増えています。
しかし、顧客リレーションシップの「深化の度合い」はいかがでしょうか。

いまさらですが、メールには以下のようなメリット、デメリットがあります。

・メリット
- 自分の都合で送信・受信できる
- 相手も自分の都合で確認、返信できる
- 複数の相手、社内、社外にも同時に送信できる
- 添付機能やURLを使い、多くの情報を伝えられる
- 履歴が残せる

デメリット
- 感情や思いが伝わらない
- 相手がいつ確認するかわからない
- 複雑な内容や微妙なニュアンスを伝えるのが難しい
- 送信者の意図とは違った意味合いで受け取られることがある
- 誤った情報でも履歴として記録が残る

「履歴が残る」ことをメリットとしてあげましたが、状況によってはデメリットになります。

「非公式情報」はメールでは送れません。

先週書いた、下記の質問(コンプレックスセールスに必要な情報)にメールで応える人はいないでしょう。

・中長期投資計画、本年度の投資計画は。
・現在の問題・課題は。
・顧客の事業は今後どのように展開していくのか。
・それが今後の購買にどう影響するか。
・競合他社はどのような製品戦略を持っているか
・競合他社の製品への満足度は。問題点は。
・我々の製品は顧客のニーズに十分応えているか
・我々の製品は顧客の課題・問題を解決しているか。
・意思決定プロセスは。
・キーパーソンはだれか。
・新任の事業部長の経歴や評判は。
・なぜ、A氏は我々の製品が嫌いなのか。

メールのデメリットの部分を面談等、他の方法で補っているか、顧客の期待に本当に答えているか、日々、考えて行動する必要があります。
メールで事が順調に進んでいると思わないことが大切です。

コンプレックスセールスに必須の上記情報を得るためには、相互依存関係の深化が必須です。その上で適切なコミュニケーション手段の選択が必要です。
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『理詰めの営業』- 購買行動と営業 - (8-2) 納品後の成果の確認 & 相互依存関係の深化

2024-12-13 16:30:32 | ・・購買行動と営業プロセス
さて、注文をもらい、「選んでいただいた」「借りがある」売り手は、その後、どうリレーションシップを維持・発展させればよいのでしょうか。

リレーションシップが深まれば、いままで入手しにくかった様々な貴重な情報が、嘘のように手に入るようになります。

たとえば、顧客は次のような質問に答えてくれるようになります。

中長期投資計画、本年度の投資計画は。
現在の問題・課題は。
顧客の事業は今後どのように展開していくのか。
それが今後の購買にどう影響するか。
競合他社はどのような製品戦略を持っているか
競合他社の製品への満足度は。問題点は。
我々の製品は顧客のニーズに十分応えているか
我々の製品は顧客の課題・問題を解決しているか。
意思決定プロセスは、キーパーソンはだれか。
新任の事業部長の経歴や評判は。
なぜ、A氏は我々の製品が嫌いなのか。

『理詰めの営業』の分析に必要な情報が容易に入手できるようになります。

逆に、競合他社に案件を取られたり、販売の予想が外れたり、「え、どうして」と相手の行動に不意を突かれたりするのは、
リレーションシップが弱体化し、隙間風が吹いているからです。

顧客から苦情が来ないのは、リレーションシップに軋みが生じている兆候の最たるものです。
顧客が言葉に出さないのは、信頼が薄れていたり、リレーションシップに陰りが表れたりしている証拠です。

あなた自身も体験したことがあるはずです。「言ってもしょうがない」。

<相互依存関係のない会社はあるか?>


<相互依存関係の深化は恩恵をもたらす>


「顧客リレーションシップ」は無形資産です。資産ですのでその価値は増減します。
資産を増加させる行動と減少させる行動をまとめてみました。



私が一番懸念しているのは顧客とのコミュニケーションです。

「こちらから電話をかける」vs「顧客からの電話に折り返すのみ」
とありますが、現状は
「こちらからメールする」vs「顧客からのメールに返信するのみ」
ではないでしょうか。

