※ 記事が2万字の制限を超えたため、分載した。
なお、“「フリードマン経済学の誤謬は、その少年時代にキーツの詩を誤読したことに始まる」という仮説を”書く予定なのだが、それには『フリードマン自伝』を確認せねばならず、これはあまり読みたくない本なので、順番としては後回しになる。
【2014.11.12~2015.1.2】
『経済学から地球環境 日米安保・沖縄』 宇沢弘文 (2010年10月16日 東京外国語大学) https://www.youtube.com/watch?v=XqOKulQ8SCo
社会的資本とは簡単に言いますと、三つ種類があります。
いずれもひとりひとりの人間の生き様に非常に重要な関わりを持つもので、あるいは社会が円滑に機能していく為に欠くことのできないような役割を果たす、そういうものを一括して社会的共通資本と言います。
基本的には私有は認められても、私的管理ではなく社会的な管理に従う。それから個人の意思よりはそのそれぞれの社会的共通資本に重要な関わりを持つ人々が commons として共同体的なものを作ってお互いに協力しながら考えていこうというものなんですね。ですから、最近の経済学のなかには、この概念はあまり、というか無視されてきたんですね。
具体的には、自然環境,山,森,川,海,湖,その他、特に大気ですね、そういうような人間が生きていく、あるいはそれ以上の生物が生きていく為に非常に重要な役割を果たすものです。ところがこれまで経済学の、特に近代経済学、マルクスもそうです、のなかではこの資本という概念が、自然環境は資本ではない、とされていたわけですね。
資本とは一般に労働を投下して作られるもの、自然にもともとあるものは経済学の対象ではないと、近代経済学はもっと極端にですね、もう自然は自由財だと、自由に勝手に使ってもいい、と、それが戦後の実は水俣病をはじめとする悲惨な公害の問題がまさにその近代経済学の非常に偏った考え方をベースにして、社会制度なり、政策が展開されてきた、という結果なんですね。
social capital 、それは、道路とか公共的な交通機関,ガス,水道,その他。で、これが、日本語で言いますと、社会資本というふうに呼ばれて、予算の重要なジャンルになってますが、ところがですね、英語で social capital と言うと、全く違うものを意味するんですね。それはある社会で人間と、人と人の間の信頼みたいなもの、を維持したり、あるいはそれを保つようなもの、というか作り出すもの、一番いい例が言葉、とか慣習とかそういったものですね。これも経済学のなかでは取り扱われてこなかったんですね。
それから三番目は、制度資本といいましょうか、つまり、病院,学校,金融制度,司法制度,出版ジャーナリズム、そういった社会を、目に見えない、重要な役割を果たすもの、制度なんですね。その制度が、ちゃんとした制度ができていれば、豊かな、自由な社会が作られる。この豊かな、自由なと言いましたけれど、それは経済学で言いますと liberalism の思想にかかっているもの、 liberalism というのは、ひとりひとりの人間の人間的尊厳が守られ、そして魂の自立が支えられ、そしてすべての人たちが市民的権利を最大限に享受できるよう、そういう世界,社会を目指して、制度的あるいは分析をするとか、あるいは運動を起こすというようなこと、それが liberalism の理念なんですね。
パックス・アメリカーナの経済思想的な考え方は何かというのを一番良く表す事があります。それは1945年の7月にですね、モンペルランというスイスの有名な避暑地ですね、そこにふたりのシカゴ大学の経済学者がですね、たまたま一緒になった。ひとりはフランク・ナイトという、もうひとりはフリードリッヒ・フォン・ハイエックという経済学者です。それで戦後の世界をどうやって立て直すかという時の基本的な考え方を、ふたりで考えました。それでモンペルラン・ソサエティというのを立ち上げて、ひとつの単に経済学者だけじゃなくて、多くの政治家とか、実業家、ジャーナリストなどを引き込んで、ひとつの大きな運動を展開する。それが私はあのパックス・アメリカーナの考え方を非常に表していると思うわけです。
で、その考えはどういう考え方かというと、すべてのものを私有化して、マーケットで取引できるようにする、そうした時に、企業の能力が最大限に発揮でき、そしてそれによって、人間の能力も最大限に発揮できる。それが基本的な考え方です。
そこで、それまでに、マーケットを成立するためには、私有制を貫徹しなければならない。ですから、大気とか海の水とか、そういう私有制がはっきりしないようなものには私有制を導入する、という事を考えたわけです。そしてその徹底したマーケット・メカニズム、それを使って、すべてがうまくいくというような、つまり基本的には社会共通資本を根源から否定する考え方になるんですね。
(声) みんな私有化して私有財産にしていくわけですね?
