西荻窪のお大尽のお供をして、イタリア文化会館へ”鈴木慶江、ミラノの休日~オペラ・散歩道~”を見に行った。リサイタルだと思って行ったら、一風変わった演奏会だった。
千鳥が淵を花見散歩した時に「あ~これが、以前ニュースで”景観に合わない”と言っていた赤いビルか・・」と見ていた、そのビルがイタリア文化会館だった。エントランスに近づくと、ジャズ系の匂いがするコンテンポラリーが聞こえ、ロビーに入るとギャラリーになっていて、ボナノッテとかいうジェコメッティをやや柔らかくしたような彫刻が展示されており、”文化!”が日常的に存在する空間、という感じがした。
階段を下りて行くと、地下がホールになっている。壁にヴェルディのオペラを一文字で表した”書”が展示され、一人で来た人にも退屈をさせない。その”書”のタイトルを見て、ヴェルディの~、という以前に、シェークスピアの~、と題した方がいいんじゃないかな・・などと思いながらホールに入る。
ソプラノの鈴木慶江さんとバリトンの笠井仁さんがそれぞれ1曲ずつ歌った後、二人による長いトークが始まった。ミラノの街の観光案内をしている。ピアニストを含めて三人ともミラノに長く留学し、ミラノの行事や、音楽家にまつわるスポットや、美味しいものを地図をスクリーンに映しながら、思い出を挟みながら紹介している。秋に鈴木慶江さんを囲むツアーの宣伝を聞くに及び、「そういう演奏会だったのか?」と思ったりする。
配られたパンフレットも、まさにガイドブックの中にプログラム、プロフィールが書いてある、という感じ。その中で、運河沿いの骨董品店やレストランの写真が印象に残った。地元の人が愉しむための素敵な通りになっている。自分たちが愉しむ素敵な景観をつくる・・。東京にあるだろうか?地方にはあると思うが、時間帯は早い。人生観の違いを改めて再確認した。
また1曲ずつ歌ってトーク。鈴木慶江さんが椿姫の”そはかの人か”を歌って第一部おわる。ミラノ風にという事で3時開演だったし、休憩時間は30分。その間に、スポンサーからのご厚意で、スパゲッティと化粧品のサンプルが全員に配られた。これは、すごい
トークの直後に歌う事は避け、鈴木慶江さんが先に舞台袖に戻り、少しの間、笠井さんが場つなぎをしてから、鈴木慶江さんが歌う。全体に、歌のテクニックはよく勉強されている印象を持った。ダイナミック・レンジの幅も広く、イタリア語の意味を理解して歌っているのが分かる。そして演奏中の顔が綺麗。しかし、それでも歌は難しい。外国人が歌っている、と分かってしまうのだ。アメリカ人が歌っても、訛っていて、ネイティブではない事が分かりやすいけれど、発音を外に出す言語だから、声が前に出る。しかし、日本人の感性では、日本語は表に吐き出す言語ではなく、口の中で遠慮がちにしゃべっているので、中低音域の発音がこもりやすいのではないかな・・。
休憩後は、プログラムによると2曲だけ?と思っていたら、椿姫の中のアルフレードの父、ジェルモンがヴィオレッタに「身を引いてくれ」と言いに来る二重唱の場面を演奏された。ピアノ独奏の”間奏曲”から続けて20分あまり、字幕付きで、見応えのある出し物となった。「これから結婚をする娘の幸せの為に、息子と別れてくれ。これは天の声だ」と説得しに来る理不尽さを、どうしてヴィオレッタが説得に応じてしまうのか、不思議な場面なのだが、「私を抱きしめて下さったら勇気が湧くでしょう」というシーンを経て、次第にジェルモンの意志に沿う二重唱に、音楽の力で展開していくのが、良く分かった。その場面だけの上演なのに、入り込める演技だった。これだけのものを見せられれば、観客は満足できる、と思った。
「ミラノで共に学んだ仲間たちと演奏会をするのが夢だった」という最後の鈴木慶江さんの言葉を聞いて、ミラノ・ツアー宣伝の為のコンサートなのではなく、コンサート自体が主体だった事が分かった。双方の抱き合わせなのかも知れないが、”宣伝”が表に出ると、人は斜に構えてしまうんじゃないかなあ。終わってみると、面白い企画だった。
