室内楽の愉しみ

ピアニストで作曲・編曲家の中山育美の音楽活動&ジャンルを超えた音楽フォーラム

ゆめはっと・タンゴの夕べ

2009-12-29 18:28:07 | Weblog
「もーいーくつ寝るとー、おしょーがつー」

正にこの歌の季節となりましたが、ワタクシのブログは、まだ12月11日に遡っております。

新横浜のホテルから、原ノ町の『南相馬市民文化会館・ゆめはっと』へ、女性陣3人はレンタカーで行きました。じゅんこ嬢が翌日に琵琶湖でオペラのリハーサルがあり、原ノ町に宿泊すると間に合わなくなるので、朝までに新横浜に戻る事になったのです。私は、自宅から原ノ町に向かうつもりでしたが、「地元民(関西人のマネージャーから見れば)だから、一緒に乗って行って頂けると心強い」とナビにスカウトされて同行しました。

でも、横浜市って広くて、エリアが全然違うので、殆どお役に立たない・・と思っていたら、レンタカーのカーナビ様が、予想と違うルートをおっしゃって、気がついたら「三ツ沢方面」の指示が出されており、マネージャーはパニック一歩手前でしたが、私にとっては得意なエリアで「大丈夫です!」きっぱりお答えできて、図らずもお役に立ってしまいました。

雨模様でしたが、思ったよりスムーズに常磐自動車道を進み、午後2時過ぎに到着。電車ルートで少し先に着いていたヤンネとヴィッレに合流。早速、サウンドチェックです。

“ゆめはっと”は、思わず嬉しくなっちゃう温かい響きの、残響の長いホールです。ここで、タンゴを演奏する場合、やはりバイオリンの打楽器的な技法を助けるPA は必要で、一人にPA を付けると、それぞれに必要になる為、それぞれに、それぞれの音が聞こえるモニターが置かれて、そのモニターの聞こえ具合、それとは別に客席への聞こえ具合・・と、色々チェックしなければならず、同じ曲の同じ箇所ばかり何度も音を出して、(ホントは個人練習が一番したいのに・・)と思っていても、殆ど許されませなんだ。

第1部で舘野泉さんとヤンネのDuo の曲、お弟子さんのあゆみさんのソロの曲、舘野泉さんのソロの曲があり、普段はあゆみさんが譜めくりをしているのですが、ソロ演奏があるので、ワタクシに“譜めくリスト”の白羽の矢が当たってしまいました。


舘野さんの譜めくりを仰せつかるのは、なかなか貴重な機会です。80cmの距離から、左手だけで弾かれる曲を、どういう風に譜面にするか、作曲者の創意工夫が見て取れます。しかし、譜めくりの手際の悪さが演奏のお邪魔をしたら台無しですから、タイミングに気を遣います。

この日のプログラムはアルゼンチンのエスカンデという作曲家の舘野さんの為の新作で、どれもリズムが凝りに凝って、それでいて無調ではなく、際どい和音が多いので、掴むのがかなり大変な作品です。右ページの下から2段目で立ち上がり、最終小節を自分が見切れたタイミングでサッとめくり、椅子に腰掛ける時には、譜面から目を離します。そしてめくったばかりの左ページを追いかけるのですが、1回だけ、見失って焦りました。追いつけた時は、すでに右ページに入っていました。これが新曲のコワさ。

本番の集中力は流石でした。それと、“手”自体が、ピアノにとても向いていらして、超一流というのはそういうものなんだ、と改めて思いました。勉強になるというより、いいなあ、スゴいなあ、と思うばかりでした。でも、譜めくりなのに、左の肩が凝りました。つい自分が弾いているみたいな疑似体験的に身体の中が動いてしまったんでしょうか・・。

前半プログラムが終わって、走って女性部屋に戻り、譜めくリストからタンゴ・ピアニスタに変身して、第2部、タンゲロス・アルティコスの出番です。(私が譜めくリストをしている間にも、他のメンバーはそれぞれ個室でぎりぎりまで個人練習に励んでいたんだゼー

でも、本番はとても爽快な気分でした。
すぐれたホールのたっぷりとした響きに包まれながら、メンバー一人一人からあふれ出るアドレナリンのシャワー。ほとばしる情熱と純粋さがとても気持ちの良い空気を創ったと思いました。「こんな場所で演奏できて幸せだ!」と全員が思っていました。