(宇沢弘文) そう。
それに抵抗するもの、あるいは、それを障害になるような制度,法律は改革していこう、と、でそれに批判的な国に対しては、軍事力を使っても構わないと、いう事をだんだんと purify させていったんですね。その時に中心的な役割を果たしたのが、ミルトン・フリードマンという経済学者なんですね。
※【purify】 <…を取り去って> 浄化する
清める
清潔にする
<語句を> 洗練する
<ことばを> 純化する 『リーダズ英和辞典第3版』
フリードマンは人間として最低の人間なんですね。
(会場) 笑い
いや、私はシカゴ大学でフリードマンと前後して同僚だった10年で苦しい目に会って、結局日本に帰って来るようになったのは、基本的にはフリードマンとの闘いに敗れたから(笑)。
シカゴ大学経済学部は、チリに分校みたいなのを作ってですね、サンチアゴ・デ・チレ。で、アメリカのCIAが目をつけて、そしてシカゴ大学に巨額の資金を提供して、そして軍事的にも援助して、アジェンデを倒す、ちょうど1973年。そうしたらフリードマンの息のかかった学生達が歓声、歓声を上げたんですよ。僕はそれでシカゴ大学には一切行かないことにしたんですね。
で、そのアジェンデが虐殺されて、ピノチェット、ピノチェットがシカゴ( )を使って、フリードマンの( )をそのまま忠実に実行に移すんですね。例えば国営企業( )をすべて民営化する。ただ、銅山だけは例外。つまり銅山は政府の自分が資金源。で、それを除いてはすべて、民営化。そして労働組合を徹底的に弾圧して、秘密警察を使って殺していくんですね。
1985年のプラザ合意、あれはね、それまでの円安を円高にするための、まあ、日本の円を狙って国際会議を開くわけですね。
例えば日本から輸出の( drive ) がかかって、そうすると、日本の企業を制裁する、非常に厳しい制裁をする。で、それではまだ不十分だと。そしてあの、日米構造協議で、アメリカはこういう事を要求したんですね。それは、日本政府は国民所得の10%、当時は10年間で430兆円、公共投資をしろと。その公共投資は、決して日本の企業の生産性を高めるという形でやっちゃいけない、まったく無駄なことにやれ、と。これ実はですね、あと200兆増えて合計630兆円、それをまったく無駄なことに、地方自治体は。
で、そのために第三セクターを次から次へと、まったく無駄なレジャーセンターとか、あるいはまったく必要のない土地を買う、そういった類いの事を、よく消化したと思うくらい、日本政府は、忠実なアメリカ、パックス・アメリカーナの奴隷になってね、実行に移したわけですね。歴代の自民党政権。
そしてその時に、地方自治体が地方債を発行して元利償還すると、その時に、こういう事を政府は約束したんですね。その地方債の元利償還は、将来地方交付税でまかなうという事を約束したんですね。
ところが、小泉政権は、地方交付税を大幅にカットして、そして、その第三セクターで作った、まったく無駄な、レジャーセンターいろんなもの、ほとんど全部倒産するわけですね。
そうするとね、それが全部地方自治体の負債として残った。630兆円です。ものすごい負担になって、それが今、地方自治体の苦しい状況、立場を生み出しているんですね。ですから、地方税関係はもう、ものすごく、上げてます。しかし、地方自治体はやってけない所が増えてきている。
地方自治体がどういう事をやるかというと、例えば学校、病院だとか、そういう先程言ったような社会的共通資本を、将来に関わるようなものを縮小していくわけですね。それで同時にあの時にね、自治体を整理しようと、合併させると。千いくつかの自治体が消えていくわけです。
ところが自治体っていうのはね、先程言ったように、歴史的に重いものなんですね。それぞれの地方の歴史、文化、そういうものから作られていく。簡単に合併したりする事ができるようなものじゃないんですね。それが今の地方自治体の大きな混乱。それがパックス・アメリカーナのもたらした害毒なんですね。
で、その中曽根もそうですけど、小泉が事あると、アメリカの大統領のうちに呼ばれてね、河童踊りとか、なんか踊ったりするんですね。それは信じられないですね。