メールの活用によりコミュニケーションの頻度やボリュームは増えているかもしれません。しかし、顧客リレーションシップの「深化」はいかがでしょうか。
次回は、インターネット時代のコミュニケーションとCRMについて考えてみます。
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『理詰めの営業』- 購買行動と営業 - (8-1) 納品の成果のフィードバック & 顧客関係の維持・強化

2024-12-05 20:59:45 | ・・購買行動と営業プロセス
「契約完了。さて次の案件」とは簡単にいかないのがコンプレックスセールス。
納入までの長い道のり、納入してからの更なる苦難の道が待っています。

また、契約の内容も売って終わりではなく、長期を前提としたレンタルやアウトソーシング、
長期間に渡り納品を継続する契約、納入後のメンテナンスを含む契約、など、
長期的な取引を前提とした契約形態が増えています。相互依存が原則となる取引条件の増加です。

私が扱っていた生産財の場合、メーカーは「協力会社の設備(部品・材料も同様)がなければ製品を作れない」、
協力会社は「メーカーに購入してもらうために設備(部品・材料も同様)を作っている、転用先はない」状況にあり、
相互依存どっぷりの関係にあります。もちろん、コモディティ化した部品や製品も若干ありますが。

このようなことから長期に亘る相互依存関係を原則とした契約の場合、
顧客とのリレーションシップを深め、「信用」という無形資産を守り育て続けることが大切です。


ともすると、売り手は、契約が取れると「目標達成だ。次だ、次だ」と思い、
緊張感が緩み、リレーションシップは縮小してしまいます。
それは、競合に付け入るスキを与えることになります。というのも、買い手の評価は終わっていないのです。
それどころか、期待通りの結果が出るか、関心を持ち続け、緊張は一層高まり、コミットメントを深めまようとします。

また、買い手の立場に立てば、「いくつかの競合の中から選んであげた」
すなわち「貸しをつくった」「恩を売った」と買い手は思っているのです。
このため、謙虚な売り手であれば「選んでいただいた」「借りがある」と思うはずです。

この売り手の立場を素直に捉えて、リレーションシップを築き直し、発展させていく必要があります。



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『理詰めの営業』- 購買行動と営業 - (8) 納品の成果のフィードバック & 顧客関係の維持・強化

2024-11-30 21:09:06 | ・・購買行動と営業プロセス
第八段階は、「納入後の成果のフィードバック」です。

私が携わっていた半導体向け計測機器の場合、受注から納入まで1年、それから立ち上げ、顧客エンジニアのトレーニング、
運用サポート、修理や定期メンテなど数年の付き合いが続きます。この付き合いが大切です。

受注が決まると営業はホッとします。「やった、目標達成!」「さて、次は」と次の案件に目を向けます。

発注した顧客も、「(事業部長の説得に時間がかかったが)やっと、発注できた」と一瞬、安堵しますが、
「予定通りに完成できるか」「課題は本当に解決できるか」と新たな不安が始まります。

受注の瞬間、営業と顧客は同床異夢の状態になりますが、顧客の不安を払しょくしてあげることが重要です。

手離れの良い製品であれば、「さて、次」は可能でしょう。しかし、コンプレックスセールスに「売ってさよなら」はないのです。



「顧客が欲しいのは3ミリの穴をあけるドリルではなくて3ミリの穴だ」とよく言いますが、
先ずは、ソリューションとなる製品・サービスの納入後、顧客の問題・課題が、顧客の望み通りに解決できたことを確認しましょう。

製品・サービスのオペレーション等で顧客が困っていないか、不満等が残っていないかの確認も肝要です。

顧客に喜んで使っていただき成果を出していただくために、納入後、トレーニングやエンジニアのサポートを提供する必要があります。

私がいたような外資系企業では追加のトレーニング等はすぐお金の話になるので、
仕様書の中にトレーニングやエンジニアのサポートをあらかじめ入れておき費用として計上しておいたほうが動きやすいですね。

