法人営業に最適な『理詰めの営業』で日刊工業新聞社賞受賞の中小企業診断士 齋藤信幸の営業力強化手法 <情報デザイン>

営業自身のシンになる営業手法を確立し、自信に。営業案件の可視化と営業の行動管理を実現。特にコンプレックスセールスに最適。

『理詰めの営業』- サービス業の営業力強化 - 「会議設計」を振り返る

2021-02-28 18:26:59 | 会議設計
さて、「質問設計」はここで終わりにして、元の「会議設計」に戻ります。「えーと、『会議設計』って?」、最近、記事を読み始めた方、会議設計を忘れてしまったかたのために復習をしてみましょう。

営業活動は「顧客の購買意思決定を支援・誘導して顧客の購買による問題解決を支援すること」です。

『理詰めの営業』は、営業ステップ(営業プロセス)マネジメントを基本とするツールです。「営業ステップを定義」し、「顧客基礎情報分析」、「問題・課題・ニーズ分析」、「関係顧客分析」、「競合分析」、「自社分析」の5種類の分析ツールと「会議設計」ツールを使い、顧客を自社に誘導する戦略・戦術を考えます。

特に、節目、節目で重要となるのが、顧客との会議です。会議こそ上記の戦略・戦術を実現する場です。この会議を有効に活用し、営業ステップを前に進めるためのツールが「会議設計」です。

以下は「会議設計」の体系図です。



ゴールの設定:
まず、「営業ステップの定義」シートや5種類の分析シートを記入し、会議の目的(ゴール)を設定します。

ゴールは、「情報を集める」、「顧客と良好な関係を築く」といった抽象的な目標では不十分です。もちろん、情報収集や顧客との関係構築は重要ですが、これらはすべての会議の基礎部分であたりまえのことです。

『理詰めの営業』では、「次の営業ステップ」へ進めること、あるいは、特定のボトルネックになっている課題や問題の解決などがゴールになります。例えば、「デモへの参加の確定」「見積り依頼をいただく」など。

また、「最大のゴール」と「最小のゴール」の二つを設定します。例えば、先程の「デモへの参加の確定」の場合、「最大のゴール」は、「デモスケジュールの確定」、「最小のゴール」は、「A部長のデモ参加のコミットメント」などになります。

シナリオ作成:
営業はそのゴールを達成するためにはどうすべきか、「会議のシナリオ」をゴールから逆算して考えます。

必須出席者の選定:
シナリオを考え、それが決まったら、ゴールを達成するために必要な顧客の関係者、自社の関係者をリストアップし、会議への出席を依頼します。

顧客の期待の分析:
顧客の各出席者がどのような期待・考えを持って会議に来るのかを予想します。その期待に対する対応策を検討します。

自社のポジション
客先での自社の現時点のポジションを整理・分析し、「良好」「問題あり」の判定を行います。自社の強みに活用、弱点の補強を考えます。

提示情報
どのような情報をキーパーソンは必要としているか、どのようなプレゼンをすればゴールを達成できるかを考えます。また、何故、そうするのかを検討します。

質問設計:
そうです、前回まで回数を重ねて説明してきたのは「会議設計」の中の「質問設計」でした。

「会議設計」の胆の部分です。これを成功させることにより、営業ステップを進めることができます。また、誰が質問するかも打合せしておきましょう。営業が質問したほうが良いもの、エンジニアがした方がよいもの、営業部長がしたほうがよいものなど「役者」をフルに活用しましょう。

次の二つが、「議題設計」と「最終シナリオ」です。これらについては、次回、じっくり説明します。
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『理詰めの営業』- サービス業の営業力強化 - 質問設計、もう一つの大切なこと。

2021-02-20 22:30:04 | ・・質問設計
前回、「大切なことは、事前調査を行い、相手が抱える問題点などの情報をできる限り探り出し、打ち合わせの前に全体のシナリオと効果がありそうな質問を準備しておくことです」といいかしたが、もう一つ大切なことが、抜けていました。それは、「解決質問」を出すタイミングです。

解決質問は、顧客に適切な解決策を考えるように誘導、あるいは、解決策の価値や重要性を理解するように誘導する質問です。使用するタイミングは、問題・課題等が明確になり、その深刻さを顧客が理解した後です。

e-ラーニング講座の売り込みの例では、顧客に解決策を考えるように誘導はできていません。その代わり、解決策の価値を認識させています。もし、営業が解決策をすぐに提示したらどうなったでしょうか。