曲に対するイメージが一致しなくて一時は困ったりもしたヴィッレですが、終わると、本当にキツくぎゅーっとハグをして来ました。「本当に楽しかった」と言ってくれました。それが何より嬉しかったです。

写真は、またまたシルバー・コーティング弦のじゅんこ嬢。ステージ上の勇姿です。ステージの写真がこのゲネプロ中のしかなくて・・。次回は、打ち上げです。

じゅんこベース

2009-12-21 18:38:03 | Weblog
私の大好きな長谷川順子さんです。

大きいです。大きなコントラバスと一体化して歩いていらっしゃいます。
でも、頼もしい、逞しい、という簡単な言葉ではとても言い表せません。知的で繊細。頭脳明晰にしておおらか。周り中の人を愉快にさせるキャラクターでいて、なかなか女性らしい・・。そして、それら全てを超越している存在。

楽器は、チェコ製だそうです。ガット弦に銀が巻いてある弦で、1セット(4本)12万円とか・・。
チェロのような美しい音色がします。

アルティコス at 関内サロン

2009-12-21 17:22:09 | Weblog
えーと、気がついたら今年もあと10日。
徹夜してあすなろ保育園の卒園児の歌を作曲したり、レギュラーの仕事をしたり、あっという間に1週間が過ぎていますが、始めたことはやり通さないと、先が進まないので、ちょっと間が抜けてきましたが、『関内・編』ですだ。


前日の西荻窪・編の長い一日の翌日、12月10日ですが、この日もなかなか長い一日でした。
バイオリニストの小笠原伸子さんの横浜バロック室内合奏団のサロンをお借りして、午後と夜の2回ライヴをやらせて頂く日でした。

こちらは、“懇親会付き”なので、前々日の半蔵門の日に、すでに少し買い物をしてありましたが、ドリンクの用意、甘い系のお菓子や、紙皿、紙コップ、ナプキンなどは関内に向かう途中で調達する必要があり、10時前から駅ちかくのスーパーで開店をまじめに待っていらっしゃる年配者の皆さんを尻目に「あと2分だから、お先・・」と入ってカゴにどんどん買う物を入れ、10分後には電車に乗っていました。

でも、横浜で一旦下車。前日、アルティコスのメンバー全員から“お土産・攻勢”に遭っている私としては、手ぶらでは行きづらく、この日の夜からホテル宿泊が始まるので、この機を逃す訳にはいかなかったのです。横浜駅の周辺でちょっとした買い物をした時の状況といったら、2泊用の荷物と衣装、楽譜などが入った大きめのキャリーバッグ、いつも重たいハンドバッグ、スーパーの大きなレジ袋2つ、それにお土産の袋。お天気が良くて、来ているコートも暑苦しく、荷物はいっぱい。ショーウインドウに映る我が姿は、ほとんど路上生活者かと見まごうばかり。

なんとか、新宿からやって来るアルティコスの面々よりは先にサロンに辿り着き、ヘルプをお願いした葉子ちゃんとセッティングを開始。到着したメンバーと、まずは、隣のラーメン店へ。身体を温めて、前日の反省をしつつリハーサル。ヴィッレがプログラムを考えてくれたので、その順番に譜面を並べました。

写真は、2時からの回の懇親会の様子です。
私にとって、お馴染みの、いつも応援して下さる心やさしい皆さんです。いらして下さった皆さま、ありがとうございました。

夜の部までの間に、みんながユニクロへ行きたいと言うので、伊勢佐木町の方へ行って、私はダイソーで冷たいジュースなど調達、それから美味しいパン屋さん、お酒のスーパーまでぐるっと周回して、最後は小走りで開場少し前に戻りました。

夜の方はもう少し賑やかになる予定だったので、ドリンクもおつまみも多めに用意したのですが、ご予約を頂いていた団体のグループが、職場でトラブルが発生したという事で、ドッとキャンセルに。その辺がちょっと残念でしたが、でもいらして下さった方々と、空気中にあふれる音楽を楽しみました。

