精神科病院に長期入院している社会的入院患者へのアプローチについてお話していきたいと思います。
これは「やる気のない人間を動かす方法」と言い換えることができます。
様々なアプローチがありますが、精神看護学実習では、一応「精神病患者」「精神障害者」を対象にして看護過程を展開していきます。
ですから「疾患の症状による影響」「治療による影響」も加味していけば看護過程は書けます。(受け持ち段階で、まったく症状はありませんし、もともとあったのかどうかも不明な人たちばかりです)
具体的なアプローチの方法は、
①「取り組むことに対して、本人に大きなメリットがあることに気付かせること」
②「あなたは期待されていること」「あなたはWINWINの関係において、必要な人であること」を伝えることです(「こんな自分でも人の役に立てるのだ」と知ってもらうことです。)
③看護学生自身が「この人の期待に応えたいという存在になること」(自分が一貫性した言動を取る事により、信用してもらうこと)
という3点が挙がります。
例えば「食事やOT以外は他患と交流もなく、自室で臥床して過ごすことが多い、活動と休息のバランスが悪い」ことを看護問題とした場合の例を挙げます。
臨床では何も問題ない患者です。
なぜなら、退院希望もなく、病院側も退院させる気もないため、一般社会の活動量に無理して合わせる必要がないためです。
むしろ、どんどん活動を促すことで関係性が一時的に悪くなることもあるため看護側は積極的に活動させようとはしません。
そんな人に対してどのように上記3つのポイントを使って看護過程を展開していくのでしょうか?
TP,EPの観点の一例を「セリフ調」で紹介します。
①「昼食後に昼寝をしないで、ホールで新聞を読むことや、ラジオ体操を行い生活リズムを維持向上することで、スタッフからの評価があがります。
その結果、また次の実習で看護学生をつけて学んでもらいたいと思ってもらえるかもしれませんね。」
②「私もAさんは、できる人だと思うので、私が関わることで、更によく変化していけば、私も実習に来て良かったなと思えますし、毎日実習が楽しくなるはずなので、5日間だけでも協力してもらえると本当に助かります。目標達成できたら、絵にメッセージを書いてプレゼントしますよ!」
③(一貫性)看護の方向性が決まったら、「最終日にはこうなって欲しい」と「あるべき姿、目標についてぶれずに伝え続けること」です。(押し付けがましくしないこと、さり気なく伝え続けることがポイントです)
簡潔に説明しましたがご理解いただけたでしょうか?
慢性期精神科看護の難しいところは、
①親兄弟といった家族から見放されて天涯孤独
②スタッフからも「このままでいいよ」「何もしなくても良い」と言われ、
③仕事をしなくても3食昼寝付きで小遣いつきの生活を保障されていた人たち
を変化させることです。
ある意味、社会、人間関係に自分から見切りをつけてしまった人たちです。(入院当初は違っていたと思いますが…)
実習期間に、「ぽっと出」の看護学生が来て、「何かやってください」と新しいことに取り組まなければならなくなる「変化」への抵抗感をいかに乗り越えさせるかにあります。
実際、人間はこの「変化」や、変化による「成長」を促すことが難しいのです。
人間は成長すれば楽しいはずなのに、きつい思いをしてまで自分を変化させたくない本能があります。
そして、ここからが重要です。
病棟スタッフが過保護であることが多く患者の成長を望みません。
そのため看護学生が「無理に促すと精神症状が再燃するかもしれない」と、患者の成長を止めてしまう人もいます。
スタッフ自身が、その人の弱さや欠点を「病気のせいだ」と決めつけて、看護学生の介入を「看護の視点がズレている」と止める指導者もいます。
(しかし、実際は看護学生が関わる事で、受け持ち患者の弱さや欠点が克服されて、「え、この患者さん、こんな事も自分でできるの?」と患者が成長していく場面だらけです)
精神科看護学は「人間の弱さや本質」を理解していないと看護過程を展開できないことが伝わりましたか?
私は、「人間とは何か?」という本質部分を、ラプトブログで学びました。
ラプトブログのおかげで、精神看護学の教員が続けられているのだと思うくらいです。
詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『RAPT有料記事728(2023年3月13日)人間は男も女も「やるべき」ことを「やりたくない」と思って滅び去り、「やってはいけない」ことを「やりたい」と思って滅び去る。https://rapt-neo.com/?p=58074』
今回はどのように誘導するか?という
「動機付け」をメインにお伝えしました。
次に出て来る問題が基本的な「人間関係づくりの仕方」になります。
どうやって、長期入院患者と人間関係を作っていくか?について次回以降ご説明していきたいと思います。
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