法人営業に最適な『理詰めの営業』で日刊工業新聞社賞受賞の中小企業診断士 齋藤信幸の営業力強化手法 <情報デザイン>

営業自身のシンになる営業手法を確立し、自信に。営業案件の可視化と営業の行動管理を実現。特にコンプレックスセールスに最適。

『理詰めの営業』- 購買行動と営業 - (8-3) 相互依存関係を深化させるポイント - 1

2024-12-20 23:29:13 | ・・購買行動と営業プロセス
先週お知らせしたように、顧客リレーションシップという無形資産を増減させる行動で、一番懸念しているのは顧客とのコミュニケーションです。

「こちらから電話をかける」vs「顧客からの電話に折り返すのみ」とありますが、現状は
「こちらからメールする」「顧客からのメールに返信するのみ」ではないでしょうか。



実際、顧問先の協力会社の営業を観察していると、メール以外のコミュニケーションが非常に少ないことが分かりました。
メールでの問い合わせには、きちんと回答してきます。しかし、言葉を交わすのは、月次定例会時の30分程度です。
しかも、質問はほとんどなし。来年度の投資に対する提案など、下調べしなければならないことはたくさんあるはずですが、なにも聞いてきません。
こちらが詳細を伝えるのを待っているようです。他のベンダーとすでに商談を進めていたらどうするつもりなのでしょうか。
「営業のやるべきことが分かる」-第四段階「競合分析・選定基準の明確化」で書いたようにRFPが発行された時点で、
すでに顧客の意中の企業は決まっているのです。

たしかに、メールの活用によりコミュニケーションの頻度や情報量は増えています。
しかし、顧客リレーションシップの「深化の度合い」はいかがでしょうか。

いまさらですが、メールには以下のようなメリット、デメリットがあります。

・メリット
- 自分の都合で送信・受信できる
- 相手も自分の都合で確認、返信できる
- 複数の相手、社内、社外にも同時に送信できる
- 添付機能やURLを使い、多くの情報を伝えられる
- 履歴が残せる

デメリット
- 感情や思いが伝わらない
- 相手がいつ確認するかわからない
- 複雑な内容や微妙なニュアンスを伝えるのが難しい
- 送信者の意図とは違った意味合いで受け取られることがある
- 誤った情報でも履歴として記録が残る

「履歴が残る」ことをメリットとしてあげましたが、状況によってはデメリットになります。

「非公式情報」はメールでは送れません。

先週書いた、下記の質問(コンプレックスセールスに必要な情報)にメールで応える人はいないでしょう。

・中長期投資計画、本年度の投資計画は。
・現在の問題・課題は。
・顧客の事業は今後どのように展開していくのか。
・それが今後の購買にどう影響するか。
・競合他社はどのような製品戦略を持っているか
・競合他社の製品への満足度は。問題点は。
・我々の製品は顧客のニーズに十分応えているか
・我々の製品は顧客の課題・問題を解決しているか。
・意思決定プロセスは。
・キーパーソンはだれか。
・新任の事業部長の経歴や評判は。
・なぜ、A氏は我々の製品が嫌いなのか。

メールのデメリットの部分を面談等、他の方法で補っているか、顧客の期待に本当に答えているか、日々、考えて行動する必要があります。
メールで事が順調に進んでいると思わないことが大切です。

コンプレックスセールスに必須の上記情報を得るためには、相互依存関係の深化が必須です。その上で適切なコミュニケーション手段の選択が必要です。
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『理詰めの営業』- 購買行動と営業 - (8-2) 納品後の成果の確認 & 相互依存関係の深化

2024-12-13 16:30:32 | ・・購買行動と営業プロセス
さて、注文をもらい、「選んでいただいた」「借りがある」売り手は、その後、どうリレーションシップを維持・発展させればよいのでしょうか。

リレーションシップが深まれば、いままで入手しにくかった様々な貴重な情報が、嘘のように手に入るようになります。

たとえば、顧客は次のような質問に答えてくれるようになります。

中長期投資計画、本年度の投資計画は。
現在の問題・課題は。
顧客の事業は今後どのように展開していくのか。
それが今後の購買にどう影響するか。
競合他社はどのような製品戦略を持っているか
競合他社の製品への満足度は。問題点は。
我々の製品は顧客のニーズに十分応えているか
我々の製品は顧客の課題・問題を解決しているか。
意思決定プロセスは、キーパーソンはだれか。
新任の事業部長の経歴や評判は。
なぜ、A氏は我々の製品が嫌いなのか。