今から3年ほど前、2007年ですか、ティム・ワイナーという人が、CIAの歴史、それを彼は20年かけて、封印を解かれた公文書とか、実際責任を持った人たちにインタビューした。
※『CIA秘録〈上〉―その誕生から今日まで』 (文春文庫)
http://www.amazon.co.jp/CIA%E7%A7%98%E9%8C%B2%E3%80%88%E4%B8%8A%E3%80%89%E2%80%95%E3%81%9D%E3%81%AE%E8%AA%95%E7%94%9F%E3%81%8B%E3%82%89%E4%BB%8A%E6%97%A5%E3%81%BE%E3%81%A7-%E6%96%87%E6%98%A5%E6%96%87%E5%BA%AB-%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%BC-%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%A0/dp/4167651769/ref=sr_1_2?ie=UTF8&qid=1420189235&sr=8-2&keywords=%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%A0%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%BC
『CIA秘録〈下〉-その誕生から今日まで』 (文春文庫)
http://www.amazon.co.jp/CIA%E7%A7%98%E9%8C%B2%E3%80%88%E4%B8%8B%E3%80%89-%E3%81%9D%E3%81%AE%E8%AA%95%E7%94%9F%E3%81%8B%E3%82%89%E4%BB%8A%E6%97%A5%E3%81%BE%E3%81%A7-%E6%96%87%E6%98%A5%E6%96%87%E5%BA%AB-%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%A0-%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%BC/dp/4167651777/ref=pd_bxgy_b_text_y
『Legacy of Ashes: The History of the CIA』 Tim Weiner
http://www.amazon.co.jp/Legacy-Ashes-History-Tim-Weiner/dp/0241956234/ref=sr_1_6?s=english-books&ie=UTF8&qid=1420189339&sr=1-6&keywords=tim+weiner
CIAは、それによると、マーシャル・プランというのが最大の対外援助、もともとヨーロッパなんですけど、日本とかいろんな所に適用されて、アメリカのいちばん偉大な業績というのは、実はマーシャルプランだと。戦後の復興を可能にしたという。ただその実態はね、見事に暴くんですね。
それはマーシャルプランはこういう条件が付いていたんですね。
貰った国は、同じ額をローカルの currency 、円なら円で積み立てて、そしてアメリカ政府の指令に従って、それを使う。アメリカはだから、うまい事やったわけね。で、その5%を自動的にCIAに回したんですね。全部でたしか20億ドルかな、非常に巨大な。5%というのは非常に大きな額なんですよ。で、それをCIAはその5%を使って、パックス・アメリカーナの普及、展開に使ったんですね。で、その一番の中心が日本だったんですね。
1948年の12月23日に、東条以下7人A級戦犯に絞首刑が執行されて、その次の日、岸信介というA級戦犯が、収監されていた人が、そこから釈放するんですね。で、将来の、日本の、政治的指導者として育てる。巨額のお金をね、CIAは使うわけ。で、岸は巣鴨で釈放されて、その足で、弟の佐藤栄作が官房長官をしていた首相官邸に行って、佐藤が岸に背広を用意してやって、そして囚人服をそれに着替える。そしてその時に岸の言った言葉は、「我々は民主主義者だ」。それがCIAの記録に残っている。で、それから徹底的に岸を資金的に、カネで援助するというのがCIAの。
