法人営業に最適な『理詰めの営業』で日刊工業新聞社賞受賞の中小企業診断士 齋藤信幸の営業力強化手法 <情報デザイン>

営業自身のシンになる営業手法を確立し、自信に。営業案件の可視化と営業の行動管理を実現。特にコンプレックスセールスに最適。

購買行動と営業プロセス - 第七段階「納品の推進と検収の調整」

2019-11-24 10:41:06 | マーケティングと理詰めの営業
第六段階で一つのサプライヤーが選択されます。競争を勝ち抜き受注が確定した段階です。営業としてはほっとする瞬間です。ここからは仕上げの段階です。

『購買行動と営業活動』では、受注の先に二つのステップがあります。一つは「納品の推進と検収の調整」で、もう一つが「納入後の成果のフィードバック」です。

第七段階で、サプライヤーは顧客から注文書を受け取りますが、その前に検収条件を整理しておく必要があります。

納入までの間、あるいは、納入後のテストで追加の問題が発生する場合があり、それに応えるために検収が延び延びになり、売り上げがたたなくなるなどの問題が発生する場合があります。追加の問題が発生した場合、それがもとの注文書の範囲内で処理すべきか、あるいは追加の仕様として別途処理されるべきかが判定できるように仕様書、検収条件などを書面として整備しておきましょう。(もともとの仕様書が不十分な場合も同様に問題となる可能性があります)

営業は顧客との板挟みになりますが、きちっと線引きをして問題を解決し、かつ、顧客との関係も損なわれないようにする、それが営業です。「そうは言っても」と言っているうちは二軍の営業です。

さて、サプライヤーは、顧客から注文書を受け取った後(あるいは内示後)、顧客と共同で、納入に関する諸手続きの設定と手続きに関する取り決めを行います。

納期や立上げのスケジュールの確定、納入のための搬入経路の確保、立上げのためのスペースの確保、試験用材料・工具の用意、電気・ガス等の手配もこの準備の一部です。営業は、自社のサービス技術と打合せを行い、納入・立上げのプランを行います。

また、営業は、開発が必要な製品・サービスについては、納入までの進捗管理、顧客への進捗の報告を行います。

そして、実際に製品・サービスを納入し、立ち上げて試験を行い、収集したデータをもとに検収会議を開催し、検収をいただきます。

「営業はきちっと線引きをして問題を解決し、かつ、顧客との関係も損なわれないようにする」と前述しましたが、実際には営業は根回しをして、滞りなく検収会議が行われるようにします。

そして、そのまま顧客と飲み会というのが私のパターンでした。

顧客のキーパーソンやエンジニアだけでなく、自社のエンジニアにも参加してもらい、今後のエンジニア同士の協力関係の構築にも心がけましょう。

そして、第八段階として「納入後の成果のフィードバック」があります。ここでは、簡潔に触れるだけにします。

ソリューション実施後、必ずしも順調に進むとは限りません。販売した製品やサービスのトラブルや保守に悩まされることも多いのです。納入後のサプライヤーに対する評価はこの段階での対応の良し悪しに左右されることが多いのが現状です。次の案件に繋げるためにも、営業が顧客との間に入ってマネージする必要があります。


繰り返しになりますが、営業活動は『顧客の購買意思決定を支援・誘導して顧客の購買による問題解決を支援すること』です。各購買段階での顧客支援と誘導を戦略的に行い、購買(営業)の段階を進めるツールが「理詰めの営業」です。

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購買行動と営業プロセス - 第六段階「交渉と譲歩、交渉条件の整理、社内コンセンサスの取付け」

2019-11-24 10:33:55 | マーケティングと理詰めの営業
顧客はサプライヤーが提出した見積書や提案書を比較検討します。また、サプライヤーと面談し、仕様、価格、納期等の具体的な条件の折衝を行います。そして、最終的に1社に内定通知を出します。

営業は提案書提出後の交渉に臨む準備として、価格、納期、導入後のサポートなど交渉のポイントを整理し、どこまで妥協できるか、その場で回答するかどうかなど、社内の関係者と打ち合わせをして決めておくことが重要です。