営業:メールでお客さんや協力会社とトラブルが起きることが多いのですか。具体的にどんな問題ですか。(問題質問)
顧客:添付物をつけ忘れて、顧客から言われるまでほったらかしにしたケースや、顧客の悪口を書いたメールが間に入っていたケース、内容が分かりにくいメール、名前の間違いなど基本的なところです。実際に部長が謝罪に行ったこともありました。
営業:なるほど。弊社の「ビジネスメールの基本ルール」という講座でメールの書き方の基本を学んでいただければ、こういう問題はなくなりますよ。
<この質問に対する顧客の反応>
① 顧客:いやいや、当面は私が見て、指導しますよ。自分で見たほうが部下の実力も分かりますし、どんな仕事をしているか分かりますから。<変化の必要性なしとする顧客>
あるいは
② 顧客:いくらかかりますか<とりあえず値段を聞いておこうとする顧客>

他にも考えられますが、営業のトークに対する顧客の反応として①、②を用意しました。この後、どのように話が展開していくでしょうか。ここから顧客に解決策の価値や問題の深刻度を認識させる状況に持っていくことはできるでしょうか。

質問によりニーズを育て、料理する

さて、現状に満足しきっている顧客は、変化の必要性を全く感じません。そこに何らかのニーズが生まれる最初の兆しは、小さな不満や不平です。それがはっきりとした問題や課題へと発展し、行動を起こそうとする意志が生じます。そこまでニーズが育って初めて購買に結びつくのです。

いまさらですが、ニーズには潜在ニーズと顕在ニーズがあります。

潜在ニーズは、顧客が漏らした問題や不平、不満のことです。「ボロエアコン、冷房が効かないな」「プリンターの印刷速度が遅い」「手書きで出張旅費精算かよ」などがこれに当たります。

一方、顕在ニーズとは、顧客が自分の口で語る欲求や欲望です。「エアコンの買い替えが必要だ」「印刷速度の速いプリンターを探している」「自分の席でできる簡単な出張旅費精算システムが必要だ」などがこれです。

小型の案件では、潜在ニーズを多く見つければ、あるいは、できるだけ多くの潜在ニーズを顕在ニーズに育てれば、受注の件数が高まります。コンプレックスセールスのような大型の案件でも潜在ニーズを顕在ニーズに育てることは大変重要ですが、潜在ニーズの数は、受注成功の確率増には結び付きません。

コンプレックスセールスのような大型の案件は、解決策のコストが高く、また、解決策実行時の顧客のリスクも高いため、解決策を正当化できるように、潜在ニーズを更に育て、深刻で重大なものに料理する必要があります。

さて、質問設計はここで終わりにし、次回は、会議設計に戻りましょう。「えーと、会議設計って」という読者のために、復習から始める予定です。

<何故、『死都調布』?>
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『理詰めの営業』- サービス業の営業力強化 - 打ち合わせ前の事前調査、シナリオ作成、質問設計が肝要

2021-02-14 12:55:53 | ・・質問設計
昨晩、久しぶりに大きな揺れを感じる地震がありましたね。東日本大震災から10年。「油断するな」と言われている気がしました。

さて、現在、クライアントの発注元としての仕事もしています。1月上旬に1千万円くらいの案件のRFPを三社に発行し、その回答を先週月曜日に得ました。案件は向こう5年間の設備管理を年約1千万の金額で請け負ってもらうもので、この他にスポットでの仕事もあります。また、2月に発行する別のビルのRFPとの複合見積もりも可能とするものです。

この三社は大手A社、外資系大手B社、および優良中小企業C社です。回答までの約3週間、A社からは提案内容についての質問が1件ありました。B社は見積もりのベースになる仕様について10件ほどの質問がありました。優秀なエンジニアからの質問でした。C社からは仕様についての質問が1件でした。

こんなものでしょうか。私だったら「選定基準」や「お困りの点」などを聞きまくります・・・・・これらの会社に営業はいないのかと思ってしまいました。

さて、今日は解決質問の例です。

解決質問は、顧客に適切な解決策を考えるように誘導、あるいは、解決策の価値や重要性を理解するように誘導する質問です。使用するタイミングは、問題・課題等が明確になり、その深刻さを顧客が理解した後です。

それでは、以下の例を「問題・課題等が明確になり、その深刻さを顧客が理解した後」として見てみましょう。

なお、出典は先週と同じで「Sales Probing Questions to Uncover Buyer Needs」(The Brooks Group、Group Vice President、Lisa Rose氏の記事)です。

The Brooks GroupのWeb Siteはこちら。

解決質問の例:

① あなたとって理想的な解決策は。
What would an ideal solution look like for you?

