法人営業に最適な『理詰めの営業』で日刊工業新聞社賞受賞の中小企業診断士 齋藤信幸の営業力強化手法 <情報デザイン>

営業自身のシンになる営業手法を確立し、自信に。営業案件の可視化と営業の行動管理を実現。特にコンプレックスセールスに最適。

『理詰めの営業』- サービス業の営業力強化 - 質問設計、もう一つの大切なこと。

2021-02-20 22:30:04 | ・・質問設計
前回、「大切なことは、事前調査を行い、相手が抱える問題点などの情報をできる限り探り出し、打ち合わせの前に全体のシナリオと効果がありそうな質問を準備しておくことです」といいかしたが、もう一つ大切なことが、抜けていました。それは、「解決質問」を出すタイミングです。

解決質問は、顧客に適切な解決策を考えるように誘導、あるいは、解決策の価値や重要性を理解するように誘導する質問です。使用するタイミングは、問題・課題等が明確になり、その深刻さを顧客が理解した後です。

e-ラーニング講座の売り込みの例では、顧客に解決策を考えるように誘導はできていません。その代わり、解決策の価値を認識させています。もし、営業が解決策をすぐに提示したらどうなったでしょうか。

営業:メールでお客さんや協力会社とトラブルが起きることが多いのですか。具体的にどんな問題ですか。(問題質問)
顧客:添付物をつけ忘れて、顧客から言われるまでほったらかしにしたケースや、顧客の悪口を書いたメールが間に入っていたケース、内容が分かりにくいメール、名前の間違いなど基本的なところです。実際に部長が謝罪に行ったこともありました。
営業:なるほど。弊社の「ビジネスメールの基本ルール」という講座でメールの書き方の基本を学んでいただければ、こういう問題はなくなりますよ。
<この質問に対する顧客の反応>
① 顧客:いやいや、当面は私が見て、指導しますよ。自分で見たほうが部下の実力も分かりますし、どんな仕事をしているか分かりますから。<変化の必要性なしとする顧客>
あるいは
② 顧客:いくらかかりますか<とりあえず値段を聞いておこうとする顧客>

他にも考えられますが、営業のトークに対する顧客の反応として①、②を用意しました。この後、どのように話が展開していくでしょうか。ここから顧客に解決策の価値や問題の深刻度を認識させる状況に持っていくことはできるでしょうか。

質問によりニーズを育て、料理する

さて、現状に満足しきっている顧客は、変化の必要性を全く感じません。そこに何らかのニーズが生まれる最初の兆しは、小さな不満や不平です。それがはっきりとした問題や課題へと発展し、行動を起こそうとする意志が生じます。そこまでニーズが育って初めて購買に結びつくのです。

いまさらですが、ニーズには潜在ニーズと顕在ニーズがあります。

潜在ニーズは、顧客が漏らした問題や不平、不満のことです。「ボロエアコン、冷房が効かないな」「プリンターの印刷速度が遅い」「手書きで出張旅費精算かよ」などがこれに当たります。

一方、顕在ニーズとは、顧客が自分の口で語る欲求や欲望です。「エアコンの買い替えが必要だ」「印刷速度の速いプリンターを探している」「自分の席でできる簡単な出張旅費精算システムが必要だ」などがこれです。

小型の案件では、潜在ニーズを多く見つければ、あるいは、できるだけ多くの潜在ニーズを顕在ニーズに育てれば、受注の件数が高まります。コンプレックスセールスのような大型の案件でも潜在ニーズを顕在ニーズに育てることは大変重要ですが、潜在ニーズの数は、受注成功の確率増には結び付きません。

コンプレックスセールスのような大型の案件は、解決策のコストが高く、また、解決策実行時の顧客のリスクも高いため、解決策を正当化できるように、潜在ニーズを更に育て、深刻で重大なものに料理する必要があります。

さて、質問設計はここで終わりにし、次回は、会議設計に戻りましょう。「えーと、会議設計って」という読者のために、復習から始める予定です。

<何故、『死都調布』?>
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『理詰めの営業』- サービス業の営業力強化 - 打ち合わせ前の事前調査、シナリオ作成、質問設計が肝要

2021-02-14 12:55:53 | ・・質問設計
昨晩、久しぶりに大きな揺れを感じる地震がありましたね。東日本大震災から10年。「油断するな」と言われている気がしました。

さて、現在、クライアントの発注元としての仕事もしています。1月上旬に1千万円くらいの案件のRFPを三社に発行し、その回答を先週月曜日に得ました。案件は向こう5年間の設備管理を年約1千万の金額で請け負ってもらうもので、この他にスポットでの仕事もあります。また、2月に発行する別のビルのRFPとの複合見積もりも可能とするものです。