失敗例として、

案件を絶対に取りたいが故に価格交渉時に大幅な値下げを購買に約束。帰社後、社内の同意、承認が得られず頓挫。「下げなきゃとれねーんだよ」「客の言うことが聴けないのか。」と上司や関係部署の面々を恫喝。結局、この案件から外され、上司がお詫びに。

営業は案件を取りたいがために前のめりになりがちです。また、案件を落とせないプレッシャーもあります。営業が単独で決断、回答するのではなく、チームで決めて回答する仕組みにしましょう。

競合の出方も重要なポイントです。価格をあまり下げずにオプションをただで提供したり、導入後のサポートを厚くしたりする会社もあるでしょう。例えば、「導入後、半年、エンジニアを最低1名常駐」などです。

顧客側の状況も日々、変化しており、RFPに記載されている納期が、顧客側の事情により遅れることもあります。そのような状況をつかんでおけば、納期は楽にコミットできる、場合によっては早めるとホラをふくこともできます。

もう一度、選定基準に立ち返り、交渉のポイントを整理し、社内のコンセンサスを取り、交渉に臨む役者を整えましょう。即答が必要な場合は、営業だけでなく開発部門、アフターサービス部門などの責任者に同行してもらったほうが良いでしょう。

ただ、単なる当て馬であると分かっていて絶対に受注できない場合は、最終提案として超ローボールを投げるのも手です。顧客の当該案件担当者は、「何故こんなに安いA社から買わないでB社にするのか」を説明せねばならなくなり、本命のサプライヤーB社に対しても価格低減を求めることになります。これにより本命サプライヤーB社の財務体質を弱らせることができます。そこまで考えるのが営業です。

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購買行動と営業プロセス - 第五段階「提案書提出・競合分析・受注条件整備」 - 競合他社を調査

2019-11-10 18:45:28 | マーケティングと理詰めの営業
第五段階の続きです。

見積依頼・提案依頼への対応とともに、競合他社を調査します。

以前も書いたように、この案件に関して、あなたがこのRFPの説明会から呼ばれたのなら、少なくともすでに1社はもっと早い段階から顧客と話会って、懐深く入っています。

それを分かった上で競合他社の仕様やデモの状況、顧客との人間関係、顧客での評判、他の顧客での評判、価格戦略、技術サポート体制、経営状況などを入念に調査し、戦略を練ります。

特に選定基準となるところは、冷静に分析し、提案書の中で自社の強みをどう伝えるか、自社が劣っている点をどう説明するか知恵を出し合いましょう。

また、真剣に取り組まないことも選択肢の一つです。例えば、以下の私の経験例。

大手企業のS社の事業部長A氏は「天皇」と呼ばれる人で、100%の決定権を持っており、かつ、現行サプライヤーはこの人が選んだとのこと。しかも、「天皇」は、サプライヤーの変更を望んでいないらしい。

私はこの案件は、あきらめました。RFPを受け取ってから提出までの短時間で人間関係を構築するのは無理だからです。そもそも、この段階で初めて呼ばれたことが私の会社の現状を如実にあらわされています。

今後を考え、失礼のない提案書を提出し、次の案件を目指し、戦略を始めました。特にS
社内の組織、人間関係、事業部としての問題・課題・戦略、意思決定方法(本当に天皇が決めているのか)など、基本的なところから始めました。後述する「理詰めの営業」の初歩の初歩です。

営業は注文を取りたいがために前のめりになりがちです。

例えば、

「今、社内で検討中のソリューションでお客様の問題は、確実に解決できる」と営業が客先での会議でコミット。その場にいたエンジニアと帰社後、口論。「まだ、検討中なのにあれはないでしょ」とエンジニア。「解決できないのなら打ち合わせの時に反論すればよかったのに」と営業が言い、口論はエスカレート。受注はできたが、その後のエンジニアのサポートが悪く、顧客からの評価は最悪に。

顧客の問題・課題を解決できなければ、訴訟問題にも発展しかねません。顧客の問題・課題を真摯に分析し、そのソリューションを検討します。現在の製品、サービスで「できること」、「できないこと」を明確にしましょう。