そして政治的指導者になる。そして資金を渡したいちばん大きい役割が日米安全保障条約の締結なんですね。
日本がパックス・アメリカーナの完全な僕(しもべ)になって、そして、それに対して、特にベトナム戦争。ベトナム戦争は結局、アメリカが、パックス・アメリカーナを広めるため、それに抵抗するものを武力を使って。で、特にベトナムの場合は、沖縄の基地を中継する。で、アメリカはベトナムで、史上最大の破壊、自然の破壊と社会の破壊と人間の破壊をやって、それに対して世界中の学生が立ち上がって、そして、反米、反戦闘争を展開した。日本の場合もその一環として、特に日本は沖縄の非常に烈しい学生運動が展開されました。
(22:15~ 西谷修 東京外国語大学大学院教授)
『始まっている未来 新しい経済学は可能か』 宇沢 弘文,内橋 克人 (岩波書店)
http://www.amazon.co.jp/%E5%A7%8B%E3%81%BE%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E6%9C%AA%E6%9D%A5-%E6%96%B0%E3%81%97%E3%81%84%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%AD%A6%E3%81%AF%E5%8F%AF%E8%83%BD%E3%81%8B-%E5%86%85%E6%A9%8B-%E5%85%8B%E4%BA%BA/dp/4000244507/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1420190259&sr=8-1&keywords=%E5%A7%8B%E3%81%BE%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E6%9C%AA%E6%9D%A5
『社会的共通資本』宇沢 弘文 (岩波新書)
http://www.amazon.co.jp/%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E7%9A%84%E5%85%B1%E9%80%9A%E8%B3%87%E6%9C%AC-%E5%B2%A9%E6%B3%A2%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E5%AE%87%E6%B2%A2-%E5%BC%98%E6%96%87/dp/4004306965/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1420190454&sr=8-1&keywords=%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E7%9A%84%E5%85%B1%E9%80%9A%E8%B3%87%E6%9C%AC
(23:50~) ツイッターでの紹介と、まとめ。
なお、“「フリードマン経済学の誤謬は、その少年時代にキーツの詩を誤読したことに始まる」という仮説を”書く予定なのだが、それには『フリードマン自伝』を確認せねばならず、これはあまり読みたくない本なので、順番としては後回しになる。
【2014.11.12~2015.1.2】
『経済学から地球環境 日米安保・沖縄』 宇沢弘文 (2010年10月16日 東京外国語大学) https://www.youtube.com/watch?v=XqOKulQ8SCo
社会的資本とは簡単に言いますと、三つ種類があります。
いずれもひとりひとりの人間の生き様に非常に重要な関わりを持つもので、あるいは社会が円滑に機能していく為に欠くことのできないような役割を果たす、そういうものを一括して社会的共通資本と言います。