この三社は大手A社、外資系大手B社、および優良中小企業C社です。回答までの約3週間、A社からは提案内容についての質問が1件ありました。B社は見積もりのベースになる仕様について10件ほどの質問がありました。優秀なエンジニアからの質問でした。C社からは仕様についての質問が1件でした。

こんなものでしょうか。私だったら「選定基準」や「お困りの点」などを聞きまくります・・・・・これらの会社に営業はいないのかと思ってしまいました。

さて、今日は解決質問の例です。

解決質問は、顧客に適切な解決策を考えるように誘導、あるいは、解決策の価値や重要性を理解するように誘導する質問です。使用するタイミングは、問題・課題等が明確になり、その深刻さを顧客が理解した後です。

それでは、以下の例を「問題・課題等が明確になり、その深刻さを顧客が理解した後」として見てみましょう。

なお、出典は先週と同じで「Sales Probing Questions to Uncover Buyer Needs」(The Brooks Group、Group Vice President、Lisa Rose氏の記事)です。

The Brooks GroupのWeb Siteはこちら。

解決質問の例:

① あなたとって理想的な解決策は。
What would an ideal solution look like for you?

② あなたにとって現実的な解決策は。
What does a realistic solution look like to you?

どちらも顧客に欲しい解決策を自分の口で語らせる質問です。あなたが提案しようとしている解決策を顧客の口から語らせます。しかし、あなたの会社にない解決策を欲すると予想される場合は使えません。自社のソリューションへの誘導が不十分なのです。あるいは、営業の対象とならない顧客です。

③ ソリューションが機能するために必須の基準は何ですか。
What are the must-have criteria for a solution to work for you?

④ ソリューションを開発するためのタイムラインは何ですか?
What is your timeline for developing a solution?

⑤ ソリューションプロバイダーに必要な品質は何ですか?
What are the qualities you need in a solution provider?

⑥ これらの追加の製品/サービス/クライテリアのいずれかがソリューションに役立ちますか?
Would any of these additional products/services/criteria be helpful in your solution?

③~⑥の質問も解決質問の例として記載されていましたが、解決策が決まり、実施に向けての質問ですね。

ちょっと事例として少ないので、コンプレックスセールスではありませんが、私のクライアントの某専門学校の「メールの書き方の基本ルール」というe-ラーニング講座の売り込みの場面をみてみましょう。顧客はビル設備管理会社。事前調査で当該サイトの所長が外部に出すメールをすべてチェックしていることが分かっています(実話です)。

営業:メールでお客さんや協力会社とトラブルが起きることが多いのですか。具体的にどんな問題ですか(問題質問)

顧客:添付物をつけ忘れて、顧客から言われるまで(返事を)ほったらかしにしたケースや、顧客の悪口を書いたメールが間に入っていたケース、内容が分かりにくいメール、名前の間違いなど基本的なところです。実際に部長が謝罪に行ったこともありました。

営業:部下がメールを出す前に全部チェックしているのですか。(問題質問)

顧客:外部に出すメールだけです。

営業:それでも結構あるでしょうし、直すのに時間もかかるでしょう。(示唆質問)

顧客:そうですね。日中は作業や会議があるので夕方、まとめてみています。ばかにならない時間です。

営業:その間、出すべきメールが止まっている訳ですね。(示唆質問)

顧客:そういうことになります。

営業:メール本来のメリットがいかせていないことになりませんか。(示唆質問)

顧客:そうですね。

営業:メールのチェックがなくなれば、他に時間が使えますね。何をしたいですか。(示唆質問)

顧客:顧客対応や新人教育にもっと時間を割きたいですね。

営業:スタッフの皆さんに、添付物のつけ忘れの防止法やメールの管理方法、基本的な書き方などを学習してもらえば、負担が減りますね。(解決質問)

顧客:そうですね。

営業:ビジネスメールの基本ルールを学んでいただけるプログラムを提供できます。

顧客:でも、業務の都合で集合教育は無理です。コロナもありますしね。

営業:パソコンやスマホで個人個人が空いている時間にできます。

顧客:でもパソコンの前に長時間張り付かれてもこまります。

営業:1回10分の講座なので空き時間や通勤時にできます。1回10分、全9回の講座で確認テストもあります。

顧客:修了証はでるのですか。やったかどうか確認したいので。

営業:修了証も出ますし、受講状況もシステムで確認できます。

顧客:ちょっと見せていただくことはできますか。

営業:じゃ、私のスマホでやってみましょう。

<なるほど。ほんまや!!>

お金の話は、この先に!!

