シリーズ第7弾になります。
今回は、『精神0』を取り上げたいと思います。
映画のあらすじは、映画サイトfilmworksから引用させていただきます。
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精神0(2020年製作の映画)
上映日:2020年05月23日 製作国:日本 上映時間:128分
(あらすじ)
ベルリン国際映画祭をはじめ世界で絶賛された『精神』(08年)の主人公の一人である山本昌知医師が、82歳にして突然「引退」することになった。山本のモットーは「病気ではなく人を看る」「本人の話に耳を傾ける」「人薬(ひとぐすり)」。様々な生きにくさを抱えた人々が孤独を感じることなく地域で暮らしていける方法を長年模索し続けてきた。彼を慕い、「生命線」のようにして生きてきた患者たちは戸惑いを隠せない。引退した山本を待っていたのは妻・芳子さんと二人の新しい生活だった…。精神医療に捧げた人生のその後を、深い慈しみと尊敬の念をもって描き出す。
・・・・・・・・・・・・・・・(転載ここまで)
この映画は講義で1回しか視聴していません。
精神看護学方法論の講義で上映しました。
日本映画作品のみならず、「精神関連」の作品は暗い内容ばかりです。
その理由は「社会の闇」「社会問題だから」です。
考えても答えが出ない、日本特有の問題なのです。
映画は精神科クリニックの内側と外来通院する患者へのインタビューが淡々と続きます。
インタビューでは、子供を殺してしまった患者の話があったり、「障害者じゃなくて、犯罪者じゃん」というようなエピソードもあります。
「わがままで自分勝手な人たちのオンパレード」というのがこの作品のネタバレ部分です。
さらに、そういった人たちを厚労省が生かさず殺さず社会に残しているのです。
この作品に出て来る、クリニックに通院する人たちは、日本社会でどうやって生きて行けばいいか分からず、精神科医に相談しているひとばかりです。
その1つの答えに、かつて「精神科(精神病院)パラダイス論」という考えがありました。
精神科パラダイス論とは、私が勤務していた頃、某大学病院の教授が提唱したものです。
「精神障害者は社会ではまともに生活できないから、本人たちの予後も含めて、一生精神病院で生活する方が幸せなんだよ。だから退院なんて考えが、愚かだ」
という考え方のことです。
しかし、当時支持されていたこの考えは、長期入院患者、社会的入院患者への虐待や死亡事件などが表面化することにより、「嘘だった」「教授の妄言だった」ことが明らかになりました。
妄言だったことを裏付ける動画として、2023年の滝山病院事件をご紹介します。
(詳しくは、以下の動画をご覧ください)
【精神科医療】理想と現実 在宅患者訪問に尽力も「診療報酬高くない」【特集】 (2023年5月30日)
公立病院でしか実現できない、精神科パラダイス論。
民間病院ではどうしても「利益至上主義」になるため、スタッフや経費が削られて、サービスの質が低下します。そして何より、精神科特有の患者層である、ADLが自立した人たちを死ぬまで面倒見るという、何の発展性も進歩ない業務に職員もモチベーションを維持できません。
(詳しくは以下の動画をご覧ください)
神出病院の第三者委員会の報告書「患者の人権を軽視する風土あった」
「精神科医療」と「医療」を語る以上、
「回復して退院していって欲しい」
という職業倫理や良心が誰の心にもあるからでしょう。
しかし戦後蛾から精神科医療が始まって70年経とうとしてますが、変わっていく様子はありません。
医療ではなく、社会を変えないと、精神医学、精神障害者の問題は永遠に解決していきません。
「病気が問題なのか?それとも、、、」の部分について考えてもらいたいです。
この作品によって「精神病になったら怖い」とか「可愛そう」という考えから、もう一段階発展した考えや問題が見えて来れば良いと思う作品だと思います。
そして、日本が本当に公平公正な社会になっていかないと、医療の問題は解決できないであることに気付いて欲しいと思います。
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