ソリューション実施後、必ずしもすべてが順調に進むとは限りません。販売した製品やサービスのトラブルや保守に悩まされることも多いのです。

納入後のサプライヤーに対する評価は、この段階での対応の良し悪しに左右されることが多いのが現状です。
次の案件に繋げるためにも、営業が顧客との間に入ってマネージする必要があります。

このように、コンプレックスセールスには、長期にわたる第七段階の「納入の推進」があります。
そして、「購買行動と営業活動」の資料では省かれていますが、第八段階として「納入後の成果のフィードバックと評価」があります。
長期間に渡る付き合いの中での評価が次のビジネスにつながります。

顧客との付き合いの中から次のビジネスのネタを得ることや、逆に次期製品の開発依頼を受けることも多々ありました。

長期にわたる顧客との強い絆をどう維持していくか」は、営業戦略の重要なテーマです。


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『理詰めの営業』- 購買行動と営業 - (7) 納品の推進と検収の調整

2024-11-15 22:58:56 | ・・購買行動と営業プロセス
第六段階で一つのサプライヤーが選択されます。競争を勝ち抜き受注が確定した段階です。営業としてはほっとする瞬間です。ここからは仕上げの段階です。

『購買行動と営業活動』には、さらに、もう二つのステップがあります。一つは第七段階の「納品の推進と検収の調整」で、もう一つが第8段階の「納入後の成果のフィードバック」です。

第七段階で、サプライヤーは顧客から注文書を受け取りますが、その前に検収条件を整理しておく必要があります。

納入までの間、あるいは、納入後のテストで追加の問題が発生する場合があり、それに応えるために検収が延び延びになり、売り上げがたたなくなるなどの問題が発生する場合があります。追加の問題が発生した場合、それがもとの注文書の範囲内で処理すべきか、あるいは追加の仕様として別途処理されるべきかが判定できるように仕様書、検収条件などを書面として整備しておきましょう。(もともとの仕様書が不十分な場合も同様に問題となる可能性があります)

営業は顧客との板挟みになりますが、きちっと線引きをして問題を解決し、かつ、顧客との関係も損なわれないようにする、それが営業です。

「そうは言っても」と言っているうちは二軍の営業です。

さて、サプライヤーは、顧客から注文書を受け取った後(あるいは内示後)、顧客と共同で、納入に関する諸手続きの設定と手続きに関する取り決めを行います。

納期や立上げのスケジュールの確定、納入のための搬入経路の確保、立上げのためのスペースの確保、試験用材料・工具の用意、電気・ガス等の手配もこの準備の一部です。営業は、自社のサービス技術と打合せを行い、納入・立上げのプランを行います。

また、営業は、開発が必要な製品・サービスについては、納入までの進捗管理、顧客への進捗の報告を行います。

そして、実際に製品・サービスを納入し、立ち上げて試験を行い、収集したデータをもとに検収会議を開催し、検収をいただきます。

「営業はきちっと線引きをして問題を解決し、かつ、顧客との関係も損なわれないようにする」と前述しましたが、実際には営業は根回しをして、滞りなく検収会議が行われるようにします。

そして、そのまま顧客と飲み会というのが私のパターンでした。

顧客のキーパーソンやエンジニアだけでなく、自社のエンジニアにも参加してもらい、今後のエンジニア同士の協力関係の構築にも心がけましょう。

そして、第八段階として「納入後の成果のフィードバック」があります。それは、また、来週。

<商談が旨く行ったときは書斎で一人のみ>



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『理詰めの営業』- 購買行動と営業 - (6)交渉と譲歩、交渉条件の整理、社内コンセンサスの取付け

2024-11-09 16:53:26 | ・・購買行動と営業プロセス


今回は上記資料の第6段階のお話です。

顧客はサプライヤーが提出した見積書や提案書を比較・検討します。また、サプライヤーと面談し、仕様、価格、納期等の具体的な条件の折衝を行います。そして、最終的に1社に内定通知を出します。案件の内容によっては内定ではなく注文書の発行になります。

