法人営業に最適な『理詰めの営業』で日刊工業新聞社賞受賞の中小企業診断士 齋藤信幸の営業力強化手法 <情報デザイン>

営業自身のシンになる営業手法を確立し、自信に。営業案件の可視化と営業の行動管理を実現。特にコンプレックスセールスに最適。

理詰めの営業 / 会議設計:ゴールを達成するための質問設計

2020-02-29 14:31:51 | ・・質問設計
ここでは、どのような質問を組み合わせたらゴールを達成できるかを考えます。

いままで見てきた事例で言えば、顧客に「よし、x月x日にデモをやろう」と言わせるためにはどのような質問をしていけば良いかです。

営業に必要な能力にはヒアリング力と質問力があります。顧客に営業と会う価値を感じさせ、顧客の本音を聴き出し、必要な情報を引き出し、次の営業ステップに進むコミットメントを得ることができる能力です。

最も大切なのは顧客の課題を抽出し、育成して、解決しなければならないことを「顧客の口」で語らせる質問力です。受注や進展で終わる会議では、継続や不成立で終わる会議よりも、顧客の話す割合が高いと言われています。

さて、よく耳にするのは、質問には「オープンな質問」と「クローズな質問」があることです。まず、「クローズな質問」とは、「はい」または「いいえ」で答えられる質問です。一方、「オープンな質問」とは、「はい」や「いいえ」よりも長い答えが必要となる質問です。

例えば、「来年度の予算は決まりましたか」は「クローズな質問」であり、「来年度の予算決定のスケジュールはどうなっていますか」は「オープンな質問」と言えます。このような質問の考え方は、コンプレックスセールスではあまり役立たないとされています。

コンプレックスセールスの場合は、投資額も大きいため顧客の課題や問題の深刻さを浮き彫りにし、それを育てるプロセスが必要です。それが下記の示唆質問です。顧客の現状を知り(状況質問)、問題や課題を探り出し(問題質問)、その問題や課題の深刻さを浮き彫りにし、それを顧客の口で語らせ(示唆質問)、提供するソリューションの価値を認識させる(解決質問)といった一連のプロセスが必要となります。

・質問の種類
状況質問:顧客の現状に関する事実、データ、情報を収集
問題質問:顧客の抱える課題、問題、不満(潜在ニーズ)を把握
示唆質問:顧客が抱える課題、問題等が引き起こす影響や結果を明確にして、深刻さを浮き彫りにする
解決質問:顧客に解決策の価値や重要性を認識させる

 例えば、LEDメーカーへウェハの検査装置の紹介に行った時の質問設計の例です。

① (状況質問)「最近、他社で耳にするマイクロパイプの問題を貴社ではどのようにして見つけていますか」

<業界情報を使って切り込みます。しかし、実際にはこの会社でどのようにマイクロパイプの問題が扱われているか事前に調査をしておきます。> 

予想回答:「顕微鏡を使って目視検査をしていますよ。全数はできないので、サンプリングベースでね」 
                              
② (問題質問)「マイクロパイプの問題は、歩留まりにどの程度の影響を与えていますか」

<目視検査でしかもサンプリングベースでは、100%この問題を見つけることはできないという前提での質問です。問題の程度を数字で表せるように質問します。>

予想回答:「前よりも良くなったけど2%くらいかな」
<もちろん、数字で回答してくれない場合もあります。その場合は示唆質問を変えます。>

③ (示唆質問)「貴社の生産量からいうと年間x億円のロスですね」 

<事前に生産量を推定できるように情報を仕入れておき、②の回答ベースにロスを計算します。問題質問に対して数字で答えてくれない場合は、「歩留まりに2%影響しているとすると年間でx億円のロスですね」と質問します。
具体的に数字で表現し、事態の深刻さを印象付けます。同時にソリューションのコストとの比較も可能となります。すなわち、ロスの大きさとソリューションとしての検査装置の価格の比較ができるようにすることです。>

