中国語学習者のブログ

これって中国語でどう言うの?様々な中国語表現を紹介します。読者の皆さんと一緒に勉強しましょう。

沈宏非《食相報告》を読む: 尋羊(羊を尋ねて)(2)

2011年12月26日 | 中国グルメ(美食)

 (新疆の羊の丸焼き)

  さて、羊肉を食べることの功能は分かりましたが、それには一つ、難問があります。そう、あの独特の臭いです。この臭いに、どんな対処方法があるのでしょうか。
  そして最後に、羊好きの沈宏非先生は、羊の丸焼きを注文、思う存分堪能します。

■[1]
 ( ↓ クリックすると、中国語原文が表示されます)


・待見 dai4jian4 好む
・臊 sao1 動物臭い。獣臭い。
・汚穢 wu1hui4 不潔である
・採擷 cai3xie2 摘み取る

  “燥熱”以外に、羊肉が漢人に好まれないのは、あのきつい動物臭があるからである。上海の方言では、こうした料理の臭いのことを“羊臊臭”、「羊臭い」と言われる。

  肉の供給が十分でなかった時代には、たとえ獣臭くても、鼻をつまんででも、羊肉は食べなければならなかった。それと同時に、獣臭を恐れる人たちはずっと獣臭との戦いを止めなかった。最も初期の獣臭を取り除く方法は、《呂氏春秋》によれば、「火で以てこれを制御する。時にすばやく、時にゆっくり、臊(獣臭さ)を去り膻(生臭さ)を除き、必ずこのようにして調理する」とある。

  東方の羊食大国として、インド人も羊臭さを恐れる。カレーの発明は、「獣臭さを除く方法」を探究して生み出された副産物と言われる。仏教伝説では、「汚れている」ので豚は食べず、牛はシャカムニ仏の乗り物であるので、食べてはならず、ゆえに羊肉(または鶏)が主要な食肉となったようである。けれども羊肉は生臭く、調理が難しく、しばらくは食べることができなかった。シャカムニ仏はこのことを知り、内心たいへん同情し、それで人々に香りと辛味を含んだ樹木、樹皮、草の根を使って羊肉を調理するよう教え導いた。人々は、これらの調理を経た羊肉を食べて、思わず“kuri”(インド語で「たいへん美味しい」、或いは「No.1」の意味)と叫んだ。これがすなわち、カレー(curry)の由来である。

  インド人より更に羊臭さを恐れる中国人は、カレーを発明はしなかったが、私たちの手には、同様に樹木、果実、樹皮、草から摘み取られた漢方薬が、しっかりと握られていた。しかしながら不幸なことに、あまりに多くの薬材が羊臭さを覆い隠すと同時に、羊肉の美味までも徹底的に封殺してしまった。この他、羊がまだ羊肉に変わる前に羊臭さを摘み取ってしまう「科学的」な方法を発明した人もいる。羊にビールを注ぎこむことで、この方法で羊臭さを大幅に弱めることができると言われる。


■[2]


・聞風喪胆 wen2feng1 sang4dan3 [成語]うわさを聞いただけで肝をつぶす。
・可貴 ke3gui4 貴ぶべき。称賛すべき。

  私はずっとこう信じている:袁枚が後世の追従者の模範となることができたのは、たいへん大きな程度、彼の飲食における開放的な態度と関係がある、と。彼は《随園食単》の中で、こう書いている:「牛、羊、鹿の三つの家畜は、南方の人がふだん食べる物ではない。それゆえ調理法を知らないといけない。」彼の“雑牲単”に挙げられている羊肉のメニューは、羊の頭、蹄、煮凝りから、羊の内臓のスープ、羊肉の煮込み、羊肉の細切り炒め、更には羊肉の焼き物に到るまで、「穴をあけた胡桃を加え、生臭を取り去る」という羊肉の煮込みの「古法」を紹介しているが、全体的に見て、多くが鶏のスープ、香草、さいの目に切った筍、甘酒、胡椒、刻み葱、米酢などのありふれた味付けで、別段、特別に強力な獣臭さを除く措置も取っていない。とりわけ、称賛し難いのは、南方人として、袁枚が今日に至るも一般の南方の獣臭さを惧れる人たちが、そのうわさを聞いただけで肝をつぶすという「羊の焼き物」を記載していることである。「羊肉を大きな塊に切り、重さは五から七斤くらい、これを鉄の叉で刺し、火の上で焼く。味は果たして甘くサクサクしていて、宋の仁宗が夜中にふとこれを食べたいと思ったのも頷ける。」


