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ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督没後30年
「ファスビンダーと美しきヒロインたち」
「マルタ」1975年 独 監督:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
図書館に勤めるマルタ(マルギット・カルステンセン)は父親とローマを旅行していて、父親を心臓発作で亡くす。その混乱の最中に財布を盗まれたことに気づいたマルタは、ドイツ大使館に行く。大使館を出たマルタは、ある男性を見かける。帰国後、マルタはヘルムート(カールハインツ・ベーム)に紹介される。彼は、ローマで見かけた男性だった。ヘルムートはマルタを言葉で侮辱したり、嫌がることを強要するが、マルタは従順に受け入れていく。そして2人は結婚する。ハネムーンに出かけたイタリアで、ヘルムートの要求はさらにエスカレートしていき、精神的、肉体的にマルタを痛めつけるようになっていく。
2008年にアテネフランセで知って一気にファンになったファスビンダーの久々の特集。
本作は噂に違わず相当エグい作品で大喜び。
マルタの夫ヘルムートはサディストの中でもかなり、今で言う所のモラハラ的要素が多少あるのか。
もとっも、モラハラ男特有の幼児性はヘルムートには無いんですがね・・・。
マルタはACという設定ですね。
モラハラ映画といえば邦画では私の大好きな石井輝男「異常性愛記録 ハレンチ」をすぐ思い浮かべるが、あちらのとんでもB級感覚よりも正当な感じがあるだけに、そのユーモアが際立つ。
ヘルムートのマルタへ対するいたぶりが、不思議と笑いを誘う物。
「べトラ・フォン・カントの苦い涙」でも良かったマルタ役・マルギット・カルステンセンはヘルムートの言うように痩せぎすで決して魅力的でないはずなのだが、これが脚線美など意外と美しいガリなんです。
自分の好みへの拘りが強く、束縛しながらマルタを追い詰めて行くヘルムート。
色が白すぎるので、日焼け止めは塗らない方が良いと言われて肌を焼け爛れさせて強く抱擁されうめきを上げるマルタ。
音楽の好みを強要させ、果ては自分の仕事関係の難しそうな工学書を読むように言いつける。
妻が逆らっても、直接的な暴力には至らず、ふいと帰らなくなる放置プレイ。
あわてて反省し、工学書のポイント部分を諳んじるマルタの哀れ。
ヘルムートはベッドでは暴力的。ベッド・シーンの直接表現は無いけれど、細いマルタをくの字なりに抱きしめ、まるで吸血鬼のような接吻が絵的に良いのです。
ローマでマルタとヘルムートが最初に出会うシーンが出色。
2人の姿をカメラが360度回転しながら捉える。双方の立ち位置関係が良く解らなくなる効果で、その後の2人の関係とも思える不安感が表現されているように感じる事ができる。他にも鏡の多用とかもマルタの心理的不安の表現として使われる。
演劇のように役者がフリーズするといった場面転換も見事な効果。
SM映画というのは、たいていは愛の映画であり、SとMの逆転などもありながら互いに幸福感に行きつく場合が多いように思うけど、ことモラハラがからんでくるとそうは行かない悲劇がある。
鋭い嗅覚で犠牲者を選ぶドSモラハラ男だが、その犠牲者もやがて相手が「おかしい」事に気付き、逃走を図るという悲しい結末になってしまう。
それだけに、ラストのエレベーターのシーンはぞっとする物があり、エグいのであります。
あの事故はあくまで偶然性が伴うわけですが、あたかもヘルムートの計算がもたらした結果のように思えるのですから・・・。
ファスビンダー、「呪われた監督」という異名があるそうです。なるほどねぇ。やっぱりもっと沢山観ておこう。
雪の中、決死で見た甲斐はあった。イメフォの手前で滑って転んだが怪我は無し。
渋谷 シアター・イメージ・フォーラム
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「ファスビンダーと美しきヒロインたち」
「マルタ」1975年 独 監督:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
図書館に勤めるマルタ(マルギット・カルステンセン)は父親とローマを旅行していて、父親を心臓発作で亡くす。その混乱の最中に財布を盗まれたことに気づいたマルタは、ドイツ大使館に行く。大使館を出たマルタは、ある男性を見かける。帰国後、マルタはヘルムート(カールハインツ・ベーム)に紹介される。彼は、ローマで見かけた男性だった。ヘルムートはマルタを言葉で侮辱したり、嫌がることを強要するが、マルタは従順に受け入れていく。そして2人は結婚する。ハネムーンに出かけたイタリアで、ヘルムートの要求はさらにエスカレートしていき、精神的、肉体的にマルタを痛めつけるようになっていく。
2008年にアテネフランセで知って一気にファンになったファスビンダーの久々の特集。