夜の懇親会では、お酒のスーパーで偶然見つけたアルゼンチンの白ワインをお出ししました。これが結構おいしくて、当たりでした。

片付けをして、関内から新横浜へ移動をしたのが10時。なんと、市営地下鉄1本で行かる事を、葉子ちゃんが教えてくれました。みんな大荷物と楽器を抱えているので、大変ありがたいルートでした。葉子ちゃんには、いつもながら大変お世話になりました。

おかげで10時半にはチェックインしてホテルのそれぞれのお部屋に入っていました。
入っていましたが、「やっぱし、ビール?」

という事で、具合がイマイチのヤンネだけホテルに残して、ヴィッレ、ジュンコ、ワタシの3人で新横浜の街へ。繰り出したはいいのですが、すでに11時で、その時間でも注文を取ってくれるお店は少なく「すみませんね、もう閉店なんですよ」と何軒かで断られ、辛うじて“いろはにほへと”へ入れて、11時半に「閉店なんで・・」と言われるまで、「ダイエットは明日以降にしよう」と言い合いながら飲んで、食べました。

長い一日が、終了。


アルティコス・クワルテート at ミントンハウス

2009-12-17 12:07:45 | Weblog
廊下が寒い、真冬になりましたなー。
家の中をちょっと移動するにもオックウになる、フットワークの重くなる季節でんなあ。

半冬眠・・・。

・・してる場合か~

まだまだ許されません

前回の翌日の事です。
12月9日。
新宿のホテルに滞在中のアルティコスの面々と、10時半から、三丁目銅鑼をお借りしてリハーサル。

先ずは、今回お初の曲を1曲ずつ。始まりました、ヴィッレ先生の一党独占支配。去年もこうだったなー、と思いながら。「イクミ、ここはin Tempo。ここから急激にアッチェレランド。ここは遅くしない。」完全に一方的な“ご指示”が飛んで来るわけです。

う~ん、ここは緩めたいなあ、ここら辺から速くしたいなあ、と、同じピアソラの同じ曲でも、聴いているバージョンが違うらしく、イメージが違うのです。同じ“Adios Nonino‘ でも、いくつもライヴ演奏の録音が残っており、私は2001年にオウルンサロ音楽祭用に編曲した時に、4~5バージョンを聴き比べて美味しい所取りをして纏めたので、私には私なりの“決定版”があります。それに、なんで100% お手本どおりを目指しているの? おんなじ演奏を再現するだけなら、CD聴くのと同じじゃん! 「録音はこうだ!」と言いながらサムソン製のiPod もどきを聴かせる時の勝ち誇った態度はなんだ~!

・・などモロモロ、私にも言い分はありましたが、「これしか無い」と確信しているエネルギーに対して、「こうしたら、どうかな? 試してみる?」などと悠長にやっている時間も無く、彼の確固たる情熱の純粋さを尊重して、98% 譲りました。何しろ遠来のゲストですし。でも、時には「これは、私の好みじゃないけど、今回はアータに付いてってあげるワ!」くらいの事は、私の中学生英語で、色んな顔をしながら言わせてもらいやしたゼ。そうした時に見せるヴィッレの、ちょっと上気した、ちょっとハニカんだような笑顔が、けっこう可愛くて、許せたりするのです。これに味をしめて、3回くらい言ってやりました。

そう、同じスピードでも、馬車馬のようにどんどん突っ込んで行くか、遊び心が入る隙間を感じるかでは、テンポ感が違うのです。私は、「どーだ!」というテンポのテクニックを見せる“快速”だけでなく、どの瞬間にも心遊ばせる“味わい”の方を優先したいのに・・と、思う訳であります。ちょっとミスった曲は「もう、やりたくない」と言い張るし、若いんだな。蒼いよ、キミ! 40代後半にもなれば、きっと分かってくるかな。(たまたま昨日、BS百年インタビューで、小沢征爾さんが『熟成』の話をしていらして、流石に誰にでも分かりやすい話がお上手、と感心しました。)

でも、若い勢いも素晴らしく、価値があります。だから、憎まれ口でなく「今回のところは・・」というのは、私自身の中で、全く無理のない、腹に据えかねたようなモノではなく、半分以上納得して、仲良く演奏できました。

