JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)

なんの役にも立たない事を只管シコシコと

「ボリビア南方の地区にて」

2009-11-05 | 映画(DVD)
「第22回東京国際映画祭」
●COMPETITION

「ボリビア南方の地区にて」2009年 ボリビア 監督:ファン・カルロス・ヴァルディヴィア
原題:Zona Sur

ボリビアの首都ラパスでは、数多くの都市と違い、南部地区の標高の低いところに金持ちが住んでいる。美しい庭に囲まれた大きな屋敷で、たいした事件もないまま人生は続いていく。素晴らしい世界、快適で巨大なバブル景気…。そこでは、それぞれ個別の階級が混在していた。3人の子供たちと暮らす母親やアイマラ族の住民たちは、バブルがはじける時まで、日々の暮らしを見つめて過ごしている。

ボリビア映画が見られる機会なんてあんまりないから飛びつく。
尚且つ、ボリビア映画では先住民がカメラの前に立つ事がほとんどなところ、この映画は上流の白人の生活を写し出したというのが稀有なんだそうです。
タイトルのZona Surは正しくはボリビア南方地区ではなくて、ラパス南方Zona Surね。

登場の家族は離婚して子供たちを育てている力強い母、ガールフレンドを部屋に引き入れセックスとドラッグに明け暮れる長男、タトゥーを入れレズビアンの高校生の長女、幼い芸術家で木の上の家や屋根の上で遊ぶ末弟。それに先住民族の使用人たち。

南米の貧富の格差っていうのは昔からすごいもので20年位前にクスコで一晩お世話になった家庭も富裕層の部類だったけど、この映画の家庭はもっともっと豊かな層。
ただし、ボリビアではかつての前近代的な支配層が力を弱め、先住民の権利拡大が進みつつあるんだそうだ。
その現代ボリビア社会を描き出しているので、一見豊かそうなこの家庭も実は経済的に疲弊していて、使用人にまともに給料も払えないばかりか、食物の支払いに子供の貯金箱をあてにするほど。

カメラはほとんどこの家族の豪邸の中だけに納まって、調度品や装飾品を写し出す。
唯一、使用人ウィルソンが息子の訃報に故郷へ帰る場面が屋敷外の世界。
アイマラ族の人たちがチチカカ湖を見渡す山の上で葬儀の儀式を行っている。
申し訳ないが、このシーンでやっと「あー、ボリビアらしい風景が見れたぁ」と満足。やはりこれでなくては・・・・

主人の目を盗みこっそり化粧品を使っておめかしする使用人ウィルソンが好ましい。

この映画では独特のカメラワークについて触れないわけにはいかない。
カメラは常に屋敷の中をゆっくり時計回りにパーンしていて静止する事はない。監督の最もこだわったカメラワークは円状にある時間を表現しているのだそうだ。
最初はこのカメラワーク、ねっとり金持ちの家を舐めるように動くのがストーカーっぽくて面白かったんだけど、だんだん乗り物に酔ったような感じで気持ち悪くなってきた。
エンドロールまで右から左へ流れる徹底振りなのだ。恐れ入ります。

上映後のQ&Aによると母親役のニノン・デル・カスティーヨ、てっきりあちらでは有名な女優さんだとばかり思っていたが、なんと今作が初めての演技だとか。これは驚き!名演でした。

TOHOシネマズ 六本木ヒルズ

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