■[3]


・黙黙無聞 mo4mo4 wu2wen2 [成語]名前が世に知られていないこと。無名であること。
・悶騒 men1sao1 見かけは沈着冷静を装っているが、内に熱い想いを包含している人。
・哨 shao4 軍隊が見張りや偵察のために設けた立哨場所。
・訛鬼食豆腐 e2 gui3shi2 dou4fu 鬼に誤って豆腐を(人間の肉と思って)食べさせる。広州の俗語で、「相手の言うことが信用できない」の意味。

  羊臭さを厭がるかどうかは、確かに民族や個人の間で差があるが、羊肉が美味であるか否かについて言えば、私は、羊臭さは羊肉の分けることのできない一部であり、したがって獣臭さを除く処置は実際、あまり力を入れてやり過ぎない方が良く、ちょうど良い頃合いが良い。

  しかし、「美食天国」と称され、ずっと「羊城」の美名を頂いている広州は、漢方薬を食べて育てられ、したがって獣臭さや生臭さが除き尽くされた海南の「東山羊」以外は、本物の「臭い羊」を食べようと思っても、長い間、それは天に昇るよりも難しいことだった。羊肉をメインにしているレストランも若干はあるにせよ、酒楼、食品店の林立する羊城に在っては、秘密の「見張り場所」で、人知れず「想いを内に秘めて」いるに過ぎない。どうか広州の漢人よ、少しは羊臭さにも触れてほしい。これを捧げ持つのは「鬼に豆腐を食わす」より難しいだろうから。


■[4]


・博格達 bo2ge2da2 パゴダ(pagoda)の音訳。卒塔婆、仏舎利塔のこと
・閑言砕語 xian2yan2 sui4yu3 [成語]くだらない話。

  幸い、我ら中華は土地が大きく物産が豊富で、各省、市の間には少なくとも羊肉の流通上の貿易障壁は無い。私のような羊きちがいにとって、遂に雲が開き、月の明かりが見える日がやって来た。天河時代広場のそばの「博格達美食楽園」こそ、羊きちがい達の楽園である。馬肉、鹿肉、アカシカの肉は傍で待っていなさい。すぐ主題に入ろう。羊、羊のモモ肉のローストをください。羊の丸焼きとその臭いところをください。それ以外は結構。思いっきり楽しむ前に、一点覚えていてほしい:熱の力で羊肉の臭みを炙り出して後、酒はより一層羊肉のあちらの効き目を誘発することができる。年代物の紹興酒は悪くない選択だが、「博格達」のワイン・リストには、嬉しいことに、トルファン産の「楼蘭干紅」が載っている。私個人の経験では、これは最も良い国産の赤ワインである。惜しいことに産地から直接西方に輸出されるので、北京、上海、広州では見かけるのが難しい。西域の赤ワインは羊肉の最良のパートナーである。このように言うのは根拠がある:「羊を料理し牛を屠ることを、しばらくは楽しみとする。この後には当然、三百杯の酒を痛飲するのだから。」どうして豚でもなければ鶏でもないのか。原因は李白が漢人ではないからで、当然、羊臭さも恐れない。

  くだらない話はさて置き、涼しい季節に入り、また、羊肉を食べるのに良い季節となった。寒い夜、レストランの部屋を予約し、羊の丸焼きを一匹、羊きちがいを7、8人連れて行き、お供は「楼蘭干紅」、部屋の入口を閉め切って、ナイフを振り上げ、大いに食べよう。羊肉を食べると、あそこも元気もりもり、この楽しみは尽きることがない。



(「博格達美食楽園」の羊の丸焼き)

【原文】沈宏非《食相報告》四川人民出版社2003年4月より翻訳

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