基本的には私有は認められても、私的管理ではなく社会的な管理に従う。それから個人の意思よりはそのそれぞれの社会的共通資本に重要な関わりを持つ人々が commons として共同体的なものを作ってお互いに協力しながら考えていこうというものなんですね。ですから、最近の経済学のなかには、この概念はあまり、というか無視されてきたんですね。
具体的には、自然環境,山,森,川,海,湖,その他、特に大気ですね、そういうような人間が生きていく、あるいはそれ以上の生物が生きていく為に非常に重要な役割を果たすものです。ところがこれまで経済学の、特に近代経済学、マルクスもそうです、のなかではこの資本という概念が、自然環境は資本ではない、とされていたわけですね。
資本とは一般に労働を投下して作られるもの、自然にもともとあるものは経済学の対象ではないと、近代経済学はもっと極端にですね、もう自然は自由財だと、自由に勝手に使ってもいい、と、それが戦後の実は水俣病をはじめとする悲惨な公害の問題がまさにその近代経済学の非常に偏った考え方をベースにして、社会制度なり、政策が展開されてきた、という結果なんですね。
social capital 、それは、道路とか公共的な交通機関,ガス,水道,その他。で、これが、日本語で言いますと、社会資本というふうに呼ばれて、予算の重要なジャンルになってますが、ところがですね、英語で social capital と言うと、全く違うものを意味するんですね。それはある社会で人間と、人と人の間の信頼みたいなもの、を維持したり、あるいはそれを保つようなもの、というか作り出すもの、一番いい例が言葉、とか慣習とかそういったものですね。これも経済学のなかでは取り扱われてこなかったんですね。
それから三番目は、制度資本といいましょうか、つまり、病院,学校,金融制度,司法制度,出版ジャーナリズム、そういった社会を、目に見えない、重要な役割を果たすもの、制度なんですね。その制度が、ちゃんとした制度ができていれば、豊かな、自由な社会が作られる。この豊かな、自由なと言いましたけれど、それは経済学で言いますと liberalism の思想にかかっているもの、 liberalism というのは、ひとりひとりの人間の人間的尊厳が守られ、そして魂の自立が支えられ、そしてすべての人たちが市民的権利を最大限に享受できるよう、そういう世界,社会を目指して、制度的あるいは分析をするとか、あるいは運動を起こすというようなこと、それが liberalism の理念なんですね。
パックス・アメリカーナの経済思想的な考え方は何かというのを一番良く表す事があります。それは1945年の7月にですね、モンペルランというスイスの有名な避暑地ですね、そこにふたりのシカゴ大学の経済学者がですね、たまたま一緒になった。ひとりはフランク・ナイトという、もうひとりはフリードリッヒ・フォン・ハイエックという経済学者です。それで戦後の世界をどうやって立て直すかという時の基本的な考え方を、ふたりで考えました。それでモンペルラン・ソサエティというのを立ち上げて、ひとつの単に経済学者だけじゃなくて、多くの政治家とか、実業家、ジャーナリストなどを引き込んで、ひとつの大きな運動を展開する。それが私はあのパックス・アメリカーナの考え方を非常に表していると思うわけです。
で、その考えはどういう考え方かというと、すべてのものを私有化して、マーケットで取引できるようにする、そうした時に、企業の能力が最大限に発揮でき、そしてそれによって、人間の能力も最大限に発揮できる。それが基本的な考え方です。
そこで、それまでに、マーケットを成立するためには、私有制を貫徹しなければならない。ですから、大気とか海の水とか、そういう私有制がはっきりしないようなものには私有制を導入する、という事を考えたわけです。そしてその徹底したマーケット・メカニズム、それを使って、すべてがうまくいくというような、つまり基本的には社会共通資本を根源から否定する考え方になるんですね。
(声) みんな私有化して私有財産にしていくわけですね?
