佐藤功の釣ったろ釣られたろ日誌

釣り・釣りの思い出・釣り界のこと・ボヤキ.etc

夢にまで見た宇治群島へP-11

2013-02-22 19:45:38 | 釣り界の歴史

最終編

ナイター

南国の強烈な太陽が、真っ赤に燃えて遥かな水平線の彼方に沈むと、透き通るように澄み切った

エメラルドグリーンの海がダークグリーンからライトブリューに、ライトブリューから

ダークブラックに、その色彩を刻刻と塗り替え、ぬばたま(射干玉)の闇にスッポリと包まれる。

 

地獄バリのついたロープを、力一杯拠りこむ。

漆黒の東シナ海の海がパシャリと小さな音を立て、孤独な釣り人の、

たった一つの希望が伸びていくロープに込められる。

小アジの撒餌が、青白鱗を放ちながら、ゆらゆらとたゆって、次第に淡く、闇の底に舞い落ちていく

巨大な岩礁が怪物のように黙々とうずくまり、死のような静寂があたりを支配する。

空は一面の星、海は池のように静かである。

 

ときどき四周の静寂をつんざいて、得体のしれぬ怪鳥がケッ、ケッ、と薄気味悪い鳴き声ををあげる。

と、手にしたロープが音もなく流れ出る。

クエだ!逆立った全神経の中で呼吸が停止する。

一ヒロ送りこんで、一瞬、力一杯ロープを引く、ガクッ、ズズズズッとした重量感に溢れた手応え

やった!、と、体中が無言で叫ぶ。

買い手が不気味に青白く光る。

巨大な燐光の塊まりが刻々と近づいて、海の底の青白い明かりが次第にひろがる。

無数の夜光虫のお供を引きつれて荒磯の夜の王様のご来光である。  

 

クエは四貫前後の小型ながら、全夜収穫があってボーズなし、殊に鳥島でやったときには、

正体不明の怪物に引っ張り回されて、力一杯の奮闘も空しく、2度も鈎を折られて逃げられた。

クエならハリを折られるはずがない。

一体何か来たのだろうか?

 

ストームといっても、昔高等学校でやったそれではない。

西南の空が曇ってきたかと思うと、ついさっきまでエメラルドグリーンの、夢のように柔らかく

美しかった海がものの2分で暗転し、ものの5分もたてば、一面に白い牙をむいて、

海の上のすべてのものに襲いかかってくる。

東シナ海の荒海は、それから狂いに狂う。

 

コメント
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