本作は噂に違わず相当エグい作品で大喜び。
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マルタの夫ヘルムートはサディストの中でもかなり、今で言う所のモラハラ的要素が多少あるのか。
もとっも、モラハラ男特有の幼児性はヘルムートには無いんですがね・・・。
マルタはACという設定ですね。
モラハラ映画といえば邦画では私の大好きな石井輝男「異常性愛記録 ハレンチ」をすぐ思い浮かべるが、あちらのとんでもB級感覚よりも正当な感じがあるだけに、そのユーモアが際立つ。
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ヘルムートのマルタへ対するいたぶりが、不思議と笑いを誘う物。
「べトラ・フォン・カントの苦い涙」でも良かったマルタ役・マルギット・カルステンセンはヘルムートの言うように痩せぎすで決して魅力的でないはずなのだが、これが脚線美など意外と美しいガリなんです。
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自分の好みへの拘りが強く、束縛しながらマルタを追い詰めて行くヘルムート。
色が白すぎるので、日焼け止めは塗らない方が良いと言われて肌を焼け爛れさせて強く抱擁されうめきを上げるマルタ。
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音楽の好みを強要させ、果ては自分の仕事関係の難しそうな工学書を読むように言いつける。
妻が逆らっても、直接的な暴力には至らず、ふいと帰らなくなる放置プレイ。
あわてて反省し、工学書のポイント部分を諳んじるマルタの哀れ。
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ヘルムートはベッドでは暴力的。ベッド・シーンの直接表現は無いけれど、細いマルタをくの字なりに抱きしめ、まるで吸血鬼のような接吻が絵的に良いのです。
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ローマでマルタとヘルムートが最初に出会うシーンが出色。
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2人の姿をカメラが360度回転しながら捉える。双方の立ち位置関係が良く解らなくなる効果で、その後の2人の関係とも思える不安感が表現されているように感じる事ができる。他にも鏡の多用とかもマルタの心理的不安の表現として使われる。
演劇のように役者がフリーズするといった場面転換も見事な効果。
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SM映画というのは、たいていは愛の映画であり、SとMの逆転などもありながら互いに幸福感に行きつく場合が多いように思うけど、ことモラハラがからんでくるとそうは行かない悲劇がある。
鋭い嗅覚で犠牲者を選ぶドSモラハラ男だが、その犠牲者もやがて相手が「おかしい」事に気付き、逃走を図るという悲しい結末になってしまう。
それだけに、ラストのエレベーターのシーンはぞっとする物があり、エグいのであります。
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あの事故はあくまで偶然性が伴うわけですが、あたかもヘルムートの計算がもたらした結果のように思えるのですから・・・。
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ファスビンダー、「呪われた監督」という異名があるそうです。なるほどねぇ。やっぱりもっと沢山観ておこう。
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雪の中、決死で見た甲斐はあった。イメフォの手前で滑って転んだが怪我は無し。
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渋谷 シアター・イメージ・フォーラム
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私は今回初めての参戦でした。面白いので3つガッツリ行っときましたが、今後もっともっと見たくなりました
>ヘルムートのマルタへ対するいたぶりが、不思議と笑いを誘う物。
そうそう!笑っちゃいけないのになんか可笑しくて。
imaponさんのユーモアセンス、いつも的確ですよね。
やはり、いたぶり、何か可笑しいですよね。賛同いただき安心しました。
ガッツリ3つですか。私は「ローラ」はまたの機会になっちゃいました。
今回はファスビンダーの中でも割と有名どころですよね。
私は「何故R氏は発作的に人を殺したか?」という作品がとても衝撃的だったので、また見たいと思っています。
どこかで特集してくれないかな。