(宇沢弘文) そう。
それに抵抗するもの、あるいは、それを障害になるような制度,法律は改革していこう、と、でそれに批判的な国に対しては、軍事力を使っても構わないと、いう事をだんだんと purify させていったんですね。その時に中心的な役割を果たしたのが、ミルトン・フリードマンという経済学者なんですね。
※【purify】 <…を取り去って> 浄化する
清める
清潔にする
<語句を> 洗練する
<ことばを> 純化する 『リーダズ英和辞典第3版』
フリードマンは人間として最低の人間なんですね。
(会場) 笑い
いや、私はシカゴ大学でフリードマンと前後して同僚だった10年で苦しい目に会って、結局日本に帰って来るようになったのは、基本的にはフリードマンとの闘いに敗れたから(笑)。
シカゴ大学経済学部は、チリに分校みたいなのを作ってですね、サンチアゴ・デ・チレ。で、アメリカのCIAが目をつけて、そしてシカゴ大学に巨額の資金を提供して、そして軍事的にも援助して、アジェンデを倒す、ちょうど1973年。そうしたらフリードマンの息のかかった学生達が歓声、歓声を上げたんですよ。僕はそれでシカゴ大学には一切行かないことにしたんですね。
で、そのアジェンデが虐殺されて、ピノチェット、ピノチェットがシカゴ( )を使って、フリードマンの( )をそのまま忠実に実行に移すんですね。例えば国営企業( )をすべて民営化する。ただ、銅山だけは例外。つまり銅山は政府の自分が資金源。で、それを除いてはすべて、民営化。そして労働組合を徹底的に弾圧して、秘密警察を使って殺していくんですね。
1985年のプラザ合意、あれはね、それまでの円安を円高にするための、まあ、日本の円を狙って国際会議を開くわけですね。
例えば日本から輸出の( drive ) がかかって、そうすると、日本の企業を制裁する、非常に厳しい制裁をする。で、それではまだ不十分だと。そしてあの、日米構造協議で、アメリカはこういう事を要求したんですね。それは、日本政府は国民所得の10%、当時は10年間で430兆円、公共投資をしろと。その公共投資は、決して日本の企業の生産性を高めるという形でやっちゃいけない、まったく無駄なことにやれ、と。これ実はですね、あと200兆増えて合計630兆円、それをまったく無駄なことに、地方自治体は。
で、そのために第三セクターを次から次へと、まったく無駄なレジャーセンターとか、あるいはまったく必要のない土地を買う、そういった類いの事を、よく消化したと思うくらい、日本政府は、忠実なアメリカ、パックス・アメリカーナの奴隷になってね、実行に移したわけですね。歴代の自民党政権。
そしてその時に、地方自治体が地方債を発行して元利償還すると、その時に、こういう事を政府は約束したんですね。その地方債の元利償還は、将来地方交付税でまかなうという事を約束したんですね。
ところが、小泉政権は、地方交付税を大幅にカットして、そして、その第三セクターで作った、まったく無駄な、レジャーセンターいろんなもの、ほとんど全部倒産するわけですね。
そうするとね、それが全部地方自治体の負債として残った。630兆円です。ものすごい負担になって、それが今、地方自治体の苦しい状況、立場を生み出しているんですね。ですから、地方税関係はもう、ものすごく、上げてます。しかし、地方自治体はやってけない所が増えてきている。
地方自治体がどういう事をやるかというと、例えば学校、病院だとか、そういう先程言ったような社会的共通資本を、将来に関わるようなものを縮小していくわけですね。それで同時にあの時にね、自治体を整理しようと、合併させると。千いくつかの自治体が消えていくわけです。
ところが自治体っていうのはね、先程言ったように、歴史的に重いものなんですね。それぞれの地方の歴史、文化、そういうものから作られていく。簡単に合併したりする事ができるようなものじゃないんですね。それが今の地方自治体の大きな混乱。それがパックス・アメリカーナのもたらした害毒なんですね。
で、その中曽根もそうですけど、小泉が事あると、アメリカの大統領のうちに呼ばれてね、河童踊りとか、なんか踊ったりするんですね。それは信じられないですね。
今から3年ほど前、2007年ですか、ティム・ワイナーという人が、CIAの歴史、それを彼は20年かけて、封印を解かれた公文書とか、実際責任を持った人たちにインタビューした。
※『CIA秘録〈上〉―その誕生から今日まで』 (文春文庫)
http://www.amazon.co.jp/CIA%E7%A7%98%E9%8C%B2%E3%80%88%E4%B8%8A%E3%80%89%E2%80%95%E3%81%9D%E3%81%AE%E8%AA%95%E7%94%9F%E3%81%8B%E3%82%89%E4%BB%8A%E6%97%A5%E3%81%BE%E3%81%A7-%E6%96%87%E6%98%A5%E6%96%87%E5%BA%AB-%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%BC-%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%A0/dp/4167651769/ref=sr_1_2?ie=UTF8&qid=1420189235&sr=8-2&keywords=%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%A0%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%BC