チョット都合が良すぎるかもしれませんが、「失敗しないビジネス用メール」講座の売り込みの一幕でした。一人当たり数千円の講座で、コンプレックスセールスではありませんが、質問設計を使ってもらいました。

大切なことは、事前調査を行い、相手が抱える問題点などの情報をできる限り探り出し、打ち合わせの前に全体のシナリオと質問を準備しておくことです。

参考までに前々回と同じ資料を添付

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『理詰めの営業』- サービス業の営業力強化 - 質問設計でウエブ会議の準備万全 - もう面談による営業には戻らない

2021-02-07 01:48:38 | ・・質問設計
「緊急事態宣言が延期になったので、営業活動はしばらく休止」とはいきませんね。

コンサルティング会社マッキンゼーの調査によると、B2Bの意思決定者の70から80パーセントが、リモートセールスが好ましいと思っているそうです。面談による営業に戻ると信じている人が多いが、そうはならないと断定しています。実際、リモート営業を取り込んだ新たな仕組みの90%はそのまま残ると予想しています。

いやいや日本は違う!!

そうかもしれません。しかしそれは日本だけが取り残されることを意味しています。ますますIT後進国になることに。

さて、昨年後半から海外の営業関連サイトやブログにアクセスし、営業手法の研究に役立てています。

その中に質問設計に役立ちそうな質問の例文がでていたので紹介します。それを書いていたのは、The Brooks GroupのGroup Vice PresidentのLisa Rose氏、です。

The Brooks GroupのWeb Siteはこちら。

タイトルは「Sales Probing Questions to Uncover Buyer Needs」。顧客のニーズを探り出す営業調査質問とでも訳しておきましょうか。その中に問題質問と解決質問が紹介されていたので、いくつか役立ちそうと思われる質問を紹介します。私の日本語訳が今一なので、英文も添付します。

問題質問の例:

① 解決しようとしている問題とはどのようなものですか。
How would you describe the problem you’re trying to solve?

直接的な聞き方ですね。例えば、「千葉さん、先ほど電話でおっしゃっていた問題ってどんな問題ですか」とか。顧客が問題を明確に定義できていなくても、この質問から深掘りしていけますね。

② 夜も寝られないような状況とはどのようなことですか。
What about this situation keeps you up at night?

東京ディズニーランドに行く前の子供のように、嬉しすぎて眠れないということではないようです。「大丈夫ですか、山田さん、夜も寝られないとおっしゃっていましたけど」、これも深掘りのきっかけになる質問ですね。

③ この問題を解決する際、過去に直面したチャレンジはなんですか。
What challenges have you encountered in the past while trying to solve this problem?

「浅野さん、この問題の解決策を進めていく上で、問題となりそうなことはありますか」といった感じの質問ですね。「この問題」と言っているので、問題は定義されているが、解決策を実施する際に障害があるらしい。例えば、上司や関連部署の同意が得られない、予算がつかない、などなど。

④ この問題はあなた個人にとってどのくらいの費用を必要とするものですか。
How much is this problem costing you personally?

会社の問題で個人のコストになること?そうですね、例えば、コロナ禍、テレワークを行うにあたり必要なPCの購入費やネット環境の費用ですね。会社が全額出してくれればよいですが。
顧客と話す前に下調べをしておき、顧客の反応を見ながら情報を小出しにするといいですね。「自宅でしか使わないならデスクトップPCの方が、モニターが大きいので見やすく、仕事もしやすいし、価格も安いのでいいですよ。例えば・・・それと、WiFiなら我が社の・・・」なんてね。

⑤ この問題は会社にとってどのくらい費用を必要とするものですか。
How much is it costing the company?

これも打ち合わせ前に試算していくといいですね。顧客が気付かないコストも実は発生しているなどあればVery Good!

⑥ あなたを不安にする、あるいは、不満にする状況が他にありますか。
Is there anything else about the situation that worries or frustrates you?

このままの日本語では使えない。「宮崎さん、他にお困りのことはありますか」くらいでしょうか。もっと良い質問があったら教えてください。

⑦ 現在のサプライヤーがあるとして、代わりを考えておられる理由はなんですか。
If there is a current supplier, what are your reasons for considering an alternative?