営業は提案書提出後の交渉に臨む準備として、価格、納期、導入後のサポートなど交渉のポイントを整理し、どこまで妥協できるか、その場で回答するかどうかなど、社内の関係者と打ち合わせをして決めておくことが重要です。

失敗例として、

案件を絶対に取りたいが故に価格交渉時に大幅な値下げを購買に約束。帰社後、社内の同意、承認が得られず頓挫。「下げなきゃとれねーんだよ」「客の言うことが聴けねーのか。」と上司や関係部署の面々を恫喝。結局、この案件から外され、上司がお詫びに。

営業は案件を取りたいがために前のめりになりがちです。また、案件を落とせないプレッシャーもあります。営業が単独で決断、回答するのではなく、チームで決めて回答する仕組みにしましょう。

競合の出方も重要なポイントです。価格をあまり下げずにオプションをただで提供したり、導入後のサポートを厚くしたりする会社もあるでしょう。例えば、「導入後、半年、エンジニアを最低1名常駐」などです。価格を下げるとコミッション制の場合、営業の収入も減りますからね!!自分の懐が痛まないように!!!

顧客側の状況も日々、変化しており、RFPに記載されている必要納期が、顧客側の事情により遅れることもあります。そのような状況をつかんでおけば、納期は楽にコミットできる、場合によっては早めるとホラをふくこともできます。

もう一度、選定基準に立ち返り、交渉のポイントを整理し、社内のコンセンサスを取り、交渉に臨む役者を整えましょう。即答が必要な場合は、営業だけでなく開発部門、アフターサービス部門などの責任者に同行してもらったほうが良いでしょう。

ただ、単なる当て馬であると分かっていて絶対に受注できない場合は、最終提案として超ローボールを投げるのも手です。顧客の当該案件担当者は、「何故こんなに安いA社から買わないでB社にするのか」を説明せねばならなくなり、本命のサプライヤーB社に対しても価格低減を求めることになります。これにより本命サプライヤーB社の財務体質を弱らせることができます。そこまで考えるのが営業です。

<考えすぎて眠れなくなったときは・・・・・>


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『理詰めの営業』- 購買行動と営業 - (5)提案書提出・競合分析・受注条件整備

2024-11-04 08:56:56 | ・・購買行動と営業プロセス
それでは、公式購買プロセスの第五段階を詳しく見ていきましょう。



・見積書/提案書の提出

顧客はサプライヤーを2~3社に絞り込み、仕様等を公開し、見積りの依頼(RFQ:Request For Quotation)や提案の依頼(RFP:Request For Proposal)をします。会社(役所)の規則で一定金額以上の案件は、3社見積もり必須というところが多いかと思います。

RFQ、RFPの説明会を行う場合もあります。私の経験では、各サプライヤーが個別に呼ばれ説明を受け、質疑応答を行う形式がほとんどでした。公的機関の入札の場合などでは、参加者一同を集めて、説明することもあります。

営業はRFQ、RFPの内容を精査し、提出書類の種類と内容、提出期限、サプライヤー選定基準などを確認します。

一般的に提出書類は会社の財務諸表、会社の組織、対応チームのスキル・資格、品質管理体制、サービスサポート体制など多岐に亘るため、社内の関係者を集めて説明会を行い、手分けして進めることが肝要です。

また、阻害要因がないか確認します。

例えば、自社の製品では実現できない機能はないかをチェックします。逆に言うと、第三段階までにイン・サプライヤーとして活動してきた営業は、他社にない機能などを仕様書に盛り込むように顧客を誘導し、自社の優位性を確立します。

実際に資料を作成し始めると、不明な点がでてきます。改めて質問できる場合もありますが、追加質問を許さない場合もあります。実際、現場調査を一回行っただけでは十分な情報は、得られません。このため現行のサプライヤーがいる場合は、彼らが有利になります。特に、顧客が現状のサプライヤーを気に入っているが、会社(役所)の規則でRFPを実施しなければならない場合は、他のサプライヤーが落札するのは困難です。