予想回答:「確かにでかいロスだね」  
                          
④ (解決質問)「工程Aの終わりで全数検査してはいかがでしょうか」
   
<問題の深刻さを知った顧客はどう反応するでしょうか。無視することはできないはずです。決定権のある人なら営業ステップを一つ進める決断をするはずですね。このため、決断のできる人、キーパーソンを会議に呼ぶ必要があるのです。>

予想回答:「検査装置の検査データを見せてくれますか」あるいは「検査装置はいくらくらいですか」

このように営業は、状況質問を使って、背景となる情報をつかみ、問題質問を使って顧客の潜在ニーズを見つけ出します。さらに、示唆質問を用いて、顧客に問題の重要性を認識させ、解決質問で顧客の顕在ニーズを引き出し、顧客自身の口で求めているものの効用を語らせ、商談成立へと誘導します。

顧客の口で語らせることがポイントです。

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『理詰めの営業』も『会議設計』も空白だらけ!?100点を取る競争をしてきた人にはショック!おおざっぱな人間になろう!

2020-02-20 23:35:10 | 理詰めの営業 - 全般
『理詰めの営業』の関係顧客分析には、顧客との良好で密な関係が必要であり、このツールの記入を始めると営業は「いかに顧客を知らないか」気づきます。

今、あなたが抱えている案件の受注までの関係者をすべてリストアップすることができますか。関係顧客分析の最初のステップですが、これさえも難しいのではないのでしょうか。

以前、読んだ『HARD THINGS(答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか)』(P77)に以下のくだりがあります。

ここでフランクは、重要な顧客の意思決定者の一人で、著者の会社(オプスウェア)の製品の購入を拒んでいる人です。

「なんということだ。その時まで、自分が誰と仕事をしているのかまったくわかっていなかった。フランクの世界観が、オプスウェアの連中のそれとどれほど違っているかがわかり、私の頭の中は見通しがよくなった。フランクは、われわれにめちゃくちゃにされると思っていたのだ。・・・彼の心理を打ち砕くために、何かドラマチックなことが必要だった。」

フランクが今一番困っていることは何か調べたところ、彼が在庫管理のシステムとして使っているお気に入りのタングラム社の製品を、購買が無償のオプスの同等品に乗り換えさせようとしていることでした。

そこでオプスウェアは、タングラムを買収し、オプスウェアの製品にすることで、フランクの問題を解決しました。

まさに、顧客を知ることの重要性を示す一例ですね。ただ、ここまで大胆な対応は、普通の経営者には難しいと思われますが。

では、顧客と良好な関係を築くにはどうしたら良いでしょうか。その基本は、顧客と会う回数、時間を増やすことです。営業は顧客に会うための戦略・戦術を考えます。
『会議設計』を用いて、顧客と会うための詳細設計を行い、必要な情報を引き出し、「顧客が案件を先に進められるように貢献」します。オフラインでの会食も可能になるでしょう。
少しずつ分析ツールが埋まるようになり、精度も上がります。

『理詰めの営業』の分析ツールや『会議設計』を完璧に埋めようとすると調査にかなりの時間を要してしまいます。また、埋めることができずに「こんなに俺は顧客のことを知らなかったのか」と自信喪失してしまう場合もあります。反省は必要ですが、案件を前に進めるべく分析結果を検討するためには、どこかで折り合いをつける必要があります。

ボストンコンサルティンググループの今井英明氏は、市場を科学するデータの分析精度について、「100パーセントの精度は不要、達成不可能」と述べています。

その理由として、そもそも世の中にないデータの分析がほとんどであり、それをつなぎ合わせてスケッチやデッサン程度のものを作るのが精いっぱいだからとしています。

また、優れた経営者にとっては、60~70%くらいの精度であれば意思決定には十分としています。

よって、60~70%の精度であれば、早めに分析結果を持ち寄り、営業案件のプロセスを進めるためにどうすべきか検討すべきです。

「速度の経済」という言葉もあるように、ある程度の情報が集まったら先に進めましょう。

100点満点のデータ収集・整理・分析を目指さず、もう少し気楽に『理詰めの営業』や『会議設計』を活用してください。

まさに穴だらけ!!!
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理詰めの営業 / 会議設計:仕切る会議 - ゴールを達成するために提示する情報