これは重要な質問ですね。サプライヤーの変更は顧客にとっても社内手順の変更や費用の発生があり負担になります。このため「何故」の回答は、解決策の提案の重要なヒントになります。例えば、「対応が遅いんです。見積を頼んでも1か月以上かかるし、よく忘れる」といった情報が得られれば提案がしやすくなりますね。

逆に、「いや、はっきり代えると決めたわけではないんです」「別段不満があるわけではありません」であれば、あなたの会社は、ただの当て馬かもしれませんね。

本日はここまで。次回は解決質問も見てみましょう。相手の反応が分かりにくいウエブ会議だからこそしっかりした質問設計が必要です。

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『理詰めの営業』- サービス業の営業力強化 - 質問設計でウエブ会議の準備万全

2021-01-31 12:50:45 | ・・質問設計
さて、先週、質問の使用例を見ていただきましたが、ここで各質問の使用上の留意点について改めて触れることにします。
まずは、基本となる状況質問、問題質問、示唆質問および解決質問です。

・状況質問(詳細調査質問)
顧客の現状に関する事実を確認する状況質問は、詳細調査質問とも呼ばれ、会議のほぼすべての段階で重要ですが、特に初期段階で重要です。しかし、顧客にとって退屈な質問になりがちです。このため、目的をもって質問し、不必要な状況質問はしないことが肝要です。そのためには、顧客について事前に十分調査を行う必要があります。その上で、聞き出したい情報を得るための質問を準備しましょう。

・問題質問
問題質問は、「会議の成功」と最も関連性が強い質問です。そもそも顧客の潜在ニーズを探りださなければ先には進めません。すべての案件は、顧客の抱える不平や不満、課題や問題点が起点になります。会議の前に、顧客が抱えている可能性のある問題や課題で、自社の製品やサービスで解決可能な潜在的な問題点(ニーズ)を書き出してみましょう。そして、その問題点(ニーズ)を浮き彫りにするための質問を準備してみましょう。

・示唆質問
示唆質問は、顧客に問題の深刻さをはっきり認識させるための質問で、潜在ニーズを増幅させるものです。ただ、示唆質問を多用すると、顧客を暗い気持ちにさせてしまいます。「膨大な損失」「システムダウンの可能性」「サービス品質の低下」などの、問題・課題の深刻さを意図的に認識させるからです。

・解決質問
一方、解決質問は、顧客の気持ちを明るくさせます。示唆質問で落ち込んでいる顧客に、こうすれば解決するという希望を与えます。示唆質問で心配させて、解決質問で安心させるのです。解決質問は、あくまでもニーズを膨らませてから行うものです。そうでない状況で使用するとお客を身構えさせてしまいますし、解決策の価値を認識してもらえません。また、自社製品・サービスで解決できない解決質問は禁句です。

<先週の資料からバージョンアップ>


続いてその他の質問です。

・関係構築質問
関係構築質問は、本題に入る前に場を和ませるための質問です。顧客が話好きで雑談や世間話が好きなタイプか、すぐに本題に入ることを望んでいるかを見極めて使いましょう。

・購買プロセス質問(意思決定プロセス質問)
購買プロセス質問は、意思決定プロセス質問とも呼ばれ、解決質問の回答を得た後に行うのが基本です。しかし、コンプレックスセールスの購買プロセスは複雑であることが多く、営業ステップの早い段階から調査が必要な場合が多いようです。

・予算質問
予算質問は、「解決策を提示する前で、望ましい解決策が見つからない間、あるいは、購買プロセスの打ち合わせの間」に使用します。
「予算に見合った」解決策を提示する、あるいは、「必要な予算がないのに解決策の話をしてもしょうがない」との考えから、「解決策を提示する前」という考えになるのだと思います。
(もちろん例外はありますが)コンプレックスセールスの対象となる高額の製品やサービスを必要とする顧客は、お金を持っています。
それを解決策のために予算化していただく必要がある訳です。理想は解決策に見合った予算を用意していただくことです。
このため、お金を持っている顧客には、こちらからお金の話をしないというのも戦略の一つです。
私が計測器の営業をしていたときは、必要な予算の概要(高めの金額)はお知らせしますが、詳細な見積もりはデモを行ってからということにしていました。
販売する製品・サービスの価値を正しく評価していただいた後に提示することにしていました。

次回は、各種質問の事例をご紹介します。海外の事例なので日本では「その質問、失礼でしょ」というのもあるかもしれません!?
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『理詰めの営業』- サービス業の営業力強化 - 質問設計でウエブ会議等の万全の準備

