JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)

なんの役にも立たない事を只管シコシコと

「敵」

2025-02-20 | 映画(DVD)

「敵」2023年 ハピネットファントム・スタジオ、ギークピクチュアズ 監督・脚本:吉田大八 原作:筒井康隆

大学教授の職をリタイアし、妻には先立たれ、祖父の代から続く日本家屋にひとり暮らす、渡辺儀助77歳。毎朝決まった時間に起床し、料理は自分でつくり、衣類や使う文房具一つに至るまでを丹念に扱う。時には気の置けないわずかな友人と酒を酌み交わし、教え子を招いてディナーも振る舞う。この生活スタイルで預貯金があと何年持つかを計算しながら、日常は平和に過ぎていった。そんな穏やかな時間を過ごす儀助だったが、ある日、書斎のパソコンの画面に「敵がやって来る」と不穏なメッセージが流れてくる。



20年くらい前に読んだ老人小説の傑作である原作を本棚から引っ張り出して再読の上、満を持して鑑賞。
読書の方は渡辺儀助のパーフェクト・デイズな生活には到底及ばぬが自身もXデイへ向けてカウントダウン生活に踏み込む年代なので20年前の初読の何倍も楽しめた。
とは言え当たり前だが作品は1998年に発表されたまま何等変わってはいない。
映画の方は27年の時を経て世の中や老人の暮らしがうんと様変わりしている事を突き付けてきて時代の移り変わりを強く実感させられたので直前再読は正解だった。
パソコン通信はメールに留まり、儀助現代風のSNSに手を出してないのも良い。無いんじゃなくて手を出してないという解釈。



小説には小説ならでわの良さ、映画には映画ならではの良さがある。
吉田大八はじめ制作陣は筒井康隆原作を映画化するに当たって現代的要素を盛り込んだのか、テーマのアイデアを模索する際に題材として筒井康隆を拾い出したのか、普段考えないどうでも良い事に思いを馳せたりしながら見てしまった。

儀助に対する羨望は丁寧な拘り生活。そして独居老人生活に彩りを添える鷹司靖子、菅井歩美、長年連れ添い先に逝った愛妻信子の亡霊という3人の女性だが、そのキャスティングと別解釈のキャラ付けも好ましかった。











若い河合優実と仏文学談義なんかできたらそりゃ鼻唄もでるだろうよ。
瀧内公美に過去の思い出をパワハラ呼ばわりされたらそりゃ悲しかろう。
瀧内公美の謎なキャラ設定はすごく魅力的だった。
カトウシンスケの怪演も最高で、鍋のシーンでは、黒沢あすかの嫉妬もあったり大きな見せ場だった。








シュールさを楽しむ作品ではないかも。
夢と現実の融合やら「敵」来襲はこの際どうでも良いように感じてしまったのは決して良い事ではないかもしれないが。



筒井康隆「敵」の前に読んだ本で「やらせてもらえるかもしれないという女性が居る事がどんだけ心を豊かにするか」みたいな一節出てきて激しく共感したが、儀介の年齢ともなれば尚更だろう。
しかも教え子の人妻だなんてね。Xデイを計算したうえで女子大生にだまし取られる一定額があるのも恵まれてる。騙されてもあっさりしているのも良い。あぁ、騙されたい。



やれそうな事も騙される事も妄想の中だけにしておく方が幸せか?
本記事のTOP画像を長塚京三にせず瀧内公美にしたのは嫉妬のせいかなw






TOHOシネマズシャンテ
2025年1月

 

追記 2025年2月20日 今日のひとこと
 
Q:お弁当に入っていたら嬉しいおかずは? 
A:「入っていたら嬉しい」というのは作ってもらう側だよね。諸物価高騰で自分で作るようになった(唯一の儀助的LIFE)のでそのような感覚は無い。あ、「敵」UPしました。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「ミカドロイド」 | トップ | M bit live #2 UA x AiNA TH... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

映画(DVD)」カテゴリの最新記事