今回は精神科病院に「社会的入院をしている人達」と
どのように関係性を作るのか?という具体的方策についてお話していきたいと思います。
その方法は以下4つあると思います。
①作業を通して会話すること
②お互いを知る事
③相手からの質問に対して、質問返しして「話題を深堀り」すること
④否定しない事
⑤会話時間は30分以内で1回切る事
などです。それぞれ具体的にみていきましょう。
【①作業を通して会話すること】
「精神科の実習に来ても、何を話してよいか分からない」「患者さんが話してくれない」と相談されます。
そんな時、私がいつも勧めるのが、「まずはバーバルでなくノンバーバルな会話を楽しむこと」を勧めます。
ノンバーバルとは「何も話さい」訳ではありません。
初対面において「沈黙」は良くありません。
テンポよく、相手のリズムにあわせて質問をして会話を膨らませて行くことが望ましいと思います。
そんために、以下の方法をお勧めします。
折り紙や塗り絵、計算などの作業療法でやっていることを、一緒に実施しながら、「お互いの共通点を探していく」のです。
【②お互いを知る事】
生まれも育ちも別々で、人生の目標や価値観も違う人が、短期間で関係性を作る事は困難です。
学校や会社などはある程度、「組織」としての価値観や考えがあるため、お互いの人間関係に共通点を見出しやすいです。
しかし、看護実習では
「はじめまして。あなたはどんな人ですか?」
という警察の取り調べ、尋問形式では、情報収集はできても、「信頼関係や人間同士の関係性」は深まりません。
ですから「お互いを知る事」から始まります。
そのきっかけ作りとして、
「相手がいつも参加している作業療法の続き」を利用して、相手の得意なフィールドに入っていき、心理的に油断させて、会話を進めて行くという方法をとることで、会話が進みやすくなるのです。
是非試してみてください。
「自己紹介をどんどんしろ」という事ではありません!
【③相手からの質問に対して、質問返しして「話題を深堀り」すること】
「この人、この学生さんなら、何を話しても大丈夫だな。否定してこないな」と患者が思い始めると、
「患者側から学生に対しての質問」が出てきます。
純粋に「相手に興味を持つ」「相手のことを知りたい」と感じてくれるようになった証拠です。
精神科病院長期入院患者は「親子の人間関係を断ち切ってきた人たち」ですから、人間関係に対して「関心が低い」人ばかりです。
なぜならば、自分に家族や親子、友達の関係が希薄であるため、患者やスタッフ以外と話をしても会話が膨らみません。
(私は10代後半から、家で暴れて「親」に強制入院させられているとは言えませんよね?)
そんな患者さんが、看護学生に質問してくるようになるのは、深い意味が隠れています。
そしてその質問に対して、看護学生は自分のことばかりべらべら話すのではなく、自分のことも話しながら、さらに相手に話してもらえるように、「質問返し」することをお勧めします。
「相手に質問したことは、自分が話したい事」という法則があります。
例えば「彼氏はいるの?」と質問されたとします。
(これはセクハラでも何でもなく、知りたがっているのです)
そして、患者も「過去に恋愛したかった」「結婚したかった」のかもしれません。
「え、いますけど、実際、女友達同士の方が楽しかったりします。Aさんは過去に好きだった人はいましたか?」と切り返すのです。
また、「異性関係にだらしなかった両親にうんざりしてきた」ことや「自分が精神病院に入院することで、家族円満になる、家族の期待に少しでも応えているんだ」と語る人すらいます。
つまり、社会的入院患者から発せられる何気ない質問には、その人の抱える「本質的な苦悩」が隠れていることが多いのです。
こういった会話を現場の医療スタッフとはしません。
それはお互いが「深く立ち入らない」大人の関係だからです。
多くの場合、看護学生が一方的に話題をリードしていくことがコミュニケーションのメインになります。
しかし、その中でも相手の得意な分野やフィールドをみつけ、そこで一緒に作業や活動をしながら、関係性を深めることで、「その人の人生観や価値観」を掴むことができます。
【④否定しない事】
「相手に喋らせること」つまり「質問力+質問に対しての切り返し方」は技術でもあります。
ところが、10年以上長期入院している人たちは、「自分に人生経験がなく、空っぽだ」「看護学生に見透かされたら恥ずかしい」と劣等感から警戒し壁を作ることもあります。
そのために、学生がへりくだり、決して否定せず会話を続けることが重要になります。
「否定しないこと」が重要になります。
そして「聞き流さない」「深堀りしていくこと」も重要ですね。
【⑤会話時間は30分以内で1回切る事】
最後に、会話時間についてです。
精神科慢性期病棟、療養病棟に入院している社会的入院患者は、普段、用事が無ければ誰とも話をしない人もいます。
ですから、いきなり看護学生が来て、1日中コミュニケーションすることになれば、疲れてしまいます。
ですから、「会話は30分以上しないこと」を暗黙のルールにしておくことで、相手にかける負担が軽減します。
皆さんも、体力的に、精神的に辛くても、会話を断れないことがありませんか?
一般社会から遠い場所で生活している患者さんたちは、なおさら会話を切ることができません。
ですから、会話は長くても30分で1回切ることが相手への気遣いになります。
以上の点を注意して、コミュニケーションをとってみてください。
抗精神病薬の副作用の遅発性ジスキネジアによって、呂律が回らない人がいます。
そういう人は、聞き取れないところを筆談するのも良いですね。
以上が看護学生にお勧めの精神科慢性期のコミュニケーションスキルです。
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