曲目プログラムに関しても、色々ありました。(「てんてん消し日和」参照)
私自身は、《芸術》というものを初めから意識するタイプではありません。その場に相応しく、聴いて下さる方が楽しめるものをやって、その中に“芸術性”を感じて頂ければ、それはそれで善し。「ワタクシはアーチストです。道を開けるよーに!」みたいな(かなり言い過ぎ)のは、合いませんなー。自分の中で、一番美しいものを表現したいときに、真心を純粋に表わせたら、それで充分。聴いて下さった方が喜んで下さったら、大喜び。「涙が出た」と言われたら、こっちも泣いちゃう・・という質なんです。

だから、お客様に楽しんで頂ける曲を入れたい! ミントンハウスは、私の仕切りですから、今回のNew レパートリーの中に何曲か入れさせて貰いました。

そして、トラディショナル・ジャズの殿堂である“ミントンハウス”では、タンゴ・バンドであろうと、1曲は必ずジャズのナンバーを演るお約束になっているので、この日ちょうど空いていらしたギタリストの阿部寛さんに、タンゴに1曲参加して頂き、ジャズ・ナンバーとして“スマイル”にも入って頂きました。

みんなでやれば、より愉しいー、ってことで、記念撮影。

他の写真は、http://mintonhouse.at.webry.info/200912/article_10.html で、ご覧頂けます。

つづく・・・。

“偲ぶ会”プレイヤーズ

2009-12-14 14:37:14 | Weblog
“安田道夫先生を偲ぶ会”で、屏風のウラで少ない椅子をゆずり合って座るミュージシャンたち。

左から、ユリエちゃん、ヤンネ、下やん、直樹さん。これに、ギターの阿部さんと、撮影者のワタクシ。ミュージシャンの連帯感は、こんな狭いスペースから生まれる。

黄金の12月第二週

2009-12-14 11:28:10 | Weblog
夢中でフル回転した一週間。このまま忘却のかなた・・も、もったいないので、“覚え書き”です。

12月8日・・・安田道夫先生を偲ぶ会 at グランドアーク
12月9日・・・アルティコス at ミントンハウス
12月10日・・・アルティコス at 関内サロン
12月11日・・・アルティコス at 原ノ町ゆめはっと
12月13日・・・東京室内管弦楽団 at 大宮ソニック

実際に動いた距離もなかなかですが、精神活動の距離もなかなかのモノでした。まあ、舘野泉さんクラスのように一年中やっていらっしゃる方々から見れば、大した事ないとは思いますが・・。でも、段取りの打ち合わせや譜面作りなどの準備もあって、いつからかは覚えてないけれど、4時半、5時までという日々でした。昨日は久しぶりに6時間ぐっすり眠りました。


・・という訳で、一週間のレビューです。相変わらず写真が1枚ずつしかアップ出来ないので、チマチマと。

いよいよタンゲロス・アルティコス

2009-12-09 04:23:37 | Weblog
12月に入ってからというもの、毎日HECTIC、しゃっくり、へっくしょんな人生を歩んでおりますが、今日、いよいよバンドネオンのVille Hiltula(ヴィレ・ヒルトゥラ)氏が来日。ヤンネ舘野、長谷川順子の両関西コンビも東京着。
いよいよでんがな・・。
しかーし、ライヴ観戦(?)のご予約の方は、このところご贔屓筋からの『残念なお葉書』が続いて届き、かなり心配になってまいりました。

このブログを読んで下さってる皆さま。 9日の夜、10日の午後と夜のご予定がまだ未定の皆さま。
是非、ライヴに足をお運びくださいませ。

12月9日(ひえ~、もう今夜ぢゃん!)西荻窪のミントンハウス 19:30 ~ 22:10

http://www33.ocn.ne.jp/~mintonhouse/  JR西荻窪駅南口より、バス通り沿い進行方向右側、徒歩3分。

12月10日 関内サロン(横浜バロック室内合奏団内)昼の部 14:00 ~ 15:30
夜の部 18:30 ~ 20:00 懇親会付き

 http://www.yokohamabarock.com/s_studio.html   市営地下鉄関内駅3番出口右角右折。路地の左側2軒目和風ビル2F。徒歩30秒。

せっかくの1年11ヶ月ぶりの再会。東京近郊ではお初のライヴでございます。
是非とも、よろしく。何卒よろしく。くれぐれもよろしく、お願い申しあげまするだー、お代官さま。