『理詰めの営業』の分析に必要な情報が容易に入手できるようになります。

逆に、競合他社に案件を取られたり、販売の予想が外れたり、「え、どうして」と相手の行動に不意を突かれたりするのは、
リレーションシップが弱体化し、隙間風が吹いているからです。

顧客から苦情が来ないのは、リレーションシップに軋みが生じている兆候の最たるものです。
顧客が言葉に出さないのは、信頼が薄れていたり、リレーションシップに陰りが表れたりしている証拠です。

あなた自身も体験したことがあるはずです。「言ってもしょうがない」。

<相互依存関係のない会社はあるか?>


<相互依存関係の深化は恩恵をもたらす>


「顧客リレーションシップ」は無形資産です。資産ですのでその価値は増減します。
資産を増加させる行動と減少させる行動をまとめてみました。



私が一番懸念しているのは顧客とのコミュニケーションです。

「こちらから電話をかける」vs「顧客からの電話に折り返すのみ」
とありますが、現状は
「こちらからメールする」vs「顧客からのメールに返信するのみ」
ではないでしょうか。

メールの活用によりコミュニケーションの頻度やボリュームは増えているかもしれません。しかし、顧客リレーションシップの「深化」はいかがでしょうか。
次回は、インターネット時代のコミュニケーションとCRMについて考えてみます。
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『理詰めの営業』- 購買行動と営業 - (8-1) 納品の成果のフィードバック & 顧客関係の維持・強化

2024-12-05 20:59:45 | ・・購買行動と営業プロセス
「契約完了。さて次の案件」とは簡単にいかないのがコンプレックスセールス。
納入までの長い道のり、納入してからの更なる苦難の道が待っています。

また、契約の内容も売って終わりではなく、長期を前提としたレンタルやアウトソーシング、
長期間に渡り納品を継続する契約、納入後のメンテナンスを含む契約、など、
長期的な取引を前提とした契約形態が増えています。相互依存が原則となる取引条件の増加です。

私が扱っていた生産財の場合、メーカーは「協力会社の設備(部品・材料も同様)がなければ製品を作れない」、
協力会社は「メーカーに購入してもらうために設備(部品・材料も同様)を作っている、転用先はない」状況にあり、
相互依存どっぷりの関係にあります。もちろん、コモディティ化した部品や製品も若干ありますが。

このようなことから長期に亘る相互依存関係を原則とした契約の場合、
顧客とのリレーションシップを深め、「信用」という無形資産を守り育て続けることが大切です。


ともすると、売り手は、契約が取れると「目標達成だ。次だ、次だ」と思い、
緊張感が緩み、リレーションシップは縮小してしまいます。
それは、競合に付け入るスキを与えることになります。というのも、買い手の評価は終わっていないのです。
それどころか、期待通りの結果が出るか、関心を持ち続け、緊張は一層高まり、コミットメントを深めまようとします。

また、買い手の立場に立てば、「いくつかの競合の中から選んであげた」
すなわち「貸しをつくった」「恩を売った」と買い手は思っているのです。
このため、謙虚な売り手であれば「選んでいただいた」「借りがある」と思うはずです。

この売り手の立場を素直に捉えて、リレーションシップを築き直し、発展させていく必要があります。



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『理詰めの営業』- 購買行動と営業 - (8) 納品の成果のフィードバック & 顧客関係の維持・強化

2024-11-30 21:09:06 | ・・購買行動と営業プロセス
第八段階は、「納入後の成果のフィードバック」です。

私が携わっていた半導体向け計測機器の場合、受注から納入まで1年、それから立ち上げ、顧客エンジニアのトレーニング、
運用サポート、修理や定期メンテなど数年の付き合いが続きます。この付き合いが大切です。

受注が決まると営業はホッとします。「やった、目標達成!」「さて、次は」と次の案件に目を向けます。

発注した顧客も、「(事業部長の説得に時間がかかったが)やっと、発注できた」と一瞬、安堵しますが、
「予定通りに完成できるか」「課題は本当に解決できるか」と新たな不安が始まります。