また、現在、私は見積もりをお願いする立場にありますが、本当に真剣にサプライヤーを一から選びたい場合は別として、会社の仕組み上の理由で3社見積もりをする場合は、「それとなく」その旨を依頼するサプライヤーに知らせて無駄な労力を使わないよう、その後のフォローも含めて調整します。つまり形だけの三社見積もりの実施です。

また、実際に「5段階、価格交渉をする。最後は社長が交渉」「50%以上値下げさせる」などのルールがある顧客もあるので予め聞き出しておきましょう。

・競合分析

同時に競合他社を調査し、対抗策を練ります。

以前も書いたように、今までこの案件に携わっていなかったあなたがこのRFPの説明会に呼ばれたのなら、少なくともすでに1社はもっと早い段階から顧客と話会って、懐深く入っています。

それを分かった上で競合他社の仕様やデモの状況、顧客との人間関係、顧客での評判、他の顧客での評判、価格戦略、技術サポート体制、経営状況などを入念に調査し、戦略を練ります。

特に選定基準となるところは、冷静に分析し、提案書の中で自社の強みをどう伝えるか、自社が劣っている点をどう説明するか知恵を出し合いましょう。

また、真剣に取り組まないことも選択肢の一つです。例えば、以下の私の経験例。

大手企業のS社の事業部長A氏は「天皇」と呼ばれる人で、100%の決定権を持っており、かつ、現行サプライヤーはこの人が選んだとのこと。しかも、「天皇」は、サプライヤーの変更を望んでいないらしい。

私はこの案件は、あきらめました。RFPを受け取ってから提出までの短時間で人間関係を構築するのは無理だからです。そもそも、この段階で初めて呼ばれたことが私の会社の現状を如実に表していました。「営業ができていない」

今後を考え、失礼のない提案書を提出し、次の案件を目指し、営業活動を推進しました。特にS社内の組織、人間関係、事業部としての問題・課題・戦略、意思決定方法(本当に天皇が決めているのか)など、基本的なところから始めました。後述する「理詰めの営業」の初歩の初歩です。

・受注条件の整備

営業は注文を取りたいがために前のめりになりがちです。

例えば、

「今、社内で検討中のソリューションでお客様の問題は、確実に解決できる」と営業が客先での会議でコミット。その場にいたエンジニアと帰社後、口論。「まだ、検討中なのにあれはないでしょ」とエンジニア。「解決できないのなら打ち合わせの時に反論すればよかったのに」と営業が言い、口論はエスカレート。受注はできたが、その後のエンジニアのサポートが悪く、顧客からの評価は最悪に。

顧客の問題・課題を解決できなければ、訴訟問題にも発展しかねません。顧客の問題・課題を真摯に分析し、そのソリューションを検討します。現在の製品、サービスで「できること」、「できないこと」を明確にしましょう。

「できないこと」を「できること」に変える方法も考えます。例えば、現時点では「できないこと」でも、適切な費用と納期をいただければ開発可能な場合もあります。

現在あるソリューションであれば、費用はいくらで、何か月で納入可能、新たな開発が必要な場合は、さらに費用と開発期間がこれだけかかる等をできる限り正確に見積もります。

また、「できないこと」も他社との協業により、可能になる場合があります。

私が手掛けたビル管理業の場合は、「他社の組み合わせ」を基本とするソリューションでした。自社では顧客とのインターフェース、まとめ役、簡単な日常業務だけを行い、実際の業務、特に専門的で技術的な業務はすべて他社に任せます。

例えば、無停電電源装置の点検は東芝、空調機器の点検はダイキン、消防設備点検は能美防災といった具合です。

これらが受注条件の整備です。

営業だけで決めるのではなく、社内の関連各部門あるいは協力会社のコンセンサスを「あらかじめ」取り付けることが肝要です。
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