2020-02-09 21:12:29 | 会議設計
さて、次は「ゴールを達成するために提示する情報」および「提示する理由」の記述です。
どのような情報をキーパーソンは必要としているか、どのようなプレゼンをすればゴールを達成できるかを考えます。また、何故、そうするのかを検討します。
特に「自社のポジション」のところで述べたように強みを活用し、ネガティブな問題がある場合は、そのリカバリー方法を検討します。

強みを活かす例としては、

・提示する情報:「マーケットシェアのデータ」
・提示する理由:「当該顧客への納入実績がないためマーケットシェアNo.1を印象付ける」

あるいは、

・提示する情報:「サービスサポート体制の重要性」
・提示する理由:「当該顧客での評価の高いサービスサポート体制の重要性を再認識させ他社との差別化を図る」

などがあります。

また、弱点のリカバリーをこの会議で行う必要がある場合も、どのような情報を用いて行うかを検討します。

例えば、「先の投資では失注している」という弱点に関しては、その原因を明確にし、「前回、必要とされながら備えていなかった機能は、すでに搭載され、実績を積んでいる」ことを納入実績やデータで示すことなどは有効です。

この調布製作所の事例では、歩留まり改善が必須の渋谷部長の力になれるように「歩留まり改善方法」の提示は必須です。データを用いて具体的に説明する必要があります。

また、弱点である山形事業所でのトラブルに関しては、原因究明が終わり対策も終了したことをしっかり説明します。

納入実績はただ単に「たくさんお使いいただいています」ということを示すだけでなく、(製品やサービスによりますが)装置間のデータの相関がとりやすいことや、トラブル発生時のバックアップ機になることなども説明するとよいでしょう。つまり、顧客にどういう利益をもたらすかを説明します。

ただ、山形事業所でのトラブルが対策済みであることを説明した後でないと、「トラブらない装置を作ってくれればバックアップ機なんかいらないよ」と嫌みを言われることでしょう。
これらの情報をどう会議の中で見せるかは、最後の議題の設計のところで再検討します。

なお、もう一つの弱点、原宿部長が競合メーカーの高雄工業を高く評価している点に関しては、背景を十分に調査し、会議とは別に対応をすることにします。


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理詰めの営業 / 会議設計:仕切る会議 - 自社のポジションを探る

2020-02-05 21:31:44 | 会議設計
< 資料が間違えていたので差し替えます。>

客先での自社の現時点のポジションを整理し、「良好」「問題あり」の判定を行います。

例えば、「キーパーソンと課題を共有できている」「過去の納入実績は他社の2倍」「サービスサポートについては高く評価されている」「財務的に安定(無借金経営)」などはプラスに評価できます。

一方、「前回の投資では失注している」「オペレーターが弊社のサービスエンジニアを嫌っている」などはマイナスに評価されます。会議の直近に起きた故障もマイナスです。私自身も、実際、顧客訪問の直前にシステムダウンが起き、新製品の売り込みに苦労したことがあります。

いずれにしても、「顧客基礎情報分析」「問題・課題・ニーズ分析」「関係顧客分析」「競合分析」「自社分析」から出てきた強み・弱み・課題を整理し、会議に影響のある項目を記入します。

その中で、営業ステップを前進させるために何をどうこの会議で活用し、何をどうリカバーするか検討します。すなわち、自社の強みを活用し、弱みをリカバーする方法を考えます。

例えば、サービスサポートを顧客が高く評価しているのであれば、プレゼンに自社のサービス体制や実績を加え、他社との差別化のポイントにします。
逆に前回の投資で失注しているのであれば、失注原因を明らかにしてそのリカバーができていることを明確にします。例えば、前回は他社にあって自社にない機能があったが今は十分に対応できるとプレゼンすることです。

今回の例であれば、納入実績はプラス要因ですが、「山形事業所でのトラブルによる装置の安定性への疑問」や「原宿部長が競合メーカーの高雄工業を高く評価」はマイナス要因となります。これらを踏まえて、どのように会議を設計するかを考えます。

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