「できないこと」を「できること」に変える方法も考えます。例えば、現時点では「できないこと」でも、適切な費用と納期をいただければ開発可能な場合もあります。

現在あるソリューションであれば、費用はいくらで、何か月で納入可能、新たな開発が必要な場合は、さらに費用と開発期間がこれだけかかる等をできる限り正確に見積もります。

また、「できないこと」も他社との協業により、可能になる場合があります。

私が手掛けたビル管理業の場合は、「他社の組み合わせ」を基本とするソリューションでした。自社では顧客とのインターフェース、まとめ役、簡単な日常業務だけを行い、実際の業務、特に専門的で技術的な業務はすべて他社に任せます。例えば、無停電電源装置の点検は東芝、空調機器の点検はダイキン、消防設備点検は能美防災といった具合です。このような場合は、各社へ仕様書を出して見積りを取り、受注できた場合は協業していただくことについてコミットしてもらいます。

これらが受注条件の整備です。営業だけで決めるのではなく、社内の関連各部門あるいは協力会社のコンセンサスを取り付けることが肝要です。

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購買行動と営業プロセス - 第五段階「提案書提出・競合分析・受注条件整備」 - 提案書の提出

2019-11-05 23:05:04 | マーケティングと理詰めの営業
第五段階は、2回に分けて説明します。

顧客はサプライヤーを2~3社に絞り込み、仕様等を公開し、見積依頼(RFQ:Request For Quotation)や提案の依頼(RFP:Request For Proposal)をします。会社(役所)の規則で一定金額以上の案件は、3社見積もり必須というところが多いかと思います。

RFQ、RFPの説明会を行う場合もあります。私の経験では、各サプライヤーが個別に呼ばれ説明を受け、質疑応答を行う形式がほとんどでした。

米国大使館の入札の場合は、ホームページ上で入札説明会の案内が行われ、申し込んだサプライヤーを一堂に集めた説明会・現場調査が実施されました。質疑応答は行わず、質問は決められた日時までにメールで提出。回答はすべてのサプライヤーからの質問を整理してホームページに掲載されます。前回の入札価格について質問しても回答してくれませんが、前回の落札時に落札者名とともにホームページに掲載されているので、調べれば出てきます(データベースが大きすぎて私は調べきれませんでした)。

営業はRFQ、RFPの内容を精査し、提出書類の種類と内容、提出期限、サプライヤー選定基準などを確認します。一般的に提出書類には会社の財務諸表、会社の組織、対応チームのスキル・資格、品質管理体制、サービスサポート体制など多岐に亘るため、社内の関係者を集めて説明会を行い、手分けして進めることが肝要です。

また、阻害要因がないか確認します。

例えば、自社の製品では実現できない機能はないかをチェックします。逆に言うと、第三段階までにインサプライヤーとして活動してきた営業は、他社にない機能などを仕様書に盛り込むように顧客を誘導し、自社の優位性を確立します。

実際に資料を作成し始めると、不明な点がでてきます。改めて質問できる場合もありますが、追加質問を許さない場合もあります。実際、現場調査を一回行っただけでは十分な情報は、得られません。このため現行のサプライヤーがいる場合は、彼らが有利になります。特に、顧客が現状のサプライヤーを気に入っているが、会社(役所)の規則でRFPを実施しなえればならない場合は、他のサプライヤーが落札するのは困難です。

以前、大阪のある役所の設備管理の業務を新規受注したことがありました。当該役所と長期間契約していたサプライヤーを価格差でひっくり返した例です。選ばざるを得ないくらいに価格差のあった例で、役所の担当者からは、「おたくが安すぎる値段を出したからこんなことになった。」といまだに文句を言われています。

また、現在、私は見積もりをお願いする立場にありますが、本当に真剣にサプライヤーを一から選びたい場合は別として、会社の仕組み上の理由で3社見積もりをする場合は、「それとなく」その旨、知らせてサプライヤーが無駄な労力を使わないように調整します。

また、「5段階、価格交渉をする。最後は社長が交渉」「50%以上値下げさせる」などのルールがある顧客もあるので予め聞き出しておきましょう。


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