② あなたにとって現実的な解決策は。
What does a realistic solution look like to you?

どちらも顧客に欲しい解決策を自分の口で語らせる質問です。あなたが提案しようとしている解決策を顧客の口から語らせます。しかし、あなたの会社にない解決策を欲すると予想される場合は使えません。自社のソリューションへの誘導が不十分なのです。あるいは、営業の対象とならない顧客です。

③ ソリューションが機能するために必須の基準は何ですか。
What are the must-have criteria for a solution to work for you?

④ ソリューションを開発するためのタイムラインは何ですか?
What is your timeline for developing a solution?

⑤ ソリューションプロバイダーに必要な品質は何ですか?
What are the qualities you need in a solution provider?

⑥ これらの追加の製品/サービス/クライテリアのいずれかがソリューションに役立ちますか?
Would any of these additional products/services/criteria be helpful in your solution?

③~⑥の質問も解決質問の例として記載されていましたが、解決策が決まり、実施に向けての質問ですね。

ちょっと事例として少ないので、コンプレックスセールスではありませんが、私のクライアントの某専門学校の「メールの書き方の基本ルール」というe-ラーニング講座の売り込みの場面をみてみましょう。顧客はビル設備管理会社。事前調査で当該サイトの所長が外部に出すメールをすべてチェックしていることが分かっています(実話です)。

営業:メールでお客さんや協力会社とトラブルが起きることが多いのですか。具体的にどんな問題ですか(問題質問)

顧客:添付物をつけ忘れて、顧客から言われるまで(返事を)ほったらかしにしたケースや、顧客の悪口を書いたメールが間に入っていたケース、内容が分かりにくいメール、名前の間違いなど基本的なところです。実際に部長が謝罪に行ったこともありました。

営業:部下がメールを出す前に全部チェックしているのですか。(問題質問)

顧客:外部に出すメールだけです。

営業:それでも結構あるでしょうし、直すのに時間もかかるでしょう。(示唆質問)

顧客:そうですね。日中は作業や会議があるので夕方、まとめてみています。ばかにならない時間です。

営業:その間、出すべきメールが止まっている訳ですね。(示唆質問)

顧客:そういうことになります。

営業:メール本来のメリットがいかせていないことになりませんか。(示唆質問)

顧客:そうですね。

営業:メールのチェックがなくなれば、他に時間が使えますね。何をしたいですか。(示唆質問)

顧客:顧客対応や新人教育にもっと時間を割きたいですね。

営業:スタッフの皆さんに、添付物のつけ忘れの防止法やメールの管理方法、基本的な書き方などを学習してもらえば、負担が減りますね。(解決質問)

顧客:そうですね。

営業:ビジネスメールの基本ルールを学んでいただけるプログラムを提供できます。

顧客:でも、業務の都合で集合教育は無理です。コロナもありますしね。

営業:パソコンやスマホで個人個人が空いている時間にできます。

顧客:でもパソコンの前に長時間張り付かれてもこまります。

営業:1回10分の講座なので空き時間や通勤時にできます。1回10分、全9回の講座で確認テストもあります。

顧客:修了証はでるのですか。やったかどうか確認したいので。

営業:修了証も出ますし、受講状況もシステムで確認できます。

顧客:ちょっと見せていただくことはできますか。

営業:じゃ、私のスマホでやってみましょう。

<なるほど。ほんまや!!>

お金の話は、この先に!!