千鳥が淵を花見散歩した時に「あ~これが、以前ニュースで”景観に合わない”と言っていた赤いビルか・・」と見ていた、そのビルがイタリア文化会館だった。エントランスに近づくと、ジャズ系の匂いがするコンテンポラリーが聞こえ、ロビーに入るとギャラリーになっていて、ボナノッテとかいうジェコメッティをやや柔らかくしたような彫刻が展示されており、”文化!”が日常的に存在する空間、という感じがした。
階段を下りて行くと、地下がホールになっている。壁にヴェルディのオペラを一文字で表した”書”が展示され、一人で来た人にも退屈をさせない。その”書”のタイトルを見て、ヴェルディの~、という以前に、シェークスピアの~、と題した方がいいんじゃないかな・・などと思いながらホールに入る。
ソプラノの鈴木慶江さんとバリトンの笠井仁さんがそれぞれ1曲ずつ歌った後、二人による長いトークが始まった。ミラノの街の観光案内をしている。ピアニストを含めて三人ともミラノに長く留学し、ミラノの行事や、音楽家にまつわるスポットや、美味しいものを地図をスクリーンに映しながら、思い出を挟みながら紹介している。秋に鈴木慶江さんを囲むツアーの宣伝を聞くに及び、「そういう演奏会だったのか?」と思ったりする。
配られたパンフレットも、まさにガイドブックの中にプログラム、プロフィールが書いてある、という感じ。その中で、運河沿いの骨董品店やレストランの写真が印象に残った。地元の人が愉しむための素敵な通りになっている。自分たちが愉しむ素敵な景観をつくる・・。東京にあるだろうか?地方にはあると思うが、時間帯は早い。人生観の違いを改めて再確認した。
また1曲ずつ歌ってトーク。鈴木慶江さんが椿姫の”そはかの人か”を歌って第一部おわる。ミラノ風にという事で3時開演だったし、休憩時間は30分。その間に、スポンサーからのご厚意で、スパゲッティと化粧品のサンプルが全員に配られた。これは、すごい
トークの直後に歌う事は避け、鈴木慶江さんが先に舞台袖に戻り、少しの間、笠井さんが場つなぎをしてから、鈴木慶江さんが歌う。全体に、歌のテクニックはよく勉強されている印象を持った。ダイナミック・レンジの幅も広く、イタリア語の意味を理解して歌っているのが分かる。そして演奏中の顔が綺麗。しかし、それでも歌は難しい。外国人が歌っている、と分かってしまうのだ。アメリカ人が歌っても、訛っていて、ネイティブではない事が分かりやすいけれど、発音を外に出す言語だから、声が前に出る。しかし、日本人の感性では、日本語は表に吐き出す言語ではなく、口の中で遠慮がちにしゃべっているので、中低音域の発音がこもりやすいのではないかな・・。
休憩後は、プログラムによると2曲だけ?と思っていたら、椿姫の中のアルフレードの父、ジェルモンがヴィオレッタに「身を引いてくれ」と言いに来る二重唱の場面を演奏された。ピアノ独奏の”間奏曲”から続けて20分あまり、字幕付きで、見応えのある出し物となった。「これから結婚をする娘の幸せの為に、息子と別れてくれ。これは天の声だ」と説得しに来る理不尽さを、どうしてヴィオレッタが説得に応じてしまうのか、不思議な場面なのだが、「私を抱きしめて下さったら勇気が湧くでしょう」というシーンを経て、次第にジェルモンの意志に沿う二重唱に、音楽の力で展開していくのが、良く分かった。その場面だけの上演なのに、入り込める演技だった。これだけのものを見せられれば、観客は満足できる、と思った。
「ミラノで共に学んだ仲間たちと演奏会をするのが夢だった」という最後の鈴木慶江さんの言葉を聞いて、ミラノ・ツアー宣伝の為のコンサートなのではなく、コンサート自体が主体だった事が分かった。双方の抱き合わせなのかも知れないが、”宣伝”が表に出ると、人は斜に構えてしまうんじゃないかなあ。終わってみると、面白い企画だった。