2021-01-24 11:32:21 | ・・質問設計
先週紹介した質問の一覧です。

質問設計の基本となるのは、状況質問、問題質問、示唆質問および解決質問です。

事例を参考に、しっかり準備をして、面談よりも難しいウエブ会議等の準備をしましょう。



まずは、質問設計の事例をみていただきましょう。

例えば、LEDメーカーへウェハの検査装置の紹介に行った時の質問設計の例です。

① (状況質問)「最近、他社で耳にするマイクロパイプの問題を貴社ではどのようにして見つけていますか」

<業界情報を使って切り込みます。しかし、実際にはこの会社でどのようにマイクロパイプの問題が扱われているか事前に調査をしておきます。> 

予想回答:「顕微鏡を使って目視検査をしていますよ。全数はできないので、サンプリングベースでね」 
                              
② (問題質問)「マイクロパイプの問題は、歩留まりにどの程度の影響を与えていますか」

<目視検査でしかもサンプリングベースでは、100%この問題を見つけることはできないという前提での質問です。問題の程度を数字で表せるように質問します。>

予想回答:「前よりも良くなったけど2%くらいかな」
<もちろん、数字で回答してくれない場合もあります。その場合は示唆質問を変えます。>

③ (示唆質問)「貴社の生産量からいうと年間x億円のロスですね」 

<事前に生産量を推定できるように情報を仕入れておき、②の回答ベースにロスを計算します。問題質問に対して数字で答えてくれない場合は、「歩留まりに2%影響しているとすると年間でx億円のロスですね」と質問します。
具体的に数字で表現し、事態の深刻さを印象付けます。同時にソリューションのコストとの比較も可能となります。すなわち、ロスの大きさとソリューションとしての検査装置の価格の比較ができるようにすることです。>

予想回答:「確かにでかいロスだね」  
                          
④ (解決質問)「工程Aの終わりで全数検査してはいかがでしょうか」
   
<問題の深刻さを知った顧客はどう反応するでしょうか。無視することはできないはずです。決定権のある人なら営業ステップを一つ進める決断をするはずですね。このため、決断のできる人、キーパーソンを会議に呼ぶ必要があるのです。>

予想回答:「検査装置の検査データを見せてくれますか」あるいは「検査装置はいくらくらいですか」

このように営業は、状況質問を使って、背景となる情報をつかみ、問題質問を使って顧客の潜在ニーズを見つけ出し、示唆質問を用いて、顧客に問題の重要性を認識させ、解決質問で顧客の顕在ニーズを引き出し、顧客自身の口で求めているものの効用を語らせ、商談成立へと誘導します。

このような質問設計は、コンプレックスセールス以外でも役立つことが分かっています。

以下は、私が所属するNPOが行っている「障がい者によるお墓掃除」の事業を依頼する事例です。

ある福祉施設の施設長さんから紹介を受け、別の施設(F園)の施設長さんに事業を紹介にいくことになりました。この活動の背景には、多くの福祉施設で、そこに通う障がい者(利用者様といいます)の工賃が極めて低く、それを向上させる必要があるという事情があります。工賃は、サラリーマンの月給と考えていただければよいです。利用者様は、施設でクッキー作りや組み立て作業などを行い、代価として工賃を貰いますが、全国平均で月に1万2千円程度。とても自立できる金額ではありません。

① (状況質問)「工賃向上はF園の利用者様にとても重要ですね」

<「障がい者による墓掃除」の説明をした後での質問です。どの福祉施設も工賃向上の必要性を認識していることが前提です。> 

予想回答:「私も日々努力して工賃向上に努めているところです」 
                              
② (問題質問)「東京地区の工賃の平均はXXXX円だそうですが、F園では今、一人あたりの工賃は平均でどのくらいでしょうか」
   
<事前調査でF園の工賃は平均以下であることが分かっています。その上での質問です。>
 
予想回答:「YYYY円です」

③ (示唆質問)「墓掃除の事業をやればZZZZ円まで上げられますね」

<ここはコンプレックスセールスとは異なるところです。福祉施設は、利用者様一人当たりXX万円の補助金がでており、極端なことを言えば、何もしなくてもいいのです。つまり「深刻度」を上げることは困難です。>

予想回答:「そうですね」  
                          
④ (解決質問)「私自身も来園してお手伝いしますので、トライアルにはご参加いただけますか」

<私自身も来園してお手伝いすることで、実行することの面倒くささの障壁をさげることができます。>
 
予想回答:「何か準備するものはありますか」
こうなれば一歩前進ですね。
 
コンプレックスセールスではなくとも、質問を用意して会議に臨めば、成功する確率はかなり高くなるということが判ると思います。

いずれにしても、よい質問は、顧客と話している最中に急に思いつくものではなく、あらかじめ準備に準備を重ねて用意するものです。また、訓練を重ねることにより、優れた切り口の質問を用意できるようになります。

次回は各質問の使用上の留意点について説明いたします。
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