チョット都合が良すぎるかもしれませんが、「失敗しないビジネス用メール」講座の売り込みの一幕でした。一人当たり数千円の講座で、コンプレックスセールスではありませんが、質問設計を使ってもらいました。

大切なことは、事前調査を行い、相手が抱える問題点などの情報をできる限り探り出し、打ち合わせの前に全体のシナリオと質問を準備しておくことです。

参考までに前々回と同じ資料を添付

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『理詰めの営業』- サービス業の営業力強化 - 質問設計でウエブ会議の準備万全 - もう面談による営業には戻らない

2021-02-07 01:48:38 | ・・質問設計
「緊急事態宣言が延期になったので、営業活動はしばらく休止」とはいきませんね。

コンサルティング会社マッキンゼーの調査によると、B2Bの意思決定者の70から80パーセントが、リモートセールスが好ましいと思っているそうです。面談による営業に戻ると信じている人が多いが、そうはならないと断定しています。実際、リモート営業を取り込んだ新たな仕組みの90%はそのまま残ると予想しています。

いやいや日本は違う!!

そうかもしれません。しかしそれは日本だけが取り残されることを意味しています。ますますIT後進国になることに。

さて、昨年後半から海外の営業関連サイトやブログにアクセスし、営業手法の研究に役立てています。

その中に質問設計に役立ちそうな質問の例文がでていたので紹介します。それを書いていたのは、The Brooks GroupのGroup Vice PresidentのLisa Rose氏、です。

The Brooks GroupのWeb Siteはこちら。

タイトルは「Sales Probing Questions to Uncover Buyer Needs」。顧客のニーズを探り出す営業調査質問とでも訳しておきましょうか。その中に問題質問と解決質問が紹介されていたので、いくつか役立ちそうと思われる質問を紹介します。私の日本語訳が今一なので、英文も添付します。

問題質問の例:

① 解決しようとしている問題とはどのようなものですか。
How would you describe the problem you’re trying to solve?

直接的な聞き方ですね。例えば、「千葉さん、先ほど電話でおっしゃっていた問題ってどんな問題ですか」とか。顧客が問題を明確に定義できていなくても、この質問から深掘りしていけますね。

② 夜も寝られないような状況とはどのようなことですか。
What about this situation keeps you up at night?

東京ディズニーランドに行く前の子供のように、嬉しすぎて眠れないということではないようです。「大丈夫ですか、山田さん、夜も寝られないとおっしゃっていましたけど」、これも深掘りのきっかけになる質問ですね。

③ この問題を解決する際、過去に直面したチャレンジはなんですか。
What challenges have you encountered in the past while trying to solve this problem?

「浅野さん、この問題の解決策を進めていく上で、問題となりそうなことはありますか」といった感じの質問ですね。「この問題」と言っているので、問題は定義されているが、解決策を実施する際に障害があるらしい。例えば、上司や関連部署の同意が得られない、予算がつかない、などなど。

④ この問題はあなた個人にとってどのくらいの費用を必要とするものですか。
How much is this problem costing you personally?

会社の問題で個人のコストになること?そうですね、例えば、コロナ禍、テレワークを行うにあたり必要なPCの購入費やネット環境の費用ですね。会社が全額出してくれればよいですが。
顧客と話す前に下調べをしておき、顧客の反応を見ながら情報を小出しにするといいですね。「自宅でしか使わないならデスクトップPCの方が、モニターが大きいので見やすく、仕事もしやすいし、価格も安いのでいいですよ。例えば・・・それと、WiFiなら我が社の・・・」なんてね。

⑤ この問題は会社にとってどのくらい費用を必要とするものですか。
How much is it costing the company?

これも打ち合わせ前に試算していくといいですね。顧客が気付かないコストも実は発生しているなどあればVery Good!

⑥ あなたを不安にする、あるいは、不満にする状況が他にありますか。
Is there anything else about the situation that worries or frustrates you?

このままの日本語では使えない。「宮崎さん、他にお困りのことはありますか」くらいでしょうか。もっと良い質問があったら教えてください。

⑦ 現在のサプライヤーがあるとして、代わりを考えておられる理由はなんですか。
If there is a current supplier, what are your reasons for considering an alternative?

これは重要な質問ですね。サプライヤーの変更は顧客にとっても社内手順の変更や費用の発生があり負担になります。このため「何故」の回答は、解決策の提案の重要なヒントになります。例えば、「対応が遅いんです。見積を頼んでも1か月以上かかるし、よく忘れる」といった情報が得られれば提案がしやすくなりますね。

逆に、「いや、はっきり代えると決めたわけではないんです」「別段不満があるわけではありません」であれば、あなたの会社は、ただの当て馬かもしれませんね。

本日はここまで。次回は解決質問も見てみましょう。相手の反応が分かりにくいウエブ会議だからこそしっかりした質問設計が必要です。

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