JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)

なんの役にも立たない事を只管シコシコと

G・ガルシア・マルケス 後藤政子・訳 「戒厳令下チリ潜入記 -ある映画監督の冒険-」

2007-10-11 | BOOK
この本は20年近く前に購入してそのまま積読として放置されていました。

文体の魅力にどんどん引き付けられるガルシア・マルケスのこれはノンフィクション、ルポルタージュ。

ヨーロッパ亡命中のチリ反政府派の映画監督ミゲル・リティンは1985年、変装して戒厳令下の祖国に潜入、「チリに関する全記録」の撮影に成功。
スラム街や大統領府内の模様、武装ゲリラの幹部との地下会見、母や級友との劇的な再会・・・長時間インタビューの元、作品はミゲル・リティンが語る形になっている。

リティンの撮ったフィルムは2時間の映画と4時間のTV版になっている。
2時間の映画は日本でも公開されたようだ。観たかったなぁ。

小説ほどのややこしい文体ではないので読みやすい。
しかし、読んでいてこれがルポであることをしばしば忘れてしまう面白さがある。まるでスパイ小説、冒険小説を読んでいるよう。
別人になるためのトレーニングを大真面目にやっていたり、合言葉を使ったり、協力者で同行するエレーナという女性も謎の魅力が良い。
第5章での床屋の件などはガルシア・マルケス小説のまんまと感じれて面白い。
「族長の秋」の後に読んだので大統領府の件も趣がある。
戒厳令の緊迫さの中にもやはりラテン・アメリカ特有のフラ(何だそれ)を感じてニヤリとしてしまう。
長く潜伏しているうちにだんだん無防備になって行くあたりもさもありなんで面白いのです。

ちょうど同じ時代にペルーのリマで「戒厳令の夜」を初体験しましたが、お気楽旅行者はホテルのカーテン越しに見る風景にさほどの緊迫感を持たなかった事を思い出します。

次々にラテン・アメリカ諸国が民主化される中、チリだけがピノチェト軍事政権下、弾圧の嵐が吹き荒れていた。
20世紀末までピノチェト軍事政権が続くかと思われたチリも1990年には民政へと移行し、現在では民主的な文民政権になっている。
そして、Hero-Nのお友だちもお父さんの仕事の関係でサンチアゴに引越し、たまに文通をしている。
そんなチリに行ってみたいそうだ。Hero-Nにとっても今、最も身近な外国なのだ。私だってチリを旅したけど・・・

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2 コメント

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チリにペルー… ()
2007-10-12 21:11:59
imaponさまは遺跡ファンなのですか?
いずれにしてもリマの戒厳令下って想像しづらいです。ご無事で何よりでした。息子7歳の親友は大阪に引っ越してしまいましたが、Hero-Nくんのお友達はまた遠いですね。でも今の時代文通も気軽に出来るので世界を知るいい機会かもしれません。チリが一番身近な国なんてロマンチック♪
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転校 (imapon)
2007-10-14 07:35:24
つ様へ、
友達の転校、成長とともに悲しさも増しますね。
チリのお友だちは3年生くらいになったら帰国して同じ小学校に通う予定。楽しみにしています。

遺跡ファンというよりもラテンアメリカ・ファンなんです。
私の場合はエクアドルからの転校生がきっかけの一つなんですが。
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