べコボーの「箱男」を読んだ。
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安部公房、読んでないものがまだまだあるから当分楽しめる。
勿論「箱男」も難解でありました。
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特に語り部がいつのまにか入れ替わったりする後半の迷走ぶりには困惑。
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難解でありながら、「見るもの、見られるもの」匿名性、自他関係の認識等々、その奥に表現しようとする物は容易に見え隠れする。これが安部公房作品の特徴なんだろうが、こういうのは時として鼻につくので敬遠の対象となるのだけれど、シチュエーションや展開がテーマを超越して圧倒的に面白いと、もうどうでも良くなる。
テーマという影に気をとられながらもストーリーに埋没できる感じが、とても気持ち良くって・・・
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低能なのでそんな読み方しかできなくてご免なさい。
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この方の実験的な態度というのが、少なくとも本作に限ればまったく厭らしくない。
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安部公房が撮影した写真の挿入と短文も、厭らしくなく効果的。
なかなか、こうはいかないんじゃないの。それは筒井康隆であっても難しい。
安部公房が優れた文学者であると同時に択一したアーティストである証。
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解説・平岡篤頼曰く「街に出て、面白いスナップ写真を撮ろうとカメラを向ける後ろめたさの感覚を手がかりにするといい」
なるほどと思う。
内容に関して古さはまったく感じない(というか、発表時は先に行きすぎていたんじゃないのか?)けれど、誰しもが携帯で、いつでも写真を撮れる現代。もし安部公房がこの作品をリライトしたら、どのように変化するのでしょうね。
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曲がりなりにも社会と繋がりを持つ乞食や浮浪者とも違う箱男の匿名な存在。街に沢山いても都市伝説にさえならない。
これは決死の覚悟がなくては成れない存在なのだが、登場する男は箱を被る誘惑から逃げ切れない。
箱男と看護婦とその上司である後の贋箱男。
裸になる看護婦、勃起する箱男。
アパートの窓下の箱男に空気銃を放つA
ピアノを弾く女体育教師のトイレを覗く少年。
贋切手で儲ける親子。
変態的なフェティシズムも強烈に感じられる。
裸や覗きが出てくるけれど変態的フェティシズムの度合いはあれど、エロの度合いは少ない。
この作品を下敷きにポルノを作ったら、シュールで面白い物が出来るのじゃないか。登録を拒否した存在の性とは?
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誰か、作れよ。勿論、失敗したら目も当てられないだろうが・・・
一般映画では物足りない。
安部公房 箱男
ほうら、ほうら、満足できないよ。
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安部公房 小説を生む発想 「箱男」について 1.wmv
安部公房 小説を生む発想 「箱男」について 2.wmv
安部公房 小説を生む発想 「箱男」について 3.wmv
安部公房 小説を生む発想 「箱男」について 4.wmv
立て続けに読むほど、取り扱い易い物ではないので、少し時間を置いて、次は「密会」に行ってみよう。
「砂の女」さえも読んでいないのだから、過去に読んだものの再読も含めれば、これは当分、読む本に困らない。
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