受注の瞬間、営業と顧客は同床異夢の状態になりますが、顧客の不安を払しょくしてあげることが重要です。

手離れの良い製品であれば、「さて、次」は可能でしょう。しかし、コンプレックスセールスに「売ってさよなら」はないのです。



「顧客が欲しいのは3ミリの穴をあけるドリルではなくて3ミリの穴だ」とよく言いますが、
先ずは、ソリューションとなる製品・サービスの納入後、顧客の問題・課題が、顧客の望み通りに解決できたことを確認しましょう。

製品・サービスのオペレーション等で顧客が困っていないか、不満等が残っていないかの確認も肝要です。

顧客に喜んで使っていただき成果を出していただくために、納入後、トレーニングやエンジニアのサポートを提供する必要があります。

私がいたような外資系企業では追加のトレーニング等はすぐお金の話になるので、
仕様書の中にトレーニングやエンジニアのサポートをあらかじめ入れておき費用として計上しておいたほうが動きやすいですね。

ソリューション実施後、必ずしもすべてが順調に進むとは限りません。販売した製品やサービスのトラブルや保守に悩まされることも多いのです。

納入後のサプライヤーに対する評価は、この段階での対応の良し悪しに左右されることが多いのが現状です。
次の案件に繋げるためにも、営業が顧客との間に入ってマネージする必要があります。

このように、コンプレックスセールスには、長期にわたる第七段階の「納入の推進」があります。
そして、「購買行動と営業活動」の資料では省かれていますが、第八段階として「納入後の成果のフィードバックと評価」があります。
長期間に渡る付き合いの中での評価が次のビジネスにつながります。

顧客との付き合いの中から次のビジネスのネタを得ることや、逆に次期製品の開発依頼を受けることも多々ありました。

長期にわたる顧客との強い絆をどう維持していくか」は、営業戦略の重要なテーマです。


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『理詰めの営業』- 購買行動と営業 - (7) 納品の推進と検収の調整

2024-11-15 22:58:56 | ・・購買行動と営業プロセス
第六段階で一つのサプライヤーが選択されます。競争を勝ち抜き受注が確定した段階です。営業としてはほっとする瞬間です。ここからは仕上げの段階です。

『購買行動と営業活動』には、さらに、もう二つのステップがあります。一つは第七段階の「納品の推進と検収の調整」で、もう一つが第8段階の「納入後の成果のフィードバック」です。

第七段階で、サプライヤーは顧客から注文書を受け取りますが、その前に検収条件を整理しておく必要があります。

納入までの間、あるいは、納入後のテストで追加の問題が発生する場合があり、それに応えるために検収が延び延びになり、売り上げがたたなくなるなどの問題が発生する場合があります。追加の問題が発生した場合、それがもとの注文書の範囲内で処理すべきか、あるいは追加の仕様として別途処理されるべきかが判定できるように仕様書、検収条件などを書面として整備しておきましょう。(もともとの仕様書が不十分な場合も同様に問題となる可能性があります)

営業は顧客との板挟みになりますが、きちっと線引きをして問題を解決し、かつ、顧客との関係も損なわれないようにする、それが営業です。

「そうは言っても」と言っているうちは二軍の営業です。

さて、サプライヤーは、顧客から注文書を受け取った後(あるいは内示後)、顧客と共同で、納入に関する諸手続きの設定と手続きに関する取り決めを行います。

納期や立上げのスケジュールの確定、納入のための搬入経路の確保、立上げのためのスペースの確保、試験用材料・工具の用意、電気・ガス等の手配もこの準備の一部です。営業は、自社のサービス技術と打合せを行い、納入・立上げのプランを行います。

また、営業は、開発が必要な製品・サービスについては、納入までの進捗管理、顧客への進捗の報告を行います。

そして、実際に製品・サービスを納入し、立ち上げて試験を行い、収集したデータをもとに検収会議を開催し、検収をいただきます。

「営業はきちっと線引きをして問題を解決し、かつ、顧客との関係も損なわれないようにする」と前述しましたが、実際には営業は根回しをして、滞りなく検収会議が行われるようにします。

そして、そのまま顧客と飲み会というのが私のパターンでした。

顧客のキーパーソンやエンジニアだけでなく、自社のエンジニアにも参加してもらい、今後のエンジニア同士の協力関係の構築にも心がけましょう。

そして、第八段階として「納入後の成果のフィードバック」があります。それは、また、来週。

<商談が旨く行ったときは書斎で一人のみ>



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