『CIA秘録〈下〉-その誕生から今日まで』 (文春文庫)
http://www.amazon.co.jp/CIA%E7%A7%98%E9%8C%B2%E3%80%88%E4%B8%8B%E3%80%89-%E3%81%9D%E3%81%AE%E8%AA%95%E7%94%9F%E3%81%8B%E3%82%89%E4%BB%8A%E6%97%A5%E3%81%BE%E3%81%A7-%E6%96%87%E6%98%A5%E6%96%87%E5%BA%AB-%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%A0-%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%BC/dp/4167651777/ref=pd_bxgy_b_text_y
『Legacy of Ashes: The History of the CIA』 Tim Weiner
http://www.amazon.co.jp/Legacy-Ashes-History-Tim-Weiner/dp/0241956234/ref=sr_1_6?s=english-books&ie=UTF8&qid=1420189339&sr=1-6&keywords=tim+weiner
CIAは、それによると、マーシャル・プランというのが最大の対外援助、もともとヨーロッパなんですけど、日本とかいろんな所に適用されて、アメリカのいちばん偉大な業績というのは、実はマーシャルプランだと。戦後の復興を可能にしたという。ただその実態はね、見事に暴くんですね。
それはマーシャルプランはこういう条件が付いていたんですね。
貰った国は、同じ額をローカルの currency 、円なら円で積み立てて、そしてアメリカ政府の指令に従って、それを使う。アメリカはだから、うまい事やったわけね。で、その5%を自動的にCIAに回したんですね。全部でたしか20億ドルかな、非常に巨大な。5%というのは非常に大きな額なんですよ。で、それをCIAはその5%を使って、パックス・アメリカーナの普及、展開に使ったんですね。で、その一番の中心が日本だったんですね。
1948年の12月23日に、東条以下7人A級戦犯に絞首刑が執行されて、その次の日、岸信介というA級戦犯が、収監されていた人が、そこから釈放するんですね。で、将来の、日本の、政治的指導者として育てる。巨額のお金をね、CIAは使うわけ。で、岸は巣鴨で釈放されて、その足で、弟の佐藤栄作が官房長官をしていた首相官邸に行って、佐藤が岸に背広を用意してやって、そして囚人服をそれに着替える。そしてその時に岸の言った言葉は、「我々は民主主義者だ」。それがCIAの記録に残っている。で、それから徹底的に岸を資金的に、カネで援助するというのがCIAの。
そして政治的指導者になる。そして資金を渡したいちばん大きい役割が日米安全保障条約の締結なんですね。
日本がパックス・アメリカーナの完全な僕(しもべ)になって、そして、それに対して、特にベトナム戦争。ベトナム戦争は結局、アメリカが、パックス・アメリカーナを広めるため、それに抵抗するものを武力を使って。で、特にベトナムの場合は、沖縄の基地を中継する。で、アメリカはベトナムで、史上最大の破壊、自然の破壊と社会の破壊と人間の破壊をやって、それに対して世界中の学生が立ち上がって、そして、反米、反戦闘争を展開した。日本の場合もその一環として、特に日本は沖縄の非常に烈しい学生運動が展開されました。
(22:15~ 西谷修 東京外国語大学大学院教授)
『始まっている未来 新しい経済学は可能か』 宇沢 弘文,内橋 克人 (岩波書店)
http://www.amazon.co.jp/%E5%A7%8B%E3%81%BE%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E6%9C%AA%E6%9D%A5-%E6%96%B0%E3%81%97%E3%81%84%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%AD%A6%E3%81%AF%E5%8F%AF%E8%83%BD%E3%81%8B-%E5%86%85%E6%A9%8B-%E5%85%8B%E4%BA%BA/dp/4000244507/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1420190259&sr=8-1&keywords=%E5%A7%8B%E3%81%BE%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E6%9C%AA%E6%9D%A5
『社会的共通資本』宇沢 弘文 (岩波新書)
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(23:50~) ツイッターでの紹介と、まとめ。