中国語学習者のブログ

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中国語の修辞: 語句の転用

2010年11月19日 | 中国語
 今回は、語句を本来とは別の用途に使ったり、品詞を変えて使ったりする修辞技法について、説明します。

                       語句の転用(“移用”)

 言語の中で、語句には固定の意味や用法があり、一定の詞性を備えているものがある。語句のこうした特徴を利用し、臨時にその用法や詞性を変え、それにより一定の修辞効果を得ることを「語句の転用(“移用”)」と呼ぶ。

(一) 用法の変更
 一定の言語環境で、もともとある用法の無い語句を、一時的にそういう本来無い用法に用いることがある。細かく言うと、更にいくつかの異なった状況に分かれる。その一つは語句の組合せの関係を変えることである。例えば:
   (1) 還有寂寞的瓦片風筝,没有風輪,又放得很低,伶仃地顕出憔悴可怜模様。

   (2) 傍晩,涼風従台湾海峡吹来。路旁的金合歓花散出甜絲絲的清香。厦門的夏夜是迷人的。

   (3) 姑娘従泉辺汲水帰来了,
      辮梢上沾着几滴水珠;
      歓笑盛開在眼睛、眉毛上
      心啊,要従嘴里跳出!

 例(1)は人を形容する語句を物に対して用い、実際に人の物に対する感情を描いている。このような転用は言語の中でよく見られるもので、あるものはそれが固定化して一つの詞や成語になっている。例えば、“喜酒”、“情書”、“寿桃”、“愁眉苦臉”、“怒発衝冠”、“老涙縦横”などがそうである。
 例(2)は味覚を表す語句を嗅覚の上に用い、花の「香り」に「甘み」を加え、これにより花をより美しく人を感動させるものに描いている。言語の運用の中には、しばしば甲という感覚の語句を乙という感覚に転用し、二つの感覚を相通じさせ、好ましい表現効果を持たせている。
 例(3)は“盛開”という動詞を暗に比喩を含ませる用法に用い、娘の笑顔を“盛開的鮮花”(満開の花)に譬えているが、これは動詞の転用によりもたらされたものである。

   (4) 打倒帝国主義,打倒軍閥,打倒貪官汚吏,打倒土豪劣紳,這几個政治口号,真是不翼而飛,到無数郷村的青年壮年老頭子小孩子婦女們的面前,一直進他們的脳子里去,又従他們的脳子里到了他們的嘴上。

   (5) 杜学詩這話可更了,他那猫臉上的一対圓眼睛拎起了,很叫人害怕。

 例(4)の“飛”、“鑚”、“流”といった動詞は、通常具体的な事物と組み合わされ、“鳥飛”、“釘子鑚”、“水流”のように用いるが、ここでは組合せ関係を変え、これらの動詞を用いて、政治宣伝の威力がどのようなものか、具体的なイメージを持たせている。
 例(5)の“辣”は一般には食物と組合せるが、ここでは組合せ関係を変え、ことばの残忍さを表している。

 このような語句の転用は、一時的に組合せ関係を変えることで抽象的な事物を具体化し、人に強烈な印象を与える。

 もう一つは語句の適用環境を変えることである。例えば:
   (6) 按“老規矩”,丈夫打老婆,老婆只能挨几下躱開,再経別人一拉,作為了事。孟祥英不只不挨,不躱,又了他的,他認為這是天大一件丟人事。

・繳械 jiao3xie4 武装解除する

   (7) 媽説:“你給陳師傅捎個信,什麼時候煨了湯,請他来喝一大碗。”這個意思,我貪汚了。心里佩服他,感激他,可帯他到我們喝湯不是時候,不不不,是絶対的不合適。

・捎信 shao1xin4 ことづける
・貪汚 tan1wu1 汚職行為をする。賄賂をとる

   (8)我們廠現在搞的配套表演,大家把先進経験拿来“集”,然后由大家把零砕的経験配成套。

・集 gan3ji2 市(マーケット)に行く

 上の三例の中で、“繳械”はもともと軍事用語で、“貪汚”はもともとお金にまつわることで、“集”は市(マーケット)の交易に用いられる。ここではこれらの元来適用される環境でなく別の環境(状況、場面)で使うことで、イメージが明確になり、ユーモアのある表現となっている。

(二) 詞性の変更
 一つの詞には、常にその属する品詞の種類(“詞類”)や文法上の特徴があるが、いくつかの詞は二つ以上の文法上の特徴を備えて(二つ以上の品詞に属する)おり、これを“兼類”と呼ぶ。一定の条件下で、一時的にその詞の詞性を変更して用いることがあるが、いつもそのような使い方をする訳ではないので、これはつまり「詞性の変更」の転用である。例えば:
   (9) 失了東三省只有几個学生上几篇“呈文”,党国倒愈像一個国,可以博得“友邦人士”的夸奨,永遠“”下去一様。

   (10) 他就盼望他的叔叔多多頭回来,也許這位野馬似的好漢叔叔又像上次那様帯几個小焼餅来偸偸地給他香一香嘴巴。

   (11) 我于是立即鎖了房門,出街向那酒楼去。其実也無非思姑且逃避客中的無聊,并不専為買

 例(9)の“国”は名詞を一時的に動詞として使っている。例(10)の“香”は形容詞を一時的に動詞として使っている。例(11)の“酔”は動詞を一時的に名詞として使っている。こうした一時的な詞性の変化は、一般にある意味を強調したり、ある強烈な感情を表現する修辞手段であるので、これらは言語環境への依存性がたいへん強い。もし具体的な言語環境を配慮せず、修辞上の必要性を考えず、勝手にある詞の詞性を変更したならば、それは言語規範化の要求に適合しない。

(三) 文の流れに乗じて転用する(“順勢移用”)
 甲乙二つの関連する事物を叙述する時、一般には甲という事物に適用される語句を、一時的に文脈の流れに乗じて乙という事物に用いることがある。例えば:
   (12) 紅燭啊!
       既制了,便焼着!
       焼罷!焼罷!
       焼破世人的夢,
       焼沸世人的血――
       也救出他們的霊魂,
       也搗破他們的監獄!

   (13) 白潔是一面鏡子,在這面鏡子里,不僅照出了我織的布上有疵点,也照出了我的思想上有疵点

   (14) 他,人老心不,村上各種活動,他全積極参加,事事帯頭。

   (15) 中央已経三令五申,可曹書記名義上是給市委職工蓋食堂,実際上在給他們少数領導人蓋高級内部電影。聴聴這声音吧,這哪里是砸za2地基,這是在砸za2群衆的心啊!

・三令五申 何度も命令や申し入れをする
・砸za2 (重い物で物を)打つ。砸za2地基:基礎工事をする

 以上の四つの例で、甲という事物を説明することにより、その流れで乙という事物に同じ動詞を連用している。甲という事物は通常具体的で、例では“紅燭”、“布”、“人”、“地基”である。これに対して乙は通常抽象的で、例では“夢”、“血”(ここでは実際の血液を指すのではない)、“思想”、“心”である。甲という事物を表現する動詞を乙という事物に用いるという、動作が似ていることから別の事物に言及する(“連類而及”)という語句の転用という方法は、作者の現実の事物に対する強烈な感情を表現することができる。後半の転用部分はしばしば前半の意味の深化、飛躍である。


【出典】胡裕樹主編《現代漢語》重訂版